ULTRAMAN GINGA with GOD EATER   作:???second

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ついにウルトラマンR/Bも明日で完結…平成ウルトラマンシリーズも終わりとなりましたね。幼い頃にティガをリアルタイムで見てから早く20年近く…
映画の情報では新たに悪のウルトラマン、トレギアに続き、あの子が変身する女性ウルトラマン、グリージョの登場が明らかに。平成時代が終わっても、まだウルトラマンが終わる気配がなさそうで良かったです。永遠といかずとも、これからも長くウルトラマンたちと付き合っていきたいです。

ゴッドイーター3も発売されましたが、残念ながらPS4持ってない…パソコンも新しいやつを買わないとプレイできません。動画視聴でも話はわかりますが、せっかくなんで実機プレイをしたいところです。
就職もしたんでしっかり働くか…


ボロボロの翼でも(後編)

「…例のもの、残っているといいね」

支部長室にて、任務へ向かったユウたちのことを考えながら、サカキとヨハネスは共にコーヒーを酌み交わしていた。

「今回彼らが回収する予定のメテオールのことか?」

「アラガミは何でも食べてしまうのは語るまでもない常識だ。私たちにとって特にね。例のアレが食べられても不思議じゃない」

「だが、あそこには決して失ってはならない遺産がある。それを奪われる前に回収しなければ、アラガミ共はそれを利用して新たな進化を遂げる個体を生むだろう。もし宇宙人共が先に手に入れてしまってもそれは同じ。

そうなれば、『計画』に強い支障をきたすアラガミと戦う羽目となり、我々はさらに不利に追い込まれてしまう。今まで我々が偏食因子や神機…フェンリルが人類の砦として確立させるまでの間、結果として放り出し続けていたが、私はあれが本当に失われたのかどうか…いや、メテオールのデータは必ず今もなお存在し続けているはずだ。

なにせ、ソーマが生まれたあの時に私たち親子を守ったあの『安産のお守り』…それを作り出せるだけの技術を君が受け継ぐことができたのは…あの人のおかげだ」

(……)

安産のお守り、その言葉にサカキの脳裏に、一瞬だけ…昔の記憶が過った。

ヨハネスと自分、褐色肌の美しい女性と共に机を並べて話し合っていた時の光景が。

そしてもう一人…

 

…自分たちに貴重な知識を与えてくれる、年老いた老人の顔も。

 

「あの安産のお守りは君が作ったものだが、その元の構想を作り出していたのは…我らが『恩師』。かつてのオラクル細胞研究チームに来訪なさる前には地球防衛軍の科学担当班でも兼任なさっていた人だ。独自にアラガミへの対抗策を講じていても不思議ではない。アラガミの蹂躙にかこつけて侵略を目論む異星人たちが我々の抵抗を恐れてメテオールを狙ってくることも、あの人は想定したから、あの場所にメテオールのデータを隠し、その足取りを我々のみに伝えた。

メテオールを守ることは、我々がお互いに抱く願いを成就するため。それすなわち人類の未来を守ること。私たちには、地球の未来を思ったあの人の教え子でもある以上、それを無視するわけにいかない」

「『先生』の意思を汲んでいると言うのなら…考えを改める気にはならないのかい?『あのこと』について」

「……」

『あのこと』と聞いて、ヨハネスはソファから腰を上げ、支部長室の壁に駆けられた絵画に注目する。

荒れ狂う海の上に浮かぶ、板切れの絵だ。過去の高名な画家が遺したとされるものだ。

「君は、絶対に逃れられない世界の滅びから唯一逃れられるものが目の前にあって、それを手放せと言うのか?私はもう引き返せないのだよ」

その絵を一瞥した後、改めてサカキの方を振り返ると、サカキはいつものように笑みを浮かべているが、それは仮面のようにも見えた。

「時が君の考えを改めてくれると思っていたが、無駄だったようだね」

「そう、指を咥えても無駄なんだ、『星の観測者』。先生が今の私を否定するとしても、どんな手を使ってでもやらねばならない。

人の安寧に満ちた未来…それ自体は間違いなく彼らが…『アイーシャ』と

 

 

 

『来堂ホツマ』先生が最期まで望んでいたことなのだから」

 

 

 

