ULTRAMAN GINGA with GOD EATER   作:???second

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ストブラみたいに、ゴッドイーターもOVAという形でTVアニメ版の続編制作してほしい。そうすればスケジュールもあまり気にならないはずだし、ゴッドイーター3の宣伝にもなると思うんです。

誰かバンナムに直接直談判を!!


ボロボロの翼でも(中編)

その生き物は、その姿になって以来、不愉快な窮屈さの中にいた。

四肢に異様に硬く頑丈な拘束具をつけられ、日も差さない暗い場所に放り込まれ、ひたすら使い時が来るまでの間は昼も夜もわからない暗闇の中に閉じ込められていた。

そいつは、とにかく貪欲だった。何かを口に放り込まないと気が済まなかった。

 

食べたい…食べたい…食べたくてしょうがない

 

そいつを支配する感情…それは『食欲』だった。

ただひたすら、目に見えるものも、どこかにあるであろう美味なものを食べて腹を満たしたいと思っていた。他の誰のものだろうが、知ったことではない。そいつにとって自分の食欲こそが絶対順守すべき正義と言えた。

そいつにとってこの世にあるとあらゆるものが餌なのだ。自分以外の存在は自分に食われるためだけに存在する。その意思に歯向かい、食事の邪魔する奴は全部悪であり、そいつらもまた自分にとって餌だ。

おのれの抱く感情がどれ程身勝手で下衆であろうと、そいつはこの世の全てを食らうまで、そいつは決して止まることはない。

そのどす黒い欲望はそいつの原動力となり、自身を縛る拘束をも食らって自由を掴むのだった。

 

 

 

 

 

 

以前自室の冷蔵庫に隠されていたリンドウのディスクを手に、サクヤは考えていた。

リンドウの残したディスクを解析するも解除できず、ただひたすら考え込み続ける。リンドウがこのディスクを遺した理由を。

大車はアリサを洗脳し、怪獣を使ってまでリンドウやウルトラマンを殺そうとした。でも大車とリンドウの間に直接的な接点は何もなかったはずだ。なのに、リンドウは大車に命を狙われた。いったいなぜ?

あの男はアリサを狙って再度アナグラに侵入したが、結局ユウに捕まって拘束された。それを機にアリサは回復、原隊復帰を果たし、今では新型神機を破損しているユウのサポートを受けながら任務への復帰も目指すに至り、アリサに関しては心配することは少なくありつつある。彼女に対しては複雑な思いがあるが、彼女も被害者でもある。リンドウが目にかけていたユウや、昔から彼女を心配している女医のリディアもいる。これから立派なゴッドイーターとして成長していくことだろう。

だが…大車のこれまでの行動の意味がなんなのかがわからないままだ。

大車自身に、リンドウとの接点はない。だがそれでも、手の込んだ手法で殺害を試み、行方不明に追い込んだ。彼自身にリンドウを殺す理由が見当たらないのなら……

(大車とは別に、誰かがリンドウが死ぬことで得をするか、都合のいい奴がいる…?)

そう考えると、何かが繋がってくるのを感じた。

わざわざアリサをさらおうとした理由が、彼の持つ秘密…リンドウが命を狙われた理由を隠ぺいするためと考えると…。

大車は人間でありながら怪獣も使っていた。以前任務中に遭遇し、グボロ・グボロを合成神獣に変えたあのマグマ星人となのった奇妙な人物も何か関係があるのかと。もしや、あのマグマ星人が黒幕なのだろうか?

…いや、あの星人がリンドウが死ぬことでいったいどんなメリットがあるというのだろうか。それに、あくまでこれは憶測でしかない。真実を知るには、やはりリンドウのディスクの内容を知るか、もしくは……当事者から話を聞くこと。

アリサからは、彼女が訓練を挟んだ時に話を聞いたが、結局リンドウが大車に狙われた理由について何もわからなかった。

今度は大車から話を聞くためにサクヤは動いた。

だが大車は今、厳重な警戒態勢の元で拘束されていた。

「大車医師に話を伺いたいのです。通してください」

サクヤはアナグラの中でも特に地下深くの場所に位置している独房エリアの看守に、大車と面会を求めた。

「申し訳ありません。大車ですが、ここには収監されていません」

「…!?」

サクヤは看守から話を聞いて耳を疑った。ここにはいない、だと?

