ULTRAMAN GINGA with GOD EATER   作:???second

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ついに新たな新作、ウルトラマンタイガが放送開始!ULTRAMANもまさかの第二期が決定し、さらにウルトラの時代は加速していく…この作品もまたその流れに乗っていけたらと思います。


君は誰だ

ユウは苦悶の表情を浮かべた。

エリナが、以前のアリサがそうだったように、闇の力に魅入られてライブしてしまうとは。

エリックを救えなかったがために…これは自分がつけなければならない責任だ。エリックからも彼女を託された身でもある。

(絶対にエリナを助けないと…!)

だが変身も現時点ではだめ、メテオールにも頼れない。しかもあの中にエリナもいる。最悪の三拍子が揃い、今度こそ終わりなのかと思えるような事態だ。

…いや、待てよ。

ユウは、腰のアイテムポーチを見て、策を思い付いた。

「カノンさん、ソーマを頼みます!」

「ふえ?あの、ユウさんはどう…ってユウさん!?」

「ユウ君、あまり前に出たらだめよ!」

「ユウ、無理をしないでください!!」

後ろでソーマのリンクエイドにかかるカノンにただ一言言い残し、何をするつもりなのかと尋ねようとしたカノンを無視してユウはジャンキラーの方へと向かった。サクヤやアリサの声も聞こえたが、今はそれどころじゃないと思った彼は聞き流した。

ジャンキラーが、それを見越したかのようにジャンキャノンをユウに向けてきた。

反射的にユウはギンガスパークを握ると同時にポーチから取り出したものをジャンキラーに向けて投げつける。

『なんのつもり?』

ジャンキラーは怪しいと見たのか、ユウが投げたものに向けてジャンキャノンを撃って破壊…しようとした瞬間、視界を白く塗りつぶす閃光が解き放たれた。

スタングレネード。アラガミから視界を奪って隙を作るアイテム。ゴッドイーターにとって大事な常備品である。

今の閃光で仲間たちも目潰しから逃れるために目を閉じた。今だ!

「タロウ、皆を頼む!」

「気を付けろよ、ユウ…!」

タロウが離れたところで、ギンガスパークを取り出し、ギンガのスパークドールズをリードする。

 

【ウルトライブ、ウルトラマンギンガ!】

 

「シュア!!」

閃光に紛れてユウは光の奔流に身を包んでウルトラマンギンガへ変身した。そしてすかさずジャンキラーに接近…した途端だった。

「ハ!?」

ギンガは前方に向けて違和感を覚え、足を止めた。

…いない!

駈け出した先にいるはずのジャンキラーが、最初からそこにいなかったかのように姿を消していたのだ。あのスタングレネードの光の中、あいつもそれに紛れて…!

「ウルトラマン!?…あ、あれ…あのロボットは…?」

ウルトラマンが突如現れたことに驚く地上の第1・2部隊の仲間たちだが、それ以上にスタングレネードの光が消えたと同時にジャンキラーの姿が消えていることに気付いた。

一体どこに…!?

ギンガやゴッドイーターたちが周囲を見渡す。すると、上空にキラッと光るものを見つけたコウタが叫んだ。

「上だ!!」

その叫びに反応するかのように、彗星のごとく空から一機の鋼鉄の乗り物が飛来した。

(変形して逃れてたのか!)

まさか飛行機の形態に変形できるとは。

上空から雨のように降る注がれるレーザーがギンガ、そしてその周りにいるゴッドイーターたちを狙う。

「く…!」

両腕を盾にし、そして強引に弾き飛ばしたギンガは空を飛び、上空に飛び去った飛行形態のジャンキラー…『ジャンスター』を追った。

(ユウ…)

あれほど空高く飛んでしまうと、彼らが地上に降りるまで自分たちはもう援護できない。アリサとタロウはギンガの、ユウの無事を静かに祈った。

 

 

 

 

 