「SHIT!いったいどこにFade-outしやがったんだ」

その頃、荒れ果てた極東の大地の上で、闇のエージェント三人組は、逃亡したピターとボガールの合成神獣を探していた。

「まさか我がマグマ星自慢のマグマチックチェーンをこうも早く食いちぎりやがるとは…さすがは暴食のアラガミと怪獣の合体ということか」

「それほどなだけに、今度こそギンガを殺せる切り札になれると期待できるのだけど、飼い慣らす以前に、最低限逆らわせないのも一苦労ね…」

バキ、マグニス、そしてグレイの三人は予想以上に成長を遂げていた新たな合成神獣に驚くものの、苦労をさせられたことに一種の疲労感を覚えていた。

「む…おい見ろ」

その時、マグニスは自分達のいる丘の上から、下に見える廃墟の方角を指差した。

「ギンガの人間態の所属する部隊だ」

それを聞いてグレイとバキもマグニスが指を差した方角を見ると、ユウたち第一部隊のメンバーたちが巨大な廃墟のもとへ向かうのが見えた。

「あいつら何をしに来たのよ。いつも通りアラガミの相手というには、なんか様子が違うわね」

グレイには、アラガミと戦うのがゴッドイーターたちの生業なのに、瓦礫の山へ向かう彼らの行動の真意が読めなかった。

「…なんだかSmellingだぜ。ここはあいつらを追ってみるか?」

「確かに気になるが、俺たちには合成神獣を追わねばならん。もし俺たちの手で作りだしたあいつが俺たちはおろか、あのお方に牙を向くようなことがあってみろ。俺たちも只では済まなくなるぞ。只でさえ奴は、俺達の拘束から逃れるほどまでに成長したのだからな」

「なら、誰か一人奴らを追う役、残った二人で合成神獣を探す…というのはどうかしら?二兎を追っても二とも取れるでしょ?」

マグニスの考えも汲みながらも、グレイは悪巧みを思い付いたように笑いながら提案した。

「そいつはちょうどいいぜ。前に言っていた作戦に必要な駒を、奴らの仲間から引き抜いてやる。既にsearch済みだ」

「ならバキ、奴らを追え。その間俺とグレイは合成神獣を追う」

「ヘヘ…ラジャー!」

 

 

 

 

 

 

 

防衛軍基地跡は遠くから見たとおり瓦礫の山だった。

入り口らしい場所も完全に破壊され尽くされ、鉄骨やパイプ、壁のかけらなどが転がっているだけだ。

タロウによると、メビウスがかつて勤務していたというこのキャリアベース『フェニックスネスト』には地下への入り口があるはず。当時の地球防衛軍は現在で言うアナグラのように地中にまで基地が広がっていることが多かったらしい。アリサ以外の、ユウの正体を知らない面々が周囲を観察しながら目を離している時にタロウが密かに教えてくれたその証言を元に、地下への入り口を見つけ、ユウたちは薄暗い地下を下りていった。

階段も所々崩れてしまって通れない場所もあるが、ある程度の高さまでなら飛び降りてもゴッドイーターたちには問題ない。壁も瓦礫も天井が崩れ落ちたりする心配さえなければ、神機で道を開くこともできる。

「それにしても暗いわね」

地上は昼時だが、反して暗闇に満ちた地下。持ってきた懐中電灯を明かりとして進んでいく第一部隊は、不気味な静寂に包まれた地下へと進んでいく。今歩いている廊下は、廊下というには広めだった。バスターブレードをソーマが振るってもあまり窮屈ではない。

「なんかここ…なにかしら出てきそうだよな。横切った壁に立てかけられた鏡に映った自分の後ろに、髪の長い女の人が…」

「へ、変なこと言わないでください!不謹慎です!」

周囲を見渡しながら恐怖を煽るようなことを口にしたコウタに、アリサは身震いして怒鳴りだす。それを聞いてコウタは意地の悪い笑みを浮かべだす。

「ははーん。さてはアリサ、お化けとか怖いんだろ?」

「べ、べべ…別に怖くないですよ!アラガミと違っているかもわからないものに怖がるほど臆病じゃないですよ!?」

じゃあオレーシャのことはどう説明するつもりだよ、とユウとタロウは同時に思った。実際に口に出したら「オレーシャは別です!」と猛反論してくるだろうが。まぁ確かに、オレーシャのような明るいタイプと、本来のよく聞くタイプのおぞましい幽霊を比較して考えれば同意できる。

「そんなこと言ってる割に声が震えてるぞー?」

「こ、コウタぁ!そこへ並んでください!!今すぐ撤回しないと…」

喚き散らす二人の間に、巨大な黒い刀身がずいっと割って入ってきて、二人は咄嗟に後ろへ躱した。

「ひゃ!」「うわ!」

「…うるせぇぞてめえら。任務中に無駄なお喋りをするくらいならとっとと帰れ」

二人の間の突き出したバスターブレード神機を引っ込め、うっとおしいとばかりにそう言い残し、先頭を切って歩き出した。

「…さ、行きましょう。この地下にももしかしたらアラガミもいるかもしれないんだから」

アリサとコウタはお互いに不満そうにソーマの背中を睨んだが、サクヤの言うとおりだ。今の騒ぎでアラガミが聞きつけてきたら大事だし、黙って奥へ進むことにした。

「けど、結構地下深くのエリアまできたわね。まだデータが残ってそうな場所が見当たらないけど」

この遺跡と化していると言えるGUYS地下基地跡の奥の方に、サカキたちが言っていた、『メテオール』と呼ぶ兵器のデータが遺されているかもしれないらしいが…。

(本当に残っているんだろうか…?)

