ULTRAMAN GINGA with GOD EATER 作:???second
それはそうと、ゴッドイーター3が開発されつつあるみたいですね。果たしてどんな話になるのやら…
といっても、この小説で3まで描ける保障ないです(笑)
「本当に行くの?フェンリルを捨てて」
「ああ」
闇のエージェントたちによる、ウルトラマンギンガを手中に収める計画は、ヴェネの犠牲によって阻止された。エージェントたちは逃亡し、イクスはヴェネによって一時コントロールされたジャックによって倒され、そしてヴェネもまたギースとマルグリットを遺して死んだ。遺体も残されておらず、スサノオの新たなコアにされかけていた彼の神機も消えていた。
二人は、今まで頼っていた保護者でもあるヴェネさえも失い、完全に身寄りの無い存在となった。
「リンドウさん、なんとか二人を保護するようアナグラに連れて帰って事情を話しませんか?」
エリックが二人の保護を進言する。彼らは優秀なゴッドイーターとその候補者兼整備士だ、悪い扱いはされまい。そう思っていたが、リンドウは唸った。
「エリックの言うとおりです。もう一度支部長に掛け合ってみましょう。メテオライト作戦にもギースは参加する予定でしたし…」
「やめとけ、新入り。支部長が何度もお前もわがままを聞くようじゃ、ほかのゴッドイーターたちに示しか着かなくなっちまうぞ」
「示しとかそういう問題ですか!?ヴェネさんが亡くなって、この二人には何一つ当てが無いんですよ!こんな壁外の世界で、ゴッドイーターがフェンリルの支援なしで生き延びるなんて危険すぎます!」
なぜこの二人を保護しようとしないのか理解できなかった。生き残ることを優先させる主義であるリンドウらしくない。ユウは強く抗議の声を上げた。
「僕もユウ君の意見に賛成です。ゴッドイーターは定期的に自分の体に合うように調整された偏食因子を投与しなければ神機に捕食されてしまいます!」
納得できない様子でエリックは言った。彼の言うとおり、偏食因子を腕輪から定期的に投与しなければ、自分の神機に食われてしまうのだ。それに長らく放置し続けると、アラガミ化の危険も想定される。グレイヴを失い防壁外で逃亡生活を送らなければならないこの二人には、アラガミと戦う以前の問題が多すぎた。
そんな彼に、リンドウは冷静に言い返してきた。
「この二人は例の怪人共のモルモットにされていた身だ。俺たちの方で保護したら奴らに付け入られる口実を与えちまう。しかもただのモルモットじゃねぇ…ウルトラマンを自分たちの手駒にするために用意された存在だ。そしてそれを用意したのは誰だった?」
「ドクター・イクス…ッ!」
死んだイクスの名前を口にし、ユウは気付く。イクスはマグニスたちと同じく闇のエージェントの一人である異星人だった。そしてイクスは、『フェンリル本部から派遣されていた』男だ。つまり、例え自分たちフェンリルに保護をすることが仮にできたとしても…
「二人が再び、フェンリルの内部にいる悪しき存在の手に落ちるかもしれない、ということか」
ユウの肩に乗っていたタロウが、あまり認めたくない様子で綴った。
「わかっただろ。連れ帰ってこの二人がなんのためにアーサソールで使われていたのかわかった途端、本部や上層部の連中はこの二人にどんな非人道的なことを強いるかわかったもんじゃねぇんだ。内側も外も…俺たちフェンリルはそういう組織なんだよ」
「………」
ユウは強く理不尽に感じた。なぜこの二人がこんな目にあわなければならない。この二人が、いったい何をしでかしたというのか。大切なもの同士でともに支えあいながら、幸せに生きたいだけなのに。この世界は、いつもこんなのばっかりだ。
