ULTRAMAN GINGA with GOD EATER 作:???second
「いかん、もうこの場所は持たないぞ!」
タロウが崩れゆく天井を見上げて声を上げる。
神機なら崩れた瓦礫を退かすくらい訳はないかもしれないが、こうして崩壊が始まった場所でそんなことをしては脱出前に自分たちが瓦礫に押しつぶされてお陀仏だ。タロウ唯一の攻撃手段であるウルトラ念力も、一時なら防げても永遠に念力を放出など無理がある。
「このままだと、私たちも、サクヤさんたちの方も…!!」
アリサは必死に落ちてくる瓦礫からディスクを守ろうと装甲を展開し傘代わりにして防いでいたが、いつまでも防げるものではない。
「二人とも、こっちに来て!」
こうなってはこの手しかない。
ユウはギンガスパークを取り出し、アリサとタロウに傍に来るように言った。タロウはすぐに、アリサは一瞬意図が分からなくて困惑したが、タロウが彼のもとに近づいたことで気が付く、後に続く形で傍に寄った。
「いくよ」
ギンガスパークから、ギンガのスパークドールズが現れ、ユウは足の裏のマークをリードした。
【ウルトライブ!ウルトラマンギンガ!】
ベヒーモスの起こした地響きによって、サクヤたちのいる場所にも強い地響きが伝わり、天井が崩れ始めた。
「や、やばい!」
周囲の壁も床も、すべてが大きく揺れて崩れ落ち始めてコウタがひどく焦った声を上げた。
「急いで上へ上がれ!生き埋めになるぞ!」
「待てよ!それだとユウとアリサは!?」
警告を放つようにソーマが叫ぶが、コウタが反論する。
「お前、この状況であいつらを助ける余裕があると思ってんのか!」
「……ッ…!!!」
ソーマの言うとおりだ。地下数百メートルまで広がる閉鎖空間が崩れ落ちている。その中で助けに向かうなど、もはや自ら生き埋め自殺を望むようなものだった。だが、ソーマに反論したい気持ちも捨てられない。リンドウやエリック、立て続けに仲間が消え続けているのだ。ウルトラマンが都合よく現れてくれるわけではないのは、彼らの身に起きた事件がその証明となっている。それは、リンドウと長らく共に生きてきたサクヤも同じだった。
「サクヤ!」
覚悟を決めろと、ソーマはそう言いたげに促した。副隊長であるから、今は彼女が第1部隊の隊長代理だ。故に決断しなければならなかった。二人を見捨てて、脱出を優先しろ、と。
(でも…!!)
ここしばらく仲間が消える事態が連続しているという事実が、サクヤの判断を遅らせてしまっていた。
その油断が、ついに彼らをチェックメイトに追い込むことになる。さらに大きな地響きが怒り、ソーマたちが激しい揺れで膝を着いたとき、最悪の事態が起こった。
「ッ!しまった…出口への道が…!」
今の揺れが原因で、自分たちが下りてきた階段が瓦礫に埋まってしまったのだ。それもかなりの量とサイズの瓦礫が、よりにもよって天井から落ちてきて完全に道をふさいでいる。
万事休すかと思った時だった。
ユウたちが落ちた穴の方から、スタングレネードの光よりもまばゆい光が溢れ、サクヤたちを包み込んだ。
ギンガはその手の中にアリサとタロウ、そしてサクヤ、ソーマ、コウタの三人を連れて地上へと飛び出し、降り立って仲間たちを降ろした。
「ぎ、ギンガ…」
自分を手から降ろしたギンガを、コウタとサクヤは驚いた眼で見上げた。ソーマの視線が、やたら鋭く見えたのは気になったが、すぐにアリサの方に視線を傾けた。以前はアラガミと同列だと見なして憎しみを向けてきたその目は、自分に対する信頼に溢れていた。彼女の笑顔と頷きがその証拠だった。
「ぎゃああああああああああああああ!!!!」
しかし、彼女の表情はすぐに警戒を高めた険しいものになった。ギンガの後ろから聞こえた悲鳴がそうさせていた。
ギンガも後ろを振り返ると、驚くものをその目に見た。
闇のエージェントたちが、見たことない怪獣の傍で呻き苦しんでいる。
しかも……
グレイの右足と、マグニスの右腕がサーベルごとなくなっていたのだ。
(あの宇宙人たちが!?)
そいつの方に向き直ったギンガは、いつでも奴の攻撃に迎えられるように身構えた。
ギンガと第1部隊の存在に気が付いたのか、そいつもギンガたちの方を向いた。
その顔は、ピターに非常によく似ていた。だが、どことなく以前アリサが大車の手でライブさせられていたボガールの特徴もある。背中から生えた、ピターとボガールのものを合わせたその翼は皇帝のマントのようだが、その内側は鉄の処女のような鋭い棘…いや、牙というべきか、それらが無数に散りばめられている。
でも、ボガールの頭にそのまま埋め込まれた様なあのピターの顔は変わっていない。こちらを見て、二マリと笑っている。うまそうな獲物が現れた…そう言っているようにしか見えない不気味な笑みだった。
口元に見える…マグニスの腕をくちゃくちゃと言わせながら食っている様が、そのおぞましさを引き立てていた。
なんとおぞましい姿だ。もしや、あの時のピターが姿を変えた者なのか?でもそうだとしたら、なぜ闇のエージェントを…?