雲の遥か上、ギリギリ大気圏内に入るほどの高度に入ったところで、はるか先の場所まで進んでいたジャンキラーが折り返してきてギンガに〈ジャンキャノン〉を連射してきた。

(これくらい!)「ディヤァ!」

ギンガは〈ギンガセイバー〉で弾き飛ばした。

「エリナ、やめろ!!今すぐ攻撃をやめるんだ!」

ユウは、ジャンキラーの中にいるエリナに呼びかけた。

『やめる…?何言ってるの』

しかし、中から聞こえたのは、ギンガの言葉に対するエリナの惚けたような声だ。

『私、これから極東支部を地獄に変えてやるの。エリックのことをみすみす死なせたフェンリルの連中も、エリックが死んだのに意に返そうともしなくなった人たちもみんな皆殺しにしてあの世に送り付けてやるの。そうすればエリックだって、寂しくなくなるわ』

ダミースパークを使ってあのロボットにライブしているためだろう。兄が本当に聞いていたら昏倒してしまいそうなほどに残虐なことを当たり前のように口にする彼女は、手に持っているダミースパークから放たれる邪悪な波動によってさらに精神を歪めさせられていた。

「そんなこと、エリックが望んでいると思ってるのか!?」

そうだ。あの男が望むなんてあり得ない。エリナが一番よくわかっていることのはずだ。だがエリナは耳障りとばかりに金切声をあげるようにわめき散らした。

『うるさい…うるさい!!正義の味方ぶっておきながらエリックを助けてくれなかったくせに!エリックが死んだ時、なんでもっと早く来てくれなかったの!?今更現れて、偉そうに私に説教しないでよ!!』

「……」

エリックを救えなかったことを指摘されるとさすがに言い返し辛くなる。そうだ、エリックを助けられたはずなのに、自分はあの時、アーサソール事件でヴェネを守れず、それに続いて再会したスザキたちを守れず、その果てに一人で腐っていた。ウルトラマンなのに誰も救えない、と。でもそれは力を得たが故に、自分がやらねばならない、自分にしかできないと思い込んだ、遠回しに自分が選ばれた人間であることを言っているも同然の傲慢さ。一度ギンガから変身を拒絶された時と同じ自身の秘めた傲慢さが、エリックの死に繋がった。あの時の後悔は今でも鎖に繋がれた鉄球のように引きずり続けている。

だから…エリナを助けなければならないのだ!

「エリナ…君が僕をどう思うかは自由だ。恨まれても仕方ない。でも僕は、君のお兄さんから君を託されたんだ。だから、君は僕が助ける!」

『助ける…?なにそれ。エリックから私を託されたですって?』

意味が分からない、とエリナは呆れたような言い方で返してきた。

『エリックを助けられなかったくせに…いつまで友達ぶるの!!あなたに兄を語る資格なんてない!!死んじゃえ!!』

来る!エリナの叫びと同時に、ジャンキラーがギンガに向かってきた。

突き出された拳に対し、ギンガはそれを右手でガシッと受け止める。

 

腕が振り払われ、ジャンキラーの前蹴りがギンガの腹に叩きこまれる。後方に少し飛ばされたギンガだが、すぐに宙を旋回し、勢いをつけた突進飛行でジャンキラーを突き飛ばしかえした。

ギンガはまだ止まらない。すぐさまジャンキラーの眼前にまで接近し、正面からその身を取り押さえた。無理やりにでも、エリナを引きはがすためには、やはり0距離から近づく必要がある。ギンガはジャンキラーの顔に向けて手を伸ばす。

今すぐにでも出してやろうかと思ったが、ジャンキラーの胸部の発行部分から無数の光弾が飛び、ギンガは全弾をその身に受けてしまう。

「グアアァァァ!!」

胸元を押さえながら、ギンガは受け身の姿勢を取ろうとするも、次の瞬間、今度は自分の番とばかりにジャンキラーがギンガの目の前に迫っていた。

『みんな死んじゃえ!!私とエリックの痛みと苦しみを味あわせてやるんだから!!』

エリナの意思に従い、ジャンキラーはギンガの顔面を殴り付けた。

顔を押さえながらもだえる彼に、すかさず裏拳やジャブストレートをギンガの体のあちこちに何度も撃ちこんで痛めつけていく。

最後に首元を掴んで持ち上げると、ジャンキラーは月に向けてギンガを放り投げた。

すると、ジャンキラーの腹のひし形のパーツが開かれ、超強力なビームがギンガに向かって放たれた。

『やっちゃえ!ジャンキラー!』

〈ジャンバスター!〉

「!」

気が付いたときには、既に目の前。ジャンキラーの強力な抹殺光線はギンガに直撃、大爆発を引き起こした。

 