「なぜここに捕えられていないんですか?あの男が危険な人物であることが分かっている以上…」

「だからこそ、こことは別の、さらに厳重な独房に収監させているとのことです。皆の安全を考えた上層部の判断なのです。残念ですが、私のところにも大車がどこで何をしているのかも不明です」

「…そうですか。わかりました」

サクヤはひとまずここは引き上げることにした。

あれほどの危険人物がここにいない。こことはまた別の、看守でさえ知らない場所に収監されていると。ここの担当者が知らないということは、アナグラ内のほとんどの人間がわからない状態ということだ。

大車は危険人物。確かにそれなら、ここよりも厳重なエリアで拘束するのもうなずけるかもしれない。だが、誰にもそれが知られてないということに、サクヤはきな臭さを覚えた。

大車はあくまで実行犯程度で、本当の黒幕がいる可能性が高い。リンドウがいない今、その牙が他の第1部隊のメンバーをはじめとした他の仲間たちにまで伸びるのでは?

(………ダメよ、そんなこと)

ここしばらく弱りつつあったサクヤの意思が、強くなった。

(リンドウが戻るまで…いえ、たとえ本当に死んだとしても、それがわかるまであの子たちを守らないといけないのは私)

胸の前に、リンドウの残したディスクを握りしめながら、サクヤは誓った。リンドウの安否がわかるまでの間は絶対に、あの子たちを守らなければ、と。

独房エリアからエレベーターで上がると、居住区の自販機エリアで一休みしているユウとアリサ、そして彼女が心配で来たのかリディアもそこにいた。

「サクヤさん?」

「ああら、あなたたち…」

サクヤはすぐに、アリサのこの日の状況を聞くことになった。

 

 

 

影からのタロウからの教導、ユウたちのサポートを受けた訓練開始から数日。再び任務に出るために訓練を続けるアリサだが、どうしても直しきれていない弱点が、彼女の戦線復帰を阻んでいた。

 

ヴァジュラである。

 

両親を食ったピター、親友を殺した通常種ヴァジュラ。アリサにとってはトラウマの象徴であり、高すぎる壁だった。

「う、う…」

ダミーであっても、ヴァジュラと相対する度にアリサの体は固まってしまい、手足は震え、ろくに身動きがとれなくなってしまう。

「ガアアアアア!!」

そして結局ダミーヴァジュラの攻撃を受けてしまう。

ヴァジュラは大型種に属するアラガミだが、個体数も多く世界中で何度も見られる。ゴッドイーターという道を選んだ以上、また遭遇することになる。だから、この問題はゴッドイーターを続ける以上は必ず越えなければならない。

アリサはそれをよく理解している。だからヴァジュラが怖くても、訓練相手のダミーアラガミに選ぶ。が、克服できない自分の弱さを呪う日々が続いた。

結局、昨日の朝の訓練も、ダミーヴァジュラに手も足も出ずに終わった。

「…今日もだめでした」

「そっか…」

『むぅ…』

昨日、訓練スペースから出てそのようにユウたちに告げ、ベンチに座るアリサは、自信をなくしかけていた。

「アリサちゃん…」

隣に座るリディアも心配そうに見詰める。ゴッドイーターを続けるとアリサが決めて以来、何度も様子を見に来ている。一度ゴッドイーターとなった妹の死を経験してしまった身としては、引退してほしいのが本音だ。でも、それはオレーシャを失ったあの日大車に勧められオレーシャに関する記憶を消させた時のように、アリサの強さを信じていないことを口にすることだ。二度も同じ間違いを犯すわけに行かない。それに、アリサはまたこうして立ち上がろうとしてくれたのだ。今は、信じるしかない。

(…簡単にはいかないわね、いろんな意味で)

サクヤもどうした者かと頭を抱えた。大車からリンドウが行方不明になったことについて話を聞こうと思った矢先だが、アリサのメンタル状態も無視できない問題だ。

このままずるずると弱点を引きずったままの状態では危険だ。大車の支配を完全に脱した今、一体どうすれば彼女のヴァジュラへのトラウマを克服できるだろうか。ユウとタロウの最近の悩みどころとなっていた。

