ULTRAMAN GINGA with GOD EATER 作:???second
最近ゴッドイーターサボり気味でしたが、ストック分を少し手を加えて最後にし、サクラ大戦もマリアさんの回だけでも書き上げて次に進みたいと思います。
ジャンキラー回もようやく今回の修正で完成しました。次回は少し期間をおいてからですが、スムーズに投稿できると思います。
1日の目標立てないと、つい関係のないことに進みがちです。だらしのない自分に鞭を打ち続けられるような男になりたい。
「………」
今は任務で第1部隊の皆は誰もいない。サカキの研究室で、アラガミの少女はそわそわしていた。
サカキはそんな彼女を、ソファに座り込んで観察していた。今の彼女からは、不安が見える。どことなく、自分たちの研究が上層部に認めてもらえるか不安を抱えた時のヨハネス夫妻と挙動がよく似ていたのでそう察した。
「はかせ…ゆうたちはきてくれる。でも…そーま、あってくれない…」
彼の予想通り、彼女は確かな不安を抱えていた。二度目の拒絶以降、ソーマはサカキから少女と顔を会わせてほしいと頼まれても絶対にそうしようとしなかった。少女はソーマに同族意識を感じているだけに、ソーマが会いに来ようとしないことを気にしていた。思った通り人間並みの知性の高さを備えている。いや、それどころか彼女自身が知識欲を強く持っているため、なかなかの勉強家という印象だった。
…いけない。彼女が人間と精神レベルで変わらないなら、あまり観測者視点でものを見ては、彼女の気持ちを察しにくくなる。自分も彼女と心を通わせ仲良くなる必要があるので、ちゃんと言葉をかけてやらなければ。
「ソーマたちなら心配ないさ。ちゃんと帰ってくるよ」
「……うーん」
サカキが言葉をかけるが、少女はそれでも浮かない表情を変えない。
「やっぱり、いやなこと、いっちゃったから…こないのかな…?」
「ふむ…」
先日ユウが来訪したときから既に、彼女は自分がソーマを怒らせてしまった理由について察していた。今はそれを引きずり、どうすればソーマに許してもらえるかを考えているようだ。
サカキは、ふとアイーシャの顔が浮かんだ。思えば自分は、アイーシャとヨハネスが胎児だった頃のソーマに偏食因子を投与する実験を強行して以降、アイーシャと二度と会えなくなった。喧嘩したままそのまま会えなくなる。その悲しさを過去の経験から思い知っていたサカキは、一つアイデアを出してみた。
「花をプレゼントしてみる、というのはどうだい?」
「はな?」
少女は体を左右にくねらせる。彼女なりの疑問を抱いていることを表現している仕草だ。
「ほら、こういったものだよ」
サカキはタブレットを起動し、ネットで一つ見繕った花の画像を少女に見せた。
「これが『はな』?」
画像に映っていた白百合の花を興味深そうに覗き見る。
「そう。昔、人は花に花言葉というものを付けていた風習があってね。その言葉にあやかった花を相手に与えることで、様々な意思表示になるんだ。たとえばこの花…」
次にサカキは別の花を紹介する。次に映ったのは、薄紫色の花だ。
「この花は『カンパニュラ』と言う。花言葉には、『後悔』という言葉があるんだ。これを相手にあげるとね、ごめんなさいと相手に伝えることと同じ意味を表すんだよ」
「しってる!『ごめんなさい』はわるいことをしたときにいうことばだな!こうたがおしえてくれた!」
どうやら謝罪の言葉についてはコウタから教えてもらっていたようだ。妹持ちなだけあって、年下の少女にものを教えるのは慣れているのだろう。
「これ、あげたら…そーまもゆるしてくれるかな?」
花の画像を見て、少女は期待を寄せつつも、どこか不安を抱えた表情を浮かべた。少女にとってあらゆることが初体験であり、そのこともあって自分が花を携えてソーマに謝罪するという手段が本当に彼に通じるかどうか不安なのだ。
「ソーマも君と向き合うようになってくれる。まずは信じてみるんだ」
そういうサカキだが、正直なところ確証はなかった。これまで両親が抱いた人類への希望のために、母の命と引き換えに、それもアラガミにごく近い人間という残酷な形で生を受けたソーマ。しかもその強靭な生命力と回復力故に何度も戦場から生き延び、仲間を死なせて生き延びたことを責められ、自分を化け物と罵り続けてきながらも、それでもゴッドイーターとして戦ってきた彼が、話を聞き入れてくれるかどうか…。
―――――ぐあああああああああ!!!
