ULTRAMAN GINGA with GOD EATER 作:???second
ジードでジャグジャグも巨大化して登場したことに感激でした!
ついにULTRAMANもアニメになる時が来たか!でも2019年と、待ち遠しい…
今回はこれを記念して、予定より少しばかり早く投稿します。誤字脱字等、至らぬところがあればご指摘お願いします。
アリサは単身ピターに剣を振りかざし続けていた。しかし、彼女が振り下ろした剣は、ピターの前足の表皮に当たった途端、弾き飛ばされた。
「…っく、固い…!」
ピターの表皮は、新型神機として入念なチューニングを施された彼女のアヴェンジャーでも全く刃を通せなかった。
「アリサ、下がれ!俺が前衛をやる!」
「いりません!こいつだけは…私が倒します!!」
後ろから走ってきたリンドウが横に並んでアリサに言うが、彼女は真っ向から拒絶する。
対するピターも、アリサに意識を集中し、その剛腕な前足で彼女に襲いかかる。アリサは踏み潰される直前で神機を銃『レイジングロア』に切り替え、バックステップして軽やかに回避し、同時にバレットでピターに向けて連射する。
だが、ピターはアリサたちと比べて大きなその体からは想像できないほど素早く動き、アリサの弾丸をすべてかわしてしまった。
「く、この!!」
それでも、絶対に当てて見せようと彼女は連射を続けた。だがピターはそれらも回避し、アリサが連射を中断した一瞬の隙を突いて、一気に彼女の方へ突進、彼女を跳ね飛ばし壁に激突させる。
「がは…!!」
「アリサ!!」
まずい、そう悟ったリンドウは、今度は自らがピターの相手をする。とにかくアリサから引き離さないと。彼はブラッドサージの刃を振るい、ピターに切りかかる。しかしピターは、リンドウから見てもすばしっこかった。彼の神機の刀身が入る前に、後ろに跳躍して避けて見せた。
「っち…」
刃が少しでも食い込めば、刀身に搭載されたチェーンソーを起動させ、一気に肉を切り裂いてやれたのだが。リンドウは舌打ちしつつも、神機を構え直す。
「アリサ!後方支援を頼む!」
やはりここは二人で同時に奴を攻撃した方がいい。リンドウはアリサに命令を下し、ピターとの交戦を再開した。
彼はとにかく、奴の攻撃をよく見ながら、反撃のチャンスをうかがった。いつまでも、防壁外の世界で長時間戦うのは危険すぎる。今はこいつを倒すよりも、こっちにビビるくらいのダメージを負わせて逃げ帰ってもらう方がいい。後は、アリサとどれほどまで連携できるかどうか…それにかかっていた。
…しかし、リンドウの期待は、『見えない悪意』によって裏切られる。
リンドウの指示通り、仲間たちと難民たちを連れ出したサクヤ。
「リンドウとアリサ以外はそろってるわね?」
二人を除く他の人間が揃っているかを黙視して確認する。見たところ、仲間もかけておらず、難民たちにも誰か殺されてしまったような様子も見られない。
「リンドウさん…アリサ…」
ユウは後ろを…リンドウとアリサが残ったビルを振り返る。ユウの服のポケットに隠れていたタロウもひょこっと顔を出してビルの中を凝視した。
『あの黒いヴァジュラ…ディアウス・ピターといったか。見ただけで嫌なものを感じたが…うぅむ…』
自分はユウたちと違い人形、それに存在も迂闊に知られてはまずいので、回復錠による回復も手当もできない。エネルギーも先刻の戦闘でユウたちを助けるために念力を使いすぎたためにガス欠状態だ。自分も残ってリンドウたちを助けるというのも無理があった。
「僕より遥かに華麗で強いリンドウさんもいるんだ。サクヤさんのおかげで十分な回復もしている。今は二人を信じよう」
彼らの気持ちを察し、エリックがユウの肩に手を置いて言った。
「…は、俺たちよりも仲間の心配か。やっぱ俺らのことなんかどうでもよくなってたんだな。それに、さっきも大して役に立ってなかったみたいだしな。
使えねェ癖にゴッドイーターになる…裏切り者で無能とか終わってるぜ」
そんなユウを見て、スザキはまたしても嫌味なことを、わざとユウに聞こえるように口にしてくる。ユウはそれを聞いて一瞬スザキの方を振り返り、顔を不満で歪ませる。