エリックも同じ気持ちを抱えた。妹を守るためにゴッドイーターとなったのだが、その組織にそんな醜い側面があると知ると、強い憤りを覚えざるを得ない。
「あんた…いいよもう。気持ちだけで十分だから」
ギースは、始めた会った時からやたら目の敵にするような視線を向けてきたとは思えないような、穏やかな声と視線をもってユウに言った。
「ユウさん、リンドウさん、エリックさん…今回の件については、本当にありがとうございました」
マルグリットもギースに続いてユウたちに礼を言った。
「…礼なんて、言われる資格なんて僕にはないよ」
ユウは首を横に振り、拳を握り、悔しさを隠し通しきれないほどに表情を歪ませた。
「ギンガが僕に力を貸してくれたのに、それでもあいつらをやっつけてヴェネさんを助けられなかった!…僕は……僕は………」
「ユウ君…」
ウルトラマンに選ばれたユウは、ゴッドイーターとして、そしてウルトラマンとして、かつての自分が味わった悲劇を繰り返すまいと、必死に戦ってきた。敗北に陥りかけたこともあったが、それでも彼は負けることなく多くの人たちを守り、アラガミを撃退した。
だが今回は…完全に敗北していた。下手をすればヴェネだけじゃない、全員が星人かアラガミとなっていたジャックに殺されていたかもしれない。
「ヴェネは、自分の意思でユウさんを救ったんです。あなたがきっと、未来への希望になるって信じたから…ユウさん、これを」
自らを攻め続けるユウを見かねるように、マルグリットはユウにあるものを差し出してくる。
「これは…」
「ジャック兄さん…!」
タロウもそれを見て目を見開く。それは、ウルトラマンジャックのスパークドールズだった。さっきのアラガミとしてのおぞましかった姿とはまったく異なる、戦士としての凛々しい姿をかたどった人形となっていた。
「そいつを取り込んでいたスサノオのコアを俺の神機で捕食してから吐き出させたんだ。そいつは、あんたが持ってた方がいい」
ギースがそう言うと、マルグリットはユウに、ジャックのスパークドールズを手渡した。
手に取ると、それだけで力を感じる。だが、タロウやギンガと違い、このジャックというウルトラマンのスパークドールズから意思を感じ取れず、動くこともなかった。
このウルトラマンを助けることができたことは喜ぶべきだが、それでもヴェネを救えなかった自分の無力さを呪った。
「そんな顔しないでください。ほら」
マルグリットは、暗い表情のままのユウに、もうひとつあるものを見せる。顔を挙げてそれを確認すると、ギースとマルグリットの指に、黄金色のリングがはめ込まれていた。
「それは?」
「ヴェネのリングピアスです。これだけ…残ってたんです」
「ヴェネは、これからも俺たちを見守ってくれる。こいつを見てると、それがよくわかるんだ」
ギースがリングをつけた手をかざす。それは太陽の光に反射し、星のように強い光を放っていた。この先の二人に、未来への道筋を示す導となろうとするように。
「…ギース」
「あ、ああ…」
ユウが彼らと会話している間、あまり口を挟まなかったリンドウが、ギースらに向けてある方角を指差す。
「ここから北に行ってみろ。俺たちのために用意された緊急避難用シェルターがある。水と保存の聞く食料、小型のアラガミ装甲版もある」
「ありがとう、ございます…リンドウさん」
初めてギースは、リンドウに敬意を払い、礼を言った。
そして、ユウたちはともに旅立っていったギースとマルグリットを見送った。
その後、星人たちがユウたちへの援軍を防ぐために張っていた電波障害が溶けたことで、ヒバリからの通信が入った。リンドウは、ギースとマルグリットが生存していること、ユウこそがウルトラマンギンガであること等、明かされてはまずいと判断した事実を隠しつつ、ヒバリを介しての、ヨハネスへの報告を綴った。
「全員集まったな?」