「!」
少女の頭に、ソーマの叫び声が響いた。
「そーま…?」
今の叫び声、普通ではなかった。激しい苦痛を孕んだ悲鳴だった。嫌な予感がする。彼の身に何か悪いことが起きている。
「いかなきゃ…そーまのところに」
「い、行く?って…おい、待ってくれ!」
歩き出した少女に、サカキは最初当惑する。ソーマの元へ行く。それは彼女が今やってもらっては困ることだった。彼女はアラガミだ。この研究室は極東支部内の他のエリアとは通信インフラ等が独立しているため、ここにアラガミがいたとしてもバレない。だがもしこの部屋から何の対策もなしに出られたりしたら、アラガミがこの極東支部内、それもアナグラの中に侵入を許してしまったことがアナグラ内のレーダーにキャッチされてしまう。
だから彼女をここへ連れてきたとき、レーダーから探知されないよう、人が一人入り込める特殊なコンテナを作ってその中に彼女を入れ、ここへ連れてこさせたのだ。サカキもあの日アナグラから外に出る際も、そのコンテナの中に入っていたことで、本当なら第8ハイヴから外に出てはならない身でありながら防壁外へ、護衛として連れてきたサクヤと共に出られた。
アラガミの少女は貴重な研究対象でもあるため、無計画な外出はさせてならない。しかし、少女はサカキの制止に構わず、研究室の奥に彼女のために用意された部屋へ向かう。彼女がかじってしまったのか、部屋の白いベッドは一部にかじられた痕がある。
彼女はその部屋の壁に拳を叩き込む。見た目は幼子の華奢な腕だというのに、悪戯で襖に穴を開けるように、いとも簡単に穴をあけてしまった。すさまじい音と共に開けられたその穴を通って、彼女は飛び出してしまった。
当然、サカキの研究室内だけ遮断されていた彼女のアラガミの反応がアナグラ内のレーダーにキャッチ。アナグラ中に警報が鳴り響いてしまった。
「よ、予測できない……」
サカキは、少女が空けた穴を、少しの間呆然と見つめていた。数秒たってから、アナグラ中に警報が鳴り響いていたことに気が付いて大きくあわてた。
「あぁ、いかん!彼女が脱走などしたら、アラガミを連れ込んだことがばれてしまう!」
当然反応が探知されたのがここであることもばれてしまうだろう。サカキは第1部隊に彼女が外に出てしまったことを連絡すること、その前にこの部屋からアラガミの反応がレーダーにキャッチされてしまったことの言い訳を作る羽目になった。
サカキの研究室から穴を開けて外に飛び出したアラガミの少女は、一昔の日本の伝説にあった妖怪『天狗』のように跳躍を繰り返しながら、第8ハイヴ内のビルや住宅街、そして防壁の上を伝って極東支部の外へ飛び出していった。防壁の外に出てなお、彼女はペースを落とす気配を見せずに駆けていく。
それを、極東支部のすぐ近くの廃墟のにいた、一人の少年がそれを見ていた。
彼は緑のフードとマスクで頭を多い、その素顔を露にしていなかった。しかし彼の目はそれに映るものを射抜くような鋭い目をしていた。
少年は彼女が廃ビルの上を跳びながら南の方へ向かうのを見て、眼光をさらに研ぎ澄ませた。少女から感じ取る『何か』に、彼は強い警戒を示したのだ。
少女は少年が見ている間に、ほぼ豆粒ほどの遠くの場所まで向かっていた。だが少年はあわてもせず、しかし彼女をまったく見逃していなかった。
この先に何かがある。そう感じて彼は懐から『あるもの』を取り出した。
動き出したジャンキラーは、ヨルムンガンドの一体を右手でひっつかみ、そのまま握り締めた。基本、オラクル兵器以外では倒せないアラガミだが、強力な圧力で押しつぶされてしまうと、少なくともその肉体はひとたまりもないようだ。予想通り、ジャンキラーに捕まえられたヨルムンガンドは肉塊となって潰されてしまった。開かれた手のひらに残ったのは、ヨルムンガンドのコアと血肉。さすがにコアだけは神機でなければ破壊できないようだ。
ジャンキラーは手を振り払ってヨルムンガンドの残骸を取っ払うと、別のヨルムンガンドに視線を向け、右拳を突き出した。右腕の装甲がスライドし、砲口が露わとなり、ユウたちを襲うヨルムンガンドに二連のビーム〈ジャンキャノン〉が放たれる。
「うおぉ!!」
