ULTRAMAN GINGA with GOD EATER   作:???second

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禁忌を破る者(前編)

これまで様々なアラガミに、合成神獣に勝利を飾りゴッドイーターたちを救ってきたウルトラマンギンガだが、ついにこの日、スサノオと化したジャックと、卑劣な闇のエージェントたちの奇襲によって敗北した。

「ウルトラマンが、負けた…?」

すぐに彼の敗北を受け止められないエリック。

「ねえ、あそこにいるのって…」

マルグリットが、ギンガが消滅した地点を指さす。その地点には、見覚えのある青年が倒れていた。

「ユウ君!?なぜあんなところに…!」

エリックが、思わぬ場所にユウがいたことに驚きを隠すことができない。しかしそのことに食いつく暇を、現実は与えてくれない。

星人たちが、まるで待ちわびたかのように彼に手を伸ばしていたのだ。

 

 

 

「はっはっはっは!さすがのウルトラマンもそんなちっぽけな姿となっては形無しだな!」

顔を覆いながら、マグニスは勝ち誇った笑い声をあげていた。ずっと夢見ていた。自分の同胞たちの侵略計画を邪魔し屈辱を味あわせてきたウルトラマンをこの手で屠る光景を。それはグレイとバキも同じだった。

「こうなったらあとはこのBoyを連れ去るだけだ」

「…っく…!」

ユウは、ひどくダメージを負っていたせいでぐったりしていた。たとえゴッドイーターであるユウでも、負傷した上にこれほど巨大化を果たした相手から捕まってしまえば、自力で逃れることは不可能だった。

「ずいぶんと小さく可愛らしくなったんじゃない?あとであたしたちがたっぷりとかわいがってあげるわよぉ」

嫌悪感を促すような言い回しと台詞をグレイは言いながら、彼に向けて手を伸ばしてきた。

「ユウ!!今助けるぞ!」

しかしその時、どこからか声が轟く。リンドウたちの元から密かに離れたタロウが、瞬間移動でユウの傍らに姿を現した。

「ウルトラ念…」

「しゃらくせぇ!!」

「ぬわああああ!!!」

バキたちに念力を懸けようとしたタロウだが、それを見越したバキが彼に顔を向け、深紅に染まったその目をさらに怪しく光らせる。目から発せられた邪悪な波動が、タロウの念力を押し返して彼を吹っ飛ばしてしまう。

「人形になっちまったYouの唯一の攻撃がそれとわかっている以上、油断さえしなけりゃ大したことねぇぜ!!」

地上へ落下していくタロウを、バキは嘲笑った。

「ぐぅぅ…人形でさえなければ、お前たちなど…!!」

まるで不法投棄されたゴミのように、地面の上に落ちたタロウは、小さくなった自分と、対照的に巨体を保ち続けている闇のエージェントたちの圧倒的な力の差を見せつけられ、歯噛みする。こんなしょうもない負け惜しみしか言えない自分に無性に腹が立った。

いや、ここで諦めるわけにいかない。タロウは再度立ち上がり、飛び上がって念力を仕掛けた。

「たとえこの念力の浪費で我が身がどうなるとしても、ユウ…未来の希望である君を失うわけにいかん!」

「ちっ、いい加減しつけぇんだよ!…うぐ!!?」

せっかく勝利の余韻に浸っていたというのにそれを邪魔してきたタロウに、マグニスは短い堪忍袋の緒を切らし、サーベルを振り下ろす。その瞬間、マグニスの顔に向けて弾丸が撃ち込まれる。以前アリサに撃たれた顔の傷にまた攻撃を食らってマグニスは顔を押さえて攻撃を差し止めてしまう。

「でかしたエリック!後は俺が行く!お前はギースと一緒にその二人を守りつつ援護しろ!」

「リンドウさん!」

タロウの存在に気付いているのは、まだヴェネが彼のことを離していないので、ヴェネだけが知っている。今の攻撃はユウに向けようとしたものと考えてか、リンドウはエリックに攻撃命令を下したのだ。

「今行くぞ、新入り!」

仲間たちの声を背に、リンドウは神機を担いで駈け出した。ここでユウを捕まえさせてはならない。ヴェネはウルトラマンを捕まえることが、奴らの目的だと言っていた。なぜ殺さずに捕まえるのか、その理由をヴェネに問いたいところだが、ウルトラマンであるユウが捕まってしまえばどのみちロクでもない結末が訪れるのが目に見えている。

しかしまだ、グレイとバキ、二人のエージェントが残っている。

「そうはさせないわよ!」

「ここまで来て、MissionFalledなんてさせないぜ!」

「それはこちらのセリフだ!ユウ君に手出しはさせん!」

手から邪悪なエネルギーの弾丸を放とうとしたグレイとバキに、エリックがバレットを打ち込む。

「んなCheapなBulletで!」

そんなもので怯むものか。こちらと自分たちとで力の差が圧倒的なものであることを理解していないのか。バキは舐めてかかりながらも、エリックのバレットを叩き落とす。奴らが自分より強大な敵を相手にしてなお生き残るつもりなら、自分たちの視界を奪うために目にバレットを撃ち込み、目を負傷させること。そこへ来るとわかっているなら問題ない。

