大妖精と小悪魔を鍛え上げて2週間、ついに弾幕ごっこ大会の日を迎えた。
「寒っ……」
意気込んで学校に来たのはいいものの、寒さで体が凍りそうだ。頼むリリー、早く来てくれ。
「優斗ー! 対戦表が出たよ!」
こちらに大妖精と小悪魔が駆けてきた。その手には対戦表が握られている。
「どれどれ……」
えっ―と2人は……Iブロックか。相手はにとり、雛ペアか。十分に戦えるな。もうひとペアが……
「えっ?」
「どうしたの?」
アリスとパチュリーだって?いや、強いのはもちろんなんだがあの2人仲悪かったんじゃないの?
「なるほど、倒せない敵ではないな」
「そうなんですよ。絶対倒します!」
おーと思いっきりこぶしを突き上げる小悪魔。俺たちの士気は今かなり高まってきている。
「よし、2人とも。ちょっと相手の様子を見てきてくれ」
「うん」
「分かりました」
ここで相手の様子を見て二人にリラックスしてもらおう。相手の上体を見ておいた方が自信もつくし。
「戻りました……」
「何があった」
なぜ2人ともそんなに暗い顔なんだ。大妖精、なぜ半泣きなんだ。
「なんかもう話を聞いてもらえませんでした」
しまった、失策だったか。あのアリスとパチュリーのことだから試合前に対戦相手に会話なんてするはずないか。
「2人とも大丈夫だ。アリスとパチュリーは仲が悪い。あの二人が強いなんてことありえないから大丈夫だ」
「あんなに怖い目してたのに?」
「絶対大丈夫だ。俺が保証する」
それでもまだ不安そうな顔の大妖精。どんだけ怖かったんだよあの二人。
「大丈夫。大妖精はそんなに弱い子じゃないだろ?」
「う、うん……」
とりあえず自信を取り戻してくれたようだ。
「なんかすごいですね」
「何がだ」
「惜しげもなく大妖精の頭を撫でられるところですよ。ごちそうさまです」
「ごちそうさまってなんだ?」
何か見てて楽しいか?
「「ごちそうさまです」」
「だから何がだ。というかこんなところにいていいのか?」
背後から現れたのはにとりと雛だった。もうすぐ二人はアリスたちの試合する時間なのだが。
「いや~軽くしゃべっておこうかと思ってね」
「そうです。ついでに様子見ですよ。なかなか強そうじゃないですか」
「そりゃそうです。この人ためにきちんと練習してきましたから」
「そう!絶対勝つよ!」
ここの2組は戦う相手でもあるけどクラスの仲間だもんな。ぜひ楽しんで弾幕ごっこしてほしい。
「にとり、雛。試合の時間だぞ」
「は~い。じゃあまた終わったら。絶対に負けないからね!」
「トップは私たちです」
「せいぜい頑張ってくれ」
「頑張って!」
藍先生に連れられ、にとりと雛は背を向け歩いていく。
「優斗、私たちもいこ」
「ああ、偵察だな」
俺たちも後を追うようにして校庭の中央、メイン会場へと向かう。
「なっ……」
思わず絶句してしまった。まあ無理もない。
「つ、強い……」
「厳しい戦いになりそうですね」
2人も目を見開いていた。
第三十話でした。すみませんキリ悪くて……
次回、あの二人とのバトルです!
ではまた!