第三十七話 年末の問題
「おっ、見ろよこれ」
「ん? どうしたの?」
「霊夢が大金持ちになっているイラストなんだけど……」
「夢だったの?」
「その通り。まあ今頃ほんとに見てるかもな」
弾幕ごっこ大会も終わり、テストもみんなが唸りながら過ぎ去った。あ、今回はテストの50.9%の採点やりました。あれは本当俺を過労死させるための策略だと思う。
そこから何が始まるわけでもなく、2学期も終わりとなった。
そんなわけでただ今冬休み中。今日はちょうど外の世界ならクリスマスだ。特に何もやらないけど。
冬休みというパラダイスを楽しむために課された大量の宿題はもう終わらせてしまった。
所詮中学校レベル。大妖精の優秀な頭脳だと、3日で終わった。チルノは6日。チルノの思考がぶっ飛び過ぎてて教えてる俺の方が疲れた。
そんなわけでこたつでゴロゴロしながら東方情報をサーフィンするくらいしかすることが無い。
特に何かするわけでもなく、そのまま3日が流れた。
12月28日、朝っぱらから来客がやってきた。どうも俺に用があるらしい。
真冬のこの時期にノースリーブで見るからに寒そうだ。それに特徴的な巫女装束。緑の髪に、簡素な造りのお祓い棒。「この幻想郷では常識に以下略」の早苗だ。
入ってきたとたん、こたつに入り込みお茶を要求してきた。偉そうだったのでただの水を出してみたら自分で作り直し、俺に渡してきた。熱湯だった。さすが早苗、抜け目がない。
「それでどうすればいいでしょう?」
「そうだな……」
早苗は俺に相談があってここに来たのだ。もうすぐ新年。新年で巫女さんがかかわる行事といえばあれしかない。
「初詣ですよ初詣! 博麗神社には負けたくないんですよ! 霊夢さんには悪いですが、1年の頭にドドッと儲けて楽に暮らすんです!」
「なんか霊夢みたいな発言だな」
「うちは毎年博麗神社だけどね」
「では今年はぜひとも守屋神社へ! 甘酒が待ってますよ!」
「いや、こっからだとすげー遠いんだよな」
守屋神社って妖怪の山の頂上だろ?
何が出るかわかったもんじゃない。博麗神社も妖怪めちゃくちゃ出るけど。
「まあとりあえずビラでも配ったらどうだ?」
「あ……そうですね! もうやってますけど!」
「妖怪が通りやすいように道を整備したら?」
「ああ……そういう手もありますね! 今からやろうとしていたところです!」
「わかった。要するに何も考えてなかったってことだな」
「だね」
元は高校生なのに妖精よりおつむが残念そうである。早苗ってこんなキャラだっけ。
ちゃっかり昼食も食べ、帰って行った。これだけで参拝客が目に見えて増えるとは思わないのだが、本人が満足なので良しとしよう。
その翌日、12月29日。
「それでどうすればいいと思う? 教えてちょうだい」
「あ……えっと」
「どうしたのよ」
「昨日早苗が来たんだよ」
「えっ? ――先を越されたか……」
今日も来客が来ていた。早苗と全く同じ仕事をしているが、早苗よりぐうたらで神社ニートの霊夢である。
入ってきたとたん、「ほら、来客にはお茶でしょ」とか偉そうなことを言っていたので氷水を出してみたら顔にぶっかけれられた。巫女とはもっと清楚なものではないのか。にやっと笑う光景を見れたのは珍しかったたが。
質問も全く同じ。この世界の巫女は自分で考えるという選択肢はないのか。
「まあとりあえずビラでも配ったらどうだ」
「あと、道を整備すれば?」
「なるほど……要するに妖怪退治して行きやすい神社づくりを目指すってことね」
「退治したら参拝客減るんじゃないか?」
博麗神社の客って9割得体のしれない妖怪だし。
「お賽銭入れないやつは参拝客じゃないわ」
「待て、その理屈は何かおかしいぞ」
それじゃ博麗神社には参拝客は来ないということになる。
「……なんかすごい失礼なこと考えなかった?」
「イイエ、ナニモ」
エスパーかよ。
12月30日、昨日のことを整理してみることにした。
こういう時はこたつに入りながら2人で話すと良いアイデアが浮かんだりするものだ。
「要するに2つの神社からお互いの神社を潰すお願いをされているわけだろ?」
「優斗はどっちの味方に付くの?」
「どっちって言われても……選べないだろ」
どっちを選んでも後でもう片方から多大なる仕返しをされることは目に見えてるし。
あれ? これひょっとして詰んだ?
いや、まだ手は残されている。どっちの味方もすればいいんだ。つまり、
「なあ、なにもしなければ恨みっこなしになると思うか?」
「確実にどっちからもスペルが飛んでくるよね」
「やっぱりそうだよな」
どうしよう。今からでも両方に誤りに行けば許してくれるだろうか。
「どうしようか……――なんかいいアイデアあるか?」
だめ元で大妖精に聞いてみる。別に大妖精がバカってわけじゃないんですよ? ただ、
「ふふ……優斗、私にすごくいいアイデアがあるよ」
「頼む、すぐに教えてくれ」
こうやってドヤ顔してる時の大妖精って大体ズレたこと言うんだよな。
ところがいつもとは違う不敵な笑みを浮かべていた。手招きしているところを見るとどうも耳打ちで伝えたいようだ。
そんなに自信があるのか。あと、ここで耳打ちしようが、大声で叫ぼうが他に聞いている人いないと思うけど。やっぱり少し抜けている。
「よし、聞かせてもらおう」
大妖精の口元に耳を持って行く。
「ああ、その前に、」
てっきり方法を言ってくれるのかと思ったら何か条件を出してくれるようだ。
「後で1つお願い聞いてね♪」
「へ? 何を?」
「いいから! 私が何も言わないと優斗ピチュちゃうよ」
「こんなこと誰から吹き込まれたんだ?」
「相手が弱み見せたら、お願い聞いてもらった方がいいって私のタッグ相手が言ってたの!」
明らかに小悪魔の一緒にいた弊害が出てる。小悪魔より純真だけど。
しかし、承諾しなければならないのも事実。
「ん、ああ」
勢いで承諾してしまった。まあ変に難しいことは言われないだろう。
「それで方法ってのはね……」
話を聞いてる中で、俺は11回もうなずいてしまった。
「どうかな?」
「それだ」
即座に実行しようと決めた。
第三十七話でした。
やったぜ長期休業だ! みなさんこの時期いかがお過ごしでしょうか?
僕は暇なので、投稿のペースを最低でも三日に一度にしたいと思います!(こういうことを言って退路を断たないと書かない性格なんです…)
今年受験生なんだから春休みは勉強しろって? 因数分解?知らない子ですねぇ…
ではまた!