「あんた、ユウの同郷だろ!なんでそんなにディスってばっかなんだよ!リンドウさんがいないからって、好き放題言いやがって!」
「なんだよ、文句あんのか!?実際俺の言うとおりだろうが!そいつ、対してあのアラガミにダメージ食らわせもしなかったじゃねぇか!」
コウタの反論に対し、スザキはさらにヒートアップしてコウタに言い返す。スザキに同調して、難民たちも「そうだそうだ!」と声を荒げ始めた。
「アラガミ一匹殺すのもやっとかよ!この無能の裏切り者が!!」
「ゴッドイーターならちゃんと命張りやがれ!」
「そうよ!ちゃんと仕事しなさいよ!あたしたちの命をなんだと思ってるの!」
その時だった。ガン!!!と、コウタと難民たちの間に、ソーマの神機『イーヴルワン』が大きな音を立てて振り下ろされた。
その轟音に、難民たちもコウタ、そして後ろのエリックとユウも驚く。
すると、地面から神機を引き抜いて担いだソーマは、スザキの眼前に歩み寄りその胸倉を乱暴に掴んで顔を近づけ、冷たく低い声でスザキに言った。
「ひ…」
「…次無駄口叩いたら、アラガミの群れの中に置いていくぞ」
それは双方に対する脅しだった。コウタは自分が熱くなったことに気付いて閉口し、難民たちも自分たちが助かる唯一の存在であるゴッドイーターの機嫌を損ねては敵わないと悟り、もう何も言わないことにした。
「…とにかく、援軍を呼びましょう。手が空いている子たちがいればいいんだけど…」
重くなるばかりの空気から少しでも出ようと、サクヤが口を開いた。
リンドウたちも、難民たちも、両方できうる限り助けるためにもさらなる人手が必要だ。通信機でアナグラのヒバリに連絡を入れようとしたその前に、逆にヒバリから通信が入ってきた。
『みなさん、先ほどリンドウさんから言われていた誘導電波の発信源が特定できました!』
「どこから!?」
『そ、それが…』
少しうろたえているような、信じられないような口調だった。だがヒバリは次に、その発信源がどこなのかを伝えた。
『アリサさんから発信されています!』
「え…!?」
アリサから発せられている?一瞬耳を疑った。
「本当なの!?アリサから発信されているって…」
『は、はい!信じられないんですが…アラガミ誘導信号とアリサさんの腕輪のビーコン反応が全く同じ場所から発信されているんです!』
「バカな…」
なぜアリサから、アラガミ誘導電波が発せられているのだ。
ふと、サクヤは、ヘリでここに来る途中アリサが黒いケースを持ち込んでいたことを思い出す。まさか、あのケースが!?だとしたら、アリサがこの事態を仕組んで…いや、違う。
『大車先生から預かったものですけど、何か?』
大車…?じゃあもしや、今この事態を引き起こした犯人は…!
確信したサクヤは、ユウの方を振り返った。
「ユウ君!一度戻ってアリサが持ってる黒いケースを壊しなさい!それがあなたの方にアラガミを引き寄せている!」
「え…!?」
「早く!!」
「は、はい!!」
その迫力に圧され、ユウはすぐにビルの方へ引き返した。
なぜサクヤは、いつになく大声を出してまで自分に命令を入れたのだろう。
「タロウ…どう思う?」
ビルの方へ走りこみながらユウはタロウに問う。なぜかアリサからアラガミ誘導の電波が発生していると言っていたが、いったいどういうことだろう。
「わからん。だが、アリサの身に何かが起こりつつあるのかもしれない。とにかく、その例の黒いケースとやらのことをアリサに尋ねよう」
タロウもまた予想がつかなかった。
しかし、これはこれでよかった、とも思える。今の自分はギンガへの変身はできずとも、サクヤたちが回復させてくれたおかげで辛うじて戦える状態ではある。アリサが持っているという黒いケースを壊すだけなら、今の自分でも十分に役目をこなせる。
すぐにビルの入口前にたどり着くと、ピターと交戦し続けているリンドウと、壁に激突されたのか、フロアの端で四つん這いの状態から立ち上がろうとしているアリサを見つける。
見ると、彼女の傍らに黒いケースが転がっている。
もしや、あれか!
