ULTRAMAN GINGA with GOD EATER   作:???second

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ついにアニメ『ULTRAMAN』がNETFLIXで…!
テレビアニメじゃないのが気になるが見ることは可能なので構わぬ!
TVシリーズのオマージュ要素が、アニメだとどのように表現されているのかが気になります。

ちなみに本作も200件お気に入り登録数を突破しました!みなさんありがとうございます!まだまだ伸ばしていきたいです。


決戦!暴君対第1部隊

ベヒーモスの方から、先に向かってきた。ギンガはとっさに身構えて応戦する。

前足だった拳を突き出してきたベヒーモスの攻撃を何度も放つベヒーモス。ギンガは受け流し、蹴りを返して押し込める。ベヒーモスは特に堪えていないのか、近づいて拳を放とうとするギンガの数多をすぐさま上から殴り付け、怯んだところで両腕の爪で切り付ける。

胸元に痛みを感じたが、幸運にも浅かった。ギンガは追撃に出てきたベヒーモスの顔に回し蹴りを叩き込んだ。そのわずかな怯みが出たところで、今度はベヒーモスの首を脇下に挟んでその頭に拳を思い切り叩き込んでいく。

頭に鈍痛を味合わされ、痛みの分だけ不快感を覚えたベヒーモスが、全身から雷をほとばしらせた。

「グガァ!?」

雷撃を受けてギンガは思わずベヒーモスを離してしまう。痛みを味わう間も与えられず、さらに雷の弾丸を二発、ギンガの顔と腹にそれぞれ撃ちこまれ、ギンガはぶっ飛んでしまう。しかし、宙へ浮いたギンガの体を、ベヒーモスの尾から延びた触手が捉えて引っ張り出す。奴の背中のマントのような翼が大きく広げられる。裏側に鉄の処女のように棘のような牙が並んでいる。あれで噛み砕いて食うつもりなのだ。

(食われてたまるか!)

ギンガは宙へとび逃げようと抵抗しながら、全身のクリスタルを紫に光らせる。そして一気に彼を食べようとベヒーモスが触手を引っ込めギンガを翼で包み込もうとしたところで、ギンガの頭のクリスタルから光線が飛ぶ。

〈ギンガスラッシュ!〉

「シュア!」

光線はベヒーモスの腹に至近距離で直撃、ベヒーモスの尾からギンガは解放され着地した。ギンガはダッシュして光線を受けてかなり怯んだベヒーモスの体を、光の剣〈ギンガセイバー〉で切り刻みまくった。

「オオオオオオオ!!」

「ギギギギギイイイイイ!!」

火花と血を飛び散らしながら、ベヒーモスは後退した。

「グガ…!」

「はぁ、はぁ…!」

激しい激闘が続き、ベヒーモスとギンガのお互いの体力が減っていく。だが、徐々にギンガの方が押し始めていた。

(馬鹿ナ……!?)

ピターとしてボガールを取り込んだ姿でもあるベヒーモスは、人間に近い感情さえも手に入れ、言葉も発するようになった。今の奴は、自分が追い詰められつつあるこの状況に驚愕と屈辱を抱き始めていた。

…もう妥協してる暇などない。

「…前ヨリハ、ヤルヨウニナッタガ…」

ニタッと笑うベヒーモスは全身に力を込める。すると、ベヒーモスの体に異変が起き始める。

右腕にサーベルが生え、首回りにたてがみのような体毛、頭から金の冠が現れる。首から下の肌を黒いボディスーツのようなものが覆われ、所々に金の意匠が、へその辺りにマグニスのスーツにもあしらわれたマークがある。

他にもピターの頃に持っていたあの鋭い剣が織り成しているような『刃翼』が展開された。刃翼の間にコウモリの翼のような膜が張られ、その中に鋭い棘が牙のように生えそろっている。前のマントのような翼よりもさらにおぞましさが増していた。

姿を変える前と異なって冠と剣を携えたその姿は、以前にも増して帝王らしさを現していた。

「所詮、貴様ナド我ニトッテタダノ御馳走デシカナイワ…!」

「な…!!」

形態変化を起こしたベヒーモスに、ギンガは目を見開く。サーベルと金の冠と鬣、あれらはすべて、奴が食らった星人たちの特徴だ。

驚愕するギンガの隙を突いて、ベヒーモスがマグマ星人のサーベルを振りかざしてきた。

あと少しのところで顔面にサーベルの剣先が突き刺さろうとしたところで、ギンガは我に返り、頭を横に傾けてよけた。だがベヒーモスの剣は止まらない。さっきまで剣を持ったことがないのに、こいつは達人級の剣さばきを見せていた。

