東方好きの優斗と大妖精と   作:ゆう12906

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第十七話 いざ月の世界へ!

 四季がはっきりしている幻想郷がようやく涼しくなってきた10月。その初日のHRの時間は風が吹いて結構涼しかった。

 

「う、う~ん」

 

 いつものように大妖精のいる1年1組の後ろで伸びながらまったりしていた俺。

 

 しかしHRの終わりにそんな日常を壊す慧音の言葉が、唐突に投下された。。

 

「さてと、話は変わるがみんな。月へ行きたくないか?」

 

 クラスが騒然となった。後ろでうたた寝をしていた俺も、思わず慧音のほうへ見入ってしまう。

 

 …………月? 月っていうとあのテクノロジー満載のか? しっかしいきなりなんで……

 

「ほら、今クラス別社会科見学の時期だろ?」

 

 ああそうか。うちの学校と特色として、クラスごとに行われる社会科見学がある。慧音はその場所として自分に関係のある月を選んだのだ。

 

 ――しかし問題があるぞ。俺は教室の後ろから手を挙げて質問してみる。

 

「慧音先生。そもそもどうやって行くんだ?」

 

 すると、慧音先生は若干苦い顔をしながら、

 

「うむ。不本意ながら……」

 

 突然前ドアが開いた。

 

「はーい! 私の能力よ!」

 

 紫か。ああスキマね。便利なもんだ。

 

「無理ね」

 

「あらどうして?」

 

 話の腰を折るように言ったのは霊夢。ずいぶんと自信に満ちていた。

 

「私、月に行ったことがあるのよ」

 

「私もだぜ!」

 

「あら、私もよ」

 

 へえ~。霊夢や魔理沙、レミリアも……ん? そんな本があったような……確か1回読んだはずだ。

 

「それで?」

 

「すごく私たちを目の敵にしていたわ」

 

「ああ、しかもメチャクチャ強いんだぜ……」

 

「その点については心配ご無用!」

 

 諦めの言葉に反論したのは紫。賢者といわれるくらいだから何かいい考えでもあるんだろう。

 

「みんなで忍び込んで、何か向こうの大切なものを盗るの。そして『これを返してほしければ社会科見学をさせろ』って、言えばOKよ」

 

 なるほど……って、脅迫じゃねえか。

 

 でもいい案だ。それと同時に、俺はある子供の遊びを思いだした。

 

「紫先生。これって規模が大きい旗取りゲームですよね」

 

「ふふっ、まあそんな感じだわね~」

 

 そう、俺たちが攻撃側で月世界が守備側。俺たちの勝利条件は相手の大切なものを盗み出すことだ。

 

「それでね優斗。あなたには指揮官をやってほしいのよ」

 

「えっ?指揮官ですか?」

 

「ええ。とってもお似合いよ。みんなもそれでいいわよね?!」

 

 おおー!と、同意が得られた。

 

 指揮官か~。もちろん経験はない。でもやるからには燃えるな。

 

 やる気が出てアドレナリンが出たのか、ここで俺は、霊夢たちが月世界に行った小説の内容を完全に思い出していた。――確か、綿月姉妹だっけ?

 

 姉はともかく、妹のほうはずいぶん下の世界を見下している。というか、自分たちの世界に誇りを持っている印象があった。一泡吹かせるのも面白そうだな。

 

「よーし!みんながんばろう」

 

 うぉーっ!と、歓声が聞こえる。さてどうしようか……

 

「紫、確か前は幽々子たちをおとりに使ったんですよね?」

 

「そう。よく知ってるわね」

 

 あの時は霊夢たちをおとりに使い、さらに自分たちもおとりにした二重ひっかけで突破したんだっけ。ずいぶん簡単な手に引っかかったんだな。

 

「もうその手は通じないわよ」

 

「もちろん」

 

 紫とと会話しているうちに俺にすさまじくいい考えが浮かんだ。ふふ……これならなら絶対引っかかるぞ。

 

 こちらの強みはクラスメンバー全員、およそ20人くらいを使えることだ。さらにほとんどの生徒がスペルや能力を知られていない。

 

 それを使って突破する。相手が油断して揚げた足を容赦なくとる。

 

「それではこれから作戦会議を始める」

 

 

 

 

 

 放課後、職員室の紫の机を訪ねた。聞きたいこと。いや、確認したいことがあったからだ。

 

「紫先生」

 

「はい?」

 

「単刀直入に言いますね。今回こんなことになったのは、」

 

「あら~ばれてるの?」

 

 話を遮った紫を無視し、続ける。

 

「前回の勝利が気持ちよかったからじゃないですか?」

 

 要するに、もう一回憂さ晴らしをしたいということだろう。

 

「……そうだけど?」

 

 あっさり認めたよこのスキマ妖怪。まあいいんだが。

 

 ――俺は隠れていたもう一人に声をかける。

 

「永琳先生も出てきていいですよ」

 

「あらら。気づいていたの」

 

 噂を聞きつけ、調査しに来たのだろう。まったく盗み聞きなんて人が悪い。

 

「別に先生のお弟子さんたちに告げ口してもいいですよ」

 

 永琳先生の質問を先回りして俺は答える。

 

「あら、あなたが不利になるじゃない?」

 

「いや、依姫たちにも言いたいことがありますし、」

 

 もう一つのほうが重要だ。

 

「こんなハードモードでクリアしたら最高にクラスの絆が深まると思いません?」

 

「ふふ、確かにね。じゃあ伝えておくわ」

 

 自分でハードルを上げてしまうのは悪い癖だ。まあ、絶対にクリアしてやるがな。

 




と、いうわけで第十七話でした。

次回、首都攻防戦です!優斗はどう攻めていくんでしょうか!

ではまたお会いしましょう!

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