「アリサ、無事!?」
アリサの名を呼んで容体を確認するユウは、ビルの中へ一歩踏み出そうとした。
それが、これから始まる地獄のひと時への一歩だと、知る由もなかった…
「く、うぅ…」
アリサはピターの攻撃で壁に叩きつけられ、そのまま床の上にうずくまっていた。体に移植されたオラクル細胞のおかげで肉体が強化されてなお、アリサに叩き込まれたピターの一撃は重すぎた。体がもう一度動けるまでまだ時間を要しそうだ。
顔を上げると、リンドウがピターと戦っていた。自分よりもキレがあって無駄のない動き。自分よりも熟練しきったものだった。自分が食らったピターの攻撃を避け続け、そして自分も自ら反撃に転じてピターに切りかかる。互いに避けて、攻撃して避けられる。それを繰り返していくうちに、
「うらああ!!」
リンドウの気合の入った一太刀が、ピターの顔に叩き込まれた。
「ガアアアア!!」
その顔に、右目の上から血を吹き出し、切り傷を刻まれたピターは激痛からの絶叫を轟かせる。アリサは驚いて目を見開いた。自分がどうやっても一撃を与えられなかったピターに、手痛い一撃を与えたリンドウ。リンドウに対して、すごいと思う一方で、それ以上に……悔しさを覚えた。自分よりも熟練しているとはいえ、旧型と侮っているゴッドイーターが、自分と違って、この手で殺してやりたいと何度も思い続けてきたアラガミに手傷を負わせたということに。
「おいアリサ、立てるか!?立てるなら援護してくれ!」
リンドウの声が耳に入るが、頭には入ってこなかった。
ピターはその顔を苦痛で歪ませながら、リンドウを睨んでいた。他のアラガミと比べると、表情が豊かな方だ。リンドウのことを明らかに餌以外の何にも見ていないが故に、餌ごときに手傷を負わされたことに、怒りと屈辱を覚えているのがなんとなくわかる。
赤く染まっているその目に、リンドウと…そして壁に叩きつけたアリサの姿を見る。一匹残らず食らってやる、その意志を宿らせながら。
その際、アリサとピターの視線が重なり合った。
「あ…」
アリサの頭の中に、過去の忌まわしい記憶がフラッシュバックする。
かくれんぼで外に放置されたクローゼットに隠れた時に見た、父と母がピターに食われる、その残虐な光景を。
―――パパ…ママ…!?
―――やめて…食べないで!!
「あ、ああ…」
アリサの中に、幼き日に感じた恐怖が湧き上がる。
あれほど憎み、立ち向かうことができたはずのアラガミが……怖い。
食われる…あの時の両親のように、今度は自分が……
「や…いや…」
血だまりしか残さなかった両親の変わり果てた姿が、次の自分の姿そのものになる。自分がピターの口で噛み砕かれるイメージがよぎる。
「アリサ、どうしたぁ!!?」
ピターの前足の攻撃や飛び掛かりを避けながらリンドウが叫ぶ。しかし、アリサはその問いには答えられなかった。恐怖で何も言えず、そこから逃れたい気持ちに駆られる。
そして…新たな光景が彼女の頭の中をよぎった。
『いいかい、アリサ。こいつらが君たちの敵、アラガミだよ』
どこかの医務室。そこでベッドで横たえているアリサの前に、電子パネルが機動させられ、何者かは不明だが、白衣を着た男がアリサに何かを教えている。
『アラ…ガミ?』
電子パネルには、アラガミの写真が何枚も表示されており、その中には、あの氷のヴァジュラや、ディアウス・ピターの姿も見られる。
『そうだ、こわーいこわーいアラガミだ。そしてこいつが…』
だが、それだけではなかった。アラガミの写真の中に…アラガミではない『人間』の写真も同時に映されていた。