その報告がヨハネスのもとに届いてすぐの頃。
アナグラの作戦司令室にて、待機中の第1部隊メンバー全4名が呼び出しを受けた。全員が集まったのをツバキが確認したところで、コウタが挙手した。
「ツバキさん、まだユウたちが戻ってないんですけど?」
「それについて今から説明する。言っておくが、聞いたとたんに慌てたりするなよ?」
ひとつ注意を入れてから、ツバキは全員に向けて説明を始めた。
その際、サクヤは不安を覚えた。リンドウが後輩とセットでピンチに陥ることなど何度もあったこと。そしてその度に彼は仲間を連れて帰ってきて、いつもと変わらない笑みを見せて配給ビールをねだってくる。
「サクヤ、顔色が悪いぞ?」
「え?」
ツバキに指摘を受けて、サクヤは我に返る。いけない、この人の前ではあまり気を抜けない。昔からツバキが怠惰に対して厳しいのは知っている。特に彼女がゴッドイーターになった頃から特にその傾向が強い。
「…リンドウの強さは、お前もよく知っているはずだ」
まるでサクヤのわずかな心情さえも見抜いていたような言い方に、サクヤは少し目を見開いた。
「今は信じてやれ。いつも通りにな」
「…はい」
ただ厳しいだけでなく、時にその分の優しさを見せてくれる。だからこそ彼女は慕われている。そのことも知っているサクヤは椿に向けて頷いた。
「では改めて説明に入る。
現在、リンドウら3名の生存者は長時間の戦闘による疲労および偏食因子の投与の必要が出ている。だが現地は強力なアラガミが出現した影響もあり、周囲の偏食場も不安定だ」
「それ、大丈夫なんっすか…!?ユウたち、無事なんですか!?」
話の前に念押しされても、仲間の身に危険が迫っていると感じたコウタが思わず席を立つ。
「慌てるなと言ったはずだコウタ。大丈夫で済ませるためにも、早急に迎えにいく必要がある。
お前たちにはリンドウたちの現在地から近い贖罪の街にヘリで向かい、リンドウたちを見つけたらすぐに連れて帰ることだ。わかっていると思うが、現地のアラガミ討伐よりもあいつらのことを優先しろ。いいな?」
本当は、さっきまでリンドウたちの現在位置など把握しきれていなかった。今回のリンドウとアーサソールのミッション現場から謎のジャミングが発生し、現地の情報をまったく把握できていなかったのだ。だがそのことを下手に話し、彼らを焦らせては迎えの際に支障をきたすかもしれないので言わなかった。
「あの…ツバキさん、もしリンドウさんたち以外に他に人がいたら?」
「その際は連絡してこい。人数次第ではリンドウたちと共に連れてこられるかもしれんが、あまり期待はするなよ」
コウタの質問にそのようにこたえるツバキ。実際確かに、ギースたちという形で、他に人はいたが、どのみち彼らにはここへ戻れない事情があるので無関係だ。
「他に質問はないか?」
ツバキの問いに対して首を縦に振る者はいなかった。
「では、すぐに支度にかかれ。一秒でも遅れるなよ」
ツバキのその一言で、第1部隊はすぐに出撃準備のために退出した。去り際にツバキの方に、サクヤはさっきのように憂いているような視線を送っていたが、その視線に対しツバキも一瞬視線を返したところですぐに背を向け、すぐに作戦室を後にした。彼女たち全員が出たところで、ツバキはモニターに映る極東エリアの地図を見上げた。
(リンドウ…)
彼女もまた感じていた。いつもと違う、底知れない不安を。
「おのれぇ…ウルトラマンジャックめ…アラガミに堕ちていたくせに最後の最後で逆らいやがって」
暗闇の中、先刻の戦いから逃亡したバルキー星人バキ、マグマ星人マグニス、ナックル星人グレイ…三人の闇のエージェントたちはそこにいた。
「ジャックぅ…よくもあたしの顔に傷を…今度会ったら絶対に八つ裂きに…バラバラにしてやるわ!!