「あたしのつぶらな瞳を潰そうなんて、ずいぶん姑息ね。さあ、そろそろ天国へ連れて行ってあげるわ!」

グレイは地上を走っているリンドウに、エネルギー弾を撃ってくる。

やば、と声を漏らしながら、リンドウは地を強く踏み蹴って右方向へ跳躍する。瞬間、リンドウがたどっていた道がグレイのエネルギー弾の爆発によってえぐられる。食らったらただでは済まないだろう、直視せずともリンドウはそれを理解した。だが足を止めなかった。倒れているユウに向かって彼は必死に駆け出し続ける。次から次へとグレイの手から放たれるエネルギーの弾丸を、リンドウは紙一重で回避し続けていく。

(ぐ…こ、こいつ人間のくせにやるじゃない…!)

グレイは少し手間を懸けさせられたことによるイラつきを感じつつも、リンドウの人間離れした反射神経を評価した。これも彼がゴッドイーターとして長年戦ってきたことで培ってきた技術なのだろう。だが、所詮は人間だ。自分たちのように、元から優れた力を持った種族ではない。だからどのみちこの男の行動は無駄な足掻きに終わるに違いない。もしこの男が地球人じゃなくてナックル星人の男だったらよかったのに…などと、聞いたら寒気を催すようなことを考えるグレイだった。

「ぐおおおお!!」

次に撃ち込んだエネルギー弾の爆風によって、リンドウは大きく吹き飛ばされた。

地面を転がりながらも、すぐに神機を杖代わりに立ち上がり、彼は再びユウの元へ向かった。

 

 

「リンドウさん…!」

ギースたちは、ユウを助けるために危険を顧みずに向かっていくリンドウに、マルグリットが名前を呟きながら憂う気持ちを露わにする。気が気でならなかった。本当に、あんな化け物たちを相手にユウを助け出そうというのか。いくらなんでも無謀だった。

「死にそうになったら逃げろ、そんなことを自分で言っているのに…」

バレットを撃ちながらエリックが思わずそのように呟く。自分がゴッドイーターになった時、何度もリンドウから聞いた言葉だ。だが、言っている本人がいつも自ら仲間を守るために危険に飛び込んでいくことが多かった。

「いくら自分の部下が大事だからって、あんな怪物どもを相手に突っ込むのか…助けられる可能性なんて、考えられないってのに…」

ギースが正気の沙汰には思えないとばかりにリンドウを見ていた。神機を握る手に、自然と力が入る。なんだかんだいいつつも、彼も嫌っていた節が見えたリンドウの身を案じつつあった。

「……」

ヴェネも黙っていたが、ギースの言うとおりだと思った。エリックの援護射撃も万能ではない。リンドウ自身もスタングレネードを用いて、なんとか対処できている。だが相手が個々の力においても、その個々すべてを併せ持ったうえで圧倒的な力を持つ以上、いつまでも持ちこたえられるはずもないことが予想された。

敵はウルトラマンギンガを狙う怪人、イクスもその一人だった。現にアラガミと化したウルトラマンを操ってギンガを襲い、そして敗北に追い込んだ。

…ウルトラマンを、操る?

「…そうか!」

ヴェネは閃いたのか、思わずそのように声を漏らす。

「ヴェネ、どうしたの?」

マルグリットが彼の顔を覗き込む。

「今、この状況を覆す手を思いついた」

「マジで!?」

それを聞いてギースも思わず声を上げる。こんな絶望的な状況を、打開できる手を彼は思いついたのか。やはり彼は、神機を失っても尊敬すべきゴッドイーター、自慢の幼馴染だったと彼は強く感じた。

「本当に、この状況をどうにかできるのかい?」

エリックはヴェネの提案に対して、まだ聞いていないとはいえ状況が状況なだけに、それが本当のことが疑惑を抱いた。それについてギースがわずかに不満を抱き、何か言い返そうとしたが、それを察したのかマルグリットがギースの手を引いて黙らせた。

「ああ、それは…」

 

 

 

「ぐ、ぬぬぅ…!!」

「ちぃ…!!」

グレイがリンドウの相手をしてる間、タロウはマグニス、そしてバキの動きを、懇親の念力を用いて封じ続けていた。その間、リンドウが彼の元にかろうじてたどり着いた。

「新入り、無事か!?」

「リンドウ…さん」

なんとかユウのもとにたどり着くことはできたが、肝心のユウはまだ動ける状態ではなかった。

「ユウ、早く立ち上がるんだ!ここにいては危険すぎる!っぐ…」

「タロ…ウ…!」

後ろを振り返るタロウはユウに対して必死に呼びかける。対するユウも、傍らに落としていた神機を握り体を起こそうとしている。だが、やはりジャックとの戦いでのダメージに引き続き、闇のエージェントからの追撃のせいで体の自由がまともに利かなかった。それでも彼は何度も立ち上がろうとした。

情けない…ウルトラマンになったのに、自分はリンドウさんやタロウの世話になってばかりで…!ユウは自分の未熟さをとことん呪った。

(人形が…喋ってんのか?)