『ユウ、ギンガ…気を付けるんだ。そいつは間違いなくやばい相手だ!』
長年の勘だけじゃない。奴の持つ狂気が、タロウにもそう確信させていた。
…クヒヒヒヒ…
「!」
突然、ベヒーモスの口から笑い声が聞こえてきた。不気味過ぎて背筋が凍り付く感覚さえ覚える。
「人間、肉ト血ノ味…」
「人の言葉を……喋ってる…!?」
アラガミが人の言葉を話すなんて聞いたこともない。サクヤたちも目を見開いて驚いていた。
アリサは、自分がかつて大車によって変身させられたボガールが奴の合成素材だからか、ベヒーモスから感じる悪寒には覚えがあった。奴の持つ、異常なまでの捕食欲求を抱いた声にも…
「食ベタイ…ナァ…食ワセロヨ…オ前ノ肉モ…」
しゃぶりつくした骨のように、ベヒーモスは口に含んでいたマグニスのサーベルを吐き捨てながら、じわっと来るような足取りでギンガの元へ近づいてきた。
相変わらずの食欲旺盛ぶり…いや、暴食ぶりというべきか。
そしてこいつのせいで、防壁外で再会したスザキも、リンドウも……!!
脳裏に、こいつの元になったボガールが、容赦なしに人々を食らった姿がよぎった。ピターもきっと、自分たちの見ていないところでも、たくさんの人たちを自分の意味のない満腹感のためだけに食って来たに違いない。アラガミは別に人を食わなくたって生きていける。瓦礫でも食っていればそれでいいはずなのに、それなのにこいつは遠慮なしにたくさんの人々を食らってきた。そう思うと…怒りを抱かずにいられない。
それなのに…
「まだ食い足りないというのか!『お前ら』は!」
怒りの言葉を口にしたギンガに、ベヒーモスは全く詫びれることなく口を歪めて笑い…決定的なことを言った。
「我以外ノ奴ラナンカ、我ノ餌。ソレ以外ノ価値ナドナイワ…クヒヒヒヒ」
ブチッ…と頭の中で切れる音がした。
(こいつは…許さない!!)
拳を握りしめ、胸の奥で怒りの炎を燃え上がらせたギンガはベヒーモスを迎え撃った。
自分達の作品であるはずのピターことベヒーモスに、片足を奪われたグレイと、サーベルごと右腕を食われたマグニス。飼い犬に手をかまれるどころか、五体不満足にされてしまうなんて、闇のエージェントでありながらなんという失態だろうと思わされる。
しかし許せないのは…
「バキ…あの道化が…!!」
マグニスは苦痛に顔を歪めながら、ギンガたちとベヒーモスが戦っているエリアから辛うじてグレイと共に遠くの場所へ逃げのびていた。作戦では、バキが自分の持ってきたスパークドールズとダミースパークで、ギンガこと神薙ユウの所属する第1部隊の、アリサを除くメンバーの誰か一人、それも心の闇を強く抱く奴を選出し、そいつをライブさせてギンガにぶつけること。その間に自分たちがピターとボガールの合成神獣であるベヒーモスを連れ、そして一気に抹殺する。
アーサソール戦で一度似た様な作戦を実行したが、あの時は従えていたはずのアラガミ化したジャックが反旗を翻すというイレギュラーが発生したから失敗した。だが次もあんな奇跡が起こるような要素はない。人間ごときにダミースパークの闇を自力で払うことなどできるはずがない。あのアリサとかいう小娘も、自力ではなくギンガとその変身者の助力がなければ大車の呪縛から逃げられなかったのだから。
また、ギンガも他のウルトラ戦士の助力と言えば、『あの方』によって無力な人形と化したタロウからしか援助を受けていない。他のウルトラ戦士たちの助けも見込めないこの状況で
、二度も防げるとは思えない。
それをわかっていたからこそのこの作戦なのに…
「HEY!Are You All Right!?」
…きやがった。彼なりにこっちの身を案じているような言い方だが、そんなことはさっき自分たちが受けた仕打ちを考えると全然ありがたみを感じない。
「バキ…貴様…この大事なときに何をしていた…!」
「あんたのせいであたしたちは…」
自分たちのもとにやって来たバキに対して憎悪ともとれる視線を鋭く向ける二人に、バキはたじろぐ。
「Oh,T'm Sorry…MeもPlan通りに連中とContactしたんだがよぉ…」
バキは、ユウとアリサがサクヤたちと別行動を取ったところで接触に成功したものの、そのタイミングでプリティヴィ・マータの襲撃を受けて作戦の通りに動く余裕さえなかったことを明かした。