爆風で全てのヘリが煽られ、その際に危うくシュンやコウタが落ちかけるが、ヘリの壁に捕まって免れた。
ジャンキラーは構わず、残りのヨルムンガンドにも攻撃を加え始めた。ヨルムンガンドたちもジャンキラーを敵と認識し、その身に食らいつこうとした。だが接近を許すほどジャンキラーは甘さを見せなかった。近づいてきたヨルムンガンドたちに向け、胸元の六つのランプから光弾〈ジャンフラッシャー〉が乱射される。ヨルムンガンドは砲撃を見て宙を飛び回りながら避けにかかるが、ジャンキラーには当然ロックオンされている状態で逃げられるはずなく、すべての弾丸はヨルムンガンドたちに直撃した。残った3体のヨルムンガンドたちは、アラガミなので既存の兵器が通じない。そのためか、ジャンキラーの攻撃にも耐え抜いていた。それでも爆風で怯みを見せ、ヘリから離れていく。さっきの二つの技ではまだアラガミの肉体を破壊できなかったようだと見て、ジャンキラーは腰のひし形のマークを展開させた。
〈ジャンバスター!〉
腰のマークから飛んだその太いレーザーは、ヨルムンガンドを飲み込み、レーザーの中に消え去った。発射を終えたレーザーと共に消滅した後、コアだけが海に落ちた。オラクル兵器以外の手段では倒せないアラガミであるヨルムンガンドの肉体も、さすがに超高熱を帯びた光線の前では、肉体を維持できず崩壊したようだ。コアだけでも残ったのは、それでもなおオラクル以外の攻撃が通じないという法則を守ろうとしている意志があるようにも取れた。
「すっげぇ…」
どちらにせよ、すさまじい破壊力を持ってヨルムンガンドを撃退したジャンキラーに、コウタは目を輝かせた。
「まさか、また動き出すなんて…」
「…威力が凄すぎて花が咲かないわね」
サクヤは銃を構えたまま、突如動き出して自分たちを襲っていたアラガミを撃退したジャンキラーに目を丸くしていた。ジーナは、いつも通りのノリを含んだ感想だったが、それでも驚きを感じたことにかわりない。
「…シュン、今のうちにヨルムンガンドのコアを回収するぞ」
カレルはあまり顔に出していないが、ジャンキラーの破壊力に戦慄していたが、シュンに落ちていくコアの回収を要求する。
「…よくいつも通りでいられるよな。おい、ヘリを近づけてくれ」
シュンはカレルの言葉に目を細めるも、カレルの言う通り神機を捕食形態に変え、ヘリパイロットにもコアに近づくように言うと、落ちていくヨルムンガンドのコアを回収した。
「ユウ、あれ…もしやソーマが操縦しているんでしょうか?」
通信インカム越しに、アリサはユウに話しかけた。
「…かもね…」
ユウは黙って、ジャンキラーを凝視した。ソーマがさっきまで輸送中だったジャンキラーの上でヨルムンガンドと交戦していたソーマが姿を消してわずか数秒、その後にジャンキラーが謎の再起動を遂げた。アリサの読みはあながちそうであってもおかしくなさそうだ。
でも、ユウはウルトラマンとゴッドイーターの両方を兼任している身となってしばらく経過したからか、嫌な予感が過っていた。
「なあなぁ!見たかユウ!今の!?あのロボット、あっさりアラガミを倒したぜ!」
ジャンキラーは元々エリナがダミースパークを手に取ってしまったことで暴走したロボットだ。その陰には、闇のエージェントがダミースパークを提供してしまった可能性も否定できない。コウタはジャンキラーが味方になってくれたと思ってすっかり信じ込んでいるようだが。
(こんな都合よく味方になってくれるだろうか?…いや、それにしては都合があまりに良すぎる気がする)
その予感は、当たっていた。
ジャンキラーが、首だけをぐるりと回し、ユウたちのヘリ6機に向けた。その挙動の不気味さにヘリに乗るゴッドイーターたちはたじろぐ。
「ユウ、いかん!ジャンキラーが!!」
タロウが叫んだ時、ジャンキラーが右腕をこちらに突き出していた。
まずい!タロウの呼びかけもあっていち早く気が付いたユウは、ジャンキラーが右手から砲撃を放つと同時に、空にダイブしてギンガスパークを取り出した。
【ウルトライブ!ウルトラマンギンガ!】
ギンガスパークが輝くと同時に、ギンガはその身を光で包み込む。
変身完了と同時に、彼はヘリの前に浮遊し、バリアを展開してジャンキラーの攻撃から後ろのヘリ6機を守った。