自分もギンガセイバーを作り出し、ベヒーモスのサーベルさばきに対抗する。アラガミを相手に、まさか剣の勝負をするとは思わなかった。剣と剣が何度もぶつかり、激しい金属音が森の中へと響き渡る。

剣の扱いには、ギンガ=ユウは神機を使っていく内に心得えつつあった。彼はベヒーモスの剣撃を避けたり剣で防いだりしながら、光の剣でベヒーモスの体を斬りつけようとした。

「フ!!」

しかし、傷を負わせられなかった。体に当たっただけで、そのまま奴の体に食い込むことさえもできなかった。おもちゃの剣で叩くほどの威力さえもないとでも言うように、ベヒーモスの体に何一つダメージが通っていなかった。

効いてないことに驚いている間に、ベヒーモスによって次々とサーベルを食らってしまう。

「グアアアアア!!!」

サーベルで斬りつけられるたびに、火花がギンガの体から飛び散った。

 

 

 

「お、おい…なんかあいつやばくなってんぞ」

避難所の方から、集落の人々がギンガとベヒーモスの戦いを見守っていた。しかし姿を変え、形勢逆転したベヒーモスと、苦戦に陥ったギンガに、彼らは不安を抱かずにいられなかった。

(何てことだ…!)

物陰から隠れながら見ていたタロウもベヒーモスの恐ろしさに恐怖さえ感じた。

やはり自分も赴くべきだろうか。そう思っていたタロウだが、避難所の人々に目をやる。バルキー星人たちはまさか三人まとめて食われるという結末を迎えたが、闇のエージェントはあいつらだけじゃない。まだ見ぬ別の闇のエージェントが人質に取ってくることや、他のアラガミたちがここへ来るかもしれないから動いてはいけない。そうユウから念を押されていたのだ。人質作戦を使われたり二重方面での攻撃には、ユウは対応しきれない。これまでのウルトラ戦士たちも人質を取られて身動きを封じられることは多々あった。もしその手を使われては、今のギンガとユウでは勝つことが今以上に難しくなってしまう。

だがタロウも歯がゆかった。相変わらず本来のサイズへ巨大化できず、できることと言えば念力で敵の動きを一時的に封じたり攻撃を防ぐことくらいだ。

ウルトラ兄弟の一人として宇宙の平和を守っていたあの頃が懐かしい…いつも思うことだがとても悔しい気持ちを抱きながら、タロウはギンガの戦いを見守った。

 

 

 

反撃しようと、ギンガは全身のクリスタルと青く光らせ、両腕をL字型に組んだ。必殺光線〈ギンガクロスシュート〉だ。

「デヤアアアア!!」

ベヒーモスの恐ろしさはサーベルだけではない。ピターだった頃の名残でもある刃翼もあった。

ベヒーモスはギンガが光線を撃つと同時に、自分を包み込むように翼を盾のように展開した。ギンガの光線が、刃翼に直撃する。光線の威力を高めその盾を貫こうとするが、あまりにも手ごたえを感じられず、ギンガは思わず光線を止めた。刃翼には傷一つ付いていない。

(そんな…!!)

「ガアアアアアアア!!」

「ウグォ!?」

ベヒーモスが飛び掛かるように突進を仕掛けてきて、ギンガは地面を引きずられるように滑って行った。

滑り終わったところで、ギンガは腹を押さえながら立ち上がろうとするが、そんな彼の動きを予知したかのように、遠くから雷の弾丸が飛んできた。一発だけじゃない。それも5、6……いや、気が付けば20もの個数の雷の弾丸が、ギンガを逃がすまいと頭上と左右全ての位置において彼を取り囲んでいた。

「…焼キ加減ハ………うぇるだんダ」

ベヒーモスが勝ち誇るようにニタリと笑う。奴の感覚では、料理に使う肉を焼く感覚だった。なめてかかっているとも取れるその言動にムカつきを覚えたギンガは雷の弾丸を、ギンガセイバーを形成してはじき落としてやろうと思ったが、その時だった。

地面から次々と、木の根のようなものが伸びてギンガの体に絡みついた。

(何!?)

