東方好きの優斗と大妖精と   作:ゆう12906

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第十六話 白玉楼での親睦会

「ようこそいらっしゃいました」

 

 恭しく頭を下げて出迎えてくれたのは妖夢。スキマに吸い込まれたときは不思議な感覚に襲われたが、無事白玉楼に着け大きく息を吐いた。

 

「すぐに夕食をお持ちしますね。大広間へどうぞ」

 

 ふすまを置けた先には、幻想高校の先生たちが輪を囲んでいた。

 

 今いるのは、数学の紫と藍のお供の橙。国語の霖之助先生の代理の朱鷺子。音楽のプリズムリバー3姉妹、購買部の幽々子、保健室の永琳といったところだ。

 

 その後、妖夢の料理で宴会となった。強引に酒を飲まされたが、あんまり酔わない。

 

 以前からうすうす感づいてはいたのだが、どうも酒には強いらしい。まだ高1なのだが……

 

「おっ、盛り上がってるな~」

 

 社会の慧音に家庭科の妹紅、英語の神奈子が来てさらに盛り上がったところで

 幽々子先生が口を開いた。

 

「それじゃ、夜も深くなってきたし、怪談大会するわよ~」

 

 季節はずれだろうと突っ込みたくなったが、ノリで行われることになった。

 

 特に紫と幽々子が強く「やりたい!」と大声を張っていた。なんか理由でもあるのか?

 

 それとは対象的に大妖精、橙、妖夢、朱鷺子は不安な顔になっていた。まあ、このメンツで怪談やったら間違えなく怖いもんね。本物いるし。

 

 部屋の明かりはろうそく一本という暗い部屋に輪になって座る。時計回りに俺、大妖精、慧音、妹紅、紫、藍、橙、永琳、神奈子、幽々子、妖夢、朱鷺子という配置で顔を寄せ合う。

 

 後、プリズムリバーの3人はは帰ってしまった。怖くなったのか? 本物なのに。

 

「では私からだな」

 

 トップバッターは慧音だ。どんなものを見せてくれるのだろうか。

 

「実はな!この前な!」

 

 ……開始2秒で怖くないことが確定した。そんなに勢いよく言ったら周りが拍子抜けするぞ。

 

 そのまま勢いで語り終わったが、やっぱり誰も怖がらなかった。

 

「ちょ、みんななんで怖がらないんだよ!」

 

「……気づいた方がいいよ……次私ね~」

 

 やんわりとツッコミを入れる妹紅。慧音ってたまに天然だ。

 

「――あれは今から1200年前くらいのことだ……」

 

 そう言って話し出した。慧音よりはいいものを見せてくれるだろう。

 

 

 

 

 

「―――そういうわけで今でもこの亡霊は幻想郷にいるらしい」

 

 話をまとめると、山に財宝を封印しようとしたものが、突き落とされ、亡霊になったらしい。――……ん?どっかで聞いたことが……

 

「そう、例えばこんな夜中に……」

 

「「ぎゃぁぁ!」」

 

 妹紅の締めの言葉に悲鳴を上げたのはふすまを背にしていた大妖精と朱鷺子。

 

「がっ……」

 

 そして俺も悲鳴を上げた。心理的な理由ではない。大妖精が少しでも怖がらまいと俺の腕をしっかりと握っているのだが、怖がって力が入ると、俺の腕が曲がっちゃいけない方向に曲がりそうになるからだ。

 

「は、離さないでね……」

 

 だからといって引きはがすわけにもいかないし……困ったものだ。

 

 その後、紫、藍、永琳、神奈子と続く。

 

 その間終始、大妖精(途中からは朱鷺子)に腕二本を掴まれ、間接を締められていた。―――しかも……

 

「どうしよ……」

 

 本人たちは気づいていないようなのだが、たまに首の下の部分。つまり胸が当たっているのだ。

 

 これを言うと、俺が驚かす亡霊側に回ることになるため、強靭な精神力で耐える。

 

「じゃ、次私ね~」

 

 いよいよ本物、幽々子の登場だ。

 

 

 

 

 

「と、いうわけでその女の子はポルターガイストを起こしながらこういうの。『遊ぼ』って。」

 

 なかなか怖かった。さすがだな。妖夢とか真に受けてるし。

 

 ――と、その時、

 

「へっ?」

 

 面食らったような大妖精の声と共に、いきなりろうそくが宙に浮き、部屋の周りをぐるぐると飛び始めた。

 

「これって……」

 

 ――ポルターガイストか。ってことはつまり……なるほど。読めたぞ。

 

 コンマ5秒で考えた瞬間、大妖精の後ろで

 

「あ・そ・ぼ」

 

「へっ…ぎゃぁぁぁぁぁ!!」

 

 やっぱりな?―――って、大妖精、俺の肩を掴みながらこっちに倒れこんでこないで……

 

 ゴッっと、鈍い音がした。後頭部を打ったな。

 

「いつつ……―――おい大妖精、大丈夫か?」

 

 と、目を開いたその前にあったのは…

 

「う、うん…」

 

 いま目を開けた大妖精のかわいらしい顔があった。二人の距離は10センチもない。

 

「……ふわわわっ!」

 

 顔を真っ赤にして起き上がる大妖精。ついでに言うと俺の心臓も少しドキドキしている。

 

「あらあらいいわね~」

 

「おお…すごいな」

 

「不純異性交遊は許さんぞ(笑)」

 

 幽々子、藍、慧音など、先生たちがそろってニヤニヤしている。むむ……

 

「どうだった!」

 

 笑顔で質問してくるのはリリカ。その後ろでルナサ、メルランが得意げな表情を作っている。

 

帰ったと見せかけ、三人で驚かす作戦だったようだ。くっそ、すっかりだまされた。

 

「ゆ、優斗……」

 

 まだ顔が赤い大妖精。今すぐにでも声をかけたい。

 

 しかし、今は教師たちへの仕返しが最優先だ。

 

「こっからが試合開始だ。橙、妖夢、朱鷺子~」

 

 生徒の大妖精、橙、妖夢、朱鷺子には耳栓をしてもらう。そう、次は

 

「俺の番だ」

 

 思わず口角が上がる。俺の反撃が始まった。

 

 

 

 

 

 

「そこへ髪の長~い女が……」

 

「ぎゃぁぁぁ!」

 

「もうやめて限界だよ!」

 

「……」

 

「……私をここまで……」

 

 まず神奈子とプリズム三姉妹をグロッキー状態にした。

 

「こういったんだ。『切って~切って~』と」

 

「なあ、一緒に歴史を教えた仲だろ!やめてくれ!」

 

「一緒に料理したよね!」

 

「ら、藍! どうにかして!」

 

「む、ムリですよぉ~」

 

 続いて慧音、妹紅、紫、藍もだ。顔が青ざめ、震えているのが目視で確認できる。

 

 あと、社会も家庭科も一緒に教えたことはないので容赦はしない。

 

 俺に怪談させたことが間違いだったな。

 

「――以上です」

 

 言い終わったとき、みんなこの世の終わりを見たかのように震え、固まっていた。どうでした先生方?

 

「楽しんでいただけましたか?」

 

 この話が広まり、『恐怖の語り人』という二つ名がついたのは、そう後のことではなかった。

 




と、いうわけで第十六話でした。

優斗…怖い人…

なんか新聞の時もそうですが、大妖精のことになるとスイッチが入ってますよね

あと、コラボ募集中です!

ではまた次回お会いしましょう!


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