「ぎ、ギンガ…」
ギンガの登場に、コウタがその大きな背中を見上げた。
コウタは期待を寄せていた。もしかしたらジャンキラーが味方になってくれてら、と。でも、それはただの夢でしかなかった。それを見越してギンガが来たのだろうか。
「ユウ…」
「どうにか変身に間に合ったようだ。と言っても、こういうときだからこその変身だがね」
ユウのヘリから瞬間移動してきたタロウがアリサの目の前で浮遊する。ギンガとタロウの姿を見て、安堵するアリサ。
「コウタ、何ボーッとしてるんですか!早くウルトラマンの援護の準備を!」
「お、おぉ…!」
アリサの叱咤の声が通信インカム越しに聞こえ、コウタはすぐバレットの装填状況の確認を行った。
「ふむ、新しいウルトラマンじゃなくてギンガの方が出てきちゃったじゃなイカ」
ジャンキラーのコクピット。
そこでは黒い闇が充満しつくしており、新たな闇のエージェント、イカルス星人イゴールが操縦席のソファに腰掛けるソーマに、心の奥底で囁く悪魔のように言った。
「でも構わないじゃなイカ。さあ、ソーマ君。躊躇うことはない。溜め込んだその心の闇を爆発させて、ウルトラマンギンガを抹殺しようじゃなイカ!」
「う、うぅ…」
ソーマは頭を抱えながら苦悶の声を漏らす。その手には、イゴールから与えられたダミースパークが彼の目の前で浮遊し続け、放出した闇を彼に浴びせ続けていた。
ソーマは頭を掻きむしりながら苦しみ続けていた。
モニターにギンガの姿が映る。ソーマはヘリを守る形で姿を現したギンガをモニターで見て、秘めた感情を沸き上がらせた。仲間たちから疎まれ揶揄され、自分を信頼する一握りの存在を救えない悔しさ、悲しみ、怒り、絶望…
そして、ウルトラマンギンガに対する『嫉妬』。
人間であるはずの自分が死神として煙たがられ、逆にウルトラマンは人々から救世主として求められていることへの、怒りだった。
人ならざる化け物同士の癖に…!
「うんうん。いいよいいよぉ…負の感情を高ぶらせようじゃなイカ。それがダミースパークの力を高め、ジャンキラーをさらに強力に、そして操れるようになっていくじゃなイカ。
それじゃ…決定打をポチっとな」
イゴールは、どこからか取り出したパットを手に取る。どうやらそれが、ジャンキラーの本来の操作盤のようだ。イゴールがボタンのひとつを押すと、モニターに映るギンガの顔が次第にアップしていく。すると、ソーマは驚くものを目にした。
「な、お前…は…」
ギンガの中に広がるインナースペース。そこに…ユウがいた。
「てめえ、だったのか…!」
ソーマの中で、ようやく分かったことがあった。それは、なぜ命の危機に瀕することが多かった彼が、必ず生き延びることができたのか。
自分が気にくわなく思っていたウルトラマンだったから。
「てめえが、あ…ああああああああああああああ!!!」
「!」
ジャンキラーの中から聞こえてきたその声に、ギンガははっとする。
あの叫び声、ソーマの声だ。しかもただ事ではないような、苦痛の叫び声だ。ジャンキラーの中で何か彼の身に起きているのだ。
すると、ジャンキラーは飛行機形態『ジャンスター』に変形、ヘリやギンガよりも高く飛び上がり、上空から彼らに向けて砲撃を開始した。ギンガはすぐさま宙を旋回、ジャンキラーのジャンキャノンを殴ったり、両腕で防御したりする形で、仲間たちの乗るヘリに直撃しないように防ぐ。
しかしジャンキラーの攻撃は終わらない。今度はジャンフラッシャーも加え、さらに砲撃を激化させる。ギンガはそれに対し、無数の火球<ギンガファイヤーボール>を作り出してそれらをジャンキラーの<ジャンキャノン>に向けて連射し、すべて相殺した。
全部防いだところで、ジャンキラーは元の形態に戻り、上空からギンガたちを見下ろした。
嫌な予感が的中した。またしてもジャンキラーが暴走するとは。しかし、さっきのソーマの悲鳴といい、もしやと思ったギンガはジャンキラーの内部を透視した。そこで彼が目にしたのは、ひとりでに浮遊し続けるダミースパークから放出された黒い闇で充満したコックピットで、もがき苦しむソーマと、その後ろであざ笑うように見ている奇怪な怪人だった。
(宇宙人!新たな闇のエージェントか!)
