東方好きの優斗と大妖精と   作:ゆう12906

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第十九話 月世界での攻防~優斗視点~ パート2

「この勝負私たちの勝ちよ」

 

 自信たっぷりに言う豊姫。その言葉は豊姫の幻想でしかない。

 

「―――こうあっさり引っかかってくれるとは思わなかったからな」

 

「えっ?いまなんて……」

 

 その時、豊姫に通信が入った。

 

「何?今取り込み中よ!」

 

「いや実は……月の裏手からも何人か攻めてきたんです!」

 

 よし、タイミングはばっちりだ。霊夢、魔理沙、レミリア、にとりに暴れてもらっている。

 

「わかったわ」

 

 即座に通信を切り、妹へ連絡した。

 

「依姫そっちは?―――そう、終わったのね。すぐに月の裏手へ行って」

 

 あらら、もう負けちゃったのか。エクストラボスと6ボス1人に5ボス1人だぞ? やっぱり別格の強さだったな。

 

 よし、頃合いはよくなった。こっちも始めるとするか。

 

「なあ、お前の能力で素粒子に代えられないものって知ってるか?」

 

「えっ?」

 

 やはり豊姫はこちらの能力まで把握していない。

 

「――ルーミア!」

 

「了解なのかー!」

 

 刹那、あたりが暗闇に包まれる。

 

「えっ? ――これあなたたちの能力なの?」

 

 こっから反撃開始だ。

 

「よし、攻撃だ」

 

「うん! 氷符『アイシクルフォール』!」

 

「闇は任せるのかー! 闇符『ナイトロード』!」

 

「んじゃ俺も。妬符『グリーンアイドモンスター』」

 

 しかし向こうもさすがは永琳の弟子。ほとんど何も見えないのに、感覚で避けているようだ。だが―――

 

「おいおい。こっちが本命じゃないぞ?」

 

「!?」

 

 豊姫が息を漏らして後ろががら空きになった瞬間、ヒュンと豊姫の背後を味方が通過した。

 

 文、小傘、ヤマメ、キスメという足の速いメンバーだ。これで1年1組の生徒全員がこの作戦に参加したことになる。

 

 これが俺が思いついた作戦。フランたち依姫への囮。アリスと椛の単独行動での囮。霊夢たちの豊姫を焦らせる囮。そして俺たち、文たちに目を向けさせないための囮。というわけだ。

 

 前の紫の作戦は二重の囮だった。今回はそれの完全上位互換というわけだ。名づけて……『4つの囮(フォース・トラップ)』といったところか。

 

「くっ……させません!」

 

 暗闇の中、豊姫が俺たちに背を向けて走り出す。俺の計算が正しければ……

 

 ゴォン

 

 なんと、豊姫の頭に火花が出るほどの勢いで何かがぶつかり、気絶した。

 

「もう能力切っていいぞルーミア」

 

 視界が開けた俺たちの前に倒れていたのは……

 

「ほんと……計算通りだったな……」

 

 ――綿月姉妹であった。

 

 

 

 

 

 メカニズムを説明すると……雛の能力だ。2人をめっちゃ不幸にし、あそこでぶつかってもらったのだ。闇と運。この2つには共通点がある。―――そう、豊姫の能力が使えないという点だ。

 

 これが俺が考えた対豊姫用の切り札だった。

 

「う~ん」

 

 先に目を覚ましたのは豊姫だった。

 

「あらあなたは……」

 

「どうも」

 

「あれここは……」

 

 俺が2人を和室に運んでおいたのだ。みんなに手伝ってといってもそういうのは男の仕事だとか、チルノに至っては『私はか弱いんだもん!』だって。そんな言葉どっから覚えたんだろう。

 

「2人運ぶのは疲れたよ……」

 

「あら、ありがとう。―――あ~私たち負けちゃったのね~」

 

 そういうとごろんと寝転がった。どうしたんだ?