一方でリンドウは、目の前に、ユウの盾となっているかのように、二人もの巨大な異星人と対峙している人形を見て目を丸くする。人形が、…いや、人形にしか見えない何かがユウに間違いなく話しかけていた。

ウルトラマンに変身できることといい、この人形擬きといい…一体こいつはこれまでどんな秘密を抱えているのだ。

しかし今の彼らの身に起きている状況は、そんなことを気に留める暇も与えない。

「リンドウ君、今のうちにユウを!」

「え?お…おお!」

そうだ、今はこいつをギースらごと連れて帰ることが最優先だ。リンドウは動揺が抜けていないものの、タロウに言われた通りユウを背中に背負って駆け出した。

「待て!逃げるな!」

マグニスの怒鳴り声が響くが当然無視。そのままリンドウは脱兎を開始した。

「この…!人形の分際でどこまでも邪魔をするか…!」

マグニスはタロウのウルトラ念力で、全身に重りを乗せられたような感覚を覚えながらも、強引に体を動かしてサーベルを振り下ろそうとしている。動きがゆっくり過ぎて、振り下ろすというよりも、そのままゆっくり下す動きになっていた。だがタロウのこの唯一の対抗手段であるウルトラ念力は、そう何度も多用すべきものではない。著しくエネルギーを縮めてしまうリスクがあった。限界まで続けてしまえば、タロウも倒れて共倒れとなってしまうのだ。

「おい、ジャック!突っ立ってないでこの邪魔くさいてめえの弟をどうにかしろ!」

マグニスは動けないことにしびれを切らすと、よりによって待機させていたままのジャックに非道な命令を下してきた。

それを聞いて、タロウは言葉を失いかけた。さっきまで動きを止めていたジャックは、その命令を聞いたのか、わずかに動き始めたのだ。イクスが、闇のエージェントの仲間の命令を聞くように信号を送っていたのかもしれない。

「兄さん…本気なんですか…!?本気で私とユウを殺そうというのですか…!?」

タロウは目の前の現実を素直に受け止めきれない。

「目を覚ましてください、兄さん!!あなたは…あなたはウルトラマンジャックだ!この地球を共に守ってきた、私の尊敬すべき兄さんなんですよ!!」

「は、ははは…馬鹿が!今のこいつは、もはやウルトラマンではない!血に飢え、食うことにしか能のないアラガミだぜい!」

「黙れ!」

嘲笑ってきたバキの言葉を、タロウは怒鳴り声で遮る。

「思い出してください、ジャック兄さん!あなたはこの地球で、『郷秀樹』としても生きていた!人間の美しさも醜さも…その両方を知り、守るに値する星と信じて共に戦ってきたではありませんか!」

必死に呼びかけ続けるタロウ。そんな彼をマグニスは本当に愚かな奴だとけなした。今のこいつはアラガミ、そしてイクスが、ジャックを取り込んでいるスサノオがその前に捕食していたヴェネの神機を介して信号を送っていることで操っている。

「そんなあなたが、自分の愛する人間と地球をおびやかそうとする者の悪事に荷担すると言うのですか!?ましてやそこにいるナックル星人は…あなたの大切な人を殺した者の同族だ!」

「…」

弟からの必死の呼びかけだったが、反応はなかった。

「ああもう、あんたうるさいのよ!」

耳障りに聞こえたグレイが、彼に闇のエネルギー弾を放った。

 

 

 

「よし」

ギース、マルグリット、ヴェネ、そしてエリックは、ヴェネからの提案でカーゴに戻ってきていた。イクスが変化した泡は蒸発してしまったのか、跡形もなく消えている。

「ねぇヴェネ。一体どうするつもりなの?本当に、あんな怪人たちを倒せる手があるの?」

「ああ」

「どんな方法だよ?」

今度はギースが尋ねてくる。あのヴェネのことだから、きっと本当にこの状況を打破できる手立てを考えてくれているはずと信じていた。

「外にいるあのスサノオ…あれは僕の神機とウルトラマンを取り込んだことによる異常進化したものだ。それをイクスは、あの中にいる僕の神機に信号を送ることで操っていた」

「アラガミ化した、ウルトラマンだって…!?でも、ウルトラマンはあのアラガミや怪人たちを相手にしていたじゃないか!」

ギンガに助けられた身であるため、それを聞いてエリックが特に強い反応を示した。ギンガ以外のウルトラマンはユウ以外に全く認識されていないため、ウルトラマンのアラガミ化と聞いて、ヴェネの話に矛盾を感じていたのだ。

「ギンガだけじゃない。元々ウルトラマンはギンガ以外にも、何人もいたらしい。いくら僕らに隠し事の多いイクスでも、あの状況で嘘をつくとは思えないし、ウルトラマンに対する対策が万全だった。ギンガ以外のウルトラマンの存在を想定しなければできない」

