ULTRAMAN GINGA with GOD EATER   作:???second

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NO WAY BACK!

岩山の道をたどり、主に多数のヴァジュラで占められていた大型アラガミから隠れながらユウは北西へと急いだ。

誘導装置は正常に作動していたはず。だが現にこうしてアラガミたちは、リンドウが防壁外に追いやられた人々のために築き上げたあの集落へ向かっている。

「くそ、闇のエージェントたちめ…!!」

自分を倒すつもりだというのなら、わざわざ集落の人々を巻き込むようなまねをする必要などないはずだ。僕たちへの挑発のつもりか…!そう思うと怒りがわく。

「ユウ、冷静さを失うなよ。奴らのように狡猾な輩はそこに付け込む」

共に着いて来たタロウが、ユウに冷静さを失わせないように諫言した。もちろんわかっている。それはタロウもわかっているだろうが、人はすぐに心の平静さを失うことだってある。言葉をこうしてさりげなくかけてくれるタロウに感謝しつつ、ユウはアラガミの辿るコースを辿りながら奥地へ向かった。少しでも早く、アラガミよりも早くたどり着けるように、最短のコースを、浮遊できるタロウにナビゲートしてもらいながら。

しかし途中で邪魔が入ることもあった。

「グオオオオ!!!」

咆哮と共に、滑空しながらシユウが迫ってきた。それを飛び上がって避けると、今度はヴァジュラが上空から降りかかるように襲ってくる。

「邪魔を…!」

ユウはとっさに神機を銃に切り替え、セットしていた神属性バレットを、ユウを食うために開かれていたヴァジュラの口の中にぶち込んだ。

ヴァジュラは勢いを失って落下、口の中のダメージに悶えて動きを鈍らせる。

「喰らえ!」

ユウはすぐに捕食形態を発動。プレデタースタイル〈ミズチ〉の形でアラガミの顎がそのヴァジュラの顔を噛み千切った。顔を失い、そのヴァジュラはダウンした。今はこいつにかまっている場合じゃない。コアの回収もこの作戦の任務の一つだが、集落の状況を確かめるのが先だ。ユウは邪魔するアラガミたちを退けつつ、北西への進路を走る。

それからようやくあの集落へたどり着いたユウ。見たところ、新たに闇のエージェントに襲われた痕跡はなかった。

「よかった…被害があったわけじゃないのか」

まだこの集落に新たな被害が出たわけじゃないことにユウは安堵する。だが油断はできない。こうしている間に、闇のエージェントたちはアラガミたちを何かしらの方法で引き寄せている。

