東方好きの優斗と大妖精と   作:ゆう12906

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第四十六話 既視感

「どうでしたか? 私の見立て通り、かなりいい感じだったでしょ」

 

「最高だったな」

 

「ふふふ……優斗さんもだいぶこちらの道に入ってきましたね」

 

「誰が誘導させたと思ってんだ」

 

「あっれー? 誰でしたっけーね?」

 

「まず確実に言えるのは、慧音はお前を止める側だろうってことだろうな」

 

 と、表向きではさとりに強い口調で当たっているものの、のぞいたのは結構面白かった。あんな緊張していて、声が途切れ途切れになる慧音もなかなかレアな光景だろう。

 

 それを平然とスルーして笑顔でお礼を言う妹紅がまた……。思わず変な想像をしてしまった。

 

「そうですか~。優斗さんもガールズラブの良さに気づいてしまいましたか~」

 

「すぐに心を読むのはやめろ」

 

「そんなこといわれましても。私だって本当は見たくはないんですよ? ただ能力が勝手に……ああ、なんて不幸な私」

 

「そういうことはそのニヤけ顔をやめてから言ったらどうだ」

 

 絶対にこいつがしらふでこんなことやるわけない。

 

「ほら、次行きますよ次! 藍先生の良い感情をキャッチしました! きっと橙さんからもらってメロメロなんですよ!」

 

「わかったから大声で叫ぶな」

 

 こんな話を廊下の真ん中でするのはいかがなものか。

 

「大丈夫ですよ。みなさん私の話を聞くとろくな目に合わないの知ってますからね」

 

「自覚あったのかよ。まあそれならいい……」

 

 じゃあ、さっさと次に行こう。誰にも恐ろしい目にあわされないと今証明されたしな。

 

「なーにやってるんですか二人とも?」

 

 突然、背後から高い声が聞こえ、背筋が冷たくなる。首筋には、ヒヤッとした指の感触。ちょ、問題ないって話なんじゃ……

 

「な……なんでもないですよ?」

 

 震え声で取り繕ってみても、背後から感じられるオーラが変わることは無い。

 

 金縛りを受けたように体を動かすことができなくなっている。横目を向けると、さとりも猫のように首をつかまれ、ガタガタ震えていた。

 

 依然として背後にいる人物がわからない。甲高い声で、俺たちの悪ふざけを止めるような人物というと、まず考えられるのは大妖精である。

 

 だが大妖精は、こんなに凛々しい声はしていない。チルノやルーミアは口調が違いすぎるので除外。慧音はさっきので打ちのめされているだろうから確実にない。とすると……

 

(なあさとり、後ろにだれがいる?)

 

 後ろの人物に聞こえないくらいの小声で話しかける。

 

(えっ、それ聞きますか。知らないほうが幸せだと思いますよ。一つ言えるのは私の天敵ってことです)

 

(どうせ後でわかることだ。心の準備をしておきたい)

 

(ならひとつ約束してください。決して抜け駆けしないで一緒に謝ってください)

 

(おいおい、俺がそんなことするわけないじゃないか。俺はそこまで堕ちてない。で、誰なんだ)

 

(四季映姫校長先生です)

 

「すいませんでしたあ!」

 

 俺の能力、「高速で土下座する程度の能力」が発動した。

 

「ちょ、優斗さん! 速攻で反故にするのやめていただけますか!?」

 

「その名前だとは聞いていない」

 

 映姫だけは無理。機嫌を取らないと校長室で正座からの、怒涛の六時間説教コースが確定するから。

 

「映姫先生、私悪くありませんよ。優斗さんが『ぐへへ……』って気持ち悪い笑みを浮かべて、のぞいてただけですから」

 

「おまっ、さっきの約束は……あれ?」

 

 なんだろう、この展開前にも見たことがある気がする。

 

 確かあれは正月の時……博麗神社で起こったことだった気がする。

 

「えーっと、確か……」

 

「なにつぶやいているんですか優斗先生?」

 

 だめだ、思い出せない。かろうじて頭に残っているのは鬼の形相をした霊夢の顔だけだ。そのことだけ、すっぽりと抜け落ちていた。

 

 というか、今はそんなことを考えてる場合ではない。

 

「映姫先生、すべてはさとりが悪いんです。こいつは俺に幻覚まで見せてきて、仲間を増やそうとしたんです」

 

「それで堕ちた優斗さんも同罪ですよ。いや、むしろその程度で折れてしまうその弱い心が一番の問題だと私は思います」

 

「論点をすり替えようとするな。俺はやりたくてやったわけじゃない」

 

「途中からノリノリだったじゃないですかー」

 

「それはお前がそうさせたんじゃないか」

 

「2人ともその辺にしてください。大体の話は分かりました」

 

 終わることのない2人の争いに割って入った映姫は、ヤマザナドゥのほうの真面目な顔になっていた。

 

 ――判決が下る。

 

「2人とも、『黒』ですね。しかも純粋で真っ黒ですな。さっ、校長室まで行きましょうか」

 

「ちょ、それはあんまりじゃないか! 頼む……もうあそこには……」

 

 じたばたして最後の抵抗を試みるも、首筋の冷徹な右手が、離れることはなかった。

 

「ふふふ……こうなったら地獄の底まで付き合ってもらいますよ優斗さん」

 

 さとりが笑みがこんなに邪悪に見えたのは初めてだった。

 




第四十六話でした。早苗もさとりも優斗の天敵ですねー。

それに乗ってしまう優斗も優斗ですが……大妖精にさんざん冷たい目を向けられているのに、直す気は皆無のようですね!もう僕の力ではどうにもならない!

では!

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