 

地上からも、その爆発は確認された。

「い、今の爆発は…」

コウタの肩を借りながらブレンダンが呟く。

負傷した第2部隊のメンバーたちを回収した第1部隊の仲間たちの目に見えた爆発。それほどにもギンガとジャンキラーの戦いが加速しているのだと感じ取った。

「ギンガ、大丈夫よね…」

そう信じずにいられない。信じなければ本当にギンガが倒れてしまったのではと思ってしまう。リンドウたちの死に続いてウルトラマンまで…なんて考えたくなかった

「大丈夫ですサクヤさん。ウルトラマンは負けません」

そんな彼女の不安を拭うように言ったのはアリサだった。まっすぐ空の上に、全くぶれる気配を見せない視線を向けていた。

それを見たコウタが、へぇ…と感心したように声を漏らした。

「なんですかコウタ。その目は」

「いや、ちょっと意外だなって思ったんだよ。アリサがそこまでウルトラマンを信じるようになったことが」

「な…べ、別にいいじゃないですか。信じたって」

「でも、コウタの言うとおりね。アリサは最初のころ、ウルトラマンをアラガミと同列に考えて、いきなり狙撃してきたくらいだもの」

「そ、それは言わないでくださいよサクヤさん!!」

確かに、かつてアラガミへの憎しみに囚われていた自分はウルトラマンをアラガミの一種と考えて問答無用で攻撃してしまったことは否定できない。でも正直今のアリサにとって忘れたいだけの恥ずかしい過去だった。さらりと自分の黒歴史を言ってくるサクヤに、アリサは顔を赤らめた。

そんなアリサの可愛らしい一面を見て、タツミたちは意外そうな視線を向けていた。

「…あの新型、最初と比べてだいぶ柔らかくなったな」

「そうですね。なんか、本当に同じ人なのかなって思っちゃうくらいです」

「ソーマもあれくらい親しみやすくしてくれるとリンドウさんも嬉しがっていただろうに…」

ブレンダン、カノン、そしてタツミと、それぞれが感想を述べたところで、寝かされていたソーマからうめき声が出た。

「っぐ…」

「あ、ソーマさん!気が付いたんですね!」

「ソーマ、大丈夫?」

ソーマが意識を取り戻して起き上がったのを見て、カノンは安堵の笑みを浮かべた。サクヤとアリサも気づいて彼のもとに歩み寄ってきた。だが、コウタだけはこれまでソーマの他者に対するあまりに冷たい態度が原因で複雑な反応だった。

ソーマはカノンを一瞥した後、すぐにジャンキラーの姿を目で追おうとするが、当然すでに飛び去った後なので見当たらない。

「…あいつは…?」

「空の上に逃げたのを、ウルトラマンさんが追って行ったんです」

「…また、ウルトラマン…か…」

カノンからその名前を再び聞いて、ソーマの顔が険しくなった。

「ソーマ、やはりどこか痛むのか?」

「…余計なお世話だ。これくらいかすり傷…っぐ!」

ブレンダンから傷の状態を問われるがソーマは着き返すように言う。だがいくら頑丈なソーマでも、ジャンキラーの蹴りを食らったのはかなり痛かったらしい。…いや、普通のゴッドイーターでもソーマ以上のダメージの可能性がある。ゴッドイーターの中でも特に頑丈であるソーマだからこそ、『この程度で済んだ』のかもしれない。