「お兄ちゃん?」

すると、誰かがユウに向けて声をかけてきた。思わず声の方を振り返ると、見覚えのある少女が彼の傍に駆け寄ってきた。

かつてアナグラのパッチテストに合格できず、リンドウの誘導でこの集落に住まうようになったあの幼い少女だ。

「また来てくれたんだ!」

嬉しそうに少女はユウの来訪を喜ぶ。さらにユウの存在に、集落の人たちも次々と気が着いて来てユウの元へ何人か集まってきた。

「あんた、ゴッドイーターの兄ちゃんじゃないか!一体どうしたんだ?」

意外そうにユウを見る一人の男性。

「みなさん、突然の再来訪を許してください。実は…」

ユウは事の次第を説明する。この近くにアラガミがある理由で近づいている事。自分はその原因を突き止め処理するために来たことを明かした。

「そんな、しかも大型種が大量にこっちへ…」

「おいおいそんなのどうやって逃げたら…」

「皆さん落ちついてください!木のアラガミたちが、大型アラガミたちの侵攻をある程度食い止めているはずです。その前にみなさんは避難を!」

アラガミの接近とユウの避難の呼びかけを聞いて、集落の人たちの動きは早かった。何度もアラガミに襲われてきて、ようやく集落へたどり着いた彼らの賜物だ。

避難所まで来たところで、ユウは皆が注目する中改めて集落のリーダーの男性に話を伺った。

「それで、ここ数日の間に誰かがこちらへ来たりはしませんでしたか?」

「この集落に新しく?いえ…」

ユウにそのように問われ、リーダーの男性は腕を組んだ。新しくこの集落に住まってきた人はいないようだ。だがこれでは情報がないままだ。ユウは質問を変えてみる。

「なら、何か別に変わったことはないですか?あまり見ないものを見たとか」

「あ、それなら私、心当たりがあるよ」

少女がユウの問いに答えてきた。

「昨日の夜中、ちょっとトイレに行こうと思って起きたら、ダムの湖の方から音が聞こえたの。結構大きなものが落ちたみたいで音が大きかった」

「湖…!」

もしかしたら、湖の底に闇のエージェントが仕掛けを作っていたのでは?そうとしか思えない。だからこちらの方に、メテオライト作戦エリアから移動したアラガミが向かっているんだ。

「ありがとう、すぐに湖に行って調べてみる。みなさんはいつでもここから移動できるように準備をしてください!」

ここもいつまでアラガミの手から逃れられるかはわからない。ユウはこの集落からもいつでも逃げられるように集落の人たちに呼びかけ、すぐさまダムの湖の方へ走り出した。

 

 

 

 

ユウが北西の方へ向かう間、残ったサクヤたちは引き続き現地のアラガミたちを掃討し続けていた。

ユウが去ってからしばらく時間が経ったが、ようやく終わりの目処が立ってきた。

「あと少しの辛抱ね。みんな、焦らず潰していきましょう!」

サクヤが仲間たちに呼び掛けながら、バレットを撃ち続ける。現状としては順調になりつつある。だがアリサは気が気でない。戦闘に支障が出ているほどではないが、ユウが無事かどうかと思うと焦って次の手を誤りそうになる。

なら、新型ならではのやり方で早くこの場を収拾しなければ。

「どうぞ!」

アリサは捕食したアラガミバレットをソーマ、コウタ、サクヤたちに、銃を介して譲渡した。放たれた光が三人に浴びせられると、彼らの体から力が沸き上がった。

新型神機使いのみが使える技、リンクバースト。通常のバーストよりも最大三段階まで一時的な強化を図れる上、単独でバースト状態になれない銃型神機使いでもバーストできる。

「おぉ!みなぎって来たああああぁぁー!」

「うるせぇ…」

「大声出すくらいなら早くアラガミを撃ってください!」

溢れるオラクルの力にテンションが上がるコウタに、ソーマがポツリと悪態をつき、一刻も早くユウを助けに行きたいアリサが怒鳴った。

バースト状態となった第一部隊によって、周囲のアラガミは駆逐されていった。

「ようやく、ひと段落…ですね」

もうどれ程の数のアラガミを撃破しただろうか。数えるのも面倒になるほどのアラガミを倒し、コアも回収した。

「そうね…みんな怪我はない?」

「私は大丈夫です!」

「俺も!」

「…ふん」

どうやらまだ戦える余裕はあるようだ。メテオライトがかなり効いたことや、北西に向けてアラガミが何体か逃げたためだろう。

全員の無事を確認して、サクヤはアナグラに連絡を入れた。

「こちらサクヤ。ヒバリ、まだ残ってるアラガミは?」

『あ、はい。作戦エリア内のアラガミの反応は、もう数えるほどしか残っていません。ですが例の北西の方角に向かってまだ大多数のアラガミの反応があります』

この近くにはもうほとんどいないが、アラガミが誘導装置から離れた北西の方にはまだ多くのアラガミの反応がある。北西に向かったユウが、そいつらを全員相手にしなければならなくなるかもしれない。

