ULTRAMAN GINGA with GOD EATER   作:???second

50 / 68
隕石の降る戦場

ギースらと離別したアーサソール事件。

リンドウが失踪した、期間中のボガールとディアウス・ピターによる襲撃。

集落でのボガールとの決着。

大車の謀略によるアリサ誘拐。

 

これまで幾度もユウの身の回りで常識を超えた事件が多発した。それに伴って、身を裂くような痛みをその身に受けることになった。

 

しかし、その痛みにひとつの区切りをつける戦いが始まろうとしていた。

 

 

作戦会議室。

「諸君、ついにこの日が訪れた」

巨大電子モニターの前で、目の前の階段状の座席に座るゴッドイーターたちに向けて、ヨハネスが支部長として全員にスピーチをした。

「我々人類はこれまで、アラガミによって多くの数えきれない大切なものを奪われ続け、多くの悲しみを抱き、そしてアラガミに対する怒りと憎しみを抱き続けてきたことだろう」

その言葉で、第1部隊等、リンドウやエリックを知る面々の脳裏に二人の顔が浮かぶ。アリサは同時にオレーシャや両親の顔を、ユウは妹の顔を浮かべた。だが、心に悲しみを感じながらも彼らは俯くことなくヨハネスの演説に耳を傾け続けた。

「これまでかけがえのない仲間を失うという不幸に見舞われた我々だが、希望は消え去っていない。

極東支部はその悲劇から人類を回避すべく、エイジス計画を発案した。しかし、人類すべてを収容可能とするエイジスは完成までの道は遠い。しかもここしばらく、君たちも知っているように、合成神獣という新たなアラガミたちによる脅威も迫りつつある。日々の暮らしのリソースの維持と同時並行では、これ以上完成のための作業速度を上げるどころか下がってき、やがて我々人類がアラガミに淘汰されるのも時間の問題だろう」

そこまで話が続いたところで、コウタは拳をぎゅっと握った。エイジス…人類の全てを守る最強の防壁。それはコウタにとって、家族を守るために絶対に完成させなければならないもの。これが完成する前に自分たちが全滅することは絶対に避けたいことだった。

「だからこそ私は本部と掛け合い…このオペレーション・メテオライトを発案した。

この作戦を成功させた暁には、合成神獣の発生率も下がり、エイジス建設に必要なオラクルリソースを大量に得ることができる。人類がアラガミの脅威から完全に救済されるときが近づくのだ。

 

立ち上がれ、ゴッドイーターよ!

 

我々人類の、アラガミに…あらゆる脅威に脅かされることのない、希望と輝きに満ちた未来のために!!」

 

熱き信念を抱く思想家の民衆への訴えのように宣言したヨハネスに、ゴッドイーターたちから歓声が上がった。

演説でこれほどの士気を引き出すとは、さすが支部長はカリスマ性に溢れていると思えた。ソーマに至ってはむしろムカついてるという感じを出しているが。

 

 

この士気の高さは、皆のやる気なのだ。リンドウ達の身に起きたことを知っていて、これほど高く士気を出している。

自分も、この作戦に…ピターの合成神獣であるベヒーモスとの戦いは決して負けられない。

タロウから受けた血の滲む訓練に報いるためにも、命を繋いでくれたリンドウやエリックのためにも、故郷である女神の森にアラガミたちが寄り付かないためにも、そして今共に生きている仲間達のためにも、

ゴッドイーターとして、ウルトラマンとしてできることを精一杯する。

それが僕、神薙ユウの戦いだ。

 

 

早朝、ヘリが極東支部から飛び立っていく。

チームの振り分けは、以前とはやや異なっていた。

名前が判明している者の中で、以下のような振り分けになった。

 

 

・サクヤ、アリサ、コウタ、ソーマ

・タツミ、ブレンダン、カノン

・ジーナ、カレル、シュン

・ハルオミ、ケイト、そしてユウ

 