「ソーマさん、無理しないでください。まだ傷の手当が完了してませんから…」

「俺に構うな!!」

カノンが差し伸べてきたその手を、ソーマはムキになって振り払ってしまう。そのせいでカノンは「ひう!」と悲鳴を上げて怯えてしまった。

「ソーマ!みんながあなたを思ってくれているのに、そんな言い方はないでしょう!?」

それを見かねたアリサが我慢ならずにソーマに向かって怒鳴りつける。

「お前、いい加減に…」

「落ち着いてコウタ。ソーマ、一体どうしたというの?さすがに今日のあなた、様子がおかしいわ」

コウタがもう今すぐにでも殴ってやろうかと拳を握るが、リンドウほどではないが長年の付き合いで慣れたのか、ソーマが粗暴さも持ち合わせていることを知っているサクヤはコウタを下がらせてソーマに言った。

「………」

ソーマは何も言わず、カノンに対して怒鳴ってしまったことにも後ろめたさを感じているのか視線を逸らした。逃げるように彼は、エリナを乗せたままのジャンキラーと、それを追ったギンガが飛び去った方の空を見上げた。

「あ、見えたぞ!」

タツミが空を指さして、何かが飛来してきたことに気付く。

あの高度から一気に落下してくるもの。ウルトラマンとあのロボット以外に他はなかった。

戻ってきているウルトラマンを見て、ソーマは一層その表情を険しくさせた。

 

 

 

「あははは!!見た見たお兄ちゃん!?綺麗な花火でしょう!?今度は地上の人間殺して、もっと綺麗なの咲かせてあげるからね!?」

宇宙空間、ギンガを包み込んだ大爆発を見て、エリナは笑った。

他のゴッドイーターやウルトラマンが助けようともしなかったエリックの死と孤独、それをリンドウなどの赤の他人なんかのためにあっさりと忘れていく様を許せなかったエリナは、自分とエリックの死と痛みを極東支部の人間たちに思い知らせたいと思っていた。でもそれにはウルトラマンは最大の邪魔者。ダミースパークを握ってからそう認識していた。

でもこれで邪魔者はいなくなった。

これから極東支部を地獄に変えてやる。

エリックを蔑ろにするあいつらが炎と爆発の中に包まれ、死の恐怖と痛みにおびえながら死んでいく地獄の光景。それはさぞ、高価な絵画では決して描けない美しい光景に違いない…。悪意が増幅させられていたエリナは邪悪な笑みを浮かべ勝利を感じた。

 

しかし、すぐにその狂った笑い声は収まった。

 

爆発の中から、十字型の光が輝きだした。

操縦席にいるエリナの目の前のモニターに、敵の生命反応を知らせる赤い文字の羅列のような表示がなされる。

まさか!と思ったその瞬間、爆発の中からビームがジャンキラーに直撃した。

「きゃあああああ!!!」

エリナは船体に響く激しい衝撃に立つことができずに倒れた。転んだ痛みで顔を歪めながら立ち上がってモニターを見ると、消えた爆発の場所に、ギンガと異なる巨人の姿があった。

ウルトラマンギンガは生きていた。ジャンバスターが直撃する直前、ユウはウルトラマンジャックのスパークドールズをリード、ジャックへの変身を遂げると同時にウルトラブレスレットの武装の一つ〈ウルトラディフェンダー〉でジャンバスターを防御し、光線を跳ね返したのである。

すぐジャックは、両腕を十字型に組み上げて光線をジャンスターに向けて放った。

〈スペシウム光線!〉

「シャァ!」

光線はジャンスターに掠る程度だったが、わずかに船体に当たったことでジャンキラーは大きく揺れ、落ちた。

『こ、このおおおおおおお!!』

激高したエリナに呼応して、大気圏内に入り込んだところで態勢を整えたジャンキラーはギンガに突撃した。

まるで駄々っ子のような動きだ。さっきから遠距離の兵装を使ってきたというのに、今は頭にきすぎて蹴りやパンチばかりを繰り出している。それもあまりに大ぶりな動きだったため、ジャックに容易く避けられた。

(これくらい!)