話を聞いてアリサがすぐにツバキに願い出た。

「すぐにユウの救援にいきましょう!」

『慌てるなアリサ。向かわせるつもりだが、その前に厄介なことが起きたことを伝えねばならん』

「厄介なこと?もしかして、ユウに何かあったんですか!?」

『合成神獣が現れた。お前たちが先日相手にした、ピターの異常進化した個体だろう。ユウのいる北西に進行している』

「ピターの…って、それ、めちゃヤバイじゃないですか!だったらなおさら助けに行かないと!」

コウタが酷く焦りを覚えて声をあげ、アリサに同調する。

『慌てるな。このまま救援に向かっても、お前たちでどうにかできる相手ではないことはわかっているはずだ。おまけにユウが向かっていた道中のアラガミたちを次々と喰らってその分膨大なオラクルエネルギーも取り込んでしまっている』

「そ、それは…」

『安心しろ。手がないわけではない』

危機感が高まる中ツバキが急に頼もしく聞こえるようなことを言い出した。

『まずはサクヤ、コウタ、ソーマ。現地へ向かいユウの安全を確保しろ』

「り、了解!」

『アリサ、お前には運んでほしいものがある。それを持ってから救援に向かえ』

「運んでほしいもの…?」

『サカキ博士に感謝しろよ。お前たちのために無理をなさっているからな。

わかったらさっさと動け!このままではまた一人仲間を失うぞ!』

有無を言わせない気迫のツバキの命令に、すぐにサクヤたちは動き出した。

第1部隊以外の残るゴッドイーターたちはそのまま現地でアラガミの討伐とコアの回収を行い、万が一第1部隊も危機に陥った時や、極東支部に何かしらの脅威が迫ったときに備えることになった。

 

 

 

「…ふぅ、さすがに骨が折れたよ」

医務室にて、珍しくサカキがベッドで横になっていた。

以前の任務でユウたちが回収したディスクの解析を行っていたが、彼の予想以上に解析作業は時間をかけた。メテオライト作戦開始までの数日、あのディスクのデータを解析、それをもとに神機に合わせた兵器『メテオール』の設計データを技術班に渡したり等、ろくに眠れていなかった。さっきもコンテナに押しこめた新生メテオールをヘリに乗せる準備をして多忙だった。

「熱が40度近くまで上がってますね。今日は安静にした方がいいですよ」

「あぁ、ありがとう…」

傍らで自分を診てくれているリディアに、サカキは礼を言う。

流石のサカキも、研究に没頭しては何時間もありついてしまうところがあるが、適度な休息を行わないと疲れてしまう。一体何日ほど徹夜したことだろうかとさえ思ってしまう。

「でも、すごいですねサカキ博士。何日も眠らないで…」

「私は技術屋だからね。ゴッドイーターたちと違って前線で戦うことはできない。卑屈に思っているわけではないが、こうして後ろで彼らの力となれるものを考案することくらいしかできることがない。君が大事にしているアリサ君に対しても、私の技術が大きな足掛かりになることを望むよ」

「アリサちゃん…」

アリサも今回の作戦、オペレーション・メテオライトに参加していることはリディアも知っている。彼女は貴重な新型神機使い。参加しない方がおかしいとも取れるが、一方で最近までは精神的に追い詰められていたことが多くもあった。それにアリサは、血の繋がりがなくとも自分にとっては大切な妹の一人でもあるのだ。

「立ち直ってくれたのはわかっているのに、それでもなんだか…」

「不安かな?」

指摘してきたサカキに、リディアは頷いた。

「今回私が開発したものは、急ぎの作業で必要なテストをいくつか省いてしまったが、それなりに自信が持てるものだと思うよ。旧時代とはいえ、当時の地球防衛兵器を現在のオラクル技術で再現したものだ。並大抵のアラガミが耐えられるものではないと確信している。

後はそれらをうまく扱ってくれることも含め、私たちが彼らを信じるだけだ。アリサ君や彼女を救ったという神薙ユウ君…そして彼らと一緒に戦うゴッドイーターたちを」

サカキの言葉を聞いて、リディアは少し心が軽くなった気がした。

そう、アリサの傍には彼女を支え、オレーシャとの再会さえも果たすきっかけをくれたユウ…ウルトラマンもいる。

きっと大丈夫。もうあの時のような、オレーシャを失った時のような悲劇を繰り返すはずがない。

(オレーシャ…アリサちゃんたちを守ってあげて…)