アラガミたちはどんなものでも食らう。メテオールだって無事で済むとは思えないのに、サカキたちはなぜ取りに行かせることを進言したのだろうか。

疑問に思うユウ。

すると、廊下の向こうから何かが落ちる音が聞こえた。

「ひ!?」

薄暗い空間の向こう側から聞こえた物音に思わず悲鳴を上げるアリサ。思わず幽霊が出たのかと予想してしまう。

しかし、その正体は…

「グルアアアアアア!!!」

「オウガテイルか!」

物音が聞こえた廊下の向こうから、二匹のオウガテイルが襲ってきた。しかし、油断さえしなければこの程度の相手は敵ではない。だがオウガテイルが現れた方角とは真逆、背後からも新手のアラガミが現れる。

「サクヤさん、後ろからシユウが3匹!」

コウタが後ろを振り返り、敵の姿を確認してすぐに叫ぶ。

「前の方からもコンゴウが二匹来てます!」

アリサもオウガテイルの後ろからコンゴウのコンビが姿を見せたのを知らせた。

思いの外大勢でやって来た。もしかしたら、左右に退路が見当たらないこの場所に自分たちが踏み込むのを観察していたのだろうか。

「ソーマはそのまま前方!ユウ君はこっちで前衛!コウタはソーマを援護射撃、アリサは私と一緒にユウ君を援護!」

すぐにサクヤは全員に命令を下す。リンドウがいない今、副隊長である自分がこのメンバーのリーダーだ。リンドウの分も、絶対にこの子たちを守らなければ。

一同はすぐに動いた。ソーマが前方へ向かい、一撃のもとにオウガテイルを切り伏せる。その間コウタが、ソーマが切ったオウガテイルの向こうにいるコンゴウを狙撃して足を止める。

後方ではユウが新たな装いとなった神機を振るい、迫るウシユウの顔に傷を負わせた。

新しい神機の刀身、クレメンサー。アリサの神機とは対をなすように青く染まった刀身は容易くシユウの体に食い込んだ。

(軽く振り回しやすい!)

神機を振るいながら、新しくなった神機がまるで自分の腕そのもののような使いやすさにユウは心地よさを覚えた。

サクヤと共に狙撃しながらユウを援護する中、アリサはユウの勇姿に注目していた。ただ神機を新しくしただけで数日のブランクが抜けるわけではない。彼は以前と変わらないキレのある動きで回避を繰り返し、隙を見て一匹のシユウの腕を切り落とし、そして止めを刺していった。羨ましい、といつも思うようになった。あの人のように、本当の強さを持ったゴッドイーターに…。

しかし、ここでさらに予想を覆す事態が起きた。アリサのすぐ近くの天井が崩れ落ち、コンゴウたちよりもさらに大きな影が現れた。

「…!!!?」

アリサはそれがなんなのか真っ先に気付いた。そして…ほとばしる恐怖に足が凍りついてしまった。

最悪だった。

 

現れたのは……ヴァジュラだった。

 

それを見た瞬間、アリサは硬直した。

「アリサ!!」

「あ、あああ……あ……」

ユウの呼びかけに反応を示さない。アリサはただその場でカタカタと身を震わせていた。

そんな彼女にヴァジュラは前足を振りかざしてきた。

「アリサああああ!」

ユウはすぐにアリサの前に立ち、装甲ティアストーンを展開、ヴァジュラの攻撃をそのまま受け止めた。

直撃と同時に、ティアストーンから強い金属音が鳴り響く。

バックラーは3種類に分けられる装甲の中で最も小さいため展開速度が早く攻撃を防ぎやすいが、ダメージを軽減できる量が少ない。防御ができても強い衝撃が来るのだ。

「っ…!」

「か、神薙さん…!」

腕に痺れが走り、苦痛に顔が歪んだ。だが防御が遅れた場合を考えれば、これくらいなんともない。

しかし、前は防げても…

 

ピシッ…

 

足下は防げなかった。ヴァジュラの攻撃を防いだ際、ユウの足下にヒビが周囲の床に走り出した。足に妙な浮遊感を感じ、一気に脆くなったことを察したユウだが、その時には足下に大きな穴が開いていた。