ユウは元々別部隊だったが、リンドウ、ギース、エリックの三人がいなくなってしまったので、急遽ハルオミのチームに配属されることになった。

作戦エリア上空に来たときには太陽が昇っていたが、地上を見下ろしたユウたちは息を飲んだ。

「うっはぁ…団体さんのお着きだな」

「確かに、すごい数ですね…」

思わずそのようにつぶやくハルオミとユウ。

大型種のボルグ・カムラン、ヴァジュラ、プリティヴィ・マータ、サリエル…さまざまな大型種のアラガミたちが、設置された5つのアラガミ誘導装置に吸い寄せられていく。まるで百鬼夜行のようだ。アリサも息を呑んだ。自分のトラウマでもあるヴァジュラたちが、あんなにたくさんいる。少し前、克服する前の自分だったら、これを見ただけで戦意喪失していたに違いない。

(ベリアルの僕である何100体のダークロプスと戦った時もこれほどの圧巻さだったな…)

ユウの服に隠れていたタロウが、人形にされる以前のことを思い出す。

『でも、この前練習で使ったバレットの完成系なら、あいつらをたくさんやっつけられるんですよね』

強い緊張と、軍隊とも言える数のアラガミを見て戦慄するも、少しでも自分を安堵させようとコウタが通信越しに言った。

『ええ。後はイレギュラーがこのタイミングで来ないことを祈るだけよ』

同じヘリにいるサクヤがそれに頷きながら、今から使用するバレットがしっかり神機にセットされているか確認した。

オペレーション・メテオライト第1フェイズ。

今から銃型神機使いたちによって、特殊バレット〈メテオライト〉を発射する。練習用でどんなものかはわかっている。銃型神機全てから放たれたメテオライトが空中で一つに固まり、それが雨のように降り注ぐというもの。

『この状況で、合成神獣や宇宙人たちが邪魔をしてこなければいいんですけど…例の「メテオール」も、結局今日には間に合いませんでしたし…』

アリサがふと、不安を口にする。奴らの危険性は、ユウの正体を知っている今はさらに強く感じられていた。

サカキが、以前の任務で回収されたディスクのデータ『メテオール』を解析し、それをもとに技術班が作業を急いでいたのだが、結局この日の内に完成させることは敵わず、この日も技術班が急いで再現できそうなものを作っている最中だという。

「そこは神様にでも祈るしかないさ…って、僕たちが神に祈るなんておかしいか」

『…腑抜けたこと言ってねェで、てめえもバレットを構えろ。てめえとアリサも撃つんだろ』

そうだった。ユウとアリサもソーマからキツめに言われて気が付き、改めてバレットがしっかりセットされている状態かを確認する。自分たちは新型、つまり銃と剣の両方が仕えるので、メテオライトを配布されている。神機も銃形態だし、バレットもちゃんとセットした状態だ。

『各版、準備はよろしいですか?』

『こちらサクヤ、Aチーム配置についたわ』

『こちらタツミ、B部隊もついたぜ』

『こちらジーナ、私たちも配置についたわ』

「こちらハルオミ、俺たちも配置についた」

通信越しに聞こえてきたヒバリの問いに、全員が応えた。

『ツバキさん、AからE、全部隊の配置を確認しました』

『よし、全員無事に付いたな。銃型神機使いおよび新型、全員銃口を上に向けろ。

これよりオペレーション・メテオライトを発動する!』

通信越しに聞こえてきたツバキの指示に、各ポイントの上空に配置されたヘリに搭乗しているすべての銃型神機使いたちは銃口を空に向けた。

 

『5…

 

4…

 

3…

 

2…

 

1…

 

 

撃て!!!!』

 

 

一斉に、メテオライトが空に向けて発射された。

空の上で光は一つに固まり、雨のように降り注いだ。メテオライトの光を立て続けに浴びせられ、誘導装置周辺のアラガミたちは次々と体を貫かれて骸と化していく。かろうじて生き残った個体も、結合崩壊を引き起こして傷の修復までに時間がかかるようだ。