「…ってなわけで、MeがYouたちを見捨ててEscapeしたわけじゃねぇってことは理解してくれや」
「……」
普段のふざけたキャラのせいで、こいつが本当に反省しているのかもわからない。それに闇のエージェントは、同じ主を仰いでいるが、各々がその主に気に入られようと躍起になっている。ウルトラマンと闇のエージェントという二つの勢力で分ければ味方同士といえるが、その味方同士でありながら、場合によっては互いに蹴落としあう。元々利害の一致でつながっているだけだ。絶対の信頼は寄せられないのだ。謝罪こそしているが、闇のエージェント同士の関係がただの利害の一致でつながっているということもあって、バキの謝罪がいまいち信用できなかった。
「…もう作戦は失敗も同然だ。俺たちがこのまま飛び込んでも、俺たちもピターの餌になるのがオチだ…」
「忌々しいけど、一度ここは引き上げて、主の命令を待ちましょうか……」
結局自分達の飼い犬にいいようにされたという屈辱を引きずり、闇のエージェントたちは人知れず撤退した。
その間、ギンガとベヒーモスは取っ組み合いを繰り広げていた。
「セア!」
気合を入れたキックを放ち、ベヒーモスの下あごを蹴り上げるが、ベヒーモスはそれに全くひるまず、お返しの前蹴りでギンガを押し出す。
ギンガは次に、ベヒーモスの足を狙って足払いを仕掛けると、偶然からか膝の裏を押されベヒーモスがわずかに姿勢を崩した。その隙を突いて、ギンガはベヒーモスの真上に飛ぶと、逆さの姿勢から連続でラッシュパンチを叩き込み、そのまま宙返りしながらベヒーモスの背を蹴って着地する。
だが、怯む様子はまだ見られない。
(なんて頑丈なんだ。それとも、痛みを感じないのか?)
そう思っていると、ベヒーモスはギンガに向けて鋭くとがったかぎ爪を振りかざす。
正面から一撃をもらったギンガは怯み、すかさずベヒーモスは膝を着いた彼に、爪の傷を刻んだ箇所に叩き込んだ。
「ガハ…!」
ギンガは苦悶の声を漏らす。まだベヒーモスは攻撃の手を緩めない。後ろからギンガの首を両腕で締め上げると、待ってましたと言わんばかりに彼の肩に向けて口を大きく開けだした。
「グゴオオオオォォォォ!!!」
まずい!僕を食う気か!
そんなことさせるものかと、ギンガは抵抗して腕を振り払おうとするが、予想以上の力で締め上げてきてほどけなかった。
その時、閃光がベヒーモスの腕に突き刺さった。サクヤの神機から放たれた貫通弾だった。
ベヒーモスが忌々しげに彼らの方を見た時には、サクヤたちは更に弾を装填していた。
「コウタ、アリサ!そのまま射撃を続けて、ギンガを援護!」
「はい!ギンガ、今助けるからな!」
コウタがギンガに向けて叫びながらベヒーモスの腕に向けて射撃を連射していく。
だが、ここで気が付いたことがあった。アリサだけ、援護に加わっていなかった。
「アリサ、何してるの!」
「…!」
コウタの一言で、アリサは我に返る。
実はベヒーモスが彼らの方を見た時、アリサはまたトラウマに満ちた記憶が過ったことで恐怖心に駆られ、体の動きが鈍くなっていたのだ。
しかし幸運だったのか、サクヤの貫通弾で出来た傷がベヒーモスの右腕に刻まれていた。
「どうやら、神属性の弾丸が有効みたいね。神属性のバレットに変えて!いいわねアリサ!?」
「は、はい!!」
名指しされたアリサは慌てて返事した。
また、自分の悪いところが出てしまった。ベヒーモスに睨まれた時に、両親を困らせようとかくれんぼして、クローゼットの中で両親がピターに食われた時の記憶が重なるように過ってしまい、援護するのを忘れてしまっていた。
まだ体が、恐怖で震えている。
ギンガ…ユウが何度も自分たちを救ってきてくれていたというのに、自分は未だに恩を返すこともできていない。なんて未熟なのだろうかと、神属性のバレットを仕込みながらも、アリサは自分をただ呪った。
サクヤたちの援護で、ギンガは再び自由になる。
だがベヒーモスはさらなる猛攻を仕掛けてきた。
二足歩行から、ピターの時と同じ四つん這いになると、後ろ脚に強く力を込める。そして地面をいざ蹴ると、目に見えないほどの速度でギンガにぶつかった。