これも全部イクスのせいよ!!あいつが自分の手駒の管理もできなかったからこうなったのよ!!」
特にジャックに反逆に対して怒りを見せていたのはグレイだった。
イクスこと泡怪獣ダンカンが発案した作戦も、ヴェネの反逆によってアラガミ化したはずのジャックがユウたちの味方をしたために破算した。自分の同胞の侵略計画を阻止され倒された屈辱と重なり、自分が美しい(と本人が勝手に思っている)顔を傷物にされたことで怒りの頂点にあった。
「Shit…今度ばかりはさすがのMeにとってもUnexpectedな展開だったぜ…」
バキも今回の事態については完全に意表を突かれたようだ。マグニスは、ギンガやジャック、そしてリンドウたちから受けた傷を抑えながら、その顔に焦りが見え始めた。
「しかし、これでウルトラマンギンガへの対策は最初から練り直しということになるな…ちぃ、あの方になんと報告すればいいんだ…!」
次第に焦りは、恐怖へと変わっていく。彼らは同じ主の下で、その手足となって暗躍しているようだが、それだけ彼らは自分たちの主に畏怖しているのだ。
「Don’t Worry、Mr.マグニス。Next Handならあるぜ?」
しかし、バキはまだ余裕を保った笑みをグレイとマグニスの二人にチッチッチ、と人差し指を揺らしてみせた。
「最も、本来はDr.イクスがここにComingする前にThinkedしたProjectだがな。ほら、前にYouに話したろ?」
それを聞いてマグニスの眉が動く。
「前に話していた、超ド級のアラガミとやらの話か?」
「何よ、そんな話をしていたわけ?だったらなんでイクスに話さなかったのよ?」
「一応Youたちがいないときに話しておいたけどよ、Dr.イクスは自分のProjectに何の支障もない、必要ない…の一点張りでよ。Meの話に聞く耳持たずってやつよ」
グレイからの問いに対してバキはそう答えた。本当の話かどうか疑惑を感じた。何せ自分たち闇のエージェントは、あくまで同じ主の元で働いているだけであって、ゴッドイーターたちのように信頼関係で結ばれた仲間同士というわけではない。イクスも例外ではなかったようだが、今回はそれが災いした可能性が大きいだろう。バキの考えと前回披露されたイクスの策謀、その二つを揃えてユウたちに挑戦すれば、彼らはウルトラマンを倒し『あの方』からの褒美と賛辞をもらえたかもしれない。
「けど、Meが考えたこのProject、Dr.イクスでも成せなかったことができるかもしれねぇぜ?」
「いいからさっさと聞かせろ。これ以上あの方の機嫌を損ねるようなことを行えば、俺たち全員始末されるだけだ」
「せっかちな男ね…でも今度ばかりは同感よ。これ以上ウルトラマンたちに負けるなんて、暗殺宇宙人の名が廃るわ。バキ、教えなさい」
マグニスは少しイラつきながらバキに、彼の考えた作戦の詳細を言うように促す。
「んじゃ、早速Youたちに教えてやるぜ。この作戦にはな…」
二人から促されたのもあったが、バキもそろそろ考えていた作戦を自慢したい衝動に駆られていた。
「このアラガミが必要なのさ」
一枚の写真を取り出し、それを見る二人のエージェント。
「…こいつか。なるほど」
「見るからに強そうなやつねん。でも、こいつスサノオとどれくらい力の差があるの?」
「そこまではMeにもわからねぇ。けど、こいつは目撃情報こそ少ねぇが、各Areaで目撃されるたびに、Bloddy Tragedyを引き起こしてるって話だ。遭遇したゴッドイーターを、ベテラン相手だろうが何人も葬ってるらしい」
「ふぅん…なら、期待してもよさそうね」
「Dr.シックザールのオペレーション・メテオライトでUsingされているMachineのおかげで、LuckyなことにこいつもFar East Area(極東エリア)にComingしている。すぐにでもProjectをStartできるぜ」
「…で、そいつを一体どの怪獣と結合させるつもりだ?」
「へっへっへ…それはな…」
ヒバリを介しての、シックザールへの報告は完了した。後はアナグラへ帰還するだけ。リンドウは通信機を切り、残った自分たちの面子を見やる。
「残ったのは俺ら3人だけ、か…」