そういわれて、ギースたちは納得を示すとともに、イクスに対して恐怖にも似た感覚を覚えた。

「…で、どうなんだよ。どうやってあいつらを止めるんだよ?」

「イクスが使っていたこのコンピュータから、あのスサノオに『あの怪人共を討伐せよ』と命令を送る。そうすれば、あのスサノオは僕らではなく怪人共を攻撃してくれる。おそらくは、な」

「おそらく?」

マルグリットからの質問に確証があるとはいわないヴェネに、一同は呆けた。

「この方法で本当にこの状況を打破できるかどうかは保証できない。なぜなら、イクスが使っていたコンピュータに直接触れたことなどない。秘密主義のあの男が、触らせようとするはずがなかったからな」

「でも、これしか…ないんだね?レフィカル隊長」

エリックがそう尋ねると、ヴェネは迷わず頷いた。

時間がない、さっそくヴェネはイクスのコンピュータに触れた。基本的に普通のPCと似た構造だったが、やはり天才科学者でもあるイクス。どのように動かしていたのか理解するには時間を要しそうだ。

だがヴェネはここで怯むつもりはなかった。ギースを危うくイクスの実験のモルモットとして死なせ、マルグリットさえも悲しませようとした罪をあがなわなくてはならない。そして自分たちの事情にリンドウとユウを巻き込んでしまったこともあるのだ。

やがて、ヴェネは見つけ出した。

「この波形…新型神機の可変時の、ゴッドイーターの体内オラクル細胞の波形データか。…そうか、これをもとに…!」

さらに閃きを示し、彼は指を目にもとらえきれないほどの速さでキーを叩いていた時だった。

「よし!これで…」

「さすがだね、レフィカル君」

このタイミングで聞きたくなかった声が背後から聞こえてきた。振り替えると、もう二度と見ないと思っていた男の姿があった。

「い、イクス!?」

泡となって消えたはずのイクスだった。

「そんな、さっき確かに…!」

「忘れたのか?私はもとより人間ではない。君たちのような脆弱な存在とは違うのだよ。たとえ、アラガミの細胞を取り込んでもその事実は変わらない」

「相変わらず腹の立つ野郎…!」

ギースはイクスのいつも通りのの、相手を見下して嘲笑っているのが見え見えの態度にムカつきを覚えた。

「だが、悲しいがここでお別れだ。君たちにアーサソールの秘密を口外される訳に行かない。ここで我が研究の礎となってもらう」

自分から事前にヴェネに話していたくせに、ずいぶんと身勝手なことを言い出した。すると、イクスの体に再び異変が起きた。タロウによって跳ね返された弾丸が彼の胸を貫いた時のように、全身が泡となって崩れだした。

しかし今度はさっきと違う。イクスだった泡は風船のように膨れ上がり、カーゴの中をあっという間に飲み込もうとした。

「いかん!脱出しないと!」

エリックが叫ぶ。彼らはイクスの泡に飲み込まれる前に、カーゴから脱出した。

最後にマルグリットがでたところで、カーゴは内部から膨れ上がってきた泡の塊によって破裂し、砕け散った。

ギースたちは、泡の中にいる巨大な影がいるのを見た。

あれは、アラガミ?いや…アラガミではないとすぐにわかった。アラガミから感じる捕食本能、オラクルの気配、それらが感じられない。しかし、やつから感じる悪意を強く感じた。

「ギイイイィィィィィ!!」

泡の中から、姿を現した巨大生物に、彼らは戦慄した。泡に包まれた針ネズミのような刺々しい体表と、赤く染まった目、そしてウルトラマンやあの怪人にも匹敵する巨体。

この怪物こそが、イクスの正体だった。あの不気味さを放ちながらも知的な科学者であった姿からは想像もつかない光景だった。

この怪物…怪獣は星人にも匹敵する高度な知性を持ち合わせ、ギンガに施そうとしたように、かつてあるウルトラ戦士を操って見せたことのある個体の同族だった。

今では失われた情報だが、アラガミが現れる前までの地球ではこのように記録されていた。

 

『発泡怪獣ダンカン』と。

 

「これが、イクスの正体…!?」

人間だった時の姿とは全く異なる姿に、ギースたちは息をのんだ。

 

 

その頃、リンドウ、ユウの二人は、タロウがウルトラ念力を使って闇のエージェント三人の動きを封じている間、一足先に奴らの目の届かない、近くの廃ビル街に逃げ込んでいた。

