ULTRAMAN GINGA with GOD EATER 作:???second
しかも投稿するたびにほぼ確実に一件減ってます…
アナグラ内の屋内霊園にリンドウの墓も立てられ、第1部隊は通常任務の後にリンドウの墓で彼にその日の報告を時折語るようになった。
「…」
ソーマは、一人屋内霊園来訪していた。墓を掃除しに来たわけでも、供え物を持ってきたわけでもなく、霊園を歩き回って、目についた墓の前に立って静かに見下ろすだけだった。
今彼が見ていた墓は、先日死亡が確認され葬儀を行ったリンドウのものだ。
自分が12歳…今から6年前の頃から長いこと共に戦い続けて来た。ツバキが引退して教官になってからも、彼女の分も含め前線で戦い続けていった。
ソーマと共に戦うゴッドイーターはその多くが死することが多かった。彼が任される任務は、完遂が困難とされる高難易度のものが多かったためである。その中でもリンドウは生き残ってくれた数少ない、仲間だった。でも、長いこと一緒に戦ってきた彼さえも遂に…。
『命令は三つだ。
死ぬな。
死にそうになったら逃げろ。
そんで隠れろ。
運がよけりゃ不意を突いてぶっ殺せ。
隊長命令だからな、無視すんじゃねぇぞ?』
どこかおちゃらけた感じを出しながらも、忠告を何度もソーマに言い聞かせておきながら…本当に自分の出した命令を守らずに…。
彼と任務を共にしたゴッドイーターは死ぬ。昔から根付いたそのジンクスはソーマの精神を苦しめる。最近ではエリック、そして新米のゴッドイーターたちを生存させてきたことでも有名なリンドウさえ餌食となった。
エリックといえば、彼の墓の前に覚えのある少女が立っているのを見かけた。エリックの妹、エリナだ。
(……)
恐らく兄の墓参りだろう。彼女ほどエリックを慕う者はいない。
エリックはあの時、濁流に消えたユウを救うために撤退命令を無視して引き返した。あの時自分が引き留めるなり、共に同行していれば、何かが変わったかもしれない。だがリンドウの命令を素直に聞いた結果があれだった。命令違反なんて、何度も犯したことがあるのに…なぜあの時ばかり素直に聞いてしまったのか。
(くそったれが…!)
エリックに続いてリンドウ…自分に関わる者が消えていく現実に、苛立ちが募っていく。
…この日の任務がある。あの糞親父から命じられている任務が。ソーマはエレベーターでエントランスに昇ろうとろうとした。
しかし、彼は足を止めた。
エリナがぽつぽつと兄の墓の前で何かを呟きだしたのが聞こえた。
「…ねぇ、エリック。一人でさびしくない?」
身を屈めてエリックに語りかけるエリナ。だが、ソーマはこの時エリナの様子がどこかおかしいと思った。優しげで穏やかな口調で話しているはずなのに、その言葉に裏を感じた。それも真っ黒な…
「…うん、寂しいよね。それはそうだよね。だって誰もエリックを助けてくれなくて、一人で死んじゃったんだもん」
ソーマはエリナに対して、一種の警戒心を抱いた。彼女から不穏な雰囲気が漂っていく。
「でも安心してエリック。私…いいこと思いついたんだ」
笑みを浮かべながら、ソーマの視線に気づかないままエリナは話を続けた。
「私、すごい力を手に入れたの。アラガミなんて目じゃないほどのすごい力。これさえあればエリックの仇を簡単に討てるんだよ。あれだけ怖かったアラガミが、今じゃ全然怖くないの。すごく楽しみだなぁ…憎いアラガミをぐちゃぐちゃに潰して、エリックが受けた痛みを何乗にもに返してやるの」
(強大な力…?)
聞けば聞くほどエリナの言動が怪しくなる。だが、それだけじゃない。更に彼女は自らが狂いつつあることを露にしていった。
「でもアラガミなんかより、そっちに行く人は人間がいいよね?だから私ね、今からたくさん人間を殺すの。そうすればエリックのところにたくさんの人たちも行って寂しくないでしょ?」
(人間を…たくさん殺すだと?)