あたかも写真内の人物を、アラガミとして扱う男。しかも、対するアリサは何一つ疑問を持っていないのか、ただひたすらボーっとしたまま男の声を鵜呑みにしていく。
『君のパパとママを食べちゃった…アラガミだよ』
それは…
リンドウとユウの顔写真だった
それと同時だった。入口の方からアリサに向かって駆け寄る足音が聞こえ、アリサはそちらの方に目を向けると、ユウがこちらに向かってくる姿が目に入った。
「アリサ、無事!?」
その気遣いの言葉と共にビルに入ってきて自分に近づいてくるユウを見て、アリサは目を見開いた。さっきのヴィジョンの中で自分が見せられたアラガミの写真の中に、ユウがいたのを思い出す。
――――こいつが、君のパパとママを食べた…アラガミだよ
頭の中に蘇ったその言葉によって、両親を食い殺しクローゼットの中の自分を覗き見た時のピターと、今自分のもとに駆けよってきたユウの姿が…重なった。
「いや…いやああああああああ!!!」
「「!?」」
ユウを見た途端、彼女は悲鳴を轟かせ、思わずユウとリンドウは動きを止めた。
アリサの方へ二人が視線を向けると、彼女の傍らに落ちていたケースが、妖しげな黒いオーラを纏い始め、ひとりでに蓋が開かれたケースの中身が露わになる。
「あれは!」
ウルトラマンであるため、最も視力が優れていたタロウが、その中身を見て声を上げた。
大車がアリサに渡したケースの中にあったのは、小型の黒い機械…おそらくそれが携帯型のアラガミ誘導装置だ。だが二人がそれ以上に注目したのはもう一つあった。
「…黒い、ギンガスパーク!!?」
『ダークダミースパークだと!?』
闇のエージェントたちも使っていた『ダークダミースパーク』だった。
『でも、大丈夫。君はもう戦える』
彼女の肩に手を置いて、彼女の心に安らぎを与えようとする男。
『簡単な事さ。まず、こいつと出会ったら…こう唱えるんだ。
『один、два、три…』
それはロシア語での、数字の1・2・3を意味していた。
アリサは男に言われた通り、数字を復唱する。終わると、男はアリサの頭を撫でまわす。その手つきは…どこかねちっこくていやらしい。本来のアリサなら女子らしい嫌悪感を出すはずなのに、彼女は受け入れていた。
『そうだ、そうすれば…君は誰にも負けない、無敵の子になれるんだよ』
先ほどのヴィジョンの続きが蘇り、アリサは黒いケースの中にあった。ダークダミースパークに、震える手を伸ばす。
「いかん、アリサ!それをとってはならない!!」
タロウが声を荒げながらアリサに呼びかけた。しかしそれでも手を止めないアリサ。
「「アリサ!!」」
ユウとリンドウもアリサの方に向かって走り出す。だがリンドウの方は、ピターの邪魔が入っていた。
「ガアアアア!!!」
逃がすかとばかりに、ピターがリンドウに向けて、近縁種に当たるヴァジュラのそれよりも強力な電撃をほとばしらせ、彼に浴びせた。
「ぐあああああ!!」
しくった…!リンドウは油断した自分に歯噛みしながら崩れ落ちた。
「リンドウさん!」
「お、俺のことはいい!アリサを止めろ!早く!」
思わず足を止めたユウに、体が痺れて動けなくなったリンドウは叫んだ。はっとなったユウはアリサの方をもう一度見る。
ユウが立ち止った時点で、既に遅かった。アリサはダークダミースパークと、セットで入っていたスパークドールズを手に取ってしまっていた。
「один…два…」
アリサは今すぐにでも、今自分の心を支配し始めていた恐怖を紛らわせたかった。それを打ち消して『仇のアラガミ』を撃ち滅ぼしたかった。手にしたダークダミースパークを見ながら、アリサは迷わずそのおまじないを、小さな声で口にした。
「…три…」
