「増援が来たのね?」
「はい、先ほどとは比べ物にならないほどです! 結界をどんどん破って侵入しています!!」
この報告に永琳と紫はそろって曇った顔を見せた。
「ですって。あなたの結界そんな脆かった?」
「うーん、ちょっと使い過ぎたせいで膜が薄く……って、そんなヤワじゃないわよ。あんな雑魚どもに攻撃されたくらいで壊されるんじゃ最強妖怪じゃないわ」
では、考えられる可能性は1つ。
「つよーい敵さんが襲い掛かってきたんでしょ。私の十八番を突破するその力……気になるわね」
「打って出るのか」
「もちろん。ただし、扉は絶対待ち伏せされてるだろうから、スキマで飛ぶわよ」
「よし、頼む。みんなもそれでいいな」
声は出なかったけど、全員首を数回縦に振って了承の合図が送られた。
「あ、ちょっと待ちなさい。豊姫、あなたはここにいなさい」
けど、そこに永琳が割って入った。
「あら……なぜですか?」
「さっきも言ってたけど、依姫が目覚ましたら戦いたがるでしょう? 傍らで止めておいて。私たちだけで戦力は十分だろうし」
「かしこまりました。ここの警備はお任せを」
宇宙一恐ろしい警備員だな……。
「話遮って悪かったわね。私たちは仕事しに行きましょう」
俺も一度目を閉じ、一気に集中。目を開けた時には仰々しいスキマが目の前に現れていた。
きっとこれで終わるはずだ。最大限の注意力で、最高峰に脳を回転させて、乗り切ってやる。
「突入だ」
大妖精は走り、文は飛び、さとりはゆっくりとした歩みで、おのおの決戦場へ飛び出していった。
転移先は、扉から数十メートル離れた、固い地面の上だった。さとりが造ったスキマは中に入る人間のことを全く考えていないけど、こっちは柔らかに着地できた。
「式神は……」
「優斗、あそこ!!」
一足先に索敵していた大妖精はすでに見つけていたらしい。
斜め上に首を動かすと、まず飛び込んできたのはところどころ剥がれおちている結界だった。けど、そんなのはすぐ気にならなくなった。
その奥、つまり結界の外側で数えきれないほどの式神が体当たりを仕掛けていた。
ほとんどは神風特攻隊のようにはかなく散っているが、少しずつ結界にダメージが入っている。それよりなにより、先ほどとは少し異なる敵がそびえていた。
「でかいな……」
「合体でもしたのかな?」
「合体ロボですかっ!?」
「落ち着け早苗、あの時の異変の奴とは関係ないから」
顔や体型は普通の式神となんら変わりない、しかし、ただただ巨大な式神がパンチを何回も撃っていた。
全長30センチくらいの時は丸っこくて黒い身体と、白抜きの目が愛らしいと言えなくもなかったが、今、数十メートルの大きさとなっては不気味でしかない。
「……攻撃手段を変えてきたわね。あんな馬鹿力で押されたら、破れてもおかしくないわ」
「張り直すことは?」
「ジリ貧よ。今のうちに殲滅したほうが早いわ」
「おっけ。よし、全員突撃、あの式神たちをやっつけてくれ」
「それはもちろんだけど、あなたたちは休んでおきなさいね。戦闘が始まると薬の効果が始まるから、今動かないほうがいいわ」
「りょーかい!」
「頼んだぞ」
まあこの面子なら心配はいらない。
こうして話している内に文は口火を切っている。もう空高く舞い上がって、巨大な風を巻き起こしていた。
「スペル使うまでもないわ! 巻き起これ、旋風陣!」
遠目からでも文のドヤ顔と吹き飛ばされる式神がよく分かる。
ただ、あの巨大なやつはちょっときついようで、うちわを数回振ったらすぐに、こちらを振り返った。
「誰か、パワーある方、あの巨大なやつ、お願いできますか?」
マスパが撃てれば吹き飛ばせるのだろうけど……まっ、それはただのイメージで、もっと力強いスペルはいくらでもある。
「では、私がやりましょうか」
「頼みます、校長!」
文が急速落下するのと入れ替わりで映姫が飛び上がる。ポンポンポンと空中をけるような、軽やかなステップだ。
「まったく、あなた方に説法が通じれば少しは救われたのでしょうけど……どうやら叶わないようですね。全力で行きましょう」
映姫がスペルを帽子の中から引っ張り出した。そこにしまってあるとは初耳だ。
「罪符『彷徨える大罪』。さあ、成仏してください!」
第八十九話でした。すみませんでした……!(初手謝罪)
えー、投稿間隔空いた言い訳をさせていただきますと、うp主、実は新人賞に応募するためのオリジナル小説を書いていまして、ここ二か月は最終確認で忙しかったのです。あと新年度になっていろいろあったり……許してヒヤシンス。
新人賞の結果をそのうち書くので許してください。たぶん落ちてる。
次は早く出します!印刷室のコピー機みたいに!!
では!