東方好きの優斗と大妖精と   作:ゆう12906

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第八十二話 心臓に悪い王様ゲーム①

「掃除が終わったので戻ってきました! そちらも大体片付きました?」

 

「ああ、とりあえずはな。今は少し休もうってとこ。そっちはどうだった?」

 

「楽勝も楽勝よ。もうちょっと歯ごたえがあるかと思ったら……扇の1なぎで簡単に吹き飛んだわ」

 

「早苗さんも文さんも強くて、頼りっきりでした。もうこの近くに式神はいないと思います」

 

「そうか、サンキューな」

 

 都の外周での雑魚狩りを早苗と文と小悪魔には任せていたが、滞りなく終わったようだ。

 

 ここで終われば頼れる仲間、なんだけど、

 

「お三方、クジは用意しておいたので早速始めましょう」

 

「私たちだけじゃつまらないですよ」

 

「そうね、やっぱりワイワイやったほうがね」

 

「大ちゃん、こっち来て!」

 

「大妖精を染まらせるな」

 

 仕事の後ハメ外す人って、タチ悪いと思うんだ。

 

「優斗さんも暇つぶしがてら王様ゲーム、どうですか?」

 

「ええ……」

 

 どうせ拒否権はないのだろう。

 

 噂によると天国にも地獄にもなるゲーム、と聞いたことがあるが、実際にやるとは思ってもみなかった。

 

「それってどうやってやるの?」

 

 無垢な大妖精がさとりに説明の機会を与えてしまった。

 

「えーと、実際やってみた方が早いですね。お三方、優斗さん、いきますよ」

 

「え、ちょ、」

 

 息つく間もなく、さとりに袖口を引っ張られた。そのままくじを1枚つかまされ、

 

「「「「王様だーれだ!」」」」

 

 引かされた。

 

「各クジには番号が書かれてますが、1枚だけ『王様』と記入されています。その人が、命令を下せるのです。例えば、」

 

 自分のクジをちらっと見て、にやりと笑みを浮かべるさとり。王様クジもってやがるな。不正の香りがプンプンする。

 

「3番さん、私の肩をたたいてください」

 

「っと、俺か……」

 

 まさか見通してないだろうな?

 

 仕方なく、さとりの背後に回ってトントントン。

 

「こんな感じで番号を使ってどんどん指示を出せるんですよ」

 

「へえ~。どんなことができるの?」

 

「そりゃあ……なんでもですよ」

 

「なんでも⁉」

 

 大妖精の声が裏返った。そりゃあこんなゲーム幻想郷にはないよなあ……なら、なんでコイツら知ってるの?

 

「そうですよ。あんなことやそんなことだって思いのままに操れてしまうのです」

 

「スリルあるでしょ? だから面白いんだよ!」

 

「う、うんそうだね……」

 

 ズルいぞ小悪魔。お前に推されたら大妖精が断りづらくなるだろうが。

 

「人数も多いので、6人ローテーションでやりましょう。ただし優斗さんはオールで」

 

「なんでだ」

 

「うーん、男女バランス?」

 

「……だろうな」

 

 悔しいことにぐうの音も出ない。

 

「じゃあまずは……依姫さん、いかがですか?」

 

「えっ、――私はまだキズが……」

 

「あら、やってみればいいじゃない。私が代わりに引いてあげるわよ」

 

「あと紫さん、やりますよね?」

 

「あら、当然じゃない」

 

 第一ラウンドは俺、依姫、紫、3銃士に決まった。

 

「はい、みなさんくじを持ちましたかー?」

 

 頼む、王様来い。当たり障りのない命令で切り抜けてみせるから。

 

「「「「「「王様だーれだ!」」」」」」

 

 素早くクジを引き抜き、確認する。

 

 うーん、3番か。王様は……?

 

「よっし、私ね」

 

 持ち前の扇をパタパタ振って文がクジを高々あげた。

 

「うーん、まずは無難なところから行きましょうか」

 

 3番呼ぶな……3番呼ぶな……

 

「1番と5番の方!」

 

 とりあえず良かった。さあ、命令は……

 

「私のカメラに満面の笑みで2ショット!」

 

 なるほど、文らしい。さて、肝心の2人は、

 

「あら依姫、出番よ」

 

「始めからとはツイてない……えっ、依姫?」

 

「紫⁉」

 

 ありゃあ、よりにもよってこの2人かあ。

 

「じゃあベッドの上でイチャイチャしてきてくださいねー。文さん、とびっきりの笑顔よろしくです」

 

「ちょっと待ってください。なんで因縁の相手と……」

 

「そうよ、優斗のほうがマシよ」

 

 どういう意味だコラ。

 

「文、いろんな角度から頼む」

 

「了解です!」

 

「「いやああああああああああ」」

 

 このゲームに置いて王様の命令は絶対。断ることなんて許されないのだ。

 

「じゃあ撮影の間に第2ラウンドです! ――じゃあ……大妖精さん、映姫先生、豊姫さん、参加願います」

 

 3人ほどメンバーを交代して、再びクジが用意される。

 

 1回目はうまく切り抜けたが……幸運の女神よ、もう1度助けてくれ。

 

「では! せーの、」

 

「「「「「「王様だーれだ!」」」」」」

 

「あら、私ですね」

 

 まず反応があったのは月の姫様。

 

「うーん、どうしましょう……好きな食べ物を答える、とかじゃつまらないでしょうし」

 

「さすが依姫さん! わかっていらっしゃる‼」

 

 いや、全然普通でいいんですよ。日本語おかしいけど、全然いいですよ。

 

「じゃあ、ハグでもしていただきましょうか」

 

 とんでもない地雷を投下しやがった……。

 

 思わず自分のクジを2度見してしまう。今回は4番。当たるなよ……。

 

「1番と2番で!」

 

 心の重しが一気に軽くなる。

 

 どうしたんだ今日は。ラッキーがこんなに続くなんて珍しい。

 

 で、そのお2人さんは

 

「あっ、あたった」

 

「……大ちゃんか。良かったー」

 

 大こあだった。特に不都合はなさそうだ。

 

「じゃあさっさとやっちゃうよ!」

 

「いきなりっ⁉」

 

 真向かいにいた大妖精に、ダッシュで飛びついた。全体重を大妖精に預け、くるっと1回転。

 

「ふふっ、大ちゃん暖かいね」

 

「こあちゃんもね!」

 

 ああ、平和だ……。

 

「ううっ、尊い……」

 

 横ではさとりが涙を流す勢いで震えていた。鬼の目にも涙とはこのことか。

 

「けど、私たちは前に進まなければいけないのです! 第3ラウンド、行きますよ!」

 

 ええ……綺麗にまとまりそうだし、終わりでいいじゃんか……。




第八十二話でした。

王様ゲーム1話で終わらせようと思ったけど、こういうのをダラダラ書くのが楽しくて……多分明日投稿します。(宣言することで明日のモチベーションを確保する)

みなさん冬コミ行きます? 僕は行く予定なんですが、まだ相手が見つかってないんですよね……このままだと単艦突撃になりそう。

では!


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