「すごい威力ね…」

「ひゅう、こりゃ派手な花火だな」

撃ったケイト自身も驚き、ハルオミも軽い調子で言いつつも同様の反応を示した。ユウやタロウも、それは同じだった。

これだけの威力を持つなら、合成神獣にも効くんじゃ…とも思えるが、そうはいかなかった。メテオライトの威力では、合成神獣の体に大きな手傷を負わせられない。奴らの体が、計算上メテオライトの威力でダメージを与えられるほど脆くないことがわかっていたからだ。同時に、莫大なオラクルエネルギーも使うため乱用もできない。

しかし、これはこれで大いに役立つバレットだった。合成神獣と比べるとはるかに劣るアラガミだが、その代り個体数が軍隊をも超えるほどに圧倒的に多い。数の多い敵には最適と言えた。

『着弾を確認!大多数のアラガミたちの反応の消失および結合崩壊…生き残った個体のオラクル反応も著しく弱まっています!』

『よし、第2フェイズへ移行!全員地上へ!』

ツバキの新たな指示を受け、ゴッドイーターたちはいっせいに地上へ飛び降りた。極東支部以外にもグラスゴー、イタリア、シンガポールにマルセイユ…あらゆる支部のゴッドイーターたちが降り立った。

『第2フェイズ開始!アラガミを…』

ここにリンドウがいたならば、こう叫んでいただろう。そう思いながら、全員が地上に降り立つと同時に、ツバキは叫んだ。

『一匹残らず食い荒らせ!』

宣言と同時に、ゴッドイーターたちは駈け出した。

「せい!!」「はぁ!!」「…喰らえ」

ユウの一太刀が、アリサの斬撃が倒れたアラガミを切り裂く。ソーマの捕食形態が、死の淵にいるアラガミの体を食らってコアを取り込む。メテオライトで深手を負わされたアラガミたちは徐々に数を減らしていった。しかし、中には弾丸を辛うじてのがれた個体、または他の個体にゴッドイーターたちが気を取られている間に、他の個体を食らって体の傷を自己治癒して起き上がったアラガミたちもいる。だがそれも想定のうち。

「貫け!!」

「肉片にしてあげる!!」

「綺麗なしぶきをあげて頂戴」

「ぶっとばせ!!」

「…」

サクヤやカノン、ジーナ、コウタ、カレル、ケイト…銃型神機使いたちが追い打ちをかけるようにそのアラガミたちに弾丸を撃ち放った。特にカノンは、射線上に味方もおらず、且ついつもの誤射をする方角にもアラガミがたくさんいることもあってお構いなしにバレットを連発している。

「おうおう、カノンの奴張り切ってるな。そら!!」

「俺たちも負けてられんぞ、ふん!!」

「へ、俺の分までとったりすんじゃねぇぞ!おりゃあ!!」

「…ふむ、あのサリエルは80点数かな。せい!!」

「ちょっとハル、何アラガミに欲情してんの!撃つわよ!?」

ちょうど撃ち抜かれたアラガミたちの傍にいたタツミ、ブレンダン、シュン、ハルオミも張り切ってダメ押しをかけるように、倒れたアラガミを切り裂き、捕食形態でコアを根こそぎ奪い取って行った。

名前が判明していない他のゴッドイーターたちもそれぞれの誘導装置付近の死に体と化したアラガミたちを次々と討ち果たしてコアを溜め込んでいった。

 

 

 

 

「地球人共め…なかなかやるようだ」

双眼鏡でメテオライト作戦エリアを、防壁外の人間たちが暮らす集落のはずれの森から眺めながら、マグニスが呟く。

「自分の星がこれほどボロボロになっても、あんなものを作れるなんてね」

それを同じように見ていたグレイも素直に評価した。

「HUMANは逆境に立つほど何をしでかすかCan’t Imagineだぜ。

けどこれなら、Meたちもなめてかかることなく、真面目にPlanをStartさせられそうだぜ」

星人というものは、狙った星に住む知的生命体を見下し舐めてかかる傾向が強い。それだけの自信が無ければ侵略などこれまでしてこなかった。でもその自信ゆえの甘さが、ウルトラマンや地球人たちに邪魔をされ失敗する原因になったと言っても過言ではない。