リンドウはビルの入口の影から、外の様子を確認する。

「ええい、どこに行きやがった!」

「んもう、イクスの奴はいったい何をしているの、こんな時に!あの時あんたたちがモタモタするから!」

「貴様もあんなちっぽけな人間ごときに翻弄されていただろうが!」

「HEYHEY!今は喧嘩してる場合じゃないぜ!さっさとギンガの人間体を見つけて『あの方』に捧げねぇとな」

星人たちのいらだった声が聞こえる。あんな血眼になって、どうあってもこいつを…ウルトラマンであるユウを捕まえようとしている。

「はぁ…やっこさんたちはしつこいな」

「みんな、無事でしょうか…」

「あいつらか…」

前回に引き続き、今回の任務もまた危険極まりないものだ。たとえギースらが接触禁忌種アラガミを討伐するほどの実力でも、あの怪人共やアラガミ化したウルトラマンには間違いなく敵わないのは容易く想像できた。タロウに関しても同じことが言える。今の彼は知っての通りの人形で、唯一の抵抗手段がウルトラ念力だけだ。

外を覗き見ていたリンドウが、再びユウの傍らに身をかがめて彼と目を合わせた。

「しっかし…驚いたぜ。お前がウルトラマンだったなんてな。あのちっこい人形さんともなにかあんだろ」

「…すみません、隠してて」

俯いたユウは、自分がウルトラマンギンガとして戦っていたことを隠していたことを詫びた。

「今はいいさ、んなことは。それよりこれ使え」

「ありがとう…ございます」

リンドウは自分が持っていた回復錠をユウの口に放り込んだ。今の彼はかなりボロボロだ。少しでも回復してやらないと、アナグラへ帰還する前に力尽きてしまう。回復錠を服用したことで、ほんの少しだけユウの体に力が戻った。

「俺もいろいろ聞いてみたいことはあるが、今はあいつらのことよりも、お前の体のことを考えろ。さっき連中にやられたダメージは、見てるこっちから考えても相当だっただろ」

リンドウ自身、ユウに会ったらすぐにユウから聞き題したいことが山住だった。ユウはなぜウルトラマンになったのか、そもそも元からそうだったのか、なぜその力を持ってしてゴッドイーターとして戦うのか、様々だった。だが、今は落ち着いて質問攻め出来るような状態でないのが残念だ。

「…だめです、こうして休んでる間にも彼らが…!」

ギースやエリックたちの身を案じるユウは、休む暇などないと、まだ満足に動かせないからだを起こす。しかしやはり体力も少なく、ダメージがまだ蓄積しているからだでは一方ごくのも難しかった。たった今も、壁伝いでようやく前に進める状態だった。

リンドウは強引にユウを引っ張り、自分と目を合わせさせる。

「だから体のことを考えろって言っただろ?さっきのスサノオ擬きとの戦闘でかなりのダメージを負っても、お前は退くことを放棄してあの怪人共に立ちふさがっていた。

ウルトラマンになったからって、無茶しすぎだぜ」

「……」

強い眼差しを突きつけられ、ユウは俯いた。しかし、その時だった。

「伏せろ!」

リンドウが何かに勘付き、ユウの頭を地面に押さえつけて自らも伏せる。それは一瞬の出来事だった。空を切り裂くような感覚がユウたちの頭上を襲う。直後、彼らのこもっていた廃ビルの天井が消え、夕暮れの空がむき出しとなった。

「うわああ!」

起き上がったユウとリンドウに、エリックの悲鳴が聞こえてきた。直後、ギースとマルグリット、ヴェネ、そしてエリックがユウたちの傍に転がり込んできた。

「お前ら、無事だったか!」

「リンドウさん、ユウさん!」

しかし現時点で誰もかけていないのは喜ばしいことなのだが、再会を喜べるような状態ではない。

「見~つけた♪」

頭上から見下ろしてきたその顔を見て、ユウたちは表情が険しくなる。

グレイ、マグニス、バキ…三人の怪人が勢ぞろいだった。そしてさらに付け加えてスサノオに取り込まれアラガミ化したウルトラマンジャック…灰色のハリネズミのような怪物までも加わっている。

「腹いっぱいだってのに、追加オーダーを頼んだ覚えはねぇぞ…?」

リンドウが軽い感じのセリフを吐きながらも、さらに悪化した状況に苦虫を噛む。

「またもう一体…あいつは!?」

「イクスだ…あいつ、人間に化けて俺たちを嵌めてたんだよ!」

「なんだって!?」

ユウが新たに姿を見せたダンカンを見て詳細を尋ねると、ダンカンを見てギースは質問に答えてきた。実はギースたちの管理官が、あの怪人と同じく人間ではなかったという事実に耳を疑った。

すると、ダンカンからイクスの声が聞こえてきた。

『ちょうどいい、レフィカル君たちを殺した後、君も捕えてあげようか』

その赤い瞳をユウに向けながら、イクスの声で彼はユウに下卑た笑みを見せ、ユウはそれに対して嫌悪感を覚える。

続いてマグニスがユウに対して視線を向けてくる。

「しっかし、人形に成り下がったあの野郎は大したことなかったぜ。足止めした時間も長く持てなかったぞ」

「ッ!タロウ…タロウは!?」

自分たちを逃がすために一人残って奴ら闇のエージェントに向かったタロウがいながら、奴らがこうして自分たちの前に再び姿を現した。そうなると、タロウの身によくないことが起きたことが予想された。