さっきまでそれなりに大所帯のはずだったのに、今は自分とリンドウ、そしてエリックの3人だけ。イクスは闇のエージェントたちの仲間で、ギースたちを自分のモルモットにしていた、狡猾な怪獣だった。特にユウは、危うくやつらの実験のためのモルモットにされるところだった。
「リンドウさん。これで、よかったんですか?あの二人のこと…」
ユウは、二人が去っていった方角の地平線を眺めながらリンドウに尋ねた。
本当なら、あの二人だけじゃなく、ヴェネも守らなければならなかった。ゴッドイーターである以上に、ウルトラマンとして選ばれた自分にはそれができるはずだった。でも、ヴェネも守れず、ギースとマルグリットをフェンリルの黒い目から逃れさせるためにただ見送ることしかできなかった。
彼の表情から、悲しさと悔しさがひしひしと滲み出ていた。
リンドウは火をつけたタバコを吸い始めながら、ユウの方を見て口を開く。
「…新入り。お前の気持ちは理解できるさ。お前はウルトラマン、だから目の前の人間はもとより、仲間を守らなければならないっていう感情を抱くのも当然だ。けどな…お前が一人で頑張っても、たとえどんなに強くても、どうしても結果と結びつかねぇことなんてある。今回のお前はウルトラマンの力を使った上で、コテンパンにされていた。寧ろ、犠牲者がヴェネだけってのは奇跡的だ」
「一人人間が死んだのに、それを奇跡って言うんですか!!」
まるで死んだことがあたかも美しいものとして肯定しているようにも聞こえるリンドウの言動に、ユウは怒りを露にする。
「二人も僕がウルトラマンであることを知ったなら、わかるでしょ!?僕はあの力を持っておきながら、結局ヴェネさんを助けられなかった。それどころか守られて…」
人を、仲間を守れる力を持っておきながら、助けることができず、生き残ったギースとマルグリットを、フェンリル内部に潜む闇から逃がすために、ただ見送ることしかできなかった。
「死んだ人間はいつもそうだ…!言葉だけは綺麗だけど、結局生きる尊さには代えられない!!」
「ユウ君…」
傍らで見ていたエリックには、その覚えがある。自分も妹のために家督を捨て、華麗なゴッドイーターを志して戦ってきた。リンドウも同じだった。幼馴染であるサクヤと姉であるツバキの存在を糧に、彼はゴッドイーターとなった。
が、最初の頃は特に仲間や先輩ゴッドイーター、そして守るはずだったのに助けられなかった人たちがアラガミに食い殺される様を何度も見せられた。思い出すだけで自分の心が絶望で染まりそうな光景だった。その度に心が折れそうになった。それでも心が折れることなく戦ってこれたのは、妹エリナの存在だったのは違いない。
(やはり口頭で話したくらいでは耐性を持てなかったのか…)
以前ユウに、かつて自分が守ってやれなかった人間のことを話したタロウだが、それでも今回ユウの心に深い傷ができた。思い起こせば、話によるとユウにはかつて妹がいたらしい。目の前でアラガミによって家を押しつぶされた時に、妹が彼をかばってそのまま下敷きとなり、行方不明…いや、間違いなく帰らぬ人となった。そんな過去のトラウマがある以上、口頭で耐性ができるなんて簡単なわけがない。
すると、リンドウはユウの頭に手を乗せた。
「確かにお前の言うことも尤もだ。死ぬことなんかより、生き延びる方がずっといい。
俺たちはゴッドイーター。神を食らって人を守るのが仕事だからな」
「だったら!」
「けど、その先のあいつらの人生まで面倒見る義務はない。お前、あいつらにそこまでのことをしてやれる余裕なんてあるのか?」
言われて、ユウは言葉を詰まらせる。できるとは言えなかった。
フェンリルが…正確にはイクスのような、その中に巣食っている邪悪な者たちによって計画されていた、スパークドールズと化したウルトラマンの力を行使する、洗脳支配されたゴッドイーターを生み出すプロジェクト。その被験者であるアーサソールメンバー、ギースとマルグリットは、漏らされてはまずいその計画の情報を握っていると見なされ、秘密保持のため抹殺対象として認定される。彼らを庇った者も同じだろう。そしていずれ、直接アーサソールと関わっていない人たちでさえ、『ギースらと接触した人間』という条件のもと、鼠算式で狙われる人が増えていく…。