もう油断をしないと決め込んでいた闇のエージェントたちは、その顔つきを変えていた。

バキはその手に握っていた、リモコンのボタンを押した。すると、ダムの底に沈められていた複製誘導装置を起動させた。これでアラガミたちをこっちに誘引し、それにともなって集落の人間を守ろうとするであろうこちらにウルトラマンをおびき寄せる。最初は奴じゃなくても、ゴッドイーターの誰かがこちらに来て危機に陥らせば、奴もどのみちこっちへ来るはずだ。そうして極東支部から注意をそらさせ、その間に別のエージェントが合成神獣となって極東支部を陥落させる。

「よし、うまく起動したようだ。あいつに連絡を入れろ」

「OK。ポチッとな…」

マグニスが水の中にともる小さな光、装置が軌道を知らせるライトを確認した。バキがマグニスの指示を受け、手のひらに収まるサイズの小さな直方体の機械を取り出す。すると、その機械から立体ホログラム映像で、怪しげな姿のエイリアンが現れる。

「もすもーす。Meだ。Machineを起動させたぜ。Youの状況はどうよ?Mrテイラー?」

『……こちらテロリスト星人のテイラー。いつでも行けるぞ。くく…』

「あんた楽しそうね」

通信先にいる星人…『緑色星人テロリスト星人』のテイラーのほくそ笑む顔を見てグレイが尋ねてくる。

『当然だ。奴らの中に、俺たちの同族の邪魔したウルトラマンタロウがいる。あいつさえいなければ、この星のガス資源が、アラガミどもに食われずに済んだものを…』

テロリスト星人。その名前の通り非常に好戦的で残虐極まりないエイリアンだ。彼らにとってテロリズムなど、息をするようにごく当たり前の事だろう。

会話の内容からして、どうやら昔、まだウルトラマンとして戦っていた頃のタロウと戦った星人の同族らしく、タロウにかつて自分たちの野望を阻止されたことを根に持っているようだ。

『その鬱憤を今回の我が主の任務も兼ねて晴らしてくる。タロウの悔しがる顔が目に浮かぶぜ!』

「浮かれ過ぎるなよ。ウルトラマンは逆境に立つほど何を仕掛けてくるかもわからん。窮鼠猫を噛む…と地球のことわざでも言うくらいだからな」

『今まで自身たっぷりだった貴様らが随分と慎重だな。まぁいい。俺は主の命令に沿いつつも好きにやらせてもらうだけだ。そっちもしくじらないことだぜ…』

マグニスからの警告に総言い返してきたテイラーからの通信はそこで切れ、立体映像のテイラーの姿も消えた。

「…Mr.テイラーの奴、向こうがTenshonがHigh UPでMissなんてしなけりゃいいけどな」

「そうなったら奴を八つ裂きにしてもらうように主に申請するだけだ。それより、誘導装置に惹かれてアラガミがこっちによって来るはずだ。ウルトラマン共が来るまでひとまず身を隠すぞ」

 

闇のエージェントたちがその場から一度姿を消すと同時だった。

 

アナグラの作戦司令室。そこでオペレートしていたヒバリが、自分のデスクの電子モニターのマップに異常を発見した。

「これは?」

「どうした?」

ツバキが近づいて尋ねてくる。

「アラガミが、北西の方角に向けて移動し始めています!」

「なんだと?」

ツバキは目を細める。作戦では5つの誘導装置からは決して移動しないように装置を調整している。だが、現に電子モニターのマップでもわかるように、無数のアラガミたち、主にヴァジュラの反応が北西に向けて移動を始めている。

 

 

 