これまで格上の強敵とも戦ったことのあるユウ。ある程度強敵に対する的確な動きを取ることができるようになっていた。まして、今はギンガよりも軽やかに動けるジャックの姿、そして対するジャンキラーは悔しさを爆発させた子供じみた動きであるせいで簡単に避けられた。エリナはジャンキラーの力を思いの他使いこなしきれていないようだ。

『もう、さっさとやられなさいよ!エリックと私の邪魔しないで!』

苛立ったエリナの声が響くと同時に、ジャンキラーがジャックに掴み掛った。ジャックもその鋼鉄の腕を掴み、取っ組み合いの姿勢になる。振りほどこうにも、相手も相手でかなりの力でジャックの腕をつかんでいて離さない。

(ならば…!)

ジャックはギンガの姿に戻ると、全身から電撃をほとばしらせた。

〈ギンガサンダーボルト!〉

「ジェア!」

電撃を浴びせられたジャンキラーの動きが鈍くなった。

『きゃあああああ!?』

エリナの悲鳴が聞こえた。透視能力で中を覗き見てみると、今の電撃でエリナが気絶して倒れたのが見えた。

これ以上は流石に危険だと思うが、今ならチャンスでもあると見て電撃を止めた。ギンガはジャンキラーの顔に右手を伸ばした。光に包まれたその手は、ジャンキラーの顔を突き破ることなく、透明の壁を突き抜けるようにすり抜けた。

ギンガはその手の中にエリナを握りしめ、すぐにジャンキラーから離れ、すぐに地上へ向かう。対するジャンキラーは、エリナという操縦者を失ったせいか、その赤い瞳の輝きを消失させ、糸の切れた人形のように落ちて行った。

 

 

地上にいるゴッドイーターたちの前に降り立ったギンガは、握った右手を地面に乗せて開いて、意識を失ったままのエリナをおろした。

「な、あの子はエリナ!?」

なぜかギンガの手からエリナが現れたことに皆が驚く中、アリサは気づく。

(そうか、あのロボットにエリナちゃんが…)

自分も経験者であり、最近のエリナのことも見ていたからすぐにわかった。エリナは兄の死を嘆き続けていたところを狙われてしまったのだ。しかしダミースパークは持っていない。ジャンキラーの中に置き去りにされているのだろう。だが所詮道具、使う者がいなければ意味がない。

「大丈夫、気絶してるだけだわ」

近づいて容態を診たサクヤが、エリナに怪我もないことを確認する。

仲間たちから距離を置いた場所にいたソーマは、ギンガを睨み付けていた。その視線に気がついたのか、ギンガもソーマの方を見た。

恨みでも持っているかのような鋭い視線だ。

(なんでそんな目で僕を見るんだ?ソーマ)

 

その時だった。

ジャンキラーの中で置き去りにされたダミースパークが赤黒いオーラを放出、ジャンキラーの中を闇で満たした。

 

そして外で、今ちょうどソーマの後ろで落下したまま動かなかったはずのジャンキラーが動き出し、腕の砲口の照準をソーマに合わせていた。

(危ない!)

ギンガはとっさに動いて自らソーマの盾となってジャンキラーの〈ジャンキャノン〉を連続で食らってしまった果てに吹っ飛ばされ、極東支部のアラガミ防壁に背中を打ち付けた。

「ッグ、アアアアァァァァ!!」

 

ピコン、ピコン、ピコン…

 

不意打ちでダメージを大きく食らい、ついにギンガのカラータイマーも点滅を開始した。

「ぎ、ギンガ!」

コウタが思わず声をあげる。

「操縦者だったエリナちゃんがここにいるのに…タロウ、どう言うことなんです!?」

アリサはタロウに、タツミが背負っているエリナを見て混乱を露にする。ダミースパークで恐らくあのロボットを操っていたのだろうが、エリナはここにいる。あのロボットが動くはずがない。