なぜ木々の根が自分を!?あいつは植物のアラガミではなかったはず…と思ったところで、ギンガは気づいた。この根は、集落の周りを囲っているあのアラガミの木々のものだ。

(まさか…あいつが!!)

そうとしか思えない。自分が反撃に転じようとしたところでこの木の根たちは自分を襲った。あいつが周囲の偏食場を狂わせて木々を操っているのだ。

「くそ!!グ!!」

ギンガは木々を振りほどこうともがくが、ギンガの体に木の根以外にも、木から延びてきた赤々としたオラクルの棘が伸びてギンガの足に次々と刺さりだした。

「アグ!!く…!!」

激しいダメージの蓄積に、ギンガは膝を着いた。

アラガミは、捕食した物質の特性と姿を手に入れる。捕食した星人たちの戦闘力を引き出し形態変化という形で圧倒的なパワーアップを遂げたベヒーモスにより、ギンガは劣勢に陥った。

止めを刺しに、ベヒーモスはサーベルの剣先をギンガの首筋に向けた。サーベルからは、ピターの名残でもある電撃がほとばしっている。奴は、ギンガを突き刺そうとサーベルと突き出した。

ギンガはすぐに刀身を掴んで防ぐ。だが、両手に走る電撃のダメージが彼を苦しめた。

「グウウウウウゥゥゥゥ…ガアアア…!!!」

全身に行き渡るように走る雷に、ギンガは悶え苦しむ。だがそれでも、自分の喉を貫こうとするサーベルからは手を離さなかった。

ベヒーモスは顔を歪めていた。さっさと貫かれてしまえばいいものをと言うように、サーベルを押す力と電撃の威力を強めていく。

ギンガの絶叫がさらに強く響く。根性でサーベルを掴み続けるも、次第にギンガの力が弱まって次第にずれるようにギンガの喉に針のような剣先が近づく。

このままでは、今度こそこいつに…!

死んでたまるかと思いながらも、電撃による全身に感じる激痛のせいで力が入らなくなっていく。

そんなときだった。ギンガとベヒーモスの頭上に向け、3発のバレットが放たれる。銃声を聞いてベヒーモスとギンガが頭上を見上げそれを見る。

「!?」

バレットは三ヶ所に点在し、互いに線を結びあって三角形を作り出す。すると、その三角形の中へベヒーモスの電撃が吸い取られ始めた。ベヒーモスは顔を苛立ちで歪めた。今のは目の前にいる餌の技ではない。つまり一体どこの馬の骨が邪魔をしたのか。

今の三角形の正体にギンガはもしやと思って周囲を見渡す。

森の入り口に見覚えある三人の姿があった。

サクヤ、コウタ、ソーマの三人だ。

「やった!」

「やったわねコウタ。あなたの考えたバレットがウルトラマンを救ったのよ」

「へへ…」

コウタはサクヤから誉められ、照れ臭く笑った。

(今の、コウタのだったのか!)

ギンガの状態のため、遠くからでも彼らの声を聞き分けられたユウは驚いた。コウタは難しいことは苦手だと本人も自認している。長話を聞いている内に理解が追い付かなくて眠気に苛まれるくらいだ。そんなコウタが、あのベヒーモスの攻撃を無力化するバレットを製作したのだ。他の銃型神機使いの手も借りたのだと思うが、それでも彼が予想を超えた部分を発揮したのは間違いない。

「笑ってる場合じゃねぇ。あのアラガミの姿を見てみろ」

ソーマが浮かれるコウタに水を指すように言う。サクヤたちも、改めてベヒーモスの姿を見て戦慄する。

「また、ピターの姿が変わってる…!」

宇宙人たちを捕食したことで、まるで王を気取るような外見に変貌している。

(ふざけやがって…あのバカの姿も見当たらねェ。いったい何をしてやがる)

ソーマは不快そうに呟いた。自分はありとあらゆることを許された存在だと誇示しているようにも取れ、それが彼の神経に触った。しかもここにいるはずのユウもいない。連絡が途絶えたと、先ほどツバキから通信が入ったが、無事の連絡もできないのかと不服に思う。しかも今はギンガと合成神獣の戦いの激しさ故に、彼を探す余裕がなかった。