たとえユウがウルトラマンギンガであっても、絶対に守りきることはできない。
「………」
認めたくないことを悟らざるを得なかった。ユウは押し黙る。
「それに、いくらお前がウルトラマンでもその力を行使するのはさすがに限界があるのは、これまでの戦いで見てわかった。あの力は5分にも満たない程度しか使えない。
そうだろ?先輩ウルトラマン」
リンドウはユウの肩の上に立っているタロウに視線を傾けると、タロウは頷いた。
「…ああ。我々はおおよそ3分しか戦えない。ユウも同じだ。人間がウルトラマンの力を永続的に行使することは、命を削るにも等しいことなのだ」
正直に話した。嘘はつけなかった。ユウだけじゃなく、ウルトラマンの存在を無視できないゴッドイーターたちにも、ウルトラマンが完全なる万能ではないということを知ってもらわなければならない。
「ユウ、我々ウルトラマンは、たとえどれほど強大な存在となっても、『神』ではないのだ。いや、どんな生命体も真の意味で神にはなれない。だからどうあってもこのようなことは起きるときは起きてしまうのだ。悔しいことだがな…」
ゴッドイーターとなるためにアラガミの因子をその体に宿しても、そもそも人間である自分では、ギンガの力を持続させられない。それはユウにとって、どう望んでも救えない命が存在するということを再認識させ、苦痛に顔を歪ませた。
「それでも、僕は…」
「その悔しさを次の任務からのバネにしとけ。ただ、無理はすんな。どう転んでも、俺たちに救える人間は限られている。なら、自分たちの手でも守れるもんを見つけていけばいい。その積み重ねが、いつかさらに多くの人たちを救うことに繋がっていく。ここでうじうじしてもどうにもならねぇだろ?」
「ユウ君、とにかく今は、迎えに来てくれる仲間たちのもとに戻らないか?」
「………はい」
ただでさえ、さっきリンドウが言っていたようにこれ以上、アラガミたちの支配下である防壁の外でリンドウと口論しても、自分の身を危険に晒すだけだ。まだ現実に納得できないところがあるものの、エリックからも勧められたユウはそれ以上言うのをやめて帰還することにした。
最悪の事態は確かに免れたかもしれない。だが、悔しい思いばかりが残る戦いだった。結局守るはずが守られる側になり、自分が誰かの犠牲に上に立つ。これからさき何度も起こりうることかもしれない。
「リンドウさん、タロウ」
「ん?」
「…僕、もっと強くなりたい。もう二度とこんな思いをしないためにも」
「…ああ、もちろんだ。帰ったら無茶しない戦い方を教えるって言ったしな」
ようやく落ち着いた顔になったユウに、リンドウは笑みをこぼし、フゥー、とタバコの煙を吐いた。
そのとき、リンドウの通信機に着信音が鳴った。
『リンドウ、みんな!無事!?応答して!』
「おうサクヤか。新入りとエリックは無事だが…アーサソールの連中は守れなかった」
『そう……でも、あなたとそっちの二人だけでも無事でよかったわ』
近いうちに参加することになる『オペレーション・メテオライト』。その作戦で同じチームになるはずだったアーサソールメンバーたち。彼らが全滅したと聞いて、通信越しのサクヤの声が沈んだ。リンドウが彼らを守りきれなかったことを気にしている、そう思っているのかもしれない。
「サクヤ、お前が気にすることじゃねぇさ。俺が力不足だったってだけだ」
昔馴染みさえも、彼らのために騙さなければならないことに、そちらの方に罪悪感を感じるリンドウだが、悟られないと適当に誤魔化した。
「それよか、どこで合流する?ここでそのまま待機じゃさすがに落ち着かねえからな」
『…ランデブーポイントはそこから北東よ?そこにヘリを着陸させる。
もうすぐ雨が降りそうだけど、今そこはアラガミの反応が薄いから、そっちに向かってちょうだい』
「おう、了解。道中気を付けてな。空の旅も楽じゃないからな」
『あなたもね。さっきまで危ない目にあったんだから』
「隊長のヴェネ・レフィカルはスサノオに殺され、ギース・クリムゾンもスサノオと相打ち、マルグリット・クラヴェリは彼を救おうとグレイヴで特攻…
何よりドクター・イクスの正体が、これまで我々とウルトラマンに危害を与えた怪人の仲間だった。彼もウルトラマンに倒され、アーサソールは、全滅…か」