天井を仰ぎながら、天国に上った妹に強く願った。

 

 

 

 

 

 

ユウはダムの壁の上に上り、そこから湖の水面を見下ろした。到着と同時にタロウがユウの肩に乗ってきた。

「タロウ、ここから見える?」

「確かめてみよう」

住民の少女の話によると、ここに昨日の夜中に何かが落とされたという。それが、メテオライト作戦エリアからアラガミたちが移動している原因だ。タロウは目を光らせ、湖の中を覗き込む。ウルトラマンの目は透視能力を備えており、人間の目では見えないものを見通せる。

そして今、タロウは湖の底に、ランプを点らせている機械を発見した。

「アラガミ誘導装置が設置されている…!」

「誘導装置がここに?」

どういうことだ。あの装置はフェンリル以外に作れる企業なんてないはず。それを闇のエージェントたちが作り出していたのか?

「どうして?」

「いや、思い出せユウ。闇のエージェントには、フェンリルの内部に入り込んでいた者がいただろう?アーサソールの責任者だったあの男が」

「!」

ギースたちアーサソールの責任者だった男、イクス。奴の正体は闇のエージェントの一人である泡怪獣ダンカンだった。ならば誘導装置を作り出して他の仲間に予め渡していたのなら、奴らの手の内に誘導装置があるのも頷けた。

「とにかく、原因が分かった以上破壊しないと!」

ユウはすぐに神機を銃形態『サイレントクライ』に切り替え、バレットを貫通弾に変えて撃ち抜こうとする。

だが、引き金を引こうとした直前のタイミングで、ユウに向かって森の方角から紫に染まったエネルギー弾が飛んできた。

「ユウ、いかん!」

ユウが反応するより前に、タロウが前に飛び出て念力を放出、そのままそのエネルギー弾の軌道を湖の底にある誘導装置の方へと流すように変えた。エネルギー弾はそのまま湖の下へ突っ込み、誘導装置を木端微塵に破壊した。

「ありがとうタロウ」

同時に流石だと思った。不意打ちで放たれた敵の攻撃を利用して装置をすぐに破壊させるとは。

「油断するなユウ。どうやら奴らが来たようだ」

タロウが警告を入れると、彼の言うとおり三人の影が、ユウの前に姿を現した。

「流石にあの程度で死ぬとは思わなかったけど…できればここで死んでほしかったところね」

ナックル星人グレイが、少しがっかりした様子で呟く。

「ふん、すぐに死なれたらいたぶりがいもないがな」

サーベルをそっと撫でながらマグマ星人マグニスが言った。

「やはりお前たちの仕業か、あの装置は」

誘導装置が設置された湖の底を指さしながら、ユウは鋭い視線を向けて問いかけた。

「何を考えているんだ。しかもこんなところにあんなものを置くなんて…」

「何よ?みんなアラガミに食われるからそんなもの置くな、とでも言いたいわけ?相変わらずいい子ちゃんぶってるわね。あんたをここへ一人おびき寄せ、確実に殺すためならどんな手だって使うわ。知ってるでしょう?私たちがそういうことをするのが当たり前だってことくらい」

彼の視線に宿る怒りの感情を読み取り、グレイはうんざりした様子で言い返した。自分たちの行いに何一つ反省の色を示していない。思えばリンドウとエリックの離脱は、いやギースたちアーサソールが苦しめられたのも含め、こいつらが余計なことをしなければ、あんな惨劇は起こらなかった。

