「掃除が終わったので戻ってきました! そちらも大体片付きました?」
「ああ、とりあえずはな。今は少し休もうってとこ。そっちはどうだった?」
「楽勝も楽勝よ。もうちょっと歯ごたえがあるかと思ったら……扇の1なぎで簡単に吹き飛んだわ」
「早苗さんも文さんも強くて、頼りっきりでした。もうこの近くに式神はいないと思います」
「そうか、サンキューな」
都の外周での雑魚狩りを早苗と文と小悪魔には任せていたが、滞りなく終わったようだ。
ここで終われば頼れる仲間、なんだけど、
「お三方、クジは用意しておいたので早速始めましょう」
「私たちだけじゃつまらないですよ」
「そうね、やっぱりワイワイやったほうがね」
「大ちゃん、こっち来て!」
「大妖精を染まらせるな」
仕事の後ハメ外す人って、タチ悪いと思うんだ。
「優斗さんも暇つぶしがてら王様ゲーム、どうですか?」
「ええ……」
どうせ拒否権はないのだろう。
噂によると天国にも地獄にもなるゲーム、と聞いたことがあるが、実際にやるとは思ってもみなかった。
「それってどうやってやるの?」
無垢な大妖精がさとりに説明の機会を与えてしまった。
「えーと、実際やってみた方が早いですね。お三方、優斗さん、いきますよ」
「え、ちょ、」
息つく間もなく、さとりに袖口を引っ張られた。そのままくじを1枚つかまされ、
「「「「王様だーれだ!」」」」
引かされた。
「各クジには番号が書かれてますが、1枚だけ『王様』と記入されています。その人が、命令を下せるのです。例えば、」
自分のクジをちらっと見て、にやりと笑みを浮かべるさとり。王様クジもってやがるな。不正の香りがプンプンする。
「3番さん、私の肩をたたいてください」
「っと、俺か……」
まさか見通してないだろうな?
仕方なく、さとりの背後に回ってトントントン。
「こんな感じで番号を使ってどんどん指示を出せるんですよ」
「へえ~。どんなことができるの?」
「そりゃあ……なんでもですよ」
「なんでも⁉」
大妖精の声が裏返った。そりゃあこんなゲーム幻想郷にはないよなあ……なら、なんでコイツら知ってるの?
「そうですよ。あんなことやそんなことだって思いのままに操れてしまうのです」
「スリルあるでしょ? だから面白いんだよ!」
「う、うんそうだね……」
ズルいぞ小悪魔。お前に推されたら大妖精が断りづらくなるだろうが。
「人数も多いので、6人ローテーションでやりましょう。ただし優斗さんはオールで」
「なんでだ」
「うーん、男女バランス?」
「……だろうな」
悔しいことにぐうの音も出ない。
「じゃあまずは……依姫さん、いかがですか?」
「えっ、――私はまだキズが……」
「あら、やってみればいいじゃない。私が代わりに引いてあげるわよ」
「あと紫さん、やりますよね?」
「あら、当然じゃない」
第一ラウンドは俺、依姫、紫、3銃士に決まった。
「はい、みなさんくじを持ちましたかー?」
頼む、王様来い。当たり障りのない命令で切り抜けてみせるから。
「「「「「「王様だーれだ!」」」」」」
素早くクジを引き抜き、確認する。
うーん、3番か。王様は……?
「よっし、私ね」
持ち前の扇をパタパタ振って文がクジを高々あげた。
「うーん、まずは無難なところから行きましょうか」
3番呼ぶな……3番呼ぶな……
「1番と5番の方!」
とりあえず良かった。さあ、命令は……
「私のカメラに満面の笑みで2ショット!」
なるほど、文らしい。さて、肝心の2人は、
「あら依姫、出番よ」
「始めからとはツイてない……えっ、依姫?」
「紫⁉」
ありゃあ、よりにもよってこの2人かあ。
「じゃあベッドの上でイチャイチャしてきてくださいねー。文さん、とびっきりの笑顔よろしくです」
「ちょっと待ってください。なんで因縁の相手と……」
「そうよ、優斗のほうがマシよ」
どういう意味だコラ。
「文、いろんな角度から頼む」
「了解です!」
「「いやああああああああああ」」
このゲームに置いて王様の命令は絶対。断ることなんて許されないのだ。
「じゃあ撮影の間に第2ラウンドです! ――じゃあ……大妖精さん、映姫先生、豊姫さん、参加願います」
3人ほどメンバーを交代して、再びクジが用意される。
1回目はうまく切り抜けたが……幸運の女神よ、もう1度助けてくれ。
「では! せーの、」
「「「「「「王様だーれだ!」」」」」」
「あら、私ですね」
まず反応があったのは月の姫様。
「うーん、どうしましょう……好きな食べ物を答える、とかじゃつまらないでしょうし」
「さすが依姫さん! わかっていらっしゃる‼」
いや、全然普通でいいんですよ。日本語おかしいけど、全然いいですよ。
「じゃあ、ハグでもしていただきましょうか」
とんでもない地雷を投下しやがった……。
思わず自分のクジを2度見してしまう。今回は4番。当たるなよ……。
「1番と2番で!」
心の重しが一気に軽くなる。
どうしたんだ今日は。ラッキーがこんなに続くなんて珍しい。
で、そのお2人さんは
「あっ、あたった」
「……大ちゃんか。良かったー」
大こあだった。特に不都合はなさそうだ。
「じゃあさっさとやっちゃうよ!」
「いきなりっ⁉」
真向かいにいた大妖精に、ダッシュで飛びついた。全体重を大妖精に預け、くるっと1回転。
「ふふっ、大ちゃん暖かいね」
「こあちゃんもね!」
ああ、平和だ……。
「ううっ、尊い……」
横ではさとりが涙を流す勢いで震えていた。鬼の目にも涙とはこのことか。
「けど、私たちは前に進まなければいけないのです! 第3ラウンド、行きますよ!」
ええ……綺麗にまとまりそうだし、終わりでいいじゃんか……。
第八十二話でした。
王様ゲーム1話で終わらせようと思ったけど、こういうのをダラダラ書くのが楽しくて……多分明日投稿します。(宣言することで明日のモチベーションを確保する)
みなさん冬コミ行きます? 僕は行く予定なんですが、まだ相手が見つかってないんですよね……このままだと単艦突撃になりそう。
では!