「みんな、まずはウルトラマンを援護するわよ!コウタはウルトラマンの体に絡みついている木の根を!ソーマと私であいつの注意を引くわ!」

「はい!!」

ここはギンガを援護し、余裕を持った状態でユウの捜索を行えるようにしようという意志だろう。サクヤが強く言い放ち、三人は駈け出した。

「なんなんだよこの木!ギンガ、すぐにその木の根を解いてやるから!」

そんな言葉がコウタの口から出てきた。コウタがバレットを撃って、ギンガの体に絡みついている木の根を攻撃する。すぐに千切れたりはしないものの、少しずつコウタの弾丸で木の根の拘束が弱まって行った。

弱まった拘束を強引に引きちぎり、ギンガはベヒーモスをタックルで突き飛ばし、後ろにバク転しながら距離をとった。

サクヤのスナイパーの弾丸がベヒーモスの体に何度も被弾させ、ソーマから肩にバスターブレードを担いで接近する。神機もアラガミ、大概のものを食らって切り裂くことは可能だ。奴の体のどこかに、神機でも傷を負わせることが可能な部位があるはずだ。

ベヒーモスがソーマの接近に気付いて、右手のサーベルで彼を串刺しにしようとする。突き出されていくサーベルを、彼は紙一重で避けていく。しかもサクヤが遠くから援護射撃を行ってベヒーモスの行動を妨害していることもあり、ソーマに攻撃が当たることはなかった。

ハエのような存在にしか思えない小さな人間に翻弄されたことに、ベヒーモスは次第に腹を立てていった。頭に血を登らせたのか、サーベルのみで強引にソーマを殺そうと刀身を突き出していく。すると、ソーマはベヒーモスが付きだしたサーベルの刀身が地面に刺さると同時に、その刀身の上に自ら飛び乗り、その上を伝って駆け上りながら、肩に担いだ神機のオラクルエネルギーをチャージしていく。

「…喰らえ…!!」

フルチャージを完了させたと同時に、ソーマは跳躍。ベヒーモスの顔に向けてバスターブレードを振り下ろした。

チャージクラッシュが、奴の目に直撃しようとしたところで、ベヒーモスの刃翼がそれを阻んできた。ソーマのチャージクラッシュはその刃翼とぶつかり合い、ベヒーモス本体への直撃は叶わなかった。

「っち!!うおおおおおお!!」

だったらこのまま無理やりにでも砕いてやる!ソーマはチャージクラッシュをそのまま続け、神機に込める力をさらに強めた。金属を切り裂くような音が響き、彼の神機の刀身が1センチ、3センチと次第に食い込んでいく。

ベヒーモスは顔をしかめ、ソーマが自分の刃翼の一部を砕こうとしている間に、目から放った念力でソーマを突き飛ばした。

「ぐあッ!!」

「ソーマ!!」

ソーマが吹っ飛んだのを見てサクヤが声を上げる。何メートルもの高さから地面に落下したソーマ。ゴッドイーターだったおかげで落ちても即死することなく、かなり強い打撲で済んだもの、ベヒーモスは自慢の刃翼を見やる。

わずかだが、ソーマのチャージクラッシュが食い込んで傷が少しだけ入っている。おそらくギンガの光線を受けた個所が少しだけ脆くなり、ソーマのチャージクラッシュでさらにヒビが加えられたのだ。だがそのほんの少しの傷さえも、ベヒーモスはこれまでにないほどの屈辱を覚えた。

『餌ノ分際デ…ヨクモ…』 

自慢の刃翼傷つけられ、激しい怒りに駈られた。格下の、餌程度の存在でしかない人間どもの前で、また醜態を晒す羽目になった。身勝手な怒りを力に変え、ベヒーモスのオラクルエネルギーが高ぶっていく。

「ガアアアアアアアア!!!!」

その憎悪に満ちた赤い雷がベヒーモスの全身から放たれた。

一瞬だった。ギンガ、コウタ、サクヤ、ソーマ。全員に視界を赤く染め上げるような深紅の電撃が襲いかかった。

「うわああああああああ!!!」

「ぐがぁ…!!」

「きゃああ!!!」

「ウワアアアアア!!!」

あまりの威力に、コウタが作ったバレットによる電撃吸収サークルも電撃を吸収しきれず砕け散り、周囲を強い爆発が襲った。

赤い雷はギンガや第1部隊だけにとどまらず、大地を切り裂き、森をも燃やす。その炎がさらに世界を血のような赤に染めていった。

 

 

 

かつてないほどの威力の雷。このまま浴び続ければ、今度こそ殺されてしまう。それを浴びせられる中、ユウは意識を繋ぎ止めながら考える。リンドウだったら逃げることを提案しただろうか。でも、ここで逃げることも奴はきっと許さない。でも、今の自分に、何かしらの手立てがあるとは思えなかった。

(だめだ…ここで、こいつに屈したら…この集落の人も、アナグラの人たちも……みんな……!!)