支部長室にて、オペレーターのヒバリを介してリンドウからの報告を聞いたヨハネスがなぞらえるように復唱した。
ユウたちの今回の任務中、イクスや星人たちがミッションエリア内に発生させていたジャミングが発生していたために、アナグラ側は彼らの現場での状況を把握することができず、故に迂闊に援軍を送ることができなかった。だがようやくリンドウからの通信がヒバリに届き、リンドウ、エリック、ユウの三名の生存が報告された。
話によると、アーサソールが遺した異物である、イクスのコンピュータもギンガと怪人たちとの戦いで破壊されてしまい、データが残存しているのはもはや絶望的だという。
『以上が、現場のリンドウさんたちからの報告です』
「そうか、わかった。しかし迎えに行くまでの間、長時間交戦状態にあったリンドウ君たちを危険区域にとどめておくわけに行かない。すぐにこちらから、同じ第1部隊のメンバーを迎えに行かせてくれ。現場のリンドウ君たちには、決して戦闘を行わないように伝えてほしい」
『了解しました』
通信を切り、ヨハネスはふぅ、と息を吐いて遠い目で天井を見上げた。
「もし、アーサソールの異物からデータを回収できたら、君は何をやりたかったのかな?」
すると、その場に居合わせていたサカキがヨハネスに尋ねてくる。
「我々が彼らの遺物を独占したりしただけで、本部の連中からうるさく文句を言われる羽目になる。大切な計画実行の支障になるようなことは避けたい。
だが…それをどうしてあなたが知りたがるんだ?サカキ博士」
彼は酷薄な笑みを見せながらサカキにそう言った。大切な計画とは、エイジス計画のことを言っているのだろうか。
エイジス…あらゆるアラガミを寄せ付けない無敵の防御シェルター。人類の全てをあの中に収容可能だという最後の砦。それが完成すれば全ての人類はアラガミの脅威にさらされることが無くなるとされている。
だが、星人たちは疑惑していた。アラガミの捕食本能の高さを、アラガミ研究の第一人者の一人であるこの男が警戒していないはずがない。エイジスが本当に全てのアラガミを寄せ付けないことが真実かどうかも、それどころかそれまでにエイジスが無事であるかどうかの保障さえもないのだ。
「別に、単なる素朴な疑問さ」
それは、サカキもまた同じ考えを示していたのである。そう告げたときのサカキの狐目が、穏やかな口調と裏腹に一瞬鋭くなった。
「もし彼らが…
『ウルトラマンを意のままに操る技術』を開発していたとしたら、
その技術を利用し、ウルトラマンギンガを自分の計画を守護する用心棒にするつもりだったのかな?」
それに対し、ヨハネスもわずかに眉を動かした。
「…ふ、ずいぶんと怖いことを言うのだな、ペイラー。
彼は…ウルトラマンギンガは我々の仲間たちの窮地を救った恩人だ。そんなことはしようとは思ってないよ」
…だがヨハネスは、そんなサカキの言葉の裏に隠れた意味を見越していたように返した。
「…それもそうかもしれないね」
「それより、君こそ今熱心に行っている研究があるのではないかね?」
「そうだね…では私もこのあたりで失礼」
サカキは、それ以上触れることはやめておくことにした。自分と彼の間には奇妙な線引きがある。それを迂闊に踏み越えても互いのためにはならない。彼は静かに支部長質を後にする。
彼が去ったのを確認すると、ヨハネスは改めてリンドウが提出した報告書を眺める。
「…どんな結果にせよ、君たちのおかげで邪魔者が消えてくれた。だから、例え君たちが私に何かを隠そうとしているとしても、それを咎めることはしない。それが、今回の任務において私から君たちに密かに贈る報酬としよう。
この計画だけが、この地球を救う。そのためにも、君にはもう少し頑張ってもらうよ…『ウルトラマンギンガ』」
それにあわせ、デスクの上のノートPCに写された光の巨人、ウルトラマンギンガの姿を見る。
「…と、大事なことがあった…」
ヨハネスはあることを思い出し、傍らの電話の受話器に手を書け、ある場所へかけた。
「ああ、君か。ついに時が来た。本来ならオペレーション・メテオライトの最中に行うつもりだったが、今の機会を逃せない」
「…賢しい知恵をつけた『老犬』を引退させる時がね」