『どうする?メテオライト当日には確実にヴァジュラがたくさん出てくるはずなのに…』

『むうう…私もアリサほど深いトラウマを刻んだ子は初めてだからな。勘も取り戻しているのが見受けられ、基本的な戦闘能力とかは特に問題ないが…』

今日もアリサのトラウマに関しては改善が見られないことに、小声で話し合うユウとタロウは互いにため息を漏らす。

オペレーション・メテオライト。リンドウの行方不明とエリックの死、アーサソールの離脱などが重なって延期になったが、当初の通り内容に変更はない。極東各地に設置されたアラガミ誘導装置にアラガミをひきつけ、現在極東支部に滞在しているゴッドイーターたちの総戦力を持って殲滅する。ヴァジュラも当然ながら出現するだろう。大型種の中でも、かなり数が多い個体だ。

「あ、いたいた!!」

そこへエレベーターからリッカが現れ、ユウのもとに急ぎ足でやって来た。

「リッカちゃん、どうしたの?」

「いいニュースだよ!ユウ君の神機、あと少しで修理が完了するんだ!」

「え、もう!?」

予想以上の速さに、ユウに限らずコウタやサクヤ、アリサも驚いていた。

「新型神機って修理が大変で、しかもパーツをそろえるのも難しいはずだよね?」

新型というだけありまだ希少だ。刀剣と銃形態への変形の際の挙動に必要なパーツの消耗が激しく、故に旧型と比べて修理にも手間がかかるのだ。

尋ねるユウに対し、リッカも頷く。

「私もそう思ってたんだ。修理を速めるならともかく、特にパーツをそろえるのは…でもね、実はもう一本、君やアリサの持ってるのとは別の新型神機が保管されてたんだ」

それはさっき以上に衝撃の事実だった。何度も語ったが、新型神機はまだ開発されたばかりで数も少ない。それをこの極東支部は、ユウとアリサ、そして適合者なしの三本を持っていたのだ。

「信じられないわ…その話は本当なの?リッカ」

「本当ですよ。まさか三本も新型をそろえてたなんて。あ、でもアーサソールの子も新型だったから4本になるのかな?一時でも一つの支部がそれほど新型を抱え込むなんて、その分だけオペレーション・メテオライトの難度の高さや責任を感じるよ」

サクヤから驚きを混じらせたの質問に対し、アーサソールの子…つまりギースのことにも触れつつリッカも当初は信じられないと言った様子を見せた。

(ギース、か…二人とも無事だといいんだけどな…)

ギースと聞いて、ユウは彼と、彼と共に死んだと見せかけて逃亡中となったマルグリットの二人が今どうしているのかが気になった。

「その神機から刀身と銃身の変形機構の部分を取り出して君の神機に移植したの。偶然にしてはできすぎって思えるくらい」

「その言い方だと、なんか妙な陰謀に巻き込まれたように聞こえるんだけど…でも、これなら…!」

ユウは自分の神機も修理完了間近ということにホッとする。

「でも、装甲だけまだ修理が終わってないんだ。新型って旧型と違って銃身と刀身が一緒だから、どうしても細かい部分のパーツが違ってたりすることもあるの。おまけに消耗も早いし、君の神機に合う装甲パーツがないの。旧型神機用の装甲をくっつけようにも、それだと君の神機に合うように改造するのに時間がかかっちゃうんだ。装甲なしでもアラガミに攻撃はできるだろうけど、さすがに防御する手段がないと不安だし…」

「そっか…」

しかしそう簡単に完全な修理までは望めなかったようだ。装甲がない神機で強引に任務に向かおうにも、立て続けに離脱者が起きていたこの状況では無理がある。他の誰かに差し止められるに違いない。

「あ、でも心配ないよ。必要なアラガミ素材さえあればすぐに作って間に合わせるから」

リッカが問題ないとフォローをいれると、アリサが二人の会話に入ってきた。

「それなら、私が持ってる装甲パーツをお譲りします。ロシア支部にいた頃に使っていた『ティアストーン』があります」

「え、いいの?」

「構いません。神薙さんには、日ごろからお世話になったお礼もあります。

私の神機に現在使われている装甲『プリムストーン』と対になるように作られたんですが、一度壊れてしまったのを直してもらったんです。

神薙さん、私のお下がりですけど、よければ使ってください」

「ありがとう、アリサ!大事に使うよ」

「い、いえ!お役に立てるなら…」

面と向かって笑顔でお礼を言われ、アリサは思わず顔を赤くして視線をそらした。

(…熱でも出たのかな?)