ギンガの中でユウはなおも闘志を燃やし続けていた。

諦められない。決めたのだ。ここでこいつを倒すと。

防壁の外で極東支部に入れず死んでいった人々、自分のようにかろうじて女神の森で生き延びている人々、アナグラで仲間となったゴッドイーターたち。

そして、いなくなってしまった亡き妹や、リンドウ、エリックが守ったこの大地を守るためにも。

「諦めるかああああああああ!!!」

 

ユウがその思いを叫んだ時だった。

 

 

極東支部地下、アナグラの新人区画にあるユウの部屋。

ユウ不在のため真っ暗だったその部屋に置いてあるものがあった。

かつて、タロウと同じくウルトラ兄弟の一員として活躍した英雄、ウルトラマンジャックのスパークドールズ。

義弟であるタロウがいくら声をかけても、何も反応を示さなかったその人形の目に、わずかに光が灯った。

ユウの諦めない思いが届くと同時に、それに応えるようにジャックの人形は瞬時に消えた。

 

 

その瞬間に、ユウの目の前にジャックの人形が現れた。

「ウルトラマンジャック…!?」

思わぬ来訪者にユウは驚いた。最初のピターとボガールの襲撃で濁流にのまれた時に助けてもらった時はあったが、それ以外の時は少しも反応を示さなかった人形がこのタイミングで来てくれるとは、まるで自分の叫びを耳にしてくれたかのようだ。

「そうか、あなたも…」

ユウは感じ取った。ジャックは人形となり、言葉も反応も示さないが……その中にある彼の魂は生きている。それは、同じウルトラマンだからかギンガも同じだった。

『ユウ、彼を…』

「ギンガ?」

『彼の力を借りるんだ』

力を借りる?

疑問を抱くユウだが、その意味をすぐに理解した。ジャックの足の裏にもタロウやギンガと同じく、『ライブサイン』が刻まれている。

ユウはジャックに向けて頷いた。

「ウルトラマンジャック、あなたの力をお借りします。僕とギンガと一緒に戦いましょう!」

ジャックのスパークドールズを手に取ったユウは、彼の足の裏のライブサインをギンガスパークでリードした。

 

 

 

 

 

【ウルトライブ!ウルトラマンジャック!】

 

 

 

 

 

リードを完了したギンガスパークとジャックのスパークドールズが十字形の光に包まれる。

それを右手で頭上に掲げると、ユウもその光と共に身を包んでいった。

 

 

 

 

タロウたちがいる避難所にも、雷の光は見えていた。

「な、なんだあれ!!」

窓の外から見える閃光はまばゆく、世界を赤く染めた。まるで血が大量に噴き出たようなおぞましさが現れた。目を背けたくなる光景だったが、さらにそう思わせるようなことが起きた。雷の衝撃で、窓ガラスが全て破壊されたのだ。

「ぬう!!」

タロウがいち早く動いた。飛び散るガラスの破片で彼らが怪我をしないように念力で弾き返していく。

「きゃあああああ!!!」

「だ、だめだ…おしまいだ…」

「俺たち、あの化け物に食われるんだ…」

女性たちや子供たちの悲鳴が響き、男性たちも頭を抱えて絶望する。

タロウも心が疲弊しそうになった。そして何度も繰り返してしまう。自分がこんな小さな人形でさえなければ、と。それだけに、外で自分の分も戦うギンガの事が気がかりだった。

(ユウ、ギンガ…!!)

もう我慢ならず、自ら飛び出して行こうと思った時だった。

雷がほとばしり続け、最後に一度爆発が起きたと同時に収まった。

 

タロウは、爆炎の中から一筋の光を見つけた。

 

 

 

見たことのある、十字形の輝かしい光が。

 

 

 

(あの光は……まさか!?)

