東方好きの優斗と大妖精と   作:ゆう12906

86 / 96
第八十六話 戦術的撤退

 耐久スペル、原作では何度か経験したことがある。フランの「そして誰もいなくなるか?」だけは、なんとかクリアした思い出がある。まあ、妖々夢で藍に挑む前にリアルの幻想郷に飛ばされてしまったわけだが。

 

 知識として、耐久スペルを持っているのは全員覚えている。フラン、幽々子、藍、紫、輝夜、永琳、妹紅、諏訪子にこいしにぬえマミゾウなどなど。いずれも幻想郷の実力者ばかりだ。

 

 それなのに、妖精がいとも簡単に撃つなんていったいどういうことだろうか。相当の実力者であることは間違いないだろうけど。

 

「大妖精、後ろに隠れてろ。とりあえず俺が対処する。きつくなったらバックアップしてくれ」

 

「分かった。無理しないでね」

 

 大妖精も俺もスペルをきゅっと握って、万全の用意。

 

 さあ、我慢の時間だ。さとりから逃げれたと思ったら別の輩に絡まれて……世知辛い。

 

「来るぞっ!」

 

 亜空間が3つほどあらわれ、そこから顔を見せたのは、

 

「……月?」

 

 直径3メートルくらいだろうか。大分小さい月が3つ迫ってきた。もちろん、ただ物理攻撃するわけではないだろう。まだ何か追加であるはずだ。

 

 嫌らしいことに、こういう悪い予感は大体当たるものだ。幻想郷ほど第6感が鍛えられる世界もないだろう。

 

 ニセモノの月、その意味がようやく分かった。あれは地球の衛星なんかじゃない。弾をばらまくだけの贋作だ。

 

「やっぱり、月から弾が! どうやって避ける?」

 

「弾の間を抜けるぞ。ついてきてくれるか」

 

「どこだって、優斗が導いてくれるなら」

 

 俺が差しのべた手に、ギュッと力強く握り返してくれた。

 

「……悪いな、外の空気吸うだけのはずがこんなことになって」

 

「異変なんてそんなもんだよ。敵がいつ現れるなんて分からない、行き当たりばったりなもの。確かに攻撃は受けちゃったけど、霊夢とか魔理沙とかより優斗はいっぱい考えてるから」

 

「……ありがと。ちょっとだけ、逃避行に付き合ってくれ。重ね重ねだけど、この異変が終わったら絶対にベットの上の話、全部済ませるから」

 

 お互いにコクンとうなずいて、最終確認。それから、月を背にして、

 

「逃げるぞっ!」

 

 脱兎のごとく駆ける。当然、月は追尾しながら全方位弾を放ってくる。

 

 すぐに俺たちの横を弾が通過してくる。弾幕ごっこは殺傷性のない弾を使うのがお約束だが、あの狂気妖精がそんなことを考えるはずもないだろう。

 

 このままでは確実に被弾する。そんなことは重々承知しているので、当然スペルで対抗しなければならない。どんなに強いスペルでも弾は出続けるので、なるべく発動時間が長く、攻撃範囲が広い……これだな。

 

「魔符『スターダストレヴァリエ』!」

 

「魔符『フェアリーズマジック』!」

 

 とりあえず相殺できそうなスペカを置いといて、後ろには目もくれず走り続ける。

 

 見えないところで爆発音が次々と聞こえてくる。同時に視認できる相手の弾幕は減り、効果が実感できる。

 

 ただ、魔理沙のレーザーが打つたびに、鼓動がどんどん早くなる。いくら永琳の魔法の薬があっても、4面ボスの長期弾幕はなかなかに体に来る。

 

 前に走りたい、けど臓器が命令を聞かない、そんな長距離走のような状態を必死に耐える。

 

「……もう、ちょっと」




第八十六話でした。昨日バーチャルyoutuberの小説投稿したのでこっちが短めです。

今回、幻想郷の生き方みたいなのにちょっとだけ触れてみました。霊夢とか顕著ですけど、みんな刹那的に生きてるような気がします。生に執着もしていないし。

優斗自身、始めのころに比べて行き当たりばったりに行動している……のでしょうか。やはり1年も幻想郷にいると染まってくるのですね。これが成長と言えるのか、それは彼自身が決めることでしょうけど。

では!


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。