訓練を頑張り過ぎて、何かアリサの体に不調でも出たのだろうかと思ったユウだが、リッカがユウの脇に肘を着いて来た。

「ふーん、やるじゃん。このこの」

「え?何が…?」

リッカの言った言葉の意味が分からず困惑する。サクヤはなぜかこっちを見てくすくすと笑い、コウタからは羨望のような視線も加わり、困惑が深まった。

 

 

次の任務の話が出たのはその後の事だった。

 

 

 

 

オペレーション・メテオライト開始の一週間前までに差し掛かろうとしたところで、ユウたち第一部隊に、あるミッションが下された。

作戦司令室に集められた彼らを待っていたのは、ヨハネスとツバキ、そしてサカキの3名だった。

「『全員』揃ったようだな」

本当なら、もう一人、それも隊長である彼がいるはずだった。部隊は愚か、この世からも消えたような言い方にも聞こえるヨハネスの言葉を聞いて、サクヤとアリサ、そしてソーマの表情が特に影を差した。

「オペレーション・メテオライトまで後わずかな期間に差し掛かっている。

だが、知ってのとおりリンドウ君がいなくなり、まだアリサが戦線復帰するには十分か怪しい今、第1部隊の戦力は落ちていると言えるだろう。

さらに悪いことに、我々の敵はこれまで通り通常のアラガミだけではなくなりつつある。しかもその新たな敵…宇宙人や合成神獣を相手にできるのは、現状ではウルトラマンだけだ。だがそのウルトラマンも無敵ではない。このまま作戦に参加しては、万が一あの妨害に見舞われ、作戦の成功はおろか、我々人類が立ち上がる力を失うほどのダメージを追う可能性が高い」

ゴッドイーターたちに、任務中に遭遇したあのマグマ星人たちや、ボガールといった、アラガミに属さない敵の姿が浮かぶ。そしてウルトラマンがそれらの敵に果敢に立ち向かい勝利してきた一方で苦戦もしていたことも、アーサソール事件では敗北を喫したことも思い出した。

「だが我々もこのままウルトラマンが奴らを倒すのを黙って見つめたり応援だけに回るだけの側に立つのは、フェンリルに身を置く者として心もとない。

そこで、防壁外に派遣した調査隊の調査結果をもとに発見した、旧時代の地球防衛軍の施設へ向かってもらいたい。そこで当時の防衛兵器のロストデータを回収してほしい」

「ロストデータの回収…ですか?」

「他のゴッドイーターたちには、当日の要の一つである誘導装置の護衛につかせてある。リンドウ君がいなくなり、まだアリサが戦線復帰するには十分か怪しい今、第1部隊の戦力は落ちていると言えるだろう。だが、たとえリンドウ君たちがいない今でも、今の君たちでも十分な戦力があることをこの任務で証明できれば、他のゴッドイーターたちの希望となれるだろう」

作戦司令室に集められ、ヨハネスから今回の任務についてそのように聞いたユウが尋ね返した。

「ここからは私も話そう。まず最初に、これらを見てほしい」

そこでサカキが新たに説明に加わった。後ろにある大型モニターに、いくつもの古い画像が表示されたが、その写真を見てユウたちは目を見開いた。

「こ、これって…!」

「な、なあユウ…これ…」

狼狽えながらコウタはユウに言う。

 

「ウルトラマン、だよな…?」

 

巨大モニターに映し出された画像。そこに映ったのは…

ギンガとはまた別の、何人ものウルトラマンが、怪獣たちと戦っている画像だった。

「ウルトラマンって、こんなにいたのね…」

サクヤも同じ反応だった。

ユウは既にタロウから聞き及んでいたが、こうして写真だけでも彼の同胞たちを見ることができるとは思わなかった。写真の中には、人形ではなく巨人としての姿を見せて怪獣と戦うタロウ、そしてウルトラマンジャックの姿もある。

(あぁ…映像と写真とはいえ、こうして見るのは久しぶりだ…)