「うわああああああ!」

アリサ共々ユウは床に開いた穴に落ちていった。

「ユウ!アリサ!」

二人が落ちた穴の方に向かうコウタだが、サクヤが彼の肩を掴んで引き留めた。

「待ちなさい!今は床が崩れやすくなってる!このまま行って落ちたりしたら、さらに分断されて私たちが不利になるわ!」

「く…」

コウタは、ユウたちが落ちた穴のそばで待ち構えているヴァジュラを睨む。さっきそのまま穴に向かっていたら、あいつは自分を食らおうと飛び付いて来たに違いない。

ヴァジュラの向こうには、向こうのコンゴウを仕留めきったソーマが駆けつけ、それに気づいたヴァジュラがソーマの方へ向き直って身構えた。

(無事でいてくれよ…!)

落ちていった二人を思いながら、コウタはサクヤと一緒にソーマの援護に入った。

 

 

 

「きゃあああああ!!」

「アリサ、落ちついて!神機をそのまま握って!!」

自分たちが落ちている奈落は、不運にも高層廃ビルの天井から地上の差ほどの深さだった。これではいくら身体が強化されたゴッドイーターでもタダでは済まされない。

落下中のアリサに向けて呼びかけたユウは、すぐに彼女の手を掴み、強引に彼女を自身の方へ引っ張り上げ、腕の中へ彼女を抱きしめた。

「!?」

緊急時とはいえ、いきなり異性からこんな形のハグをされたアリサは裏返った声が喉から出そうになった。しかし落下中だから文句を返す余裕もない。自分の神機を握り、そのままユウの抱擁を受けたまま落ちていく。

「タロウ、お願い!」

「任せろ!ウルトラ念力!!」

ユウはさらに、自分の服のポケットに隠れていたタロウに呼びかけた。応じて飛び出してきたタロウは即座に念力をユウとアリサに向けて放射すると、勢いよく落ちていくユウの体が、先ほどと比べてゆったりとした速度で降り始めた。

ユウはぎゅっと抱きしめていたアリサを、抱きしめた状態から右手だけでつかんだ状態へ放すと、アリサの体もユウと同じ状態でふわりとした状態で浮かんだまま降り始める。

「………」

不思議な感覚だった。まるで自分の体が空を自由に浮いているように思えた。やがて二人の体は、奈落の奥底の床の上に激突することなく着地した。

「ふぅーーー…一時はどうなるかと思ったよ。アリサ、大丈夫?」

「は…はい。タロウもありがとうございます」

「怪我はなさそうだな。よかった」

「さっきはごめん。いきなり抱きしめたりして」

「お、思い出させないでください!すごく恥ずかしかったんですから!!」

タロウの念力のおかげで激突を防げた安心感と、宙にゆっくり浮かんでいた時の感覚で忘れていたと思っていたのに、なぜ掘り返すのかとアリサはユウに怒鳴った。不可抗力だったが胸を揉まれた時に比べればマシとも言い切れないほどに恥ずかしいものだった。

「それより、ここはどこなんでしょう…?」

現在の自分達の位置を把握しようと回りを見渡すアリサ。アナグラの訓練スペース以上に広く、自分たちが落ちてきた穴以外にも所々壁の崩れやが見られるが、あまり物は転がっていない。床には何かのベルトコンベアが三方向に延びている。

「ひとまずサクヤさんたちに通信しよう」

ユウは通信端末を取り出してサクヤに連絡を入れてみた。

「こちら神薙、サクヤさん聞こえますか?…サクヤさん?…だめだ。無線が通じない」

だがサクヤから応答がなかった。

「恐らく地下深い場所まで落ちたせいで、電波が届きにくくなって通信が通じなくなったんだ」

そう言って、床のコンベアを見てタロウはここがどこなのか予想した。

「ふむ…この構造…どうやらここは地球防衛組織GUYSが利用していたメカニックを、地上へ続く発射口に送るベルトコンベアのようだ。おそらく地上と格納庫の両方に続いているはず。サクヤ君たちを探しつつ、今回の任務で探すように求められていたデータを探してみよう」

「わかった。その方針で行こう。アリサもいいかな?」

「はい…」

今の自分は足を引っ張っている身だ。かといって迂闊に独断なんてできるはずもないので、アリサは大人しく二人についていく方針を固めていた。

ひとまず右に伸びるベルトコンベアに沿って、ユウたちは歩き始めた。格納庫の上のベルトコンベアを渡り、その先のフロアへ向かおうとすると、後ろにいたアリサがユウに声をかけてきた。