おおよその察しが着いた。あの灰色の動物みたいな宇宙人が、ソーマに新たなダミースパークを与え、ソーマを宿主とさせたジャンキラーを再度暴走させたのだ。
(相変わらず汚い手を!)
ユウはギンガの内部意識空間『インナースペース』から見て、イカルス星人イゴールへの怒りを募らせる。
「ソーマ、やめるんだ!」
『う、うぅおおお…!!』
ギンガはジャンキラーの中のソーマに呼びかけた。だが、ソーマは頭を抱えたままうずくまって苦痛の声が収まる気配がない。
(だめか…!)
むしろこちらに向けての攻撃がさらに激しさを増していく。再び発射された〈ジャンフラッシャー〉はギンガに向けて全弾が襲う。後ろにはアリサたちが…仲間たちがいる。
ギンガはジャンキラーの方へ正面から向かった。ジャンフラッシャーの弾丸を両腕で弾き飛ばしながら接近し、ジャンキラーのボディにしがみつく。
「オオオオオオオ!」
ジャンキラーをその状態で捕まえると、彼は北の方へジャンキラーを押し出していった。
ギンガとジャンキラーが本土の方へ離れていく。それを確認したサクヤのもとに、アリサからの連絡が入った。
『サクヤさん、ウルトラマンたちが本土のほうへ向かいました!私たちも援護に向かいましょう!』
ギンガの正体を知っていることもあって、アリサは援護に向かうことを提案したが、それを聞いていた別のヘリのカレルが口を挟んできた。
『サクヤさん。さすがにこれ以上はまずい。俺としては戦闘は続けず第1部隊は極東支部へ撤退、俺たち第3部隊はこのままエイジスに向かうことを提案する』
『ウルトラマンへの援護を拒否するんですか!?』
『そ、そうだぜ!ジャンキラーを見逃したら…』
コウタも、もはやジャンキラーに期待を寄せるのは愚かだと考え、アリサの案を肯定するが、カレルは遮る様に言った。
『俺たちの任務はジャンキラーをエイジスへ運ぶことだ。だが見ての通りジャンキラーは暴走している』
『だったら!』
『だからこそだ。もうあれは俺たちが手をつけられる次元のブツじゃない。何よりジャンキラーを倒したところでなんの報奨金も俺たちには振りかからない。労力の無駄だ』
最後に他人にはどうでもよさそうな個人の金銭がらみの理由を振ってきた。もしかしたらジャンキラーのせいで、どこかで放浪している人間や、場合によっては逃亡した果てに極東支部の人間を再び襲うかもしれないと言うのに、この男は金の方を気にしていると言うのか!第1部隊の三人、そしてタロウは眉を潜める。
『相変わらず金ばっかだな…ま、俺も援護に向かうのはやだぜ。かったりぃし、第一俺はロングブレードだぜ?空も自由に飛べる奴にどうやって援護しろって言うんだよ』
シュンも個人的意見を混じらせながらも、もっともらしいことも含めながらカレルの意見に乗った。
『それに、いい加減死神の呪いに付き合いたくないんだよ』
しかし最後に、以前どおりソーマの噂を鵜呑みにしたまま、彼を糾弾するような言動を口にし、それはアリサやサクヤが内心で彼への反感を抱かせた。
「…そう、わかったわ。これ以上あなたたちを無理に引き止める気はない。第3部隊とはここで別行動、私たちは本土へ戻ってウルトラマンの援護に向かいましょう」
『話がわかって助かる』
いたって冷静に、なるべく感情的にならないようにサクヤはこのまま第3部隊を送り出すことにした。
ジーナは当初、第1部隊と行動を共にするのがよいとも考えたが、カレルとシュンだけ残して向かうのも、万が一エイジスにアラガミが出現した際のことも考えて控えることにした。
結局足並みがそろっているとはいえないまま、第3部隊は予定通り防衛のためにエイジスへ、第1部隊はジャンキラーを見逃さないべきという考えのもと、本土へ引き返した。
「もう…!なんなんですかあの人たちは!ジーナさんはまだ話が通じやすそうでしたけど、あの二人は!!」
アリサはインカムを通して、コウタとサクヤの二人にカレルとシュンに対する文句を垂れていた。
『アリサ、気持ちはわかるわ。でも私たちが彼らへの不快感を優先して、判断を誤るわけにも行かないでしょう?』
「それはそうですけど…」