タロウはユウの服のポケットからチラッと顔を出し、かつての自分やウルトラ兄弟たちの勇姿を映像越しで見て感慨深くなる。

「なぜ、このデータをサカキ博士たちが?」

サクヤのふと浮かんだ疑問に、サカキが答えだした。

「今ではアラガミのせいで彼らに関する情報さえも一般人知る機会がないに等しい。今見せている画像は、我々フェンリルが辛うじて守ったデータの一部だ。

今では大衆に知られていないことだが、かつてこの地球は4度にも渡って人類滅亡の危機が訪れていたんだ。アラガミとはまた別のあまたの脅威でね。その時、過去のウルトラマンたちが遥か彼方の宇宙からやって、地球を守ってくれていたんだ」

「か、過去にもそんなことが起きてたんですか…それも、4度も!?」

その話を聞いて、初耳だったサクヤとコウタは驚きを見せた。過去の情報を得る手段も限られているから、これは一般的な反応と言えた。アリサはその反応を笑うことはなかった。自分もタロウからアラガミが出現する以前の地球の話を聞いたときは衝撃を受けたものだ。

「ただヨハンも言っていたように、人類もただ守られているわけにもいかないと思い、怪獣や宇宙人の脅威に対抗すべく、時には宇宙人の遺した兵器の解析を行い、超兵器を作り出した。私と技術班本部から派遣された者でそれを解析し、神機でも放てるタイプのものを開発するために、次の任務で派遣するエリアからそのデータを回収してほしいんだよ」

「す、すげえ…それが本当なら、俺たちでもウルトラマンを助けてやれるってことじゃん!」

サカキから話を一通り聞き、コウタは興奮して胸を躍らせた。最近の彼にとってウルトラマンは憧れになりつつあるヒーロー。それと肩を並べて戦えるようになれるなんて、彼の少年らしい心を刺激するに十分だった。

「コウタ、喜ぶのはまだ早い。それに遊びでやっているんじゃないのだぞ」

はしゃぐコウタに対し、ツバキが注意を入れつつ、話を続けた。

「他のゴッドイーターたちには、当日の要の一つである誘導装置の護衛につかせてある。

たとえリンドウたちがいない今でも、お前たちでも十分な戦力があることをこの任務で証明できれば、他のゴッドイーターたちの希望となれるだろう」

他のゴッドイーターたちは、リンドウがいなくなってしまったことに関しては士気が落ちつつあった。何せこれまで死亡率の高かった新人のゴッドイーターたちの死者を一人も出していない。彼の優秀さを勝って、極東支部では新人は真っ先に彼と組ませて任務に当たらせることがここ数年の間の義務となっていた。他の支部にさえもその有名さはいきわたっている。だから、リンドウが行方不明になったことは皆から明日への希望が薄れてしまうのも無理はなかった。でもいつまでもリンドウの影にすがるわけにいかない。今回の任務はこれまでリンドウと共に戦ってきた、残存している第1部隊の腕を証明する目的もあると踏まれた。

「ユウ、お前の神機が直ったばかりで悪いが、人材が不足している今、お前に頼る必要がある。構わないか?」

「はい!」

困難と思われていた神機が修理完了した。

ギンガへの変身は3分しか持たない。それに比べてゴッドイーターも偏食因子の活動限界というタイムリミットがあるのは同様だが、活動限界を伸ばす偏食因子を投与しないままでも30分以上は持ちこたえるので、寧ろ神機が再び使えるようになるのはありがたい。ゴッドイーターとして直接現場に関わりやすくなる。アリサへの現場サポートの口実もできるし、願ったりかなったりだ。

「それで支部長、今回の任務についてですが…アリサは今回の任務から外れた方がいいと提案します。代わりに、グラスゴー支部の真壁隊長とロウリー隊員を部隊に入れて派遣するべきかと」

アリサは、ツバキがそのようにヨハネスに申請したのを聞いて、目を見開いた。

「な、なぜです…!?…か…」

思わず強い口調で反論しかけるが、その意味を頭で理解して、次第に弱々しくなった。ツバキは伏し目がちにそれを見ながらも、アリサを今回の任務に出すのを反対した理由を明かした。

「今回向かうミッションエリア内には、ヴァジュラとプリティヴィ・マータが生息しているのが確認されている。調査部も手が出せない危険エリアだ。お前は退院してからの訓練を頑張っていることは聞き及んでいるが、唯一まだヴァジュラへのトラウマを克服していないのだろう?」