とてもエリナの言動と信じたくなかった。しかし本当にそんなことができるのか?本気なのかと思っていると、
それが本当だと思わせる証明を、エリナは手に取っていた。
以前バルキー星人バキが落としたダミースパークと、ロボットのような人形。それを見てソーマは思わずエリナの前に飛び出した。
「おい、なんでお前が持ってる!?」
あれは厳重に保管していたはずだ。後でサカキに見せて解析させてもらうために。だがゴッドイーターでも正規のフェンリル職員でもない、ただ金持ちの娘と言うだけのエリナがなぜ持っているのかソーマにはわからなかった。
「あ、誰かと思ったらソーマさんじゃないですか。もしかして、今までの話聞いてたんですか?」
ソーマに気がつき、エリナは怪しい笑みを浮かべて振り返った。
その目付きを見てソーマは戦慄する。あの目、一時前のアリサに似た、深い闇のようだった。
「私、ずっと兄の仇を討ちたかったんですよ。なのに誰一人それをしてくれる人がいませんでした。それどころか、皆リンドウさんのことばかり気にして、エリックのこと最初からいなかったみたいに…エリックだって皆のために、私のために戦ってくれてた、誰よりも華麗なゴッドイーターだったのに…酷いと思いません?」
「お前…」
「酷いと言えば…ソーマさん…言いましたよね?」
それは、あの集落でユウとアリサが共にウルトラマンとボガールの生体反応を追って救援に来た第1部隊に連れられ帰還した後のことだ。ユウの元にエリナが現れ、兄の死を認めたくない一心でエリックに会わせてくれと懇願したように、ソーマの元にも彼女は来た。
正確にはアリサが大車にメザイゴートの超空間に連れ拐われた時、コウタが一緒にアリサを探そうと、通信でソーマに頼んできたのを、兄の死をどうしても認めたくないエリナが、エリックの死が嘘だと、彼が常日頃親友だと言っている者の一人であるソーマに言って欲しくて訪ねに来たところを聞いてしまったのだ。
『んな…それ、マジで言ってんのかよ…リンドウさんやエリックだって、探して行けって、こういう時絶対言うだろ!?』
『っ…!』
廊下の角、そこでソーマがコウタの通信に対して応対しているのを聞いて、エリナは足を止めて壁の角に隠れ、耳を傾ける。次に口にしたソーマの言動で彼女は心に深い傷を負った。
『………知るか。弱い奴から死んでいく…そういうもんだろうが、この仕事は…』
エリナはすぐに引き返した。
兄が親友だと言っている男が、兄を侮辱した。
弱い奴、と。
これはエリナにとって屈辱だった。
「ソーマさんのこと、ユウさんと同じくらいエリックから聞いてたんですよ。誇るべき極東のライバルだって。なのにあなたは…兄をその程度にしか見てなかったなんて…本当、他の人たちが言っていた通りですね。だからあんな言い方を平気で言えるんですよ。
そうですよね?『死神』さん」
「…!」
エリナからも死神と言われ、ソーマは言い返そうにも言えなかった。エリナにとって最も大切な兄を、侮辱してしまったのだ。その死さえも笑うようなことも口にした。
だが、あれは決してソーマの本心ではなかった。エリックは、周囲から疎まれ、自分もまた他者を拒絶するなか、自分を仲間だと認め着いてきてくれた数少ない理解者だった。本心ではエリナと同様に、エリックの死を嘆き悲しんでいた。
そんな彼をなんでもないと言ったのは、幾度も危険な任務に同行した仲間たちの死を見続けた彼が、自分の抱いた悲しみを他人に悟られないために、わざと何とも思っていないふりをしていたのだ。
でもその癖が、結果としてエリナにここまでの心の傷を負わせることになってしまった。
「ソーマさん、安心してください。今から貴方を楽にしてあげます。もう貴方を死神と呼ぶ人たちが、この世から全員いなくなるんですよ」
エリナは手に持っていたダミースパークを、スパークドールズにリードした。
【ダークライブ、ジャンキラー!】
巨大な鉄の巨人、ジャンキラー。
その赤く光る目の視界に、自分たちを見上げる人々がいる極東支部外部居住区の光景が見える。興奮する子供たち、珍しいものとして捉える人もいれば、逆に得体の知れないものとして恐れる声が聞こえる。
その子供たちの中に、ふと目に付いた姿があった。二人の幼い兄弟だ。
「兄ちゃん兄ちゃん!あれなに!?もしかして、新しいウルトラマンがきたのかな?」
「おいおい、さすがにあれはウルトラマンじゃないだろ。でもそうだな、ウルトラマンとは別の新しいヒーローだったりするのかもな」
「本当!?かっこいいなぁ!」
幼い弟がジャンキラーに向けて強い憧れの視線を向け、それを兄が相手をしている。どうも弟は、あのロボットがウルトラマンと一緒に戦う光景に期待しているようだ。
ジャンキラーの中からそれを見ていた人物…エリナは、面白くなかった。
自分がもう二度とできない、兄とのふれあいをごく当たり前に話をしているあの兄弟の存在が、目障りに感じていく。
なんでお兄ちゃんが死んでしまったの?