アリサが不愉快に思うのしかし、第3部隊は本当に癖の強い奴らばかりだ。この先も一緒の任務もあるかもしれないと思うと気が進まないな…とコウタは気後れした。
『みんな、緊急事態だ!』
そんなとき、彼ら三人のもとに通信が入った。サカキからだ。彼にしては妙に慌てている。
「サカキ博士?何かあったんですか?」
『大変だ!彼女が…彼女が研究室から脱走してしまったんだ!』
「「「!?」」」
三人に衝撃が走る。あのアラガミの少女が脱走。これは不味いことであることは、サカキに半ば共犯にさせられた身でもある彼らにとってもまずいことだった。
『それヤバイじゃん!だってノラミはアラ…』
『コウタ!』
その先は言うなと、うっかり口にしそうになったコウタにサクヤが強く言い放つ。コウタも気がついて慌てて口をつぐんだ。彼ら三人はヘリにいる。つまりヘリパイロットたちがすぐ近くにいると言うこと。聞かれてはまずいのでこの事は話してはいけないのだ。
「コウタ、さらっとあの変な名前をあの子に付けないでください!」
『ええ~!やっぱあの名前しかないだろ!ノラミで!』
「ユウたちからも反対されたのにその名前を通すなんて、たとえ世界が滅亡しても絶対に認めません!」
『そこまで否定する!?』
ちゃっかり自分が少女に名づけようと思っていた没ネームで呼んできたコウタをアリサは必死さも混ぜながら怒鳴る。とにかく二度とコウタが変な名前を名づけられないように徹底して否定し続けた。
『二人とも、喧嘩は後にしなさい!私たちにはやらなければならないことが二つもあるのよ!』
サクヤからの叱責を耳元でたたきつけられ、コウタとアリサは喉を詰まらせるように黙った。すると、二人が黙ったのを見計らうように、サカキが再び彼らに話しかけてきた。
『実は、あの少女の向かう場所に心当たりがあるんだ。彼女は、ソーマを怒らせてしまったことを気にしていたんだ。だからおそらく、ソーマのもとに向かったんだと予測される』
「ソーマの、ところ…ですか」
『どうかしたのかい』
「実は…」
アリサが思わず口にしたためらいがちな言い方にサカキは何かあったのか勘繰ってきた。それからサクヤの口から、ジャンキラーが再び暴走してウルトラマンギンガと交戦を開始、ジャンキラーの中にはソーマが閉じ込められてしまったことを明かした。
『なんだって!?それは本当かい?
なんということだ…このままでは彼女がジャンキラーの格好の餌食になるかもしれないぞ』
サカキが向こう側で頭を抱えている姿がたやすく想像できた。彼の言うとおり、少女がソーマの元へ向かうというなら、ジャンキラーの下へ行かなければならない。たとえ彼女がジャンキラーの中にソーマがいることを知らないとしても、ジャンキラーはどこにでも飛び回ることができる上に、遠くからでも攻撃することができる。場合によっては偶然、彼女がジャンキラーの攻撃に巻き込まれる可能性が高い。彼女じゃなくても、別の支部や防壁外の人や彼らが生きる集落が襲撃を受けてしまうことも考えられる。
『サクヤ君、すぐにウルトラマンとジャンキラーを追ってくれ。彼女がソーマを目指しているなら、そこへ行くはず…』
『こちらヒバリ!第1部隊の皆さん、聞こえますか!?』
サカキが話していると、ヒバリから緊急通信が入った。
「ヒバリさん、どうしたんですか!?」
『ウルトラマンとジャンキラーの反応が嘆きの平原上空に探知されました!さらに、先ほど極東支部内から発見されたアラガミの反応もそちらへ向かっています!』
『聞いたかみんな?すぐに嘆きの平原へ向かうんだ』
「「「了解!」」」
サカキからの命令を聞き、第1部隊はすぐに嘆きの平原へ急行した。
ウルトラマンギンガとジャンキラーの戦いは、嘆きの平原上空にまで及んだ。
ジャンキラーが向かってくる中、ギンガは迫るジャンキラーに対し、躊躇いを覚えていた。今ジャンキラーの中で、こうして自分が思考に入っている今もなおソーマも自分もあざ笑いながら傍観しているイゴールに、その心の闇を利用され操られているだけだ。エリナの時と同じように…。
(今は…戦うしか、ないのか…!)