「さっきは…すみませんでした」

急に謝ってきた彼女にユウは戸惑いを覚えたが、あぁ、と呟いて何のことかを察した。

「あー、いいって、僕もちょっと気遣いが足りてなかったよ。確かにアリサの立場になって考えたら恥ずかしかったもんね」

「そっちじゃありません!」

だが、次に飛んできてのはボケに対して突っ込みをかます芸人のような鋭い声だった。

「え、違うの?」

素できょとんとするユウに、一時は恥ずかしくて顔が赤くなっていたアリサも、すっかり冷めたように深いため息を漏らした後、何のことを謝って来たのかを明かした。

「…ヴァジュラと対峙した時の事です。私、結局また動けなくなってしまって…」

「あ、そっちか…そう簡単に克服できるほどアリサのトラウマが簡単なものじゃないってことはわかってたから、気にしてないよ」

「そうですけど…」

ヴァジュラにただひたすらおびえ続ける。それはまた同じ過ちを犯そうとしていると言っても間違いではない。このままで本当に大丈夫なのだろうか…。また己の身に悲劇が繰り返されるという不安がアリサに重くのしかかっていた。

これまで何度もことばをかけた。だが、ただ言葉をかけたところで、アリサの自信が完全に回復できるわけではない。現に何度もアリサは落ち込んだり落ち着きを取り戻したりを繰り返している。

(…何とか、自信を掴めるきっかけがあればいいんだけどな)

ユウはただひたすらそう願い続けた。

 

 

 

その頃、遭遇したヴァジュラを撃退したサクヤ、コウタ、ソーマの三人。

ソーマによってコアを回収されたヴァジュラは、少し時間を経た後でその肉体を黒い霧のように変えて床にしみ込んで消えて行った。

「ユウ君、無事?返事をして!…ダメか」

サクヤもユウに連絡を試みたのだが、通信先のユウたちが無線が通じないほど地下にいるので通じなかった。リンドウの分も守ると決意した矢先にこれである。不足の事態とはいえ、サクヤは自分を不甲斐なく思った。

だが、まだ二人が死んだと決まったわけではない。サクヤは、今度はアナグラのヒバリに連絡を入れた。

「ヒバリ、ユウ君とアリサの腕輪信号は?」

『はい!大丈夫です。お二人とも微弱ですが腕輪信号が確認されました!生体反応も探知できます』

「よかったぁ…二人まで今度こそいなくなったりしたらどうすりゃいいんだってヒヤヒヤしたよ…」

二人の無事を知り、コウタはホッと息をついて額の冷や汗を拭った。リンドウの行方不明とエリックの訃報に続けて起きたのだから気が気でならなくなってしまう。

「サクヤさん、二人を迎えに行こうよ。早く行ってやらないと、あの二人安心できないだろうし」

「そうね、早く行ってあげましょう。ソーマ、いいわね?」

「…」

「ソーマ?聞いてるの?」

「…ああ」

なぜかすぐに返事が帰ってこなかったソーマに、サクヤは首を傾げるも、特に気にすることでもないだろうと思い、二人を連れてユウたちを迎えに行った。

(…)

ソーマは、頭の中にユウの姿が浮かんだ。

生存が絶望的な状態が続いてたのに生き残り続けた男。ソーマもまた、それは同じだった。生存率の少ない任務から、仲間が全員死んでも生き残ってきたという共通点がある。

その傍に、常にウルトラマンギンガというあの得体のしれない巨人がいる。あの巨人が常に奴のいるところに現れ、そしてアラガミを倒す。人から望まれた救世主としての姿を見せつけるように…。

 

……気に食わない。

 

ユウとウルトラマンギンガに対して、ソーマは不快感を募らせていた。

 

そんな彼を、近くの壁の影から、バキがほくそ笑みながら近づいていた。

 

 

 

 

ユウとアリサ、タロウの三人は、ある場所へとたどり着いた。

数多の古いコンピュータがいくつも並べられたフロア。いかにもと思えるような部屋だった。

「このコンピュータルームは…?」

三人は部屋の中を見渡してみる。デスクの上に並べられていたコンピュータたちは、いくつも壊れているものがあった。床の上に蜘蛛の巣のようにはりめぐらされている回線も所々千切れているものが多く、切断部から小さな火花が数秒おきにバチバチと散っていた。ここまでアラガミが押し寄せていたこともあってか、別の部屋に続いているほどに壁に大きな穴も開いている。

「長いこと使われなくなってるみたいですね。本当に回収目的のデータが残っているのでしょうか?」

「探してみよう。残っているのかどうかなんて確かめないとわからない」

ユウはそう言って真っ先に目についたコンピュータの電源を入れてみる。だがそのコンピュータは壊れていたらしく電源が入らない。アリサやタロウも、ユウに続いて別のコンピュータに触れて機動を試みた。しかし、全てのコンピュータを調べつくしても、回収を任されていたデータを見つけることはできなかった。