ベヒーモスからの強烈なタックルを受け、ギンガは吹き飛んでしまう。
「グワアアアア!!」
「ギンガ!」
思わず叫ぶコウタ。
すると、ギンガとの距離が空いたことで、ベヒーモスは第1部隊のメンバーたちに向き直っていた。奴の手が、紫のオーラに包まれ、雷をほとばしらせている。
「散開して!!」
サクヤが叫ぶと同時に、ベヒーモスは両手から雷の弾丸を飛ばしてきた。
回避行動に入ったサクヤ、コウタ、ソーマをベヒーモスの雷が襲う。だが、ここでもアリサは足がすくんでしまい、膝を着いて動けなかった。
「あ、う……!!」
座り込んでただ震える手で神機を握り続けるだけのアリサ。そんな彼女は、案の定というべきか、ベヒーモスの雷の弾丸の的にされた。
「ウルトラ念力!!」
即座に、彼女の傍らに隠れていたタロウが念力の壁を展開、あらぬ方向へ雷を弾き飛ばして難を逃れた。
「アリサ!しっかりしろ!的にされてしまうぞ!!」
「す…すみません…」
タロウから叱り飛ばされ、アリサはゆっくりと立ち上がる。
そんな彼女を、ベヒーモスは優先すべきターゲットと見なしたのか、彼女の元へ向かい始めた。
『…オ前、前ニ私ト一ツニナッタ小娘ダナ…?』
頭の中に、ベヒーモスの声が伝わってきた。
『うるとらまんハ、オ前ニ肩入レシテイタ…ダカラオ前カラ食ラッテヤル』
自分が狙われると気づいて、アリサは更に恐怖を抱いて後ずさる。
「い、いや…来ないで!!」
「…クヒヒヒヒ」
何とか銃口を向けることができたアリサ。だが、手が震え、歯をガチガチに鳴らしたままだった。そんなアリサの反応を、ベヒーモスは楽しんでいるのか、口から笑い声を漏らしていた。
「モット見セテヨ…?」
―――――恐怖ト苦痛ニ歪ンダ顔ヲ
〈ギンガスラッシュ!〉
「デヤァ!!」
しかしその時だった。ギンガの額のクリスタルから放たれた紫の光線が、ベヒーモスの背中に直撃した。
不意打ちを受けて怯み、背中に傷が刻まれたベヒーモスが、後方にいたギンガを睨み付ける。至福の時間を邪魔されて怒っていた。
ギンガは手招きして挑発、ベヒーモスの注意を引き付けようとすると、希望通りベヒーモスはギンガの方へ突進し始めた。
ギンガはベヒーモスのパンチを避けると、空振りしたベヒーモスの拳が地面にめり込んだ。
ベヒーモスの拳を地面に叩き込んだ振動で、地面に亀裂が走った。地下にまで及ぶ広範囲の旧防衛軍基地。発展していた頃なら頑丈だっただろうが、今は長らく放置されていたことで、巨人と巨大生物を支えるには些か脆かった。ベヒーモスによって刻み込まれた亀裂は基地跡の周辺に広がり、やがて一つの大きな穴を開けた。ギンガでさえすっぽり入りそうなほどの奈落。穴の奥から、基地の奥に溜め込まれた空気がひゅうう、と吹き抜けている。
ギンガたちの戦いは、これほどの穴が開くほど地盤の悪いエリアで戦うのをやめるほどのものに留まらない。寧ろ苛烈さを増していった。
「ディア!」
今度はギンガがベヒーモスに向けてパンチを叩き込む。さっきよりも深くめり込んだ一撃はベヒーモスをのけぞらせる。少し間が開き、ギンガがダッシュで接近すると、ベヒーモスは一直線に向かってきたギンガに向けて雷の弾丸を撃ち込んだ。
胸元で火花を起こし、続けてベヒーモスは雷の弾丸を連射する。
ギンガは連続でもらい続けながらも、両腕をクロスして何とか防御態勢に入ることができた。だが、何度も立て続けに耐えられるほど頑丈とは言えなかった。
「ガアアアアアア!!!」
すると、連射を一度止めたベヒーモスが、頭上にこれまでにないほどの巨大な稲妻をほとばしらせた弾丸を作り出した。
(まずい!)
今のギンガは、連射を防御していたことで腕がしびれていた。身動きが取れない。
避けることもできないギンガは、ベヒーモスの稲妻を……その身にもろに受けてしまった。
「グアアアアアアアアアアアア!!!」
火花と爆発の中に包まれながら、ギンガは悲鳴を上げ、そしてうつぶせに倒れてしまった。
「ギンガーーー!!」
「神薙さん…!!」
コウタが叫び、思わずアリサがユウの名前を呼ぶ。
ピコン、ピコン……
ギンガのカラータイマーが、ついに点滅を開始した。もう残りのエネルギーも時間も少ない!