 

 

 

 

 

爆発の後、立ち込める煙の中から姿が見えた第1部隊の面々は、揃ってダウンしていた。

体中があの一瞬で傷だらけになっていた。

「うぅ…ぐ…」

全身が強すぎる電撃の影響で、彼らは指一つ動かしきれないほど体が麻痺していた。だが、サクヤ、コウタ、ソーマ。三人は自分たちが思ったほど傷が深くないことに気付いた。ピターから進化を遂げ、闇のエージェントたちさえも捕食した以上、その力も遥かに増しており、本当なら自分たちもあいつの今の攻撃で死んでいてもおかしくなかったはずだ。でも現に自分たちは生きている。

三人は顔を上げた。視線の先に巨大な銀色の背中が見えた。

「ギンガ…!」

ウルトラマンギンガが、自分たちの前で身を屈めた状態でその身を盾にしていたのだ。

しかし、視界が晴れていく内に、彼らは違和感を覚えた。彼は結構筋肉質な体をしていた。だが目の前の巨人は、ギンガとほぼ同等のサイズだがギンガにしては、細く見えた。

ギンガのようで、ギンガではないような…

…いや、違う。

「ギンガじゃない!!?」

その姿の全容を見てコウタが声を上げた。

実際にギンガより体が細くなっていた。体の模様も刺々しいものではなく、変化前と比べると落ち着いたような丸みのある模様だ。あの特徴的な、全身の各部にあるクリスタルもない。代わりなのか、その巨人の右手に、ダイヤの形状の飾り付けがされたブレスレットが巻かれていた。

サクヤがギンガにそっくりなその巨人を見てこう口にした。

 

 

「新しい、ウルトラマン…!?」

 

 

 

 

避難所で見ていたタロウは、かつてない驚きを覚えた。悪い意味ではない。その驚きは同時に、彼にとって歓喜としか言えない。

あの姿。見間違いようがない。一度はアラガミとなってしまったことがあるが、かつて見た懐かしい英雄、

ウルトラ兄弟の4番目の戦士の姿がそこにあった。

「帰って…来てくれたんですね……ジャック兄さん…」

涙ぐむようにタロウが言った。

 

 

 

地球の時間で実に70年もの長い年月を経て、

 

 

 

 

 

 

ウルトラマンが、帰ってきた。

 

 

 




○NORN DATA BASE

・ウルトライブ『ウルトラマンジャック』
スパークドールズにされたところ、スサノオに捕食されたことでアラガミとなっていたウルトラマンジャックだが、アーサソール事件を経てユウの手元に渡る。
タロウと違い、自我は目覚めておらず、呼びかけには全く応じていなかった。だが、今回ユウの轟く叫びに呼応し、彼のもとに現れたりと、全く無反応なわけではない。
TV版『ギンガ』本編でジャックは回想シーン内のみでの登場だったが、本作ではギンガのタイプチェンジ姿のポジションで活躍。
ちなみに変身時のポーズは、インナースペース内のユウがギンガスパークにジャックのスパークドールズのサインをリードした後、本来の変身者である郷秀樹が手を上げるのと似たような感じでギンガスパークを掲げるポーズをとることで変身する。その動きと連動し、現実世界ではギンガも郷と同じ変身ポーズをとることでジャックに変身する流れを取っている。


・「新しい、ウルトラマン…!?」
セリフの元ネタは、ウルトラマンネクサスEpisode25・26話。
悪のウルトラマンである闇の巨人ダークメフィストとの闘いで姿を消したと思われたウルトラマンネクサスが、再び姿を見せた直後、新たな姿ジュネッスブルーにタイプチェンジした際に、主人公の孤門が口にした言葉。
ウルトラマンジャックは放送当時個人名を持っておらず、初代ウルトラマンとの区別するために「新マン」と呼ばれたことがあり、まさに今回のパターンの通りの呼び名といえよう。
他にも、タイトル通り「帰ってきたウルトラマン」と呼ばれた他、「ウルトラマン二世」とも呼ばれていた。


・ウルトラマンが、帰ってきた
ウルトラマンメビウス「デスレムのたくらみ」で、メビウスと防衛チーム『CREW GUYS』のピンチに現れたジャックを見て、きくち電器商会の社長が口にした台詞。
たった一言ながらも様々な意味が込められており、当時を知るファンにとっても強く響く言葉として伝わっている。


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