上空を飛び回るギンガを、ジャンキラーが追い続けている。上空からジャンスターの形態のまま、ジャンキラーは上空からの砲撃を繰り返し続けた。
それを避け続けるギンガだが、全てをよけきることまでは出来ず、数発砲撃を受けてしまう。
「ウゥ!?」
砲撃を受けたギンガを見て、ジャンスターは再びジャンキラーの姿に変形、今度は直接ギンガへの攻撃を仕掛ける。ギンガも姿勢を整え、向かってきたジャンキラーを迎え撃つ。繰り出されたジャンキラーの拳をかわしてその腕を捕まえる。ジャンキラーは構わず、もう一つの腕で殴りかかろうとするも、それもギンガによって捕まれ、お互いに組みあう姿勢となった。
ギンガはジャンキラーと組み合ったまま、ジャンキラーの中で闇に囚われ続けているソーマに呼び掛けた。
「ソーマ、やめるんだ!こんな戦いに意味なんかないじゃないか!!」
ジャンキラーの中にも、ギンガの説得の声が響くが、今のソーマに、その声は耳障りだった。
『…お前だったんだな…ウルトラマンは』
「!」
ギンガの動きが止まった。ソーマ、まさか僕の正体に…!?動揺していると、ジャンキラーのパンチが彼の顔面に炸裂した。
「グゥ…!」
顔を抑えるギンガ。すさまじく緊迫した凄みでソーマが、自分の正体を指摘したことでモロに食らってしまった。
『どういうつもりだ、神薙ユウ…』
ジャンキラーの中から再びソーマの声が聞こえた。あたかもジャンキラー自身が喋っているようにも聞こえる。
『お前はこれまで、ゴッドイーターとして働いておきながら、その裏じゃ正義の味方気取りでウルトラマンをやっていやがった。何様のつもりだ…!俺が死神呼ばわりされているのを、てめぇはずっと後ろから見てて嘲笑っていたんだろ!!一人だけヒーロー扱いされていることに、いい気になってやがったんだろ!!
おかげで俺が…お前のせいでどれだけ惨めな思いをさせられたかわかるか!』
ソーマの声にさらにドスが効いたような、鬼気迫るものへと変わっていく。
ユウはこの時、自分でもようやく気がついたと思った。サカキから見せられたあのマーナガルム計画の映像を見た今、ソーマの立場を考えればすぐに想像できることのはずだった。
押し付けられた使命とはいえ、ソーマはウルトラマンに嫉妬していたのだと。だがそれだけじゃなかった。
「違う!言いがかりだ!」
ソーマがこんなことを言ってくるとは思わなかったユウは、まるで図星を突かれたかのように慌てた。だがユウは決してソーマの言った通りのことなどになっていない。だがソーマは信じようとしてくれなかった。
『なぜだ…ただの人間じゃないことで同じはずのお前だけが英雄として扱われるんだ!いつもお前ばかりが崇められる!なぜ俺ばかりが蔑まれないといけないんだ!そのくせ正義の味方を気取りながら、てめえはリンドウもエリックも死なせやがった!何がウルトラマンだ!何が「あの雲の上を自由に越えていきたい」だ!!
ふざけんじゃねぇ!!』
「…」
リンドウとエリックの死についてもソーマはユウを、ウルトラマンギンガを糾弾し、彼が以前エリックやソーマにも聞かせた『夢』についても罵倒した。嫉妬しながらも期待を寄せていたところもあったのだろう。死神と揶揄され、一緒に戦う仲間が死んでいくことが多かった自分がいても、犠牲者がでることがなくなるのでは、と。でも結局、ユウはそれができなかった。アーサソール事件で闇のエージェントに敗れたがためにヴェネを守れず、その時のダメージが祟って変身できないところでピターとボガールのダブルパンチ。遭遇した防壁外の難民たちも守れず腐ってしまったせいでエリックも死んだ。なのにウルトラマンは、仲間を守れず死なせた、ただの人間ではないということではソーマと何ら変わらないのに、今でも極東支部内ではヒーローとして捉えられている。しかもその矢先に新たなウルトラマンとアラガミの少女が現れ、彼の抱くコンプレックスがさらに強く刺激された。
ソーマが失望と怒りを抱くのも、期待を寄せていた分だけ許せなかったのだろう。
ギンガは目を伏せるように俯き、申し訳なさを感じながらソーマに向けて口を開いた。
「……ソーマ、君の生い立ちや、これまでのことを考えると、僕に…ウルトラマンに対してそんな風に考えるのも仕方ないことかもしれない」
『!……てめえも見たんだな、あれを。サカキのおっさんも相変わらずお節介な奴だ』
「…あのビデオのことか…うん、ごめん」
ユウは、結果的にだがソーマの触れたくない過去に触れてしまったことを詫びた。
(うん?ビデオ?なんのこと?)