メテオライト作戦現場でもその変化はゴッドイーターたちも気づいた。

「どうなってんだよ!?」

移動を開始したアラガミたちを見てコウタが声をあげる。

「これは一体…このままじゃたくさんのコアを逃してしまいます!」

「…」

アリサもそうだが、ソーマも言葉を出さないまま顔を険しくしている。

「ツバキさん、一体何があったんです?」

サクヤが詳細説明を求める。

『わからん。今サカキ博士と連絡を…』

『話は聞いたよ』

ツバキもわからずに混乱を示したところで、サカキからの通信が割り込むように入ってきた。

『装置の後作動か故障、またはなにか別の偏食場に影響があったかもしれない。なんにせよ思わしくない状況だ』

サカキもすぐに原因がなんなのかまではすぐに察することはできなかった。

 

 

当然ながら真壁負債と行動していたユウの元にもこの事態はいきわたっていた。

「おいおい、こんな色男置いてどこに行こうってんだ?」

軽口を叩きながらも、いぶかしむような目つきで、去っていくアラガミたちに向けてハルオミは神機を構えた。

「くそ、逃がすか… !タロウ、奴らを押さえつけられる!?」

「任せろ。ウルトラ念力!」

ユウから頼まれ、タロウはウルトラ念力を発動、作戦エリアから移動し始めたアラガミたちの動きを鈍らせた。念力は広範囲、作戦エリア内の部隊の周囲にいきわたり、同様の効果をもたらした。

「今だ!やああああ!」

動きを封じてる隙にユウは改良された捕食形態、プレデタースタイルを発動、三つ首に別れたアラガミの顎が、ヴァジュラを数体一気に噛み砕いた。

「なんだ…アラガミの動きが…?」

「とにかくチャンスよ。ハル、今のうちに!」

「お、おう!」

タロウの存在を知らないこともあり、一部のゴッドイーターたちは当惑する。だが戦いの最中だからか、中には気づくことなく目の前の敵に集中していたこともあり、あまり怪しまれなかった。それよりも動きが止まったことで一匹でも多く討伐しコアを手に入れる方を選んだ。

(一瞬動きが…そうか、タロウが…なら私も!)

事情を知るアリサは、今アラガミの動きが鈍くなった理由を察し、すぐに捕食形態を展開、自分も複数のアラガミを神機に食わせた。

 

だがそれでも、一部のアラガミしか移動を防げなかった。

 

「効果はあったけど、これだけじゃダメか…」

移動を続けたままのアラガミの群れを見て、ユウが苦虫を噛み潰す。やはり原因を突き止めないと…

タロウも同じことを考え、ウルトラマンの超能力を利用した遠視を使って遥か北西の方角を見る。彼はその先にあるものを見つけ、動揺した。

「ユウ、不味いぞ!この先の方角…あの時の集落が!」

「何だって!?」

ユウは驚愕する。ボガールとピター、奴らに圧倒されて流れ着いた僕を保護したあの集落が!?

じゃあ、この移動しているアラガミの群れは、あそこを狙って…!

だがあの集落が狙われるように仕組めるものは、あそこを知っていて、それも集落の人々を犠牲にできる冷酷さを持った者だけ。

(闇のエージェントたちか!)

そうに違いない!でなければアラガミたちがこんなタイミングで都合よくあの集落に移動するわけがない。

「ツバキさん、僕を偵察に行かせてください!」

させるものか。あそこはリンドウエリックが命を懸けて守ろうとした場所でもあるのだ。ユウはすぐにツバキに頼んだ。

『ダメだ…これ以上人員を割く訳にいかん』

「ですが…このままでは大量のコアを逃がします!」

嘘である。本当はあの集落の人々の安全を確保しなければならない。あそこに保持してある物資はリンドウが横流ししたものだ。バレたらフェンリルの権限で強制で回収され、集落の人たちが飢えてしまうかもしれないので、ツバキにも言えなかった。ましてや今は支部長であるヨハネスの目も通っているのだ。