なんでお兄ちゃんが殺されなければならないの?
なんで私のお兄ちゃんが死んで、あんな何の力もない子供なんかがのうのうと生きているの?
私だって…もっとお兄ちゃんと一緒にいたかったのに…!
彼女の手に握られたダークダミースパークから紫色のオーラが走り、それに伴って嫉妬が憎しみへと変わっていく。
「許せない…」
自分が兄の死で苦しみ続けているのに、自分に幸せを見せ付けるかのように談笑しているあの兄弟たちが憎くなった。
憎しみは抑えられなくなり、激しい憎悪と殺意と化して、ジャンキラーに力を与えていく。
そしてジャンキラーは彼女の意思に沿って…その宇宙金属の固まりの拳でアラガミ防壁に風穴を開けた。そのままジャンキラーは積み上げた積み木を崩し落とすように、防壁を破壊し始める。
「う、うわあああああああ!!」
人々はジャンキラーの暴走を見て、一目散に逃げ出していった。さっきジャンキラーに一時憧れの視線を向けた兄弟たちも、ウルトラマンと同じ新たなヒーローなどと希望的な視点から見ることなど到底できず、他の人たちと共に逃げていった。
第2部隊がいち早く到着したのはそれから間もないことだった。
この事態に、ユウ以外の第1部隊メンバーも全員揃って作戦指令室に集合した。
「なんだあれ!?かっこよくね!?」
コウタはジャンキラーを見てはしゃいだ。
「コウタ、状況を考えてくださいよ。またアラガミ以外の敵が現れたんですよ!?」
「そ、そうだった…ごめん」
アリサはそんなコウタをきつく叱った。この事態を聞きつけてここへ来たツバキも状況を考えろというように鋭い視線をコウタに向けていた。実際、この映像に映っているあのロボットは、防壁に向けて攻撃を仕掛けている。少年心をくすぐる憧れの眼差しで見るなど無理なことだ。
「現在、外部居住区南部を中心に被害が拡大!このままでは、居住区にアラガミがなだれ込んでしまいます!」
ヒバリがそう言っているときには、既に南部防壁の入り口は周辺の壁は、撤去作業が終わった後のように跡形もなく破壊されていた。
「ツバキさん、防衛班だけでは守りきれません。私たち第1部隊にも出動要請願います!」
「わかった。エイジス防衛中の第3部隊にも救援要請を出す。くれぐれも無茶をするな」
サクヤが出動を願い出ると、ツバキも第1部隊に出動許可を下ろした。
すると、そこで遅れてきたソーマがユウたちの下にようやく姿を現した。
「ソーマ、何をやっている!外部居住区に新たな敵が現れたんだぞ!」
すぐにここへ来なかったことに、上官として厳しくツバキはソーマに怒鳴った。
「…わかっている…!」
そうだ。言われずとも、例え待機命令を下されても行かなければならない。
あのロボットには自分が心の傷を抉ってしまったエリナがいるのだから。
彼には、そのロボットに見覚えがあった。糞親父とサカキのおっさんにメテオールとやらのデータを手に入れるために赴いた任務先、そこで遭遇した宇宙人がプリティヴィ・マータの不意打ちに驚いて置いて行った人形にそっくりだ。それを最後に持っていたのがエリナだ。
スパークドールズ。最近現れ始めた合成神獣の素材となっている、命を持つ謎の人形。アラガミはそいつを捕食することで人形の特徴を得て合成神獣へと進化する。
以前自分がジャンキラーのスパークドールズと一緒に回収したダークダミースパークさえあれば、合成神獣を作り出さずとも十分な駒として利用できることを、エリナが実際にやって見せた。
「くそが!」
ソーマはすぐさま指令室を出た。
「ソーマ!おい、どうしたんだ!」
「ソーマ、待ちなさい!」
仲間たちの声に耳を傾けず、彼は真っ先に神機を持って出撃、ユウたちも後を追った。
ジャンキラーの暴挙を阻止すべく、先に到着していた第2部隊はジャンキラーと交戦し始めた。
「ブレンダン、俺たちで奴の足元を中心に攻撃して注意を引け!こっちに注意が向いたら少しずつ防壁から遠ざける!十分離れきったら、カノンはあいつにデカイ一発をかましてやれ!いいな、誤射るなよ?」
「了解した。踏み潰されないように気を付ける」
「わ、わかってます!これだけ大きな的なんですから誤射なんてしません!」
タツミからの提案にブレンダンとカノンは受理し、早速行動を開始した。