そして、スパークドールズを……ダミースパークに付けてしまった。
『ダークライブ…!』
一方その頃、外でユウ、リンドウ、アリサの帰りを待つサクヤたちにも危険が降りかかっていた。
「まずいな…こっちも囲まれ始めている」
口調はいつもの冷静なものだが、確かな焦りをソーマは口にした。
今、ビルの外にはアラガミが5体も集まっていた。それも、さきほどビルの中で見かけた、女神像のような顔をした氷のヴァジュラたちだ。新種で大型種が5体。思わしくない事態だった。
「ひ、ひぃ…!」
「お、おい!どうにかならないのか!?」
スザキたち難民から必死の声が聞こえる。だが迂闊に動いても、みすみす餌になるだけ。ゴッドイーターたちはすぐに動けなかった。
「う、ぐぅ…」
エリックの手が震えだす。雨で体が冷えていただけじゃない。一体だけでも苦戦を強いられるアラガミがこれだけ集まれば、たとえゴッドイーターでも危機感を感じざるを得ない。
(だめだ、震えるな!ここで僕が弱気になったら、彼らも不安になる!そんな無様な姿は、華麗なゴッドイーターを目指す僕の姿じゃない)
心の中で自分に言い聞かせながら、エリックは自らの体の震えを止めようとするが、それでもおさまらない。
「サクヤさん、どうしたら…!」
「どうにか一体でも倒して、退路を開かないと」
まだリンドウがアリサを連れ戻しておらず、ユウも同じく彼らの元にはなってからまだ戻っていない。でも、こいつらをどうにかしなければ自分たちはここから離脱もできない。
しかし、その時だった。リンドウたちのいるビルが、激しい爆発を起こし、内部から木端微塵に砕け散った。
「ッ!!」
突然の事態に、サクヤたちは絶句し、目を見開く。そして、爆発の中からひとつの小さな影が飛び出し、サクヤたちのもとに転がる。
「ユウ!?」「「ユウ君!?」」
「ぐ…」
「大丈夫!?」
「は、はい…」
ユウはうめき声を上げながら、コウタやエリックの肩を借りて立ち上がる。
「いったい何があったの!?今のは…リンドウたちは!?」
「それは…」
サクヤからとにかく質問攻めを受け、ユウはどこから説明すべきか迷ってしまった。
「サクヤさん、落ち着いて!まずユウの話を」
コウタが焦り始めるサクヤを何とか落ち着かせようとするが、さらなる事態が起こる。
爆発を受けつつもわずかに立ったままの壁を残したビルの中から、何かが巨大な影が現れる。
「あれは…」
爆炎の煙の中から、その姿を見た外の第1部隊は…さらに言葉を失った。
「怪、獣…?」
煙の中から現れたその姿を見て、ユウが思わず呟く。
黒いヴァジュラに続き、さらに第1部隊の前に姿を見せた巨大生物に、彼らはただ困惑した。
「な、なんだあれは…!?」
難民たちは、現れた怪獣に驚愕し、畏怖する。それは第1部隊も同じだった。
その怪獣を見て、タロウは口を開く。
「…間違いない、あれは『高次元捕食体・ボガール』だ!」
「ボガー…ル?」
アリサは、気がついて周囲を見渡した。そこは真っ暗な空間の中だった。光が少しも差し込まない、真っ暗闇の中だ。
「ここ、どこ…?」
思わず呟くが、誰も答えを返さない。この暗闇の中には、自分以外誰もいないのだ。
人間は、どこが前で後ろなのかもわからない暗闇の中にただひとり取り残されれば、平静さを失うものだ。
「だ、誰か…誰かいないの!?」
アリサは叫んで見せる。だがさっきと同様誰も答えない。アリサはとにかく走りながら、誰もいないのか呼びかける。それでも誰一人、アリサの前に姿を見せる者はいない。
しかし、誰かの声がアリサの耳に聞こえてきた。
―――もういいかい
「え…?」
今の声は…まさか!