『コアよりもお前たちの命の方が大事だ!コアなど後でいくらでもとれる!』

だがツバキは反論する。上官として部下の命を重んじて、というのもあるだろう。だが弟の失踪が彼女の反対する大きな理由だった。

しかし、ここで思わぬ通信が入った。

『いいだろう、許可する』

『支部長!?』

ヨハネスからだった。

『ツバキ君、君の意見にも理解できる。しかし、エイジスの完成を長引かせることもまた、任務という形で彼らの命を危険に晒すことにもなるのでは?』

『ですが…』

『責任は私が取る。神薙君、すぐに向かってくれ。そしてこの事態の原因を一刻も早く突き止め、処理をしてくれ。その上で生きて戻ってきたまえ。君の手で救える人々が、まだこの世界に大勢いる』

「支部長…ありがとうございます!」

ユウは深くヨハネスに感謝しサクヤたちに向き直った。

「みんな…すみませんが…」

「支部長命令なら仕方ないわ。でもユウ君、無理はしないで。危なくなったらすぐに逃げて」

ケイトが銃をアラガミに向けたまま、鋭くも見えるほどにまっすぐな視線でユウを見て言った。その言葉の中に、リンドウの存在が大きかったことをユウは察した。

『ユウ、こっちは任せてよ!俺もまだ行けそうだから余裕だし』

通信を介して、コウタと背中を押すように言った。

すると、アリサが待ったをかけて自分も同行させてほしいと願い出た。

『待ってください!私にも行かせてください!』

おそらくあの集落に闇のエージェントらが待ち構えていることを懸念してのことだろう。ユウ一人では危険だと思って自分も同行を願い出るも、ヨハネスがそれに許可を出さなかった。

『アリサ君はダメだ。ここで作戦を続行したまえ』

『で、でも…もし北西の方角に予想外のアラガミが現れたりしたら…』

『だからだ。貴重な新型である君たちを二人同時に派遣するには、それに見会う状況でなければならない。まずは神薙君の調査報告を待つのだ』

さらに反論をしようにも、淡々と論破を続けるヨハネスにアリサは言い返しきれなくなっていた。闇のエージェントたちの本当の形で脅威を覚えている彼女にとって、恩人であるユウの力添えができないというのは悔しいものだった。

「アリサ、大丈夫だよ。僕には頼れる仲間たちがいる」

ユウはそう言って、胸の内ポケットの上をさすってみせる。その中にギンガスパークがあることを表現していた。確かにギンガの強さは知っている。でもそれを行使しているのはユウ、しかも今まで敗北したことだってある。今度も確実に勝てるだろうかと不安もある。おそらく、ボガールとピターの合成神獣ベヒーモスだって待ち構えているはずだ。なおさら彼に味方がいた方がよいのではないのか…

『アリサ君、不安を抱くのも無理はないが、君たちには他にも頼みたいことがある。まずは神薙君が向かっている間に、この場の処理を終わらせてくれ』

『………わかり、ました…』

納得がいかない様子を抱きながらも、これ以上この状況で反対を続けても、アラガミの格好の的になる。アリサは渋々ながらも了承した。

『ですがユウ、本当に危なくなったら、ちゃんと逃げてくださいよ?』

「わかっているさ。リンドウさんからも命令されてたからね」

『死にそうになったら逃げろ、そんで隠れろ』。ただ敵に突っ込んで華々しく散る、などと一昔の愛国心が高すぎる軍人のような生き方ではなく、泥をかぶってでも石にかじりついてでも生きのびることを尊ぶ、生きていれば望んだ未来を掴めると考えるリンドウらしい命令だ。ユウもその生き方の方が正しいと思っている。

まだ自分には、やりたいこともやるべきことも多い。

だから、行かなければ。みんなを、亡き妹やエリックたちのように死なせないために。

『それを覚えているなら大丈夫そうね。ユウ君、こっちは任せてね』

「はい、サクヤさん。

ではみんな、この場はお任せします!」

ユウは仲間たちに背を向け、北西へ向けて走り出した。

 

 

 

「装置に異常はないのか!?」

「5つすべて正常に作動しています!なのにどうして…?」

作戦司令室にて、支部長命令でユウを派遣した後、ツバキはすぐにヒバリに確認を取った。アラガミたちが、装置が置いてないはずの北西へ向かう。故障したわけではないのに、一体これはどういうことなのか。