ジャンキラーは大型アラガミよりも比較にならない大きさ。使用しているのがブラスト銃神機のため遠距離固定で戦うカノンと違い、迂闊に近づけばブレンダンの言ったとおり踏み潰されてしまう。捕食形態で現れるアラガミの顎で遠くから噛み砕きながら攻撃した方がよさそうだ。それに、ジャンキラーも第2部隊の侵攻を見て彼らを敵と認識、右腕を突出し、その手首に搭載されているキャノン砲から砲撃を開始した。
砲撃の嵐が、ゴッドイーターたち3人を襲う。
「ひゃああ!!」
絶え間ないその連続砲撃は、攻撃する際以外は気弱なカノンを慌てさせた。まるで足元ではじけるねずみ花火を避けるかのような足取りで彼女はジャンキラーの砲撃を避けていく。
タツミとブレンダンは砲撃の雨の中を、時によけ、時に装甲を展開しながら十分な距離まで接近する。
「ブレ公!」
「うむ!」
二人は捕食形態を展開し、ジャンキラーの関節部に向けて捕食形態を伸ばした。展開されたアラガミの顎は、ジャンキラーの足の関節部にかじりついた。
しかし、敵の体の一部を捕食したはずなのにバースト状態は起きない。一瞬違和感を覚えたが、すぐにその理由を理解した。
(そうか。ヒバリちゃんの通信によると、こいつはアラガミじゃないからか)
バースト状態は、捕食形態でアラガミの体の一部を神機で食らわせ、神機を通して取り込んだオラクルエネルギーをゴッドイーターの体に取り込ませることで、ゴッドイーターの体内の偏食因子を活性化させることで発生する。しかしジャンキラーはアラガミではない。純粋なロボットだ。
しかし、関節を破損させたのなら、奴は立つことも難しくなる。まだ直立できるにしても、食われた表面の金属部がなくなって、内部が露出される。そこをカノンに攻撃させれば奴の足を破壊できる。
だが、捕食形態の神機にかじらせたというのに、神機はうまく噛み砕ききれず、噛みついたままだった。
「く、固い…!」
神機もアラガミだから、ある程度のものなら噛み砕いたりさせることだって可能だ。けど、奴の体を覆う金属があまりにも固すぎる。ほとんどダメージが入っていないが仕方ない。
「カノン、奴の膝を狙え!!」
「は、はい!!…ふふ、吹っ飛ばしてあげる!」
タツミからの指示を受け、カノンはいつも通り豹変しながらも、ジャンキラーの露出した膝の内部に目がけて砲撃した。…が、それは砲撃というか乱射に近かった。直接狙いを定めたというよりも、ひたすら乱射を続ければいつかは当たるだろうという当てずっぽうさ満載だった。そのため狙うべき膝以外にもカノンの砲撃が何度も着弾する。
(相変わらずむちゃくちゃな…)
何度もカノンの誤射率の高さを矯正しようとしたが、全く改善が見られない。味方であるこっちにとばっちりが来ないかいつも心配になってしまう。だが、乱射されている弾丸は、狙うべき膝の関節部分にはしっかり当たっていた。
膝を狙われ、膝に内部の機器が露出されたジャンキラーは動きを止めた。
「今だ!」
高く跳躍したタツミとブレンダンは神機を頭上から振りかざし、ジャンキラーの膝を狙った。ひびが入らずとも、一定の衝撃を受けた金属はややもろさを生み出すはず。空中に飛びながら、ブレンダンはチャージクラッシュの発動準備を完了させている。もしかしたら行けるかもしれない。
…そう期待を寄せたが、それは夢想に終わった。
二人の斬撃をもってしても、ジャンキラーの強固なボディを砕くことができなかった。まるで剣で受け止められたかのように金属音を鳴らしながら、二人の神機の刀身は跳ね返った。
「ちぃ!!」
弾き返され、その反動で二人は地上に着地するが、そこを狙ったのか、ジャンキラーの目から放つビーム〈ジャンレザー〉が彼らを襲った。
「ぐあぁ!!」「うおおぉ!!」
「タツミさん!ブレンダンさん!!」
間一髪、直撃寸前で回避したため直撃せずに済んだが、それでも爆風で吹っ飛ばされ、それを見たカノンの悲鳴が響いた。彼女の声を聴いて、ジャンキラーが今度は彼女に狙いを定めた。接近戦しかできない二人より、遠くから砲撃が可能な彼女の方が厄介だと感じたのかもしれない。
「逃げろ、カノン!」
ブレンダンが叫ぶ。だが、ジャンキラーはその警告よりも早く、カノンに向けて手から放つ〈ジャンキャノン〉を放った。
「きゃああ!!」
思わず目を伏せるカノンだがそんな彼女の前に、突如一人の人影が飛び出した。
一足先に出撃したソーマだった。
「ソーマさん!?」