プリティヴィ・マータ。それはリンドウが失踪したときにユウたちの前に現れた、女神像のような顔と氷属性を持つあの新種のヴァジュラに付けられたコードネームだ。第二種接触禁忌種にもカウントされた危険なアラガミである。

「……」

ツバキの指摘に対し、アリサは反論できない。

だが、ここでユウが挙手した。

「ツバキ教官。僕はアリサをあえて任務に出すことを提案します」

ユウの突如の提案に、アリサが思わず驚きを見せて彼の方を見る。コウタとサクヤもやや衝撃を感じたようにユウに注目する一方で、サカキとヨハネスは驚きを見せることなく、ユウの方を見やった。

「理由を話してみろ」

ツバキが静かにユウに尋ねる。

「現場だからこそ、危機に瀕したときにアリサのトラウマさえも超える強さを証明できると思うんです。リンドウさんが抜けてしまった今の僕らの力が、どれほどのものかを確かめるためにも、アリサの存在は欠かせません」

「だが荒療治にしてもそれはかなり強引さがあるのではないか?」

「すぐにヴァジュラと戦ってくれとは言いません。僕らがヴァジュラと何度も遭遇し、ヴァジュラ戦ではアリサには遠距離からの支援を優先させます。ヴァジュラに対して、まずは遠くから攻撃を加えさせ、少しずつ距離を縮めさせていくんです」

「後方支援から、ということか」

なるほど、とツバキも一定の理解を示した。だがそれでも、アリサが万が一ヴァジュラと相対して足がすくめば、真っ先に食われたり、別の誰かが彼女を救おうとして代わりにそうされてしまうなど、アリサが結果として足手まといになってしまう危険が付きまとうことに変わりない。

だが、ここでコウタもツバキに向けて挙手した。

「俺も、アリサを今回の任務に出してほしいです!最近、彼女頑張ってるって思うんだ!俺じゃ力ら不足かもしれないけど、俺も力になりたいんです!リンドウさんの分も!」

彼もアリサがここ数日の間に必死の努力を続けていることを知っていた。確かに初対面の時は人柄に関してあまり良い印象を持てなかったが、今の彼女なら信じられると彼は考えた。

「お前もか…他の者に異論はないか?」

コウタの賛成も出たが、サクヤたちがどう考えているのかも知っておかなければならない。ツバキはサクヤとソーマの二人に視線を向ける。

「私も異論はありません」

初心に帰って神機の扱い方に関してアリサからサポートを頼まれたサクヤも、ここはひとつアリサを信じてユウの案に乗ってみることにした。

「ソーマ、あなたはどう思う?」

「…好きにすればいい。俺に構わなければな」

ソーマは特に反対も賛成もしなかった。あまりアリサには強く興味を示していないように聞こえる。というか、今でもあまり関わろうとしない。だが、どちらでも構わないのなら多数決としても賛成という見立てでも構わないだろう。そう考えたヨハネスは、アリサに目を向ける。

「アリサ君、君の意見を聞きたい。もし君がヴァジュラと戦いたくないと思うのなら…」

「…いえ、行きます!行かせてください!絶対に乗り越えて見せます!」

自分をここまで信じてくれた人たちがいるのだ。答えないわけにいかない。アリサは迷いを捨ててミッションへの参加を申し出た。

その目を見て彼女が見栄などではなく本気で意思を見せているのを確認し、ヨハネスはツバキに向けて無言で頷く。ツバキも頷き返した。

「いいだろう。だがアリサ、くれぐれも無理はするな。現場ではサクヤの指示に従え」

「ありがとうございます!」

アリサの参加が認められた。ユウやコウタは笑顔を浮かべた。しかし油断はできない。これからが一番大変なのだ。

「話はまとまったみたいだね。皆、ツバキ君も言っていたが、無理はしないでくれ」

サカキのその時の笑みは、何かに対して安心したように穏やかだった。

「データの回収よろしく頼んだよ。アラガミが出現する数十年前に起きた…第4次怪獣頻出期の遺産…

 

 

 

 

 

 

『メテオール』を」

 

 

 

 

 

 

 

 