ダウンしたギンガに、ベヒーモスが薄ら笑いを浮かべながら近づいてくる。ギンガはまだ立ち上がれない。10のカウント内に立ち上がらなければ、奴の餌にされてしまうほどに接近を許していた。
「コウタ!神属性バレット!」
「は、はい!」
「ソーマ、隙を突いてチャージクラッシュを仕掛けて!」
「っち…」
即座にサクヤがコウタ、そしてソーマに指示を出す。
コウタとサクヤは素早く動きながら銃型神機でベヒーモスの体を撃っていく。射撃を受けたベヒーモスはサクヤとコウタをそれぞれ見やると、目障りなハエが来たと思ったのか顔をしかめ、標的を二人に変えて手から雷の弾を放った。
雷の弾から、サクヤは軽やかに避けていく。でもその顔に余裕はなかった。ピターの時でさえ手を焼くほどの相手だったのだ。それが普通のアラガミなどよりも遥かに進化を遂げたベヒーモス相手ではなおのこと。ベヒーモスの弾幕を回避するのは一秒一秒が気を抜けなかった。サクヤは避けることができていた。しかし…コウタはサクヤのようにはいかなかった。
「うわあああああ!!」
「コウタ!」
思わず足を止めたサクヤ。ベヒーモスは自分の雷の弾丸の爆風で吹っ飛び、地面に落下したコウタの元へ近づいてその手を伸ばしだした。コウタを食らうつもりだ。
「…!!」
伸びてきたベヒーモスの掌を見て、コウタは思わず目を伏せる。
「どけ!」
コウタの前にソーマが駆けつけた。彼の神機の刀身は青紫色の光を纏っていた。肩に担いだオーラを纏う大剣を、迫るベヒーモスの腕に向けて勢いよく振り下ろした。
叩き落とされた刀身を受け、ベヒーモスの右手が上から半分に切り裂かれた。チャージクラッシュほどの威力に、奴の手は耐えられなかったようだ。引っ込めた右手を左手で押さえて後退り、悲鳴を上げた。ベヒーモスのもだえ様を見て思いの外手ごたえがあったことを察する。
「…さっさと援護の態勢に入れ」
「い、言われなくたって!!」
後ろを振り返ったソーマに言われ、ムカつく奴から助けられたことに感謝以上に屈辱を覚えたコウタはふてくされたように顔を歪めて立ち上がる。
こんな奴の顔を見てるとムカムカが止まらない。すぐに視線をウルトラマンの方に向けることにした。
「神薙さん…!」
未だに、アリサはただ銃形態の神機を握った状態のまま、ギンガの戦いを見ているだけだった。
またしても足を引っ張ってしまった。アリサは唇を噛み締めた。タロウは彼女が今自分に対して憤りを感じていると察したが、かといってこのまま彼女に戦闘を続けさせるのは無理があると思い始めた。
「アリサ、もう下がった方がいい。やはりまだ早すぎたのかもしれん」
「…」
タロウの言うことが最もだろう。でも、オレーシャと約束したのにそれを成せないことが、どうしても納得できなかった。だから、彼女はタロウの忠告に頷かなかった。
「…いえ…私は……!」
気が付けば、彼女は駈け出していた。
「おい、アリサ!」
意地を露わにしたアリサに驚きながら、タロウはすぐに追いかけて行った。
ギンガは大地に根を張るように足に力を入れて立ち上がった。
「く……」
こんな奴には負けられないのだ。自分以外の存在をただの餌としか見なしていないこんな奴に負けられない。
ギンガは、周囲で自分を援護しようと構えている第1部隊の仲間たち…サクヤ、コウタ、ソーマ…そして後ろで自分をじっと見続けているアリサとタロウを見る。
妹を、リンドウを、エリックを失った時のように…もう二度と誰も死なせるものか!
こいつが自分よりはるかに強くたって…僕は負けられない!
「シュア!!」
気合の声を上げ、ギンガは駈け出した。
相手が向かってきたのを見て、ベヒーモスも向かってくる。ぶつかると同時に、お互いの体を掴みあった。相手を投げ飛ばそうと腕に力を込めあうが、力が拮抗し合ってそこまでに至らない。ひたすらお互いに掴みあってそのままぐるぐるとまわり続けている。
「これじゃ撃てない…」
援護しようにも、このまま迂闊に打てばギンガに弾丸が直撃しかねない。サクヤとコウタは、銃を構える姿勢のまま援護の機会を待つしかなかった。
ようやくお互いを離すと、ベヒーモスは全身に雷を纏った。何か必殺技でも仕掛けるつもりだろうか。
こいつはやばいかもしれない!こっちはもうカラータイマーも点滅していて、エネルギーも残り少ない。あれをまともに喰らったらもう勝ち目はない。
「フン…!」
ギンガはすぐに必殺光線の構えに入った。全力でぶつけなければ。全身のクリスタルを青く輝かせ、L字型に両腕を組んだ。だが、ベヒーモスの方が発射準備の完了が速かった。先に撃たれてしまう!
「コウタ、アリサ!」
サクヤがコウタ、そしてもしかしたら援護してくれるかもしれないアリサにも叫んだ。
コウタとサクヤ、二人の射撃がベヒーモス最大の雷の弾の発射を阻害する。すぐに放とうとしていたベヒーモスだが、主に顔の周囲を被弾したせいで、発射を中断してしまった。
「今よ、ウルトラマン!撃って!」
サクヤの叫びに頷き、ギンガは必殺光線を放った。
〈ギンガクロスシュート!〉
「ディア!!」
ギンガの腕から放たれた光線は、ベヒーモスに直撃した。だが、当たったからと言って勝ちではない。今までこの光線を耐え抜いた合成神獣は何度もいたのだ。だからダメ押しでさらにエネルギーを高め、そして奴の胴体さえも貫く!!
「オオオオオオォォォォォ!!」
ギンガは雄叫びを上げながら、さらに光線の力を強めていく。エネルギーがそれに伴って枯渇していき、カラータイマーの点滅速度も速くなっていった。
そし…ベヒーモスの体をギンガの光線が、まるで槍で貫かれたかのように貫いた!