話に聞き入っていたイゴールも耳を傾け続けた。
『…大方、あのおっさんがわざとお前に見るように仕向けたんだろ。言っておくが、あれを見たからって変な同情を寄せるなよ… !』
マーナガルム計画に携わる両親とサカキの記録映像。やはりソーマもそれを見たのだろうか。それとも何が記録されているかを把握しているのだろうか。どちらにしても彼にとって絶対に気持ちのいいものではないのは間違いない。だが…
「でもソーマ、あの映像のご両親は君を…」
『お前に俺の何がわかる!』
ソーマはユウの言葉を遮った。頑なに聞こうとするつもりはないようだ。
『てめえみたいな…叶いもしない夢を抱いて、結局リンドウたちを守ることさえできなかった癖に、未だに糞親父どもに期待され、他の連中からヒーロー扱いされている甘ちゃん野郎に…あのアラガミのガキと同じ化け物である俺の何が理解できてやがるって言うんだ!!!』
ジャンキラーの赤い目が、ソーマの感情に呼応して輝きを増し、拳を突き出す。しかしギンガとの距離が開いている。ただ突き出したパンチが空を切っただけだった。咄嗟に身構えたギンガは、ジャンキラーの手からさっきのようなビームが飛んでくるのかと思ったが、何も起こらなかったことで困惑を覚えつつも、自分の身を守るためにクロスしていた両腕をほどく。
…が、次の瞬間だった。ジャンキラーの『拳だけ』がギンガの顔面に向かって飛んできた。
〈ジャンナックル!〉
「グハァ!?」
この時の彼にとって予期せぬ攻撃だった。まさか、右腕が分離してこっちに向かって飛んでくるとは。殴り飛ばされたギンガは、地上へ落下、嘆きの平原の一角にある湿地帯に落ちた。
常に雨が降り注ぐ大地の上に落ちて、ギンガは激突と同時に泥の飛沫を浴びせられた。
「…く」
立ち上がろうとするギンガだが、ジャンキラーがすかさず上空から〈ジャンフラッシャー〉を降り注いできて妨害され、再び膝を着いてしまった。
「いいぞいいぞソーマ君!その調子じゃなイカ!」
ジャンキラーの中で、心の闇に呑まれていくソーマがジャンキラーでウルトラマンを攻撃するさまを、イゴールは思い通りに展開されていくこの状況に大層満足していた。
ソーマにジャンキラーを操縦させる。元々は、これはバルキー星人バキが思いついた策の一環だった。第1部隊の中でも、ソーマの心の闇が深かったのは闇のエージェントたちでも織り込み済みだった。それにいち早く気付いたバキが、確実にウルトラマンギンガとその変身者である神薙ユウを確実に抹殺するために、そのうちの仲間の一人…それも心の闇が最も深いソーマを選んだ。心の闇が深ければ深いほど、ダミースパークは持ち主を支配しコントロールする。死に物狂いで仲間を守ろうとするウルトラマンに、闇に落ちたソーマを倒すなどできないだろう。万が一倒しても、仲間を守ることを絶対とするウルトラマンが自らその禁忌を破って仲間を手にかけるなんてことをすれば、今度こそウルトラマンギンガに変身する青年は、己の手が仲間の血で汚れているのを見て、心が折れて二度と立ち上がれなくなる。
「そうなれば、あのお方もお喜びになること間違いなしじゃなイカ!」
それにギンガを始末させ、ジャンキラーをこのまま暴れ続けさせれば、いずれ当初の狙いでもあったもう一人のウルトラマンも現れるかもしれない。もしかしたら、まとめて始末させることも…そう思うと『あのお方』からの報奨が楽しみになって仕方がない。
「さあソーマ君、心の赴くままウルトラマンギンガを抹殺しちゃおうじゃなイカ!」
「ウうううう…うおおおおおおお!!!」
憎悪、怒り、嫉妬…自身の生い立ちや周囲からの視線、そして押し付けとはいえ成すべきと思っていたことをすべてユウが…ウルトラマンがこなして自分が何もなせていない現実。
イゴールの囁きでダミースパークの闇の深まり、さらにソーマの暴走は激化の一途を辿る。今の彼はギンガを、ユウを見ているとひたすら負の感情が湧き上がり続けていた。
ジャンキラーは、ソーマの動きに合わせて戦うことができる。ソーマがモニターに見える、インナースペース内のユウに向けて殴りかかると、現実でもジャンキラーがギンガを殴り付けることができる。
ジャンキラーが、ソーマの思考と同調して、ギンガに向けて自らが飛び出した。