東方好きの優斗と大妖精と   作:ゆう12906

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第八十七話 反撃への分析

 別に身にもつけたくもなかった能力だが、逃げるのは得意だ。特に後ろからの弾幕をかわしながら耐え続けるのは十八番と胸を張れる。

 

 もちろん数多くの逃亡経験があって鍛えられたのだが、今思えばこの時のために練習していたのだろうか、とため息をつく。好感情は全く生まれないけど。

 

「優斗、平気? 能力で辛くなってない?」

 

「ああ、永琳の薬で今までにないくらい持久力がある。――『封魔陣』!」

 

 フェイクアポロが生み出した無数の弾幕を霊夢の結界を借りて消滅される。やはり巫女の力は邪な物に良く効く。

 

 このまま耐え続ければ依姫たちの元へ戻れるだろう。

 

 だから、すでに段階は次のステージに入っている。この先のことも考えて、手を打っておかなければならない。

 

「あそこ、入り口が見えたっ!」

 

 大妖精が指差した先には魔払いの階段が確かにあったが、まだ入るわけにはいかない。

 

 つま先で一気にブレーキをかけて、その勢いでくるっと反転、弾に正対する。

 

「大妖精、ちょっとだけやりたいことがある、少しだけ待っててくれるか?」

 

「いいけど……いったいどうするの?」

 

 俺が体を張れば後はすごい人たちが何とかしてくれる。さあ、自己犠牲タイムと行こうか。

 

 ――霊夢、もう一度力を借りるぞ。

 

「神技『八方鬼縛陣』!」

 

 前方に一気にオレンジで八芒星の結界を出現させる。

 

 本来このスペカは妖怪などを捕らえるものだ。

 

 ここから推察するに、物理的に存在している全てを縛ることができる、と考えても十分に自然だ。言い方は悪いが、強力なゴキブリホイホイのようなものだろう。

 

 ならば――、

 

「……よし」

 

 予想通り、弾も入る。結界の中で動きが鈍くなり、最終的には推力を失い捕縛され、こちらの手中になる。

 

「おっけー、これで完了だ」

 

 

 

 

 

「……ただいまー」

 

「おかえり。月の世界の空気は楽しんでもらえた?」

 

「幻想郷と変わらず澄んでたな」

 

「あら~、スキマ妖怪が嫉妬するわねー」

 

「気を使うって言葉知らないのかしら?」

 

「俺の発言でケンカしないでもらえますか……」

 

「おかえりなさい! 月の世界の空気は大妖精さんを乱れさせましたか?」

 

「1ミリもありえない」

 

「なんだーつまんないの。文さんとこあさんに取材してもらおうと思ったのにー」

 

 そりゃまた恐ろしいコンビだ。

 

「優斗先生、さとり先生の言うことは無視してかまいませんが、特に変わったことはありませんか?」

 

「ああ、それなんだけどな、」

 

 こういう時の映姫は幻想郷一頼りになる。

 

 

 

 

 

「……ってことで、クラウンピースって妖精が襲ってきた。依姫の見たのと同じと判断して構わないだろう」

 

「地獄ですか……特に報告は上がってないんですけどね」

 

 映姫も知らないところで異変の準備が進められていたらしい。閻魔様ならなにか聞いてるかと思ったが、新たな発見はなかった。

 

「で、クラウンピースの弾をいくつか採集してきたんだけど、これ解析できるか?」

 

「申し訳ない、いくら地獄の妖精と言えどもそこまでは……」

 

「あら、ここにプロフェッショナルがいることをお忘れかしら?」

 

「できるのか?」

 

「有効策まで立ててあげるわよ」

 

「なるべく早く頼む」

 

 手をひらひらさせて奥の部屋へ消えていった。

 

 とても小さな変化だが、やっと一歩、異変の深層へ近づいた気がした。

 




第八十七話でした。続きが全く思い浮かばなかった……

だいぶ間を開けてしまったので明日も頑張って投稿したいです。がんばりゅ。

では!

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