「お前たちみたいに、沢山の人々を苦しめて楽しむような奴らになるより、お前の言ういい子ちゃんでいた方が比べるまでもなくマシだ」

「…言ってくれるな、糞ガキめ」

マグニスがマスクの裏に隠れた素顔を険しくさせた。

「HEYHEY、そう熱くなるなよ。MeたちにはAfterがないから仕方ねぇが、だからこそここはCoolに行こうぜ」

そう、闇のエージェントたちも必死にならざるを得ない。たとえどんなに卑劣だとこの目の前にいる正義の味方ぶる若者に言われようと。なにせ、これ以上の失態を犯せば、自分たちは崇めている主に殺されてしまうのだから。

「さあて、ウルトラマンギンガ。MeたちがYouと戦うのもこれがLastだ。MeたちはもうYouを侮ることなくRejectさせてもらうぜ!

Here WE GO!」

ただでさえハイテンションなバキが、いつも以上にテンションを上げているのも、彼なりに大マジになっているということなのだろうか。バキはすぐさま湖の方へとび上がると、その身を本来の40mクラスへの巨体へと変身した。

「ったく、バキのやつめ…」

「でも、これはこれでいちいち時間を取る必要もなくていいわ。さっさと始末をつけてやりましょう」

マグニスとグレイの二人もまた、バキにならって巨大化した。

「…タロウ、あいつらは僕が引き受ける。あなたは集落の人たちがあいつらに人質にされないように、彼らの元へ」

「一人で行けるのか?」

ユウが振り返らないままタロウに集落の人たちの護衛を申すが、タロウは一方で懸念を口にする。これまで自分を含め、ウルトラマンは多人数を相手にしなければならないこともあったが、まだユウはウルトラマンになって日が浅い。タロウの手ほどきをこの数日の間に受けていたとはいえ、まだ3人の異星人を一気に相手にするのはきつすぎるのではないだろうかと思う。

「一人じゃないさ。ただ、今は一人で頑張るだけ。それが終わったら…」

「…わかった。だが、変身していられる時間は3分。わかっているな?」

「流石に分かっているよ、何度も変身したんだから」

「…死ぬなよ」

ユウは無言で強く頷いた。

タロウが瞬間移動を利用したのか、一瞬で姿を消した。一人になったユウは、湖からこちらを上から見下ろしている星人三人を見上げた。

(お前たちの思い通りになんかさせるものか…!!)

ギンガスパークを取り出した……その時だった。

 

――――――…………

 

「…む?…な、マスター!?」

三人の頭の中に、『主』の新たな声が聞こえてきた。

「?」

突如こちらへの警戒を緩め、頭を抱えながら頭上を見上げだした宇宙人たちに、ユウとタロウは当惑する。

(なんだ?どこかに敵がいるのか!?)

周囲を見渡す二人だが、こいつら3人は愚か、アラガミの姿もまだ確認しきれていない。

「どこか遠くから、我々の動きを見て、奴らにテレパシーで語りかけているようだな…」

タロウが一つの予測を立てる。声は、彼ら三人にしか聞こえないらしい。三人以外の声らしい音は聞こえていないが、マグニスたちは主の声が聞こえたようだ。

「Master、ここで大人しくしていろって…?」

なぜかその場での待機を命じられ、困惑を示す。

するとその時、突然彼らの目の前に水柱が立ち上り、三人は慌てて伏せた。顔を上げた三人はその奥にいた存在を見て絶句した。

「こ、こいつは…!」

それは、水面から延びてきた、ピターとボガールの合成神獣ベヒーモスだった。口元に血が滲み、ボルグ・カムランの尾やヴァジュラの足などの肉片が口からはみ出ている。ここまで北西に向かう道中のアラガミたちを食いながら、地面の下を掘り進んでここまで来たのだ。

「なるほど、マスター…こいつも使えと言うことですか。確かにこいつもうまく利用できれば…」

ずぶ濡れになって姿を見せたベヒーモスを見て、なぜこのタイミングでこいつが来たのか?そう予想するマグニス。以前は飼い犬に手を噛まれるという情けない姿をさらしたが、こいつが逆らうことを知った上でうまく立ち回り利用すれば…!