「探し物はこれかい?」

そう告げてバキは、親指と人差し指の先に小さなものをつまんでいるのを見せつける。黙視せずともそこにいるのが誰なのかすぐに分かった。

「ぐ…ユウ…!」

「タロウッ…!」

「へへ、タロウはまだ生きている。けど俺がほんのちょこっとでも力を入れたら…こいつが潰れる。さあて、MeたちのRequestがなんなのか理解できるかな?」

バキが卑劣さなどまったく隠す気配をみせずに、本来の意図をあえて言葉に出さずに問いかけてきた。

「…俺らの首を差し出せというのかよ?」

ギースが、自分たちアーサソールの隊員のことを指しているのかと思ってそう問い返すと、グレイがふん、と鼻息を飛ばしてくる。

「あんたら程度なんて、イクスが適当に踏みつぶせば終わりじゃない。違うわよ。

あたしたちは、そこの優男に用があるのよ。ねぇ…ウルトラマンさん」

「な…!」「え…!?」「…なに?」

まだユウの正体を明確に知らなかったギース・マルグリット、そしてエリックが目を見開いた。ついに彼らにも知られたか、とユウは思ったが、そんなことは今はどうでもよかった。

「さあどうするつもり、ウルトラマンギンガ?私たちに無謀な戦いを挑んで仲間もろとも死ぬか、それとも自分の身を差し出して仲間を助けるか…」

「く…ッ!!」

いやらしく気持ちの悪い声でグレイはせせら笑う。全快の状態なら、こいつらとも渡り合うことくらいは可能なはずだ。だが、もう自分はギンガ再変身することが難しいほどにエネルギーが尽きている。ならば自分の身を差し出して仲間を……それしかない。

「耳を貸すな、ユウ!!お前は希望なんだ!こいつらの話に乗ろうとするな!」

「Be Quiet!余計なことはNGだぜ」

「グアアアアアアア!!」

タロウが地上のユウに叫ぶと、バキが指先に、ほんのわずかな力を入れてくる。小さな体のタロウには、バキのちょっとの力でも苦痛を与えるのに十分だった。

ユウはそれを見て、焦りと憤りが入り交じるのを覚えた。卑劣な星人たちをすぐにでも倒し、タロウもリンドウたちも救いたい。だが、ギンガに再変身できる体力は残っておらず、それ以前にゴッドイーターとして神機を振るうこともままならないほど消耗していた。

「く、今度こそ終わりだと言うのか…」

「諦めるなエリック、最後まで考えろ!」

どうすればいい…どうすればこの最悪の状況を免れることができるのか。ユウだけじゃない、リンドウもヴェネも、頭を必死に練って考えた。

ヴェネは、カーゴのコンピュータから送られている信号であのスサノオ…ウルトラマンジャックが操られていることを突き止めていた。イクスは、ジャックを取り込んだあのスサノオの中にある、ヴェネの神機に信号を送信することでジャックを操っていた。ならこちらから新たな命令として、自分達を守るように信号を送れば良かったのだが…だがカーゴは正体を現したイクス自身の手で破壊され、失敗した。

…ならば、覚悟を決めるしかない。たとえこの手段で身を滅ぼすことになっても。

「…わかった。仲間を見逃してくれるなら…」

ユウは、苦渋の決断として自らの身を差し出すことを宣言した。

「な、ユウ!?」

タロウも、そしてリンドウたちもそれを聞いて絶句した。

「いかん、ユウ!よすんだ!そんなことをしたところで…」

それこそこいつらの思う壷だ。ユウが身を差し出したところで、リンドウたちを見逃してくれる保証などない。むしろ、ウルトラマンという鉄壁の味方を失った彼らを、花を摘むように狩ると考えるのが普通だ。それをユウは、理解しているのか!?

(あんな思いをするのは二度と…)

タロウが殺されかけ、仲間たちも危機に陥っている。この状況は、ユウにとって過去のトラウマを刺激していたのだ。今は亡き妹から庇われ、みすみす自分だけ助けられた事実が、ユウから正常な判断力を消していた。

「ほっほう…聞き分けがいいじゃないかウルトラマン。俺たちのRequestを聞いてるとは」

ユウがこちらからの要求を受託したことを聞き、マグニスたちは笑った。

「さて、そうとわかったらこちらに」

「待て!」

手招きしてきたマグニスがユウに来るように告げたとたん、ヴェネが遮ってきた。

「なんだ、イクスの用済みのモルモット。なにか用か」

「彼の命だけでは、お前たちの安全は保証できまい。なら僕の身も差し出させろ。ギースたちを見逃してくれ」

さらに飛んできたトンでもな発言に、ユウたちが、特にギースとマルグリットが驚愕した。

「なに言い出すの!?」

「そうだよ!何でヴェネまで…」

二人の叫び声に当てられても、ヴェネは顔色一つ変えてこなかった。

「ほう、わかっているじゃないかレフィカル君。まさかアーサソールの機密を身をもって守ろうとするとは、そこまで自覚を持っていたとは予想外だが、管理官として嬉しいよ」

ダンカンの姿のまま、イクスが満足げに笑った。

「やめてください!僕があなたたちの代わりに身を捧げます!だから…」

ユウは、ヴェネにやめるように言うが、ヴェネは耳を貸さない。

「だが残念だが、君だけの命ではアーサソールの機密が漏れる。そこの二人を見逃してほしくて言っているのだろうが、やはりアーサソールのメンバーである君たちが生き残るには、このまま私の実験に付き合うことぐらいだ」

「こうまで頼んでもダメか?」

「残念だが」

マグニスにバキ、グレイ…他の闇のエージェントたちはヴェネに注目し笑っていた。こいつらバカだ!