突然のソーマの登場に驚いている間に、ソーマはタワーシールドを展開しカノンを狙う砲撃を防御した。だが神機の装甲の中でも最も頑丈な種別であるタワーシールドでもジャンキラーの砲撃は防ぎきれず、爆風でソーマは吹き飛んでしまい、地面に叩きつけられてしまう。
「っがぁ…!」
「「ソーマ!」」「ソーマさん!」
落下したソーマはうつぶせに倒れ、すぐに起き上がれなかった。しかもジャンキラーはこれを見て、彼に止めを刺そうと、胸の無数のランプに光を灯す。
だめだ、今自分たちは奴の砲撃でダメージを受けてすぐに動けない上に、ソーマをあいつの攻撃から逃すには距離が開きすぎていた。
再びジャンキャノンの砲口が、ダウンしたままの彼に向けられ、光を放…とうとした時だった。
ジャンキラーの胸元や顔に向けて、遠距離から射撃が浴びせられた。ジャンキラーは不意打ちを受けて仰け反り、攻撃を中断する。
「みんな無事!?」
「…間に合ったか」
起き上がったタツミたちが見たのは、援軍に現れた第1部隊メンバーたちだった。
「ソーマ、しっかり!」
「もう、いきなり飛び出したりしないでください。心配するじゃないですか」
「…黙れ」
ソーマはゆっくりと起き上る。
「な、その言い方…!」
「てめえだって人のこと言えるか」
「ぐ…」
反発しようとしたアリサだが、ソーマに昔の自分のことを指摘されて押し黙る。
ユウはソーマとアリサの前に立ちながら、神機を構えてジャンキラーを見上げた。
(こいつはいったい…)
アラガミの他、合成神獣に宇宙人と、様々な敵と戦ってきたユウだが、今度の敵はさらに異質さを感じさせた。まさかロボットと来るとは。機械を弄って生計を立てていたこともあるので興味はそそられるが、こいつは極東支部を狙ってきた敵だ。
しかしこいつ…一体なんのために、なぜここを攻撃しているのだろうか。ユウと同じく、サクヤもスナイパー神機を構えながらそれを考えていた。
二人ともまた違い、ましてやコウタのようにやや興奮気味の視線を向けているとも違った考えを持ったのがソーマだった。
(エリナ…!)
すると、考えつく間も与えまいと、ジャンキラーがジャンキャノンを乱射してきた。
ユウは背後のアリサとカノンの前に立ちふさがったまま装甲を展開し防御した。だが、装甲の中では展開速度が速い分ダメージ軽減度と耐久の低いバックラー系統の装甲では完全にダメージをシャットアウトできない。装甲越しに振動という形でユウはダメージを受けた。
「ぐ…アリサ、今のうちにソーマを下がらせて!」
「はい!さあソーマ…ってソーマ!?」
ユウが攻撃を防いでいる間、アリサはユウに言われた通りソーマに手を伸ばそうとするが、ソーマはその手を払ってジャンキラーに突出した。
――――あなたは…兄をその程度にしか見てなかったなんて…本当、他の人たちが言っていた通りですね。だからあんな言い方を平気で言えるんですよ。
『死神』さん。
ここに来る直前にエリナが言っていた言動が頭に焼き付いて離れない。それがソーマの心を危うい方向へ加速させる。
「うおおおおおおおお!」
ジャンキラーの足をぶち砕こうとバスターブレードを振り回し、はじかれてもまた再び叩き込む。踏みつけられそうになると回避し、再び近づいて神機をがむしゃらにジャンキラーの足元で振るって暴れた。渾身のチャージクラッシュをジャンキラーの足に叩き込む彼の頭にあるのは、ジャンキラーの中にいるエリナと、もう一度会って話をすることだけだった。
クールなキャラをしているはずのソーマがいつになく暴走しているようにも見えるほどにアグレッシブになっている様は、見ている者を困惑させた。
「ソーマの奴どうしたんだ!?あいつにしては熱くなりすぎだろ!?」
「コウタ、このままだと二人がやられるわ。援護を!」
「はい!」
攻撃を続けるソーマと、防御態勢に入ったままのユウを援護すべく、サクヤとコウタが同時にジャンキラーに向けて砲撃を開始した。
「僕も行きます!!はぁ!!」
二人の砲撃で一時的に攻撃を止めたジャンキラーに向け、装甲からアサルト銃に切り替えたユウも共に射撃する。すべての弾丸はジャンキラーに直撃し火花を起こしたものの、ジャンキラーはびくともしなかった。
「ぜ、全然効いてないですよ!?」
「予想以上に頑丈ね…」
銃型神機で最も威力が高いブラスト神機を使うカノンでも貫けないわけだ。だがこれだと、こちらに決定打がほぼないに等しいことになる。
(やはり、ギンガに変身しないと…!)