しかし三人に対し、『主』は告げた。

 

 

 

「え……さ、最後の任務…ですって?」

 

 

 

ウルトラマン抹殺に失敗し続けた、役立たず共に対する非情な審判を。

 

 

 

 

「よ……用済み……!?」

 

「餌…!?」

 

 

 

 

彼らの口からそのような単語が出たと言うことは、以前主に向けた彼らの命乞いは受理されなかったことを意味していた。

「ま、待ってくださいマスター!!まだ俺たちは…」

なおもチャンスを今一度乞おうとするも、それは叶わなかった。

三人は、突然周囲に立ち込め始めた闇の霧に包まれ始めた。

「な、なんだ…!?」

何が起きたのかわからず、ユウは呆然とそれを見ていることしかできない。だがタロウは、この立ち込める闇の霧に覚えがあった。

「この闇は…まさか!」

覚えている。この霧は…

 

自分たちウルトラマンや怪獣・宇宙人たちをスパークドールズに変えたあの闇だ!

 

ベヒーモスが闇に向けて左腕を伸ばし、引っ張り出すと、その手の中にスパークドールズとなった闇のエージェント三人が鷲掴みにされていた。

「があ!!?ま、Master…Please.Help…」

「主、どうか、どうかあたしにもう一度…

 

 

ぎゃああああああああああああああああ!!!!」

 

 

 

最後まで届くことのない命乞いは、森の中に響き渡った。グレイがマスターと呼ぶ存在に命乞いを続けようとしたところで、これまでユウを、ウルトラマンギンガを苦しめた闇のエージェントたちはベヒーモスの口に放り込まれ…

 

 

貪り食われた。

 

 

「…!」

口を抑えて思わず視線を逸らすユウ。何てことだろう。これまで自分たちを苦しめてきた宇宙人たちが、こんな末路を辿るとは。

「グオオオオオオオオ!」

よほど美味だったのか、ベヒーモスが歓喜の雄叫びをあげる。自分をここまで進化させた宇宙人たちを食らう恐ろしいまでの食い意地。そして、闇のエージェントたちをあっさりと切り捨てた、エージェントたちがマスターと呼ぶ存在。

ひたすら戦慄を覚えた。

そうしている間に、ベヒーモスは陸に足を踏み込んでいた。奴が見ている視線の先、そこには…

避難している集落の人たちがいる避難所だった。我に返ったユウがベヒーモスに向けて叫んだ。

「待て!」

ユウの声を聴いて、ベヒーモスは足を止め彼の方を向く。

「僕の目の前で、また罪もない人々を食らうつもりか?たらふく同じアラガミを食ったくせに、いい加減にしろよ!」

敵意を向けられ、ベヒーモスは忌々しげに顔を歪めながらユウの方を振り返って見下ろしてきた。

『…オ前ニハ一杯食ワサレタ借リガアッタナ』

以前、メテオール回収任務でユウ=ギンガに邪魔をされたことをかなり根に持っているようだ。随分とまぁ、自分が悪い癖に厚顔無恥なものである。ピターとボガール、その両方の持つ自分至上主義と捕食欲求の自我がそうさせているのだろう。それにあいつのピターの名残でもある壮年の暴君のような顔。まるで大車をアラガミに変えたような姿にも見えてくる。どちらとも自分のことしか考えないクズの本性を持ち合わせているからどうしてもかぶって見えた。

なんにせよ、ユウははっきり思った。

この下種な化け物はここで絶対に仕留めなければならない。次の機会など与えないように倒す。

ギンガスパークを取り出し、ギンガのスパークドールズが出現。ユウはそれを先端にリードする。

 

【ウルトライブ、ウルトラマンギンガ!】

 

光の柱がユウを中心に上り、消えると同時にユウが姿を変えたウルトラマンギンガが出現した。

 

「ベヒーモス…お前を倒す!」

 

『イイダロウ…骨ノ髄マデ貪リ食ッテヤル!!』

 

 


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