東方好きの優斗と大妖精と   作:ゆう12906

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第四十四話 をかし=趣がある

 2月14日といえば、多くの人がバレンタインを連想するだろう。

 

 両手いっぱいの本命チョコをもらう人、家族にしかもらえず涙を流す人、友達から友チョコ、義理チョコを多くもらう人。さまざまあるが、俺は一番後者だった。男女問わず、何人か友達はいたので、両手で数えれるくらいにはもらっていた。

 

 まあ、俺の話はどうでもいい。幻想高校で突如広まった、バレンタインはなかなかに大きな行事となっていた。

 

 義理チョコ、友チョコ、そして本命チョコ……今日のホームルームだけでも、多くのチョコが飛び交っていた。うちのクラスは……まあほとんど友チョコだった。

 

 職員室に帰ってからも、先生たちはその話で持ち切りだった。

 

 俺の予想では、昼休みあたりに慧音が妹紅に、照れながら渡すと予想している。それをニヤニヤしながらこっそりのぞくのが楽しみだ。

 

「お前が何を想像してるのかは大体わかるが、口にしたら即スペカだからな」

 

 なぜ俺の心だけこんなに読まれるのだろう。心を読まれる程度の能力でも備わってるのか?

 

「でも用意しているんでしょ?」

 

「それは当然だ。何をバカなことを言ってるんだ?」

 

「あ、そすか……」

 

「お前はどうなんだ。この学校では男ほとんどいないだろ。それはさぞかし……」

 

「はい、もらいましたよ。全部義理ですけどね」

 

 朝のうちにチルノや魔理沙、レミリアとキスメにもらった。

 

 チルノ、もらえるのはありがたいんだが……チョコは凍らせるものではないぞ。

 

 あとキスメ、お前からどす黒いチョコを渡されると、何か入ってるようにしか見えない。

 

 もちろん、帰ったら全部いただくが。

 

「おや、大妖精からはまだなのか?」

 

「さあ? チルノには渡してましたけど」

 

 チルノに渡してたから、俺にもくれる……はずだ。もらえなかったら少しヘコむだろうな。

 

「ふーん……わかったわかった。そういうことな」

 

「何がですか?」

 

「いや、別に。――霖之助、お前はどうだ」

 

 話の話題は、俺の隣で座っている霖之助に向かった。

 

 霖之助は、「ん?」とこっちを向き、あごに手をやり考えるポーズをとった。

 

「僕は妖夢と橙からもらったよ。ほら」

 

 差し出された二つの袋には、それぞれメッセージが書かれていた。

 

 妖夢のほうには、「いつもお世話になっています。幽々子様の分と一緒のものです」、橙の袋の上には達筆で、「義理じゃないわよ~」と書かれていた。

 

 橙のほうはきっとあの、BBAが書いたのだろうが、ツッコまないでおこう。ツッコんだら負けな気がする。

 

「あれ? 魔理沙からはもらってないのか?」

 

「いやまだだが……どうせ忘れてるんじゃないのか?」

 

「ふーん……わかったわかった。そういうことな」

 

 慧音、さっきと全く言ってることが変わんないんだが。

 

 霖之助は割とすぐに職員室へ戻っていたので、渡す機会がなかったのだろう。

 

「もうすぐ授業始まりますよ。いきましょう」

 

「そうだね、このプリント持ってってくれるかい?」

 

「わかりました」

 

「2人の1時間目は、1年1組か?」

 

「そうですよ」

 

「わかった。ふむ……ということは魔理沙と大妖精か。この時間ならあるいは……いや、大妖精のことだからどうせ……」

 

 ぶつぶつ何か言いながら、慧音は1年3組へと歩いて行った。

 

 

 

 

 

 今日の授業の内容は、古文の枕草子だった。この程度なら、フランでも……

 

「ねーねー優斗、枕草子っておいしそうだね」

 

「え? なんでだ」

 

「ほらほら、『をかし』だって」

 

「あ、そうだな……」

 

 こりゃ、1からやらなくちゃダメだな……

 

 

 

 フランの珍解答に、すごく頭が痛くなっているうちに授業が終わった。

 

「あ、そうそう! お姉さまに先越されちゃったけど、はいこれ」

 

「おっ、サンキューな」

 

「手作りなんだよー!」

 

 フランからもチョコをもらった。うん……何の形かよくわからない。包装ははがれかけ、チョコが飛び出している。が、いくら変形しているといえありがたいものだ。作るときは咲夜がついてるだろうから、食っても問題だろうしな。

 

「そうそう、大ちゃんも……」

 

「フラン~? 次、理科室だから行きましょ?」

 

「痛たたたた! わかったよー!」

 

 突然後ろから現れたレミリアによって、フランは手をバタバタ振りながら連行されていった。

 

 大妖精がどうしたのかすごく気になるが、レミリアがこっちを一にらみしてきたので、足を止めてしまった。今のはカリスマポイント100くらいあげてよかった。

 

 そのあとも滞りなく4時間目まで終了し、昼休みを迎えた。

 

 

 

 

 

「ふう……」

 

 職員室の席に着くと、購買から買ってきた惣菜パンを、もそもそと食った。

 

 以前、学食に薬を入れられたときからあまり利用しないようにしている。わざわざピチュる確率を上げることもない。

 

 昼休みは1時間ほどとられている。あと40分はゆっくりできるだろう。

 

「させませんよ」

 

 また心を読まれた。って、今度は誰に……

 

 俺が背後を見ると、珍しい顔がそこにいた。

 

「こんにちは優斗さん。以前は大妖精さんにお世話になりまして」

 

 なんだ、さとりか。

 

「大妖精が世話になったって、会う機会なんてあるのか?」

 

「それは、乙女どうしのシークレットですよ。それよりチョコもらいましたか?」

 

「まあ、10個くらいはな」

 

「それは結構。わたしも用意してきましたよ」

 

「サンキュー。って、これ外の世界の板チョコじゃないか。どこで手に入れたんだ?」

 

「秘密のルートですよ。乙女の秘密よりトップシークレットです」

 

 ニヤッと不敵な笑みを浮かべた。ずいぶんと久しぶりに見たチョコだ。

 

「さて、優斗さん。のんきにパン食べている場合ではないですよ。さっさと廊下を見にいきましょう」

 

「なんでまた?」

 

「昼休みは一番チョコが飛び交うんですよ? こっそりのぞくこと以外何が?」

 

「確かに誰が誰に渡すのかは気になるが……ほかの人を誘えばいいだろ」

 

「いいえ、あなた適任です」

 

「そこまで言うなら……」

 

 好奇心に突き動かされ、さとりとともに職員室を後にした。

 




第四十四話でした。さとりん!さとりん!

さとりと優斗が一緒にいるとよくわからない雰囲気になりそう……うまく表現できん。

では!

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