ユウたち第1部隊はいつものようのヘリでミッションエリアに運ばれた。

今回のミッションエリアは、関東のとある場所にあったとされる、かつてウルトラマンと共に戦った地球防衛組織が存在していたという地下施設だった。

ユウはウルトラマンとして戦っている身であるということもあり、今回のミッションには強い関心があった。ウルトラマンと共に戦った戦士たちの砦なのだから。観光気分に浸るつもりはないが、考えるほどに興味が沸いてくる。

「なぁなぁユウ。さっきサカキ博士たちが話してたことなんだけどさ」

「うん?」

「昔の人って、ウルトラマンと一緒に戦うためにすっげー武器作ってたって言ってたよな。いったいどんなもんだろうな?なんかこう、でっかいビームとか出してアラガミを一気にやっつけるやつとか?」

コウタも同じ気持ちを抱いていたようで興奮ぎみにユウに少年らしい夢に溢れたことを口にする。

「メテオール…かつて人類がウルトラマンと共に戦うために作られた兵器…か。うーん、どうだろう。案外アラガミも寄せ付けないシールドを張ったりとかもあるかもよ」

「えー、それなんか地味じゃん。防壁にそれが使われると考えると、俺としても悪くないって思うけど、やっぱりここはド派手やつとかがよくね?アリサはどう思うよ?」

「……」

「アリサ?」

アリサは緊張しきっている様子だ。ミッションエリア内にはヴァジュラやプリティヴィ・マータもいる。アリサのトラウマの塊と、過ちを犯したその日に現れた新種のヴァジュラ。いざ任務に向かうと意気込んでも恐怖するものはしてしまうのだ。以前の調子なら今のコウタに向けて「何を興奮してるんですか、子供みたいに。私たちは遊びに来てるんじゃないんですよ」と言ってきただろうが、そんな余裕もない。

ヴァジュラへの恐怖を克服できないままのメテオール回収任務。これが最後のチャンスとなるかもしれない。

このままアリサがヴァジュラに対するトラウマを克服しなければ、作戦への参加は愚か、ゴッドイーターとして活動を続けるのも難しいと上層部から判断を下されてしまい、そのまま干されて引退に追い込まれてしまうことだろう。

「大丈夫?やっぱり緊張する?」

「すみません…行くと決めたのはいいんですけど…」

アリサも、せっかく自分の都合にユウたちが付きあってくれたのに、なかなかヴァジュラを前にすると動けなくなってしまうことに申し訳なく思うばかりだった。

「他のアラガミなら、いつも通り動くことができるようになってきてるんですが、ダミーであっても、どうしてもヴァジュラを見るたびに、パパとママ、そしてオレーシャが殺されたあの時の記憶が戻って、体が動かなくなってしまうんです」

「それは無理もないことだよ。大切な人を、あんな形で失ったら僕だって…」

当然真っ先に感応現象を通してアリサのトラウマの全てを知ったユウは、アリサがどうしてもヴァジュラ相手に足がすくむのも無理もないと思えてならなかった。

大事な人たちをヴァジュラとその近縁種に奪われ続けてきたアリサ。コウタとサクヤも話を聞いて、その痛みが想像の中でしか測れずとも辛いものとして感じ取った。

「でも、私はゴッドイーターを続けたいです。パパとママ、オレーシャを失った私が感じた痛みを、他の人たちに味わってほしくないですから」

「アリサ…」

名前を呼ばれ、アリサはユウの方に顔を向けた。

「大丈夫。君ならできる。自分を信じて」

「…はい」

頷いてくるユウに、アリサは不安こそ見せていたが頷き返した。

アリサの中に強い安心感が湧き上がる。この人は自分を信じてくれる。何があっても支えてくれる。

「あのさぁ、さっきから一つ気になったんだけど…」

二人を見て、コウタがユウたちに話しかけてきた。

「二人とも、いつからそんなに仲良くなったの?」

妙にコウタの表情がニヤニヤしている。そのニヤつきの理由をアリサは瞬時に察し、頬を朱色に染めた。

「べ、別に仲良くなったわけでは…!」

「ふーん…?俺てっきり付き合いだしたのかなって思ってたけど?」

「つ、つつつ付き合う!!?そそそ、そのような大それたこと考えているわけないじゃないですか!」

ついには確信を突いたような言葉で言ってきて、耐性のないアリサは激しく動揺を示した。

「あらあら?じゃあ、ユウ君に神機パーツを上げたのも、もしかして感謝だけじゃなくて…?」

「サクヤさん!そんな生暖かい目で見ないでください!!てぃ、ティアストーンもあくまで感謝の意味を込めただけであって、別に深い意味はないんですからね!?」

あまりにあたふたするアリサに、サクヤはリンドウに関して複雑に抱いていたアリサへの感情が吹き飛んだ。アリサにとっては面白くないことだろうが、寧ろ可愛らし過ぎて和んでしまう。