アリサはすぐに声の聞こえた方へ駆け出した。今の声、忘れそうになっていたが、聞くと同時に誰のものなのかすぐにわかった。
「パパ、ママ…!」
そう、今は亡きアリサの両親だった。もう二度と聞くはずのないその声は、アリサの気を引くのに十分だった。
―――もういいかい
また声が聞こえる。それも、ようやく見えた、扉の隙間から差し込むような縦長の光から。
アリサは立ち止まって、その光の外を見る。ああ、そうだ。自分はずっと『この中』に隠れていたのだ。両親をちょっと困らせたい、かまってほしいときに何度も隠れていた、子供たちの遊び場になっていた廃屋のクローゼットの中に。
「まぁだだよ」
アリサは外にいるであろう自分の両親に言う。すると、両親も気がついたのか、アリサの隠れているクローゼットに近づいてきている。
―――もういいかい
「もういいよ」
もう見つかるのも時間の問題。わざと自分がここにいるのだと伝えるように、アリサは言った。見つからないように隠れるのが、アリサのかくれんぼの目的ではない。いつも両親に見つけてもらってとことん甘える。それがよかったのだ。
両親が、クローゼットの扉に触れる。あぁ、今日も見つかっちゃったな。喜びながら、アリサは両親の温かな顔を見るのを待った。
が…彼女が次に見たのは、まったく違うものだった。
「え……」
残酷な光景が、飛び込んだ。扉を開けたのは、両親ではなかった。
その両親は…血の池の中でばらばらに噛み砕かれていた。頭の臓器も…すべて…
ディアウス・ピターに飲み込まれていく。
すると、ビデオ映像が切り替わるように、ようやくアリサの視界が、現実に戻った。
自分が、いつの間にかアラガミに似た怪物になっていることなど気がつかなかった。真っ先に飛び込んだ、地上の人たち。第1部隊の仲間たちと、彼らの手で保護されている難民たち。その中に見えた、ユウの姿を見たときだった。
いつぞや見せられた、アラガミの写真の中に見せられた、リンドウとユウの顔写真が蘇った。
『これが…君のパパとママを食べちゃった…アラガミだよ』
実際に両親が食われたときに、その赤い目でクローゼットを覗き込んできたピターの顔が、赤い眼を持つユウとリンドウの顔に差し替えられていた。
「いやあああああああああああああああああ!!!!」
アリサは、かつてない恐怖に駆られ、狂った悲鳴を轟かせた。
子供一人しか入れないような狭いクローゼットだったのに、いつの間にかその手に持っていた神機の銃形態『レイジングロア』で乱射し始めた。誰の声も、自分の奇声さえも耳に飛び込んでこない。
「来ないで…やめてええええええええええ!!!」
―――君のパパとママを食べた…アラガミだよ
「あああああああああああああああああああああああ!!!!」
彼女の頭の中に聞こえる声は、ただその一言だけだった。
目に見えるすべてが、自分の両親を食い殺した憎き存在にして、絶対的恐怖の対象としか見えなかった。
○NORN DATA BESE
・高次元捕食体ボガール
『ウルトラマンメビウス』本編の序盤におけるボス怪獣。
怪獣を呼び寄せる能力を持ち、ウルトラマン80とユリアンが地球を去ってから26年もの怪獣未出現の平和な時代を終わらせた張本人。この能力を利用して餌となる怪獣を集め、自分とほぼ同じサイズの怪獣さえも、翼のような器官を広げて食らい尽くすことができる。
エネルギー弾やサイコキネシスを使うことや、不気味な人間の女性の姿に変身して潜伏が可能。知性も持ち合わせている。
何より恐ろしいのは、アラガミにも匹敵する異常すぎる捕食欲求。ウルトラシリーズでは、人間の恐怖や絶望を求め残虐な捕食を繰り返す『スペースビースト』という種族がいるが、ボガールも彼らやアラガミに負けないほどの悪食っぷりを見せている。それはかつて、ウルトラマンヒカリ(当時は名が不明の光の国の科学者)が愛した平和な惑星アーブをはじめととした、数多の星の生命体を滅ぼしつくすほどで、メビウスをも食らおうとさえした。
性格も当然のように自己中心的で残虐非道さに満ちていて、自分の腹さえ満たせれば他の命などただの餌にしか見ていないため、オラクル細胞をもっていないとしても『アラガミ』と断じられてもおかしくない。
彼女(本編では女性の姿でもあったので敢えてこのように表現)の同種族には『レッサーボガール』、『アークボガール』等がいる。