「ここにはないみたいですね…」

できれば早めに見つけておきたいところだが、これほど酷い有様の場所で未だに機械が生きているということは奇跡に近いだろう。

「というより、ここの機械は全部壊れていたね。別の部屋に行ってみようか?」

「なら、あそこはどうだ?」

タロウが、壁に開けられていた穴の向こうを指さす。穴の向こうには、別の部屋が広がっていた。

神機を構え、その向こうの部屋を覗き込むと、さっきのコンピュータルームと異なり、画面が壁に埋め込まれた形の、個人用コンピュータが設置された個室だった。

「さっきのコンピュータルームの管理者の部屋か?」

「仕方ないですけど…あまり清潔とは言えませんね」

傍らにあるかび臭くて汚れきったボロボロの布団をかぶったベッドを見てタロウが呟く。長いこと使われていないように見受けられ、汚くなった部屋を見てアリサは少し眉をひそめた。

「ここが生きていたらいいんだけど…」

部屋の中を見渡しながらユウが呟く。さっきまで全く使い物にならなくなった機械を相手にしていたせいで、ここのコンピュータに対しても期待が薄く感じられた。

しかし、そのわずかな期待に応えるように、突如その部屋の壁に設置されたコンピュータから、プツン、と何かがキレたような音が聞こえてきた。

「…?」

ユウが振り返ると、確かに機械音が壁のコンピュータから鳴り出している。

『…閲覧該当者を認証。起動条件を満たしました』

アリサとタロウもそのコンピュータの方に振り返り、目を丸くする。

ユウは疑問を抱いた。誰も、このコンピュータには手を触れていなかったはずなのに起動している。答えの見えない疑問を抱く中、サンドノイズ画面を経て、一人の老人の姿が映し出された。

 

『私の名は来堂ホツマ。以前地球防衛軍の兵器開発の任を引き受けていた者である』

 

 

 

 

(Hehehe…見つけたぜ…)

壁の影に隠れながら、バキはサクヤたちの姿を観察する。

(しかも、今ギンガの人間態はターゲットと別行動…隙を突きやすいぜ)

闇のエージェントである彼は心の闇を見通すことができる。奴らの仲間の中にいる一人の人物にちょうどいい心の闇の持ち主がいる。そいつにダミースパークを与えてこちらに引き込む。ギンガにもちょうどいい地獄を見せることになるだろう。これであのお方もお喜びになるはずだ。

だがその時、ソーマがバキの隠れている壁の角を見やった。

「おい、いるんだろ。隠れてないで出てきやがれ」

コウタとサクヤ少し驚いた様子を見せながらも、警戒しソーマが振り返った方に銃口を向けながら向き直った。

おっと、気づかれたか。勘の鋭いやつだと思ったが、焦ることなくバキは自らソーマたちの前に姿を見せた。

「Meが隠れていることに気が付くとは、さすがと言ったところか」

「こいつ、もしかして以前会ったマグマ星人って奴の仲間?」

「Of Couse!」

バキの姿を見たコウタの疑問に、バキはいつものおどけた振り付けを加えながら肯定した。

「なら見逃しておくわけにいかないわね…ユウ君たちの事も気になるけど…」

神機を構えていつでも撃てる体勢に入るが、バキは余裕の姿勢を崩さない。接触してしまえばどのみちこっちのものだ。

さて、そうと決まれば早くダミースパークを…と思ったときだった。

『バキ、今何をしている!?』

慌てた様子のマグニスがテレパシーをかけてこっちに連絡を入れてきた。

「HEYHEY!今missionにtryするとこだってのに!」

「は?」

いきなり奇声じみた声を上げてきたバキにコウタは当惑する。テレパシーだから彼らにマグニスの言葉が聞こえていないのだ。

『それどころじゃなくなったぞ!ボガールとピターの合成神獣がそっちに向かっている!』

「Really!?」

『俺たちは奴を取り押さえる。お前は早く奴らの仲間の誰かを引き込め!』

テレパシーはそこで切れた。少し不味いことになったかもしれない。早くこいつらの誰かにダミースパークを与えないと、引き込んだ駒とピターの合成神獣をぶつける作戦が破断する。

が、ダミースパークを取り出そうとしたところで、また新たな驚異がソーマたちに、バキもろとも襲いかかった。

「ッ!お前ら、下がれ!」

「え?」

「速くしろ!」

何かの気配を察し、ソーマがサクヤとコウタに向かって叫んだ。

途端、彼らの傍らの壁が勢いよく突き破られた。

壁の向こうに潜んでいた…いや、壁の向こうからずっとこちらへ掘り進んできた氷のヴァジュラ、プリティヴィ・マータによって。

「な…こいつは!」

「WHAT!?」

出てきたのが、リンドウが消えたあの日に現れたアラガミだったことに驚くサクヤとコウタだが、同様の反応を示した辺り流石にバキにとってもこれは予想外だったらしい。いきなり新手のアラガミが出てきたことに飛び上がっていた。