 

「私の体好きにしていいわよ」

 

「はい?」

 

 な、何を言ってるんだ?いかんいかん、落ち着け。こんな会話をみんなに聞かれたらピチュり確定だ。

 

「いや……俺がいろんな人にピチューンされるからやめてくれ……」

 

「ふふっ、冗談よ。あなたずいぶんと頭が切れるようだけど、意外と面白いのね」

 

 ありゃりゃ、一本取られた。

 

 そして豊姫は少し真面目な顔になって、

 

「しっかし、私と依姫をぶつけて倒そうなんて……よく考えたわね~」

 

「まあな。大妖精と小悪魔がいい仕事してくれたんだよ」

 

 二人にあのグループに入ってもらったのは依姫を焦らせるためでもある。フランとかじゃ一発で見抜かれるからな。

 

「じゃ、協力しようかしらね~」

 

 そういうと外に出た。みんなの案内役をしてくれるんだろう。

 

 

 

 

 

「う~ん」

 

 続いて起きたのは依姫。随分と長く気絶していたので、その間にPCで綿月姉妹のデータを覚えておいた。あ、あと関係ないが大妖精の日とルーミアの日がそれぞれ毎月8日と7日ということも。

 

「あれ……お姉様は……」

 

「ノリノリでクラスのみんなに月世界の紹介してるぞ」

 

「へえ……ってあなた誰ですか?」

 

 いやだなあ。2人を運んで布団に寝かした人なのに。

 

「改めまして、こっちのチームの指揮官の朝霧優斗だ。よろしく」

 

 かがんで握手を求めてみる。

 

「よ、よろしく……ってあなた人間ですか?」

 

 ジト目でにらんでくる。いいじゃないか人間でも。

 

「でも人間も結構やるもんだろ?」

 

「ま、まあ……」

 

「心のどっかで油断してたんじゃない?」

 

 多分、二人が始めから本気を出してたら俺たちはまず、勝てなかっただろう。

 

「ま、まあそうですね……」

 

「まあ、今度同じ事があったらよろしくな」

 

「は、はい……」

 

 依姫の頭をポンポンと叩いてみる。またこんなことができればぜひやってみたい。

 

「じゃあクラスのとこへ戻ってるから」

 

 依姫は疲れているのか、顔が赤かったので、一人にしておいた。最後のほう無口になっていておもしろかったな。

 

 こうして俺たちは月世界を存分に楽しみ、社会科見学を終えたのである。

 

 

 

 

 

 

「いや~負けちゃったわね~」

 

 優斗たちが帰った後、和室に座っている綿月姉妹の姿があった。

 

 足を延ばしてスカートをまくるというお姫様らしからぬ恰好で豊姫がくつろぐ。

 

「まあいろいろと学ぶものがあったわね。どうだった依姫?」

 

「…………」

 

「どうしたの?」

 

「……――いや、地上世界にもこんな強いものがいるのだなと」

 

「そうね。あのスキマ妖怪くらいに切れ者ね」

 

「いまだに信じられません」

 

「ふ~ん」

 

 ここで豊姫はあることを仮定した。

 

「まさか……好きになっちゃったの?」

 

「違いますからね?」

 

 驚きと焦りが入り混じった声で反応する。

 

「そう、あなたの初恋の相手がついに……」

 

「違いますし、初恋ではありません」

 

「まあ、あの方なら私も許すわ」

 

「違いますって……」

 

 そして豊姫は思い立った顔になって、

 

「これは一大事よ!みんなに広めないと!」

 

「!?」

 

「みんな~!聞いて聞いて!」

 

 そういって、部屋の外に飛び出す。

 

「違うって言ってるでしょ!――くっ…こうなったら実力行使で…」

 

 月の世界は今日も楽しそうだ。




第十九話でした。長かった……疲れた……

優斗の作戦いかがだったでしょうか?(ネーミングセンスがない?気にするな!)

なんと大妖精にライバル出現です!

依「ぶっ殺しますよ?」

いやだなあ、冗談じゃないか。でも公式設定では依姫って結婚してるんですよね。なんと相手が豊姫の息子……複雑な家庭事情なんですよねw(笑えることではない)ここでは綿月姉妹は結婚していないことにさせていただきます。

ではまたお会いしましょう!次回は少し学校生活から離れて、まったりとした休日の話を書こうと思います。

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