「ガアアアアアアアアァァァァァァ!!!!」
苦しみ悶えながら、腹に風穴を開けられ、そして大量の血を腹の穴や口、目などからも噴出しながら、ベヒーモスは苦痛の叫びをあげる。
光線を放ち終わって、ギンガは膝を着いた。大量のエネルギーを使いすぎて立つのも難しかった。
ベヒーモスはギンガに手を伸ばしながら、一歩一歩、生気を失いつつある足取りで近づいていた。もう奴自身、戦う力が残っていないのかもしれない。それでも奴は獲物を求めるように、ソーマにぱっくり叩き割られた右手を伸ばしていた。
サクヤたちは神機を構えて奴の出方を伺う。
すると、5歩ほど歩いたところだろうか。ベヒーモスは……前のめりに倒れこんだ。
「……や、やった……やった!しゃああああああ!」
コウタが真っ先に喜びの声を上げた。自分たちは勝ったのだ。あのピターとボガールの合成神獣に!
「リンドウ…」
サクヤはほっと深い息を吐いて、空を仰いだ。空のどこかで、リンドウの姿を探し求めるように。
合成神獣ベヒーモス。あのボガールとピターという、捕食欲求が異常な強敵同士をくっつけたアラガミなだけあって、すさまじい強敵だった。アラガミ化したジャックほどではないが、もし一人で戦っていたら自分は負けていたかもしれない。…いや、今の戦いだって負けていてもおかしくなかったかもしれない。それでも勝てたのは幸運だった。
ギンガは、サクヤ、コウタ、ソーマ、タロウとアリサの方を向いた。全員無事だった。よかった…とギンガ、ユウは内心深くホッとした。
仲間たちに深くうなずき、空へ飛び立とうと空を見上げた。
「………」
アリサは、強敵との戦いが終わったことへの安心感を確かに感じていた一方で、自分の出番が何もなかった…というよりも何もできなかったことで複雑な感情を抱いていた。自分の手を見て、やや悔しそうにぎゅっと拳を握った。
(…ごめんなさい、パパ…ママ…オレーシャ、リンドウさん…私、まだ……)
あの合成神獣は、自分も倒しにかからなければならない相手だった。両親とリンドウ…彼らの無念を晴らすためにも。でも、未だトラウマの鎖が自分を縛っていた。
しかし、安心するのはまだ早かった!
「グルルルル……!!」
小さな唸り声を上げながら、ベヒーモスが立ち上がりだしたではないか!
「ッ!!!」
それに真っ先に気が付いたのはアリサだった。
あれほどの攻撃を受けてなお、まだ生きていられるなんて、なんて生命力なのだ。
そして、ベヒーモスはその大きな翼を広げ…ギンガに…襲いかかった!!
自分の両親を食らったピターや、オレーシャを無残に食いちぎったヴァジュラが獲物を食らうように。
ギンガを飲み込もうと、その涎まみれのおぞましい牙と口が、ギンガに後少しのところまで迫っていた。
「!?」
彼が振り返った時にはもう遅かった。
アリサはそれを、目を見開いてみた。ピターに食われた両親、ヴァジュラに食われた親友…。
アリサの脳裏に、これまで彼女が経験した悲劇が過った。
いつもならその記憶は、アリサの手足を止める鎖となる…はずだった。
だめ…!!
心の中で、強く自分の声が響いた。
アリサは叫んで神機の銃口を向け、引き金を引いた。
「避けて!!」
自身の方に向かってきた弾丸に一瞬驚いたギンガだが、アリサの警告が頭に入って体が動いた。
彼女の発射した神属性バレットは、ベヒーモスの目に…正確に直撃した。
アリサの決死の一撃を受けたベヒーモスはバランスを崩し、そのまま地面に開かれた、旧GUYS基地の地下に続く奈落へ、落ちて行った。
すぐに振り返ったギンガは、ベヒーモスが落ちた奈落の底を見下ろす。奴は穴に落ちてしばらく上がれないようだ。なら今のうちにと、ギンガは奈落の淵をギンガセイバーで砕き、大量の瓦礫を落として即座に穴をふさいだ。
奴は、まだ生きているだろう。アラガミはコアを摘出しない限り死ぬことも、新たに再生することもない。エネルギーも残り少なく、これ以上戦うことはできないから、今はしばらくの間動きを封じるだけで十分だ。