「そうか…なら仕方ないな」

全員が自分に注目している、そして自分達の勝利を信じて疑わない、それを察したヴェネは、手の中に隠していたものを投げつけた。

目の前になにかを投げられ、一瞬ぼうっとした闇のエージェントたち。投げつけられたそれは…カッ!と光を解き放った。

「な、グアアアア!?」

ウルトラマンを敗北させ、残ったゴッドイーターたちも詰みの一歩手前まで追い込んでいたことで、完全に油断していたヴェネが隠し持っていたスタングレネードの輝きに視界を潰された。ユウたちもその目映すぎた輝きによってなにも見えなくなってしまう。その拍子に、バキもタロウを手から放してしまう。

ヴェネはスタングレネードが破裂する直前、特殊なサングラスをつけていたため視界を潰されずに済んだ。自分以外の誰もが視力が回復していないうちに、彼はある方向へ走り出す。その先は、アラガミ化したジャックの前だった。ジャックの前に立ったヴェネは、新たにポケットから一本の注射器をだし、それを自分の体につき出した。注射器の中には、偏食因子は大量に入っていた。ゴッドイーターが神機を制御するためには、腕輪から自分の体に合わせて調整された偏食因子を腕輪から投与す必要がある。そのための注射器だった。だが本来、投与の際に数滴で構わないのに、ヴェネは注射器一杯の因子を直接体に投与した。下手したら自分がアラガミになりかねない、あまりに危険な行為だった。

「ぐ、うう…」

多量の偏食因子を取り込んだことで一瞬悶えたヴェネだが、次に壁を伝うようにジャックの足に触れた。

その時エージェントたちの傀儡となったジャックに異変起きた。

じっと待機していたはずだが、ヴェネと彼の体が触れたとたん、さらに強い輝きを放つエメラルドグリーンの光が二人を包み始める。

 

光が晴れ、全員の視力が回復したとき、ヴェネの姿はなかった。

 

「ヴェネ…ヴェネ!?」

マルグリットが名前を呼びかけるが、ヴェネからの返事はなかった。

「…ち、どうやら逃げられたみたいだな」

マグニスが、姿を消したヴェネに気付いて舌打ちする。これについては、秘密主義なイクスも、自分の研究が何かしらの形で漏れるのを危険視していたため気にしていたが、その考えはすぐに消えた。アラガミ防壁外の世界はアラガミの巣窟。神機を失っているヴェネが一人逃げたところで、どこかでアラガミに食われるのが目に見えている。

「しかし、可哀想なことだな…ギース・クリムゾン、マルグリット・クラヴェリ。まさか、昔からの幼馴染みに、ついに見捨てられてしまうとは」

くっく、と怪獣の姿でも変わらず相手を見下した下卑た笑みを見せてきたイクスに、ギースが我慢ならずに反発した。

「ざけんな!ヴェネは絶対に逃げたりなんかしねぇ!」

「ではなぜ姿が見えない?逃げたのだよ、我々に怖気づいてな」

神機を向けて明確な敵意をむき出すギースに、イクスは笑みを崩さずに言い返して押し黙らせる。

なぜ…こんな時に姿を消したんだよ、ヴェネ!!

ここにはいないヴェネに対してギースとマルグリットは、絶対に抱きたくなかった疑心を抱き始めていた。

「ヴェネさん…」

この状況に絶望するのも無理はない、とユウは一瞬思ったが、ギースとマルグリットが強く信頼を置くほどの人だ。二人を置いて敵前逃亡なんて、二人の視点から考えればありえないと考えられた。

「…ふん、雑魚一人消えたところでどうでもいいわ。今度こそこのガキを連れて行きましょう」

もうこれ以上こいつらのために時間を割きたくないとばかりに、グレイがユウの捕縛を勧めてきた。それを聞いて、ユウたちは身構える。もうこいつらは自分たちに対して油断をするつもりはないだろう。そしてこいつらに立ち向かえる力を、自分たちは持っていない。たった一つの対抗手段であるウルトラマンの力をユウは現時点で使うことができない。

今度こそ…万事休すか…!エリックを筆頭に、全員に絶望の色が見え始めた。

(くそ、僕は何のために…!)

