東方好きの優斗と大妖精と   作:ゆう12906

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第四十八話 優斗整理中

「はあ? 何考えてるんですかあなたは」

 

 心を読んでいたらしいさとりにすっごい顔をされた。こんなに口をあんぐり開けるさとりも珍しい。

 

「何って……今日の記憶を思い出しているんだ」

 

 けど、午前中までの記憶が霧がかかったように見えてこないが。映姫のありがたいとすりこまれたお叱りしか記憶に残っていない。

 

 ただそれだけなのに、なんでさとりは失望したような顔をしてるんだ? 

 

「優斗さん、あなたを見てるとラノベの主人公の、男友達みたいな気持ちになるからですよ!」

 

「俺の心の中と会話するのやめろ」

 

 心を見透かすのが当然だとしゃべらなくても会話できるんだな。

 

 ラノベの主人公ってどういうことだ。流行りの異世界転生モノみたいなチート能力を持っているってことか? 俺の能力は弱くはないだろうが絶対ではないぞ。

 

 あと、地底に住んでいるお前が何でラノベって単語を知ってるんだ。さっきのチョコといい、外と何らかのパイプを持ってるのではないかと俺は睨んでいる。

 

「チート系主人公じゃありませんよ。無自覚系ラブコメですよ……」

 

「そんなぼそぼそ言っても俺は心読めないから聞こえないぞ」

 

「はあ……もういいです」

 

 げんなりといった様子でため息をつかれた。別にさとりに迷惑をかけるようなことはしていないと思うのだが。というかむしろ、被害を被ってるのは俺だけだと思うのだが。

 

「本当の本当に、今日が何の日が覚えてないんですね?」

 

「ああ、ってかそもそも今日の月日さえ覚えていなくてな……教えてくれよ」

 

「いえ、私はやめておきましょう。部外者がかかわる問題ではありませんし」

 

「部外者ってなんだ」

 

「そう、私はただの盛り上げ役! 周りは固めますが、一番の核心には触れられないんです!」

 

「一人で盛り上がるな」

 

 しかし、これ以上同じことを繰り返しても無駄だろう。

 

「けど優斗さん、これだけは言っときますよ!」

 

「ちょ、近い」

 

 一瞬のうちにさとりが背伸びして俺の顔に近づいてきた。軽く俺を見下ろしてきて、らんらんと目を輝かせている。

 

「さっき、チルノさんに大妖精さんが待っているといわれましたね」

 

「ああ、そうだな」

 

「これがさっきの質問のヒントなんですが……まだわかりません?」

 

「だから映姫の説教できれいさっぱり忘れたって」

 

 なぜさとりはこんなに、今日の日にちを思い出させようとするんだ。

 

「じゃあ、一つお教えしましょう。大妖精が待ってるということは、あなたに何か用事があるはずです。そしてそれは、今日の日付を思い出せば必ずわかるはずです」

 

「そ、そうなのかー」

 

 ルーミアのセリフで茶化してみたが、あいかわらず、さとりの目は今日一番輝いていた。俺の言葉を気にする様子もなく、まくしたてていく。

 

「そして、思い出した時あなたはこう考えるはずです、『あ、やばい、すっかり忘れてたどうしよう』と」

 

 さとりの能力って未来予知じゃないだろ。なんでこんなにわかるんだ。

 

「けど、そこからが勝負です。そこからの受け答えで、あなたと大妖精の心がプラスにもマイナスにもなります。それを決めるのは優斗さん、あなた次第ですよ」

 

「わ、わかった。肝に銘じておこう」

 

「そしてこれが一番言いたいことですが、」

 

 呼吸を整え、さとりはもう一度大きく息を吸う。

 

「私自身の勝手な感情としては、ハッピーエンドがいいです! バッドエンドのエンターテイメントなんて面白くないに決まってますから!」

 

「それは竹取物語に失礼だろ」

 

 ハッピーエンドってどういうことだ?

 

「おお、そういえばそうでしたね。――まあ、それは例外ってことで。――まあとにかく、大妖精さんと仲良くしてね、ってことが私からのお願いです」

 

 真面目な顔してなにいってんだこいつは。

 

「その課題ならもう完了してるぞ」

 

 そんな当然のことお願いされるまでもないだろう。俺と大妖精は仲がいい。はずだ……俺の誤解だったらすごくショックを受けるだろうが。

 

「うわ……――はあ……」

 

 また深いため息をつかれた。

 

 

 

 

 

 さとりと別れてから帰路についている途中、ずっとそのことばかり考えていた。が、考えても頭が働かない。思考を頭の中の何かが強制的に排除してこようとする。

 

 周りに積もっている雪や身体に刺さる冷気から、今は真冬と推測される。

 

 冬に行うイベントといえば、クリスマスにお正月……正月は霊夢の賽銭集めを手伝った記憶がある。

 

 では、弾幕ごっこ大会? これも違う。今回はクラス対抗らしいだし、そんな面白そうなものを忘れるはずがない。それに定期テストもやっていないので、今日は三月ではない。

 

 つまり、今日は一月半ば~二月末ということになる。

 

「むむ……」

 

 目を閉じ、整理したもののやはりだめだ。

 

 まあ、思い出せなくてもいい。もうすぐ家につく。そこで大妖精に聞けばいい話だ。

 




第四十八話でした。今回でバレンタイン編終わるといったな。あれは嘘だ。

さとりがどんどんメタくなっていく……さとりは結局自分の好奇心で動いている感じですね。幻想郷ってそんな人ばかり。

では!

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