このロボットはアラガミとは比較にならない。となると自分が変身しなければこいつに勝ち目がない。でも、まだここでは仲間たちの目に留まり過ぎている。どうにか変身できるような物陰さえあれば…だが、物陰に隠れたところでジャンキラーの目にもついてしまうのも明白だ。
「アリサ、メテオールは!?」
メテオライト作戦で、ベヒーモスにもダメージを与えたあの強力なバレットでなら決定打を与えられるのではないか?そう思ってユウは後方にアリサに向けて尋ねるが、アリサが首を横に振ってきた。
「すみません…あのバレットは新しいものができてないんです!!」
残念なことに、メテオール『オラクルスペシウム』は新しい弾ができていない。サカキやリッカたち技術班がかなり苦戦して作り上げたものだから、そう何度も短期間で作れるものではないようだ。
すると、ジャンキラーの足元で暴れ続けていたソーマが、ついに回避するのがきつくなり、思わず足を止めてしまったところを蹴飛ばされた。
「っぐあぁぁぁ!!」
「ソーマ!!」
さっきよりもかなり重く一撃が入ってしまい、落下したソーマはそのまま動かなくなった。
すぐさまユウはソーマのもとに駆けつけた。
「カノン、ソーマを!」
「はい!」
衛生兵でもあるカノンにすぐタツミは支持を出し、カノンも彼のもとに向かう。
「ソーマ、しっかりして!」
倒れているソーマの肩を揺すって呼びかけを続けると、意識がもうろうとしているソーマの口から声が漏れ出た。
「…な…」
「え?」
「……エリ…ナ…」
「エリナ?」
うわごとのように、なぜかエリナの名前を口にするソーマ。なぜ彼が今彼女のことを気にして…?すると、ユウの服のポケットから姿を現したタロウがユウに向けて声を上げた。
「まずいぞ!あのロボットの中…エリナがいるぞ!」
「なに!?」
予想だにしない彼の報告にユウは驚愕する。タロウの透視でエリナの姿を見つけたのだろう。まさか姿の見えないエリナが、あの中によりによってあの中にいるなんて。
「そういうことだったのか…!」
ユウは理解した。さっきまで冷静さを失ったソーマがジャンキラーに向かって単身暴れ続けていたのは、あの中にいるエリナを助けるためだったのだ、と。
「あはは…あはははははは!!」
高揚感。興奮。
今のエリナの心を支配しているのはそれだった。
手に取ったダミースパークを振るいながら、彼女は自分が搭乗しているジャンキラーに、極東支部の外部居住区を砲撃させていった。
ジャンキラーの砲撃はすさまじく、しかも遠い場所にまでリーチが行き届いていた。居住区の家は粉々に砕け散り、逃げ遅れた人たちが爆風にあおられていく。本当ならその光景に心を痛めずにいられないはずのエリナは、笑っていた。まるで、つまらない日常に辟易した果てに自分以外の命を見下す引きこもりの少女が、自分が安全な場所にいることをいいことにゲーム感覚で人の命を食いつぶすかのように。
アラガミも、エリックを助けてくれなかったやつらも、みんな憎い。そいつらをぶっ潰すのが…とても楽しい。
何も疑問を抱くことなく、彼女はジャンキラーで破壊活動を続けていった。
その分だけ、兄エリックと同じ死という結末をたどっていく人たちもいるのだと…理解しないまま。