それにしても危なかった…アリサがあそこで撃っていなかったら…!!そう考えるとぞっとしてしまう。
でも…一つ安心したことがあった。
ついさっきまで、恐怖のあまりその目でヴァジュラ種を見ただけで震えて動けなかったはずのアリサが、自ら動いて、そしてギンガの窮地を救ったのだ。
「アリサ!」
サクヤとコウタが近づいていく。アリサは緊張の糸が切れたのか、その場で膝を着いていた。
「サクヤ、さん…コウタ…私………うまく…できたん……ですよね?」
「ええ、もちろんよ…!!」
顔を覗き込んできたサクヤを見つめ返しながら尋ねるアリサに対し、サクヤは笑みを浮かべて頷いた。
リンドウを失った要因であるはずの自分に、サクヤは罪を許す寛大な女神のような言葉をかけてくれた。
後ろには、ギンガがこちらを見下ろす姿が見える。ギンガ…ユウは、アリサと視線を合わせ、頷いた。ありがとうと、告げるように。
「よかった……今度こそ、守れ…た…!!」
アリサは、顔を覆って泣き崩れた。
オレーシャは今の自分を見て、相変わらず泣き虫ね、とからかうように言ってくるだろう。でも…きっと同時に喜び、褒め称えてくれるだろう。
アリサはこの日……過去のトラウマを乗り越えたのだった。
その日から、アリサの様子は変わった。
オペレーション・メテオライト当日に向け、訓練スペースで彼女はこの日も自主訓練を行っていた。
その様子を、別室の窓からユウ、サクヤ、コウタが見ていた。ソーマは別件があるとのことで同席していない。コウタは、
「ソーマのことなんかいいよ。どうせ『俺には関係ねぇ』とか思って適当に言い訳したんだろ」
と一蹴してソーマの事を放っておくことにした。
リディアも同席していたが、彼女はさっきから
「アリサちゃん大丈夫かな…」
と言葉を繰り返しながら部屋の中をうろうろして挙動不審だった。
「先生、大丈夫だって。俺たちもアリサの任務中の動き見てたから」
「そうですけど…」
コウタが落ち着かせようとしても、リディアは心配のあまりあたふたしたままだ。今回の訓練スペースでのダミーアラガミとの模擬戦闘はアリサ自身が申請したことなのだが、ユウはアリサとリディアの間で起きた過去を詳細に知っていたので、彼女のこの反応はやむを得ないところがあった。
「みんな、あれを…!」
サクヤが目つきを険しくさせた。ユウたちが窓の向こうにいるアリサの姿を見る。遂に来たか…と心の中で言葉が出た。
アリサのトラウマの象徴である大型アラガミ、ヴァジュラのダミーが立ちふさがっていた。
「次、お願いします!」
すでにダミーのシユウやコンゴウを同時に葬り、次のダミーアラガミの出現を促すアリサは、息を整えて神機を構え直した。
次に出たのは…ヴァジュラ。
ダミーとはいえ、過去のトラウマに縛られてきたアリサは、前回の任務では最後の最後が訪れるまでは決してこいつに手を出せなかった。一目見ただけで、両親とオレーシャが殺された時の光景が過り、激しい恐怖心が彼女の心を支配したのだから。
今だって、こうしてヴァジュラを見ていると強い恐怖を覚える。
「…ッ!!」
でも、今のアリサにはオレーシャとの約束があった。今度こそ大切な人たちを守るという約束が。それ以上の恐怖があることを知っていた。オレーシャとの約束をたがえ、戦う力を持ちながら恐怖に慄き続けて何もせず、仲間をまた見殺しにすることへの恐怖が。
咆哮を上げるダミーヴァジュラが、雷弾をスパークさせ、アリサに向けて放った。以前は完全に固まってしまい、装甲で防御する間もなくもろに食らって終わりだった。
だが…アリサは、目つきを変えてヴァジュラが飛ばしてきた雷弾に対し、ジャストタイミングで装甲を展開してダメージを無効化した。
そして即座に神機を剣形態に変形し…
「やあああああああああああ!!!」
すれ違いざまの一閃を、ヴァジュラに刻み込んだ。
「グゴオオォォ……」
ダミーヴァジュラはアリサとすれ違ったと同時に、おびただしい結合崩壊の痕を顔に刻まれ、ダウンし消滅した。
(やった…!)