「私にもわからん!なんでだ…!?もうエリナは引きずり出したのに…!」

タロウも同じ疑問を抱いていた。もう彼女はダミースパークを持っていない。なのにジャンキラーは再び起動している。考えられる理由としては、あのジャンキラーには自動操縦モード…つまりジャンキラー自身の意思で稼働できる機能があるということ。だがその予想は違う気がした。例えロボットでありながら自我を持っているとしても、ジャンキラーも人形にされ、自分の意識を封じられているはず。自分はその例外に該当するが、ジャンキラーが人形から元の巨大ロボットとしての姿を現しているということは、自動操縦モードに切り替えるための自我を封じられている可能性が高い。それでも奴が動き出した理由は一体……この時のタロウにはまだわからなかった。

 

 

一方で、ソーマは壁に激突し膝を着いたギンガを見て驚きを示しつつも、屈辱を覚えて歯噛みした。

本当は、俺がエリナを救わなければならなかったのに…またこいつに…

「てめえの助けなんざ…いるか…ぐっ…!!」

「ソーマ、やめなさい!さすがのあなたでも、満足に動けるようになるまで時間がかかってしまうわ」

やはりソーマらしくない、とサクヤは思った。これまでソーマはゴッドイーターになってから命令違反を犯したことがあり、故に古参の割に階級が高くない。勝手が多いが、自分の実力と相対しているアラガミの力量を図り、自分なら倒せると考えた上でのこと。ここまで無謀な行動には出たがろうとしなかったはずだ。

すると、ジャンキラーが腰のひし形のパーツを開いた。狙いの矛先には、ギンガの姿がある。

(まずい、あれを食らったら…!)

あれを放たれたら今度は無事では済まない。ウルトラディフェンダーで防いだときに感じたあのビームの威力は身に染みていた。地面に当たったら、溶岩のようにどろりと溶けてしまうほどの熱線なのだ。

タツミもここにいたら自分たちもビームの余波を食らうと感じ、全員に向けて避難を呼びかけた。

「やばい!みんな離れ…!!」

だが、もうジャンキラーのビームのチャージが完了するまで時間がなかった。カラータイマーも点滅し始めていて、ギンガに変身していられる制限時間もない。ここは、一か八か!

ギンガは必殺光線〈ギンガクロスシュート〉の構えを取り始めた…

 

 

その時だった。

 

 

鏃のような形状の光がジャンキラーのボディに直撃した。

 

 

前触れのない突然の攻撃にジャンキラーは怯まされ、ギンガやゴッドイーターたちは驚いて動きがその場で止まった。

光線が飛んできた方角は、ギンガから見て8時の方向。そこに、金色に光る巨大な光が舞い降りて、アラガミ防壁を足場代わりに降り立った。

 

「…!?」

 

金色の光が消えると、誰もが光線を撃ってきた者の姿を見て、驚きのあまり言葉を失った。金色の光を纏っていたのは、彼と同等の巨体の戦士。

 

身体中の赤と黒の模様。冠のような頭に、額や両手足のV字型のクリスタル。白く光る目。金のクリスタルと同じ形状のカラータイマー。

 

「あれは……!」

アリサが呟いた時、その戦士は両腕を一度ずつ掲げ、Vの字を象った光を眼前に形成、それを頭上に掲げた右腕のクリスタルに吸収する。それから両腕の拳を握った形でL字型に組み上げ、右腕のクリスタルから光線を放った。

「ズェア!!」

光線はジャンキラーに炸裂。胸元に受けて火花を起こしたジャンキラーは今度こそダウン、目の輝きを失って機能を停止した。

ギンガとゴッドイーターたちは呆然と、防壁の上に悠然と立つその戦士を見上げていた。謎の巨人もまた、特にギンガの方へ視線を合わせた。

「君は…誰だ?」

ギンガは、その巨人へ問いかけた。

「……………」

「答えてくれ、君は誰なんだ?」

「……………」

黒い巨人は、何も答えなかった。静かにギンガを見据え、背を向ける。

「待ってくれ!」

ギンガが黒い巨人を呼び止めると、巨人は後ろを振り返ってギンガにただ一言…こう名乗った。

 

 

―――――ウルトラマンビクトリー

 

 

自身をそう名乗ってすぐ、謎の巨人『ウルトラマンビクトリー』は光に身を包み、空へ帰って行った。

 


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