なんのためにウルトラマンとして戦ってきたんだ。ギンガから力を借りることで、これまでの困難をしのぎ、仲間を守ってくることができた。自分の可能性の低い夢に希望を抱くことができた。だが、その結果が…こんなところでの無様な敗北なのか。結局仲間を守れずに、このまま奴らの手に落ちるのが僕の最期だというのか!

「HAHAHAHA!今度こそYouたちの敗北だぜぃ!」

バキは勝ち誇った高笑いを浮かべ、他の闇のエージェントたちも同調する。

「させん!」

しかしそうはさせまいと、バキたちの拘束から解放されたタロウが、再びバキたちの前に立ちふさがる。今度はギースとマルグリット、そしてエリックの三人が突然現れた小さな人形に目を丸くしたが、ユウとリンドウ、注目の的となっているタロウ本人は無視した。

「タロウ、いい加減諦めなさいよ!見苦しいったらありゃしない!」

グレイがうっとおしげにしっしと、虫を追い払うように手を振る。

「タロウ、もういい!!僕たちはもはやどうすることも…」

もはや抵抗する術を失ったユウが、タロウにやめるように、そして逃げることを促したが、直後にタロウが叫び声を飛ばして遮った。

「それ以上言うな、ユウ!忘れたのか、お前はなんのためにゴッドイーターに、ウルトラマンになることを決めた!?」

「なんのためって…」

「この空を、星を…アラガミに奪われたこの世界に自由を取り戻したかったんじゃないのか!?亡くなった妹のような犠牲を生まないために戦うことを選んだんじゃないのか!?」

確かに…あの雲を超えたいという叶えたい夢がある。過去の悲劇を繰り返したくないという願望がある。だが、今の自分にはもう…。

「どうすることもできなくなっているじゃないか…これ以上…」

「やめろ、新入り。そのお人形さんの言うとおりだ」

この先は言わせないとばかりに、今度はリンドウが口を開いてユウの肩に手を置いた。

「俺は第1部隊の隊長…気楽な日常を取り戻すためにも、お前らを生きて連れて帰る。たとえ相手が、自分より百万倍強い奴であってもな」

「リンドウさん…」

「帰ったら、お前に無茶をしない戦い方を教えてやる。だから立て。お前だって…ウルトラマンなんだろ?」

「………」

こんな状況だというのに、リンドウはまだ諦めていなかった。その目の中に、未来を見通しているような強い決意を秘めた眼差しを、ユウは見た。

「あんたって…よくそんなあきらめの悪さを保てるよな」

そんなリンドウを見て、ギースがため息交じりに口を開き、ユウをじろっと睨んできた。

「神薙、あんた任務の前に俺にエラそうなこと言ったんだ。俺より先に倒れるとかゆるさねぇぞ」

「ギース…」

ユウ、そしてマルグリットが、神機を構え、リンドウの隣に立った彼に視線を向ける。

「下がってろよマリー。俺たちが守るからな」

「う、うん…」

言われたマルグリットは、ギースの後ろに下がる。

「…僕の事も忘れないでくれ」

ギースに続いて、エリックがリンドウとギースに並んで立ってきた。

「ユウ君、僕はウルトラマンとゴッドイーター…両方の君に救われた身だ。ここでその借りをまとめて返そうじゃないか!」

「エリック…」

「あんた、体震えてるだろ。無理すんなよ」

「ふ、ふふ…これは武者震いだよ…逃げたりなんかしたら、エリナに合わせる顔をなくしてしまう。それに…華麗なるゴッドイーターに…こ、このような窮地は付き物だからね」

ギースからの指摘通り、エリックは少し体が小刻みに震えていた。ナルシストな性格の奥に隠れた臆病な…しかし勇気を持った意志を、ユウはその姿に見た。

「いつまでもありもしない希望にすがる…虚しくて哀れで、虫唾が走るッ…!!」

うんざりした様子で、今度はイクスが言葉を発してきた。同調するように、マグニスとグレイも顔をしかめている。

「バキ、さっさと邪魔者共を殺して、ウルトラマンギンガの人間体を捕まえろ」

「言われなくたって、やってやるぜ」

バキは、ついにその黒くて巨大な手を、今度こそユウに向けて伸ばしてきた。

 

だが、その時……

 

ガシッと、バキの腕を背後から掴んでくる者がいた。

振り返るバキ。その直後だった。

「ふぐぁ!!!?」

突然、バキは何かに殴り飛ばされた。

「え…!?」

突然の出来事にユウたちは、何が起こったのか理解できなかった。

「な、貴様…!」

バキを殴り飛した何かを見て、マグニスがそいつに対してサーベルを振り下ろしてきたが、逆にそのサーベルは一瞬にして刀身を切り落とされてしまい、さらに続けてグレイ、そしてイクスが強い衝撃を受け吹っ飛ばされた。

「…嘘だろ…」

突然闇のエージェントたちに攻撃を仕掛けた者を見て、ユウたちは驚愕するしかなかった。

奴らに反抗した者、それは…

 

「…ジャック、兄さん…!?」

 

スサノオと一つとなってアラガミとなったはずの、ウルトラマンジャックだった。

 

 


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