東方好きの優斗と大妖精と   作:ゆう12906

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第八十五話 優斗から見た日本の原風景

 何やらわちゃわちゃ騒いでいるさとりには振り向かず、階段を駆け上がり、扉を全力で開閉した。

 

「優斗……速いよ……」

 

「ごめんごめん、この足がさとりから早く離れようと必死で」

 

「気持ちは……はあ、分かるけど……はあ……」

 

 さとりさん、大妖精にさえ少し引かれてるのか……。本人が楽しそうだから特に注意しない方針だけど。

 

「で、飛び出してきちゃったけど、これからどこ行くの」

 

 実はあんまり考えていない。って苦笑いしたいところだが、即刻呆れられるだろうから、

 

「もう一度4つの都市を確認しておこうか。一応ね。どこから行く?」

 

「だったら北都がいいんじゃない。最初に行ったから、もしかしたら侵入されてるかも」

 

「そうだな。時間も潰せるし」

 

 階段の入り口から逆方向、北都へ向かい始める。

 

「……こうしてみると、やっぱり月世界って綺麗だな」

 

「うん、なんだかこう……整ってるよね」

 

 建物もシンメトリーで、外の世界のように近未来的だ。

 

「俺が住んでた都会みたいに、区画整理されているよな。これはこれですっきりする」

 

 けど、味気ないとも表現できてしまうわけで。

 

「幻想郷の自然も違った味があるけどな」

 

 こことは正反対、アシンメトリーで日本古来の美しさも捨てがたい。

 

 春は幽々子の桜が咲きほこり、夏は太陽がサンサン照り付け幽香の向日葵が光って、秋は食物と秋の神様がドヤ顔を浮かべ、冬は妖怪と氷の妖精が幅を利かせる……月世界、あるいは外の世界ではちょっと考えられない。

 

「そろそろ霧の湖が恋しくなってきた」

 

「まだ数時間しか経ってないよ⁉」

 

「普段見慣れたものがないと落ち着かないよ」

 

「だったら早く終わらせないと」

 

「そうしたいけどな……今回ばかりはいろいろデリケートだからな」

 

「それって?」

 

 あれ、まだ俺の存在が外の世界でなかったことにされてるの言ってなかったか。後、それに式神が関与してるのも。

 

「いや、あの式神が俺が幻想入りした原因かもしれないんだ」

 

「……それは、大変だね」

 

「いろいろ事情はあるけど、これが終わったら全部説明するから。だからまず、目の前のことに集中しよう」

 

 どうやら納得してくれたらしく、こくんと首が縦に振られる……

 

 ――それと全く同時に、

 

「あんた達、そんな平和ボケしている暇あるのかい」

 

「はっ?」

 

「へっ?」

 

 真上から声が聞こえて、

 

「ちょっとは危機感持ちなよ!」

 

「危ないっ!」

 

 弾幕が降ってきた。

 

 ほとんど反射で加速してギリギリ回避はできたものの、突然の攻撃に脳の処理が追い付かない。

 

「おい、お前は誰だ?」

 

 金髪ロングヘアーで、赤がかった紫色の眼。水玉の帽子を被り、首元にひだ襟の付いた、青地に白い星マークと赤白のストライプの服を着ている奇抜な奴に声をかける。

 

「質問するならまず自分達から名乗ったら?」

 

 食えない奴だ。

 

「……朝霧優斗。幻想郷から月異変を解決にしたただの人間だ」

 

「えっと、大妖精です……これでいいの?」

 

「多分な。こういうの初めてでよく分からない。けど、敬語はいらないと思うぞ」

 

 明らかに敵だし。

 

「朝霧優斗……あれ、あんたの名前聞いたことあるな……まあいいか」

 

 松明を持ったそいつはさとりのような薄ら笑いを浮かべて、

 

「あたいはクラウンピース。地獄の妖精にして、この異変の首謀者の部下さ。これで満足?」

 

「クラウンピース……」

 

 聞いたことないな。少なくとも今までの東方作品には出てきていない。

 

「あなたも妖精なの?」

 

「そうさ。ただ、おそらくあんたとは対極に位置してるだろうけど」

 

「……?」

 

「分からない? あんたから狂気を感じないってことよ。まっ、それは置いといて、」

 

「俺たちをどうするつもりだ」

 

 コイツが依姫を倒した人型の敵か? 強い奴特有の威厳が全く感じられないのだが……どこぞの奇跡を起こす人とか地底の妖怪の先例があるので油断できない。

 

「どうする? 別に倒しちゃっても全く支障はないだろうけど」

 

「それはお互い得策じゃないだろう? お前はここに何をしに来たんだ。まさか単騎特攻で玉砕されに攻撃したわけじゃないだろう」

 

「まあさすがにね。ご主人様の命でちょっと状況確認しに来ただけさ」

 

 これで確定。依姫が話してた体格が小さい敵だろう。

 

「分かったならさっさと引け。危害を加える気なら反撃も辞さないが」

 

「ほう、なかなか煽ってくるわね。ちょっとだけやる?」

 

「よく考えてみろ。俺を倒したら、それ以上の弾幕に襲われることになるぞ」

 

 自分の実力を過信するな。ここは確実に、引かせる。ただ、弱気なところも見せてはならない。

 

「ふん、戦いたいのかそうでないのかハッキリしなさいよね。まあいい、ここは下がってやるよ」

 

 上手く口車に……乗せたか?

 

「まっ、タダで乗ってやる気もサラサラないんだけどね」

 

 まっ、そんな簡単にはいかないか。ある程度の消耗は覚悟だ。

 

「来るぞ大妖精。準備しろ!」

 

「う、うん!」

 

「イッツルナティックターイム! 狂気の世界、あんた達は乗り切れるかな?」

 

 そう叫んだあと、スペルカードを口で噛み千切った。

 

「『フェイクアポロ』! まっ、せいぜい耐えるがいいさ」

 

 吐き捨てて、クラウンピースは異空間へ溶け込んでしまった。……逃がしたか。

 

 しかし今は目の前の弾幕に集中せねばならない。しかも俺たちに耐えろってことは恐らく、

 

「多分これ、耐久だ! 回避と弾幕撃って粘るぞ!」

 

「了解! 背中は任せて!」

 




第八十五話でした。明日投稿するといったな。あれは嘘だ。(土下座)

寒いとなんであんなに眠くなるのでしょうね……ここ一週間の中で三日くらいは9時間以上寝てるという体たらく。

東方人気投票の結果が出ましたね。大妖精は62位! 憑依華と天空しょうのキャラがいっぱい追加されてるのに、順位が一つしか下がってない。つまり相対的に上昇している!素晴らしい!投票してくれた方々、ありがとうございました!

では!

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