「やれやれ…」

そんなつもりなかったのに、ユウはそう思ってため息を漏らした。

「…うるせぇ。そろそろ到着するぞ」

ヘリの助手席でうんざりしきった様子のソーマがここで口を挟んでくる。

既にその時、彼らの乗るヘリは、今回のミッションエリアの上空までたどり着いていた。

 

 

 

ヘリから降りて、その概観を眺めるユウ。

着地した場所は、その施設跡の一部と思われる飛行機のエアポート。滑走路のような平たい土地が広がっている。今では地面のアスファルトがひどくひび割れ、砂をかぶっている。ただ、滑走路という割にはやや狭い。ひとつ気になるのは、アスファルトの地面のヒビの一部に、やけに形の整ったヒビがある。ちょうど長方形の形をとっている。そのヒビから風を感じる。この長方形をかたどっているヒビの形を元に、地面が口を開いて地下に続く空間でも広がっていそうだ。

「まさか、地面から飛行機でも飛び出したりするのかな」

「あたっていると思うぞ、ユウ。私たちウルトラ兄弟が地球を守っていた頃は、そのようなことは特に珍しいことではなかった」

「え!?」

思わず口に出した妄想が正解を当てた。タロウから正解判定をもらったことにユウは驚いた。過去の地球防衛軍の基地がどのようなものだったかまでは詳しく聞いていなかった。

過去の地球…ウルトラマンや怪獣といった、一個体ならアラガミをも凌駕する存在がいたのに、果てしないものだ。

「だが、ここもずいぶん変わってしまったものだ…」

タロウが、滑走路の近くに見つけた廃墟の外観を眺める。そこは防衛軍の地上の施設があったと思われるが、今では見る影もない。周囲には瓦礫の山しかない。

「ここは、タロウにとって縁のある場所なんですか?」

話を聞いてきたのか、二人の下にアリサが歩いてきた。

「私個人に直接的な関係はない。ただ、私が手塩にかけた教え子が隊員として所属していた基地がここにあったのを思い出したのだ」

「弟子…確か、『メビウス』って名前の?」

メビウス。タロウが故郷である『光の国』で教官をしていた頃、才能を見出されて、1980年代に地球を守っていた先代のウルトラ戦士以来、26年ぶりに地球防衛の任に就いたとされるルーキーウルトラマンの名前だ。先代にも負けない才覚と力、そして純粋な心を持っていたと聞いている。

「あぁ…一度彼が地球防衛の任に就いていた頃のことだ。まだ新米だった彼が相対するには危険すぎるほど強大な敵が地球を狙っていると知り、宇宙警備隊はメビウスに代わって私を派遣した。結局引き続きメビウスが任務を続投することになったがね。そのときこの場所の外観を見たのだが…」

見る影もない。その先の言葉を発さなかったが、何を言いたかったのかユウは察した。

「メビウスが任期を終えてからも、この組織は長きに渡って地球防衛の要であり続けたのだろう。見たまえ、あれを」

タロウが右手を伸ばし廃墟の外壁を指差す。その外壁には、かすれ消えかけていたが辛うじてエンブレムに刻まれた文字が刻まれたままだった。

 

『GUYS』

 

ここは、今のフェンリルと同じく、人類の砦だった。それだけじゃなくて、地球防衛軍の組織というものは、ある意味ではお互いに助け合っていた地球人とウルトラマンにとって大切な繋がりの形でもあった。それがこのように変わり果ててしまう。当時の時代を知るタロウにとって、この辛さはいつまでも慣れそうになかった。この光景を、メビウスが直接自分の目で見ていないことだけが、唯一の幸運だったかもしれない。

 

 


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