マータは新たな獲物を見つけ、真っ先に目についたバキに襲いかかった。

「UHYOOOOOOOOO!?マータちゃんだとぉぉぉぉぉ!!?」

巨大化能力を持っているとはいえ、こんな余裕のない状況と狭くて閉鎖された場所では、それは無理があった。強引に巨大化しても、その巨体が地面の中に埋もれた状態になって格好の的にされてしまうからである。

「Oh!No!Don't come over here!!」

素っ頓狂な悲鳴を上げ、バキは一目散に逃げた。

「に、逃げた…」

「…今の内に私たちも移動しましょう。ユウ君たちの事の方が気になるわ」

予想以上に間抜けな去り際に、コウタは唖然としていた。今のマータはバキを追っていてこちらから注意が逸れているため格好の的だが、別にバキを助ける義理もないので、サクヤは放っておくことにした。

いきなり現れたと思ったら、ちょっとアラガミに驚かされたからといって尻尾を振るって逃げるとは。ソーマは人騒がせだと思いながら小さく舌打ちした。

その時、何かを踏んづけたような感触が足に伝わる。足を退かしてソーマは、今何を踏んだのか確認する。

(こいつは…?)

黒い棒のようなアイテムと、人形か?

訝しむように目を向けながらそれを拾い上げて凝視すると、サクヤの促す声が聞こえた。

「ソーマ、行きましょう」

「…今行く」

ソーマはサクヤたちに着いて行った。

 

バキが落とした、ダミースパークと……アニメのロボットのような人形をポケットにしまって。

 

 

 

その頃、ユウたちはコンピュータルームのすぐ隣に見つかった個室にて、突如起動したその部屋の備付のコンピュータが再生するビデオメッセージを閲覧していた。

『私が今このビデオを録画している数か月前、地球上に怪物の姿をしたオラクル細胞の集合体が増殖し、世界各国を蹂躙し始めた。今もなお、どこかで奴らの脅威に人々は脅かされているだろう。この状況を打破するための手段もまた失われ、このままでは地球上のあらゆる生命が死に絶えるだろう…う、げほ!げほ!』

映像に映る老人は、かなりやつれていた。頬は痩せこけ、肌も荒れ、かなり激しく咳き込んでいる。しかしそれでも彼はきぜんと姿勢を保ち、自分のビデオメッセージを見ているであろう後世の人間に対して言葉をつづっていく。

『だが、私はこのままおめおめと滅ぼされる訳に行かない。この星は我々地球人だけの星ではないのだ。

かつてこの星を幾度も救ってくれた光の戦士たちに報いるため、私は地球防衛軍が遺した超兵器のデータを守ることに決めた。アラガミと、アラガミの脅威に便乗しこの星を狙う悪しき者たちに対抗するには、奴らに対抗できる強大な力がなければならない。どんな高潔な理想を口にしても、力無き正義には何も守れない。しかし、同時に正義無き力もまた脅威にしかならないであろう。

故に切に願う。この力を扱う者が、宇宙の秩序を守る種族…「ウルトラマン」と同じ平和のために力を振るえる正しき心の持ち主であることを』

老人…来堂ホツマが祈るようにそう告げると、コンピュータの差し込み口からディスクが自動で取り出された。

『恐らくこれを見ている君たちの状況は、説明をゆっくり聞く余裕はないだろう。この先の情報は全てそのディスクに託す。それは私がアラガミの偏食傾向を研究し、決して食われないために開発した特殊ディスクだ。しかしアラガミの偏食傾向は常に変化しているため、完全な対策とは言えない。アラガミや星人たちに奪われ破壊される前に、どうかこのディスクを……』

ブツン!

そこで映像は途切れた。端末が古くなりすぎて、もう限界が訪れてしまったのかもしれない。

ユウは、差込口から出てきたディスクを手に取る。死体となったアラガミが消滅する際に見せる黒い霧のように真っ黒なディスクだ。

「これが、メテオールのデータが入ったディスクか…」

軽いもののはずなのに、手に取ると妙に重さを感じる。人類の未来が重くのしかかったような…何としても守らないといけないと思わされる。

「これで目的のものが手に入りましたね。アラガミに狙われる前でよかったです」

アリサはホッとしたように言った。

「よし、ここに長いするわけにいかん。すぐにサクヤ君たちと合流しよう」

タロウのその言葉にうなずき、ユウたちはすぐにその場を後にしようとした……その時だった。

ズシン!!と激しい音と主に、天井が揺れた。

「じ、地震?」

「…いや、違う!地上に何かいるぞ!」

タロウの予想は、当たっていた。

 