アリサは思わずガッツポーズをしそうになったが、ユウたちが見ている前で妙に張り切った姿を見られると思い、思い留まった。今までこの極東支部で晒してきた自分の態度を考えると、はしゃぐ様なんて自分には似合わないし、考えただけで恥ずかしい。
「アリサちゃん!!」
思わずその声を聴いて、訓練スペースの扉の方を向くと、リディアが飛び込んできてアリサに勢いよく抱きついた。あの豊満な胸元の中にいきなり顔をうずめさせてきたのだから息苦しく感じる。一旦放してほしいと言おうとしたところで、リディアはその前にいったん離して両手でアリサの両肩を掴んで容体を確認してきた。
「大丈夫!?どこも怪我はない?平気!?」
「だ、大丈夫ですってリディア先生…だからそんなに慌てないでください」
この人の心配性は自分のせいだと思うと申し訳ない気持ちもあるのだが、あまり過保護にされるのもアリサとしては受け付けられなかった。
「アリサ!」
「あ、みんな…!」
続いてユウ、そしてサクヤとコウタも入ってきた。
「すごいわアリサ!もうこれなら心配することはなさそうね」
「この前まであんなに怖がってたのに…アリサすごいじゃん!」
「ありがとうございます!」
サクヤとコウタの二人から高く評価を受け、アリサは嬉しくなる。冷たくするわ、自分のせいでリンドウとも離れ離れになったりもして、この二人にも悪いことをし続けていたのに、二人は完全に自分を認めてくれている。
でも、こうしていられるのも、オレーシャと再会して約束を結ぶことができたのも、再びゴッドイーターとして戦うことができるようになったのも…
「アリサ…」
名前を呼ばれ、アリサはユウの方を向き、頭を深く下げた。
「神薙さん…本当にありがとうございました!」
本当ならタロウにもお礼を言いたいところだが、タロウの存在を迂闊に喋らない方がいいとユウたちと決め込んでいたのでこの場ではユウだけにお礼を言った。
「あなたがいなかったら、きっと私…あのクローゼットの中で今も閉じこもり続けていました」
「いや、僕だって一人じゃ何もできなかった。アリサが勇気を出したから成しえたことなんだ」
謙遜もあるかもしれないが、それは事実。自分がウルトラマンでなかったら、タロウや仲間たちの助けがなかったら、そしてオレーシャの魂がアリサの中で生きていなかったら、このひと時を得られなかった、とユウは確信していた。
「神薙さん…でも、私…」
「うーん…あのさアリサ」
ユウはふと、今のアリサの言動で一つ気になったことを抱き、アリサ一つ要求を出した。
「僕のことは名前で呼んでくれ。苗字じゃなくて、ちゃんとユウって呼んで」
「え?」
「せっかく仲間としてまた再始動するんだもの。それくらいはしてほしいかな?」
急に、何かお礼をさせられるかと思っていたが、予想外にも呼び捨てを要求されたことにアリサは戸惑いを覚えた。
「え、えっと…じゃあ…………その……あの……ユウ……」
距離感のある苗字呼びから呼び捨てを促され、なんだか妙に緊張感を覚えるアリサだが、言われた通りユウを呼び捨てで呼んで見せた。
「こ、これでいいですか?」
「うん、よろしい。これからもよろしくね。アリサ」
ちゃんとアリサが自分の名前を呼んでくれたことに満足し、ユウはアリサの頭を帽子の上から撫でた。
「あ……」
その笑みは、オレーシャの笑顔にも引けを取らない暖かな笑みだった。もし自分に兄がいたら、なんて思えるような優しい笑顔。頭に感じる、その手の大きさと温かさ。撫でられるととても心地よくて、いつまでもその温もりを感じていたくなる。
しかし、アリサは同時に何かを感じた。胸の奥で、ドクン…と心臓が高鳴る音がした。
それを覚えると同時に、アリサは見る見るうちに彼女の神機のように顔が赤く染まって行った。
「ちょ…あ、頭を撫でないでください!私そんな子供じゃないんですから!」
思わずアリサは激しく恥ずかしさを覚えるあまり、ユウから勢いよく距離を取り出した。
さっきまで異性の笑顔をまじまじと見ては頭を撫でられて心地よさを覚えるなんて、恥ずかし過ぎてユウの顔を見ることができなかった。
「え?あ、ごめん…さすがに気安く触っちゃダメだったか?」
「あ、いえその…別に怒ってるわけじゃないです。ただ、その…えっと…」
なぜかまたいつぞやのように怒鳴ってきたアリサに、ユウは困惑を覚える。対するアリサは強く言い過ぎたと思って訂正しようとするも、何を言えばいいのか分からなくなり、その先をうまく口に出せなかった。
そんな微笑ましい二人に、サクヤはあらあらと楽しげに呟き、コウタはやや羨ましそうにユウを見て、リディアはアリサのその態度の意味を瞬時に察して心の中でエールを送ったのだが、ユウがそんなことを三人が考えているなんて夢にも思わなかった。
○NORN DATA BASE
・暴君神帝獣ベヒーモス
(ボガール+ディアウス・ピター)
上記の、異常に捕食衝動が強い者同士が、闇のエージェントたちによって融合した。
外見は顔がピターのままだが、そのピターのフォルムを元に頭や角の形がボガールのものとなり、『ゴッドイーターリザレクション』で新たにつけられた刃翼もボガールの翼と融合したことで、翼の裏が牙のように鋭い棘で覆われている。当然ボガールのようにそれをウルトラマンや怪獣一体分ものサイズに広げ、覆い尽くすように捕食が可能。
ピターのころと比べると、2足歩行となり、前足が腕に変化している。
他にもボガールのころの名残で、言語能力を習得した。
しかし性格は融合素材となった二体と同じく、自分以外の存在をただの餌としか見なしていないため、他の命を踏みにじることに何の罪悪感も感じない、純粋な悪の怪獣である。その性格ゆえ、自分たちを一つに融合して強化した闇のエージェントたちに従うつもりも全く見せず、そればかりか反逆して彼らの体の一部を食いちぎってしまった。
当然ながら戦闘能力も高く、ボガールの持つエネルギー弾とピターの雷の弾丸が互いにひとつになった光弾を撃ったり、ボガールと同様に超能力を使用することもできる。
名前は、これまで幾度もアラガミの組み合わせと特徴を投稿してくださった名前不明の方が、ピターを元に提案した合成神獣の名前からとらせてもらいました。