ULTRAMAN GINGA with GOD EATER 作:???second