 

 

その頃、地上ではユウたちを帰すまいというようなタイミングで、恐ろしい魔物が暴れていた。その傍らには、既に何かに襲われ事切れたヴァジュラやマータ、他にも数体のアラガミの死骸が転がっていた。

「ぐっ、はぁ…!」

目の前にいる『それ』に重い一撃を受けたのか、膝を着くマグニス。すぐ近くにはグレイがうつ伏せで倒れていた。

「くそが!バキは何をやっている!いつになったら駒を連れてこっちにくるんだ!」

当初はそのような作戦のはずだった。だがバキがいつまでも来ない上に、予想外なことに『そいつ』が現れて作戦が完全に滅茶苦茶になってしまった。

「これだから普段からふざけた奴は信用できないのよ…!!」

付き合いをそれなりに持っていたのに、すぐに役立たずの烙印を押すグレイ。

「ちぃ、仕方ない。このまま俺たちだけでこいつを取り押さえるぞ!」

マグニスはもうバキを当てにできないと判断し、『そいつ』に向けてサーベルを振りかざした。

だが、その一太刀はあっさりと、『そいつが伸ばしてきた手』によって受け止められた。

「な!?」

驚きながらも、すぐにサーベルを引き抜こうとするマグニスだが、サーベルはすさまじいほどの力で握りしめられ、全く抜ける気配がない。

(こいつ、予想以上に…!!)

それでもなおマグニスはサーベルを引き抜こうとしたが、『そいつ』…自分たちによってボガールのスパークドールズを埋め込まれたことで異常な進化を遂げたディアウス・ピターは、マグニスのサーベルを握りしめたまま……バキッ!とへし折ってしまった。

さらに驚きを見せるマグニスに向け、すかさず前足…いな、腕を振りかざしてマグニスを殴り飛ばした。

「ぐおぉ!!」

マグニスは宙を舞ったのち、背中から地面に落下した。

「おのれ…これでも食らいなさい!」

グレイがお返しに手から紫に染まった波動弾をピターに放った。マグニスがあいつにかまっている間に、自分の持ちうるエネルギーを凝縮させた必殺のエネルギー弾だ。食らえばまともに済むはずがない………という予想はすぐに打ち砕かれた。

異常進化したピターはグレイのエネルギー弾に対しバサッ!と翼を広げた。

以前ユウたちが遭遇した際に、その翼に何人もの防壁外の人々が串刺しにされた、死を与える魔の翼は、融合したボガールのそれと混ざり合った状態だった。さながらそれは、壮年の帝王がマントを広げた姿を風潮とさせながらも、翼の内側の刺々しさはコクーンメイデンのもとになった鉄の処女のようだった。

グレイのエネルギー弾をその翼で包み込むと、包まれた翼の中でぐちゃぐちゃと生々しい音が響く。やがて翼を元通りに戻したピターは、食った食ったと喋っているように腹を叩いた。

ボガールのスパークドールズと融合させられたことで手に入れた技。敵の肉体、またはエネルギーを吸収して補食する。

「あ、あたしの攻撃を…!」

唖然とするグレイ。

僅かに顔を上げ、マグニスは自らの手で進化したピターを見上げる。

「くそ…が…!俺たちの…おかげで…その力を持ったくせに…!」

忌々しげに睨む彼の視線に対しピターは…

…笑っていた。

自分に純粋なアラガミだった頃にはなかった強大な力を与えたはずの恩人を『ただの料理』にしか見ていなかった。生物として、彼らを完全に見下している目だった。

もはやそいつは、ディアウス・ピターとは言えなかった。

後に、フェンリルによってボガールとピターの合成神獣はこう命名された。

 

『暴食神帝獣ベヒーモス』、と。

 

ベヒーモスは、ゆっくりと倒れている二人の元へ近づいていき、右手でマグニスの、左手でグレイの首を掴んで持ち上げた。

「は、放せ…!!」

宙ぶらりの状態で足をあたふたさせて今すぐにでも逃れようとする二人だが、身動きは取れないままだった。当然離さないまま、ベヒーモスは二人の体をそのまま地面にぶつけるようにして叩きつけた。

「ぐげ…!!」

周囲数百メートルの範囲まで地面に大きな亀裂を走らせ、二人のエージェントの頭を地面にめり込ませたその衝撃は、まだ地下にいたユウたちのもとにも激しく響いた。




次回は大晦日に、暁で連載しているウルトラマンゼロ×ゼロの使い魔と同時投稿予定です。これが平成最後の投稿となります。みなさん、ぜひ両作品を読んで感想を聞かせてください!

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