だが、さらに彼らを追いこむような事態が発生する。

「っ!大変です!」

「どうした!?」

「ご、合成神獣の反応です!ユウさんが向かう北西の方角に向かっています!」

「なんだと…!」

大型電子モニターのマップに目をやるツバキ。ヒバリが言った通り、ユウが向かう北西、そこの湖を示す楕円形の地点に向かって、合成神獣を示す赤い大きな点が移動し始めていた。

「すぐにユウに戻るように伝えろ!さすがにあいつ一人では…!」

合成神獣に、ゴッドイーターが一人で相手にするなどもはや話にもならない。ヒバリに命令を下すと、ヒバリは言われた通りユウに連絡を入れ始めた。

「ユウさん、こちらヒバリです!…ユウさん?ユウさん!応答してください!」

しかし、ユウからの返事はなかった。

「どうしたヒバリ!?」

「ユウさんとの連絡が、とれません!通信が途絶えてます!」

「どういうことだ…!?」

次から次へと、一体何が起こり始めている?しかしひとつわかることがある。このままではユウが危険だ、ということだ。

「そ、それに…」

だがそれだけではないとばかりに、ヒバリがかなり動揺を露わにしている。感情豊かながら、オペレーターとして冷静さを保つように心がけている彼女が、一握りのそれを保つこともできずにいる。通信が途絶えただけでなく、一体何を知ったのだ。

 

「り、リンドウさんの…腕輪信号が…合成神獣から発せられています!」

 

「……!!?」

 

合成神獣から、リンドウの腕輪信号の反応が確認された。

ツバキは、鈍器で頭を殴られた様な衝撃を受けた。

 

 

 

ヨハネスにも、ユウとの通信が途絶えたことは伝わっていた。しかし彼は普段通りの涼しい顔のままで動揺しているようには全く見えなかった。

「…済まないが、まだ彼に援護を出すタイミングではない」

デスクに座っている彼の目の前の電子モニターの画面にあるエンターキーに、彼の右手の指先が伸びていた。

そう、ユウとの通信をとだえさせたのは彼の仕業だった。

密かにユウがウルトラマンギンガであることを知っていたヨハネスにもわかっていた。彼が今向かっているその先に待つ者、そして本来誘導装置の影響で作戦エリアから離れないはずのアラガミたちが遠ざかっているのは、闇のエージェントたちによる仕業だと。

(フェンリル本部の内部に入り込んでいた奴らの仲間が誘導装置を複製して、神薙君のいるポイントに配置したのだろう…)

おおむね予想通りだ。恐らく彼は変身しなければならないほどの事態に追い込まれるだろう。仲間までついて行ったりこの時点で追いついてきたりしたらやりにくくなるはずだ。彼を追いこんでいるようにも思えるが、これも自分なりに考えた細やかな気遣いだ。変身しているところを見られ、大勢の人間に知られたりしたら、フェンリル本部にも彼のことが伝わってしまい、向こうの方へユウを強制的に異動させようとするかもしれない。フェンリル本部の一部に闇のエージェントの息がかかっていることは、何度も本部を訪れ、あるきっかけでそれを知ったヨハネスはユウのアリバイ作りをすることにしたのだ。

同時に、自らがひそかに行っている事への守護者としても、ユウはこの極東支部に置いておかなければならない。

「さあ、行きたまえウルトラマン。その間に、我々もさらなるサポートを準備しておかなければな」

独り言を呟くと、ヨハネスはサカキに回線を繋いだ。

「サカキ博士、例の兵器はあとどれくらいの時間で完成する?済まないが急いでくれ」

 

 




祝!劇場版ウルトラマンR/B公開!久々の新規ウルトラウーマンと新規悪トラマン、グリージョとトレギアの存在が気になってしょうがないです。


一方…ゴッドイーター3をSTEAMで買ったのはいいが、右スティックでカメラ操作ができない…

(追記)
映画見てきました。グリージョが面白かわいいキャラでした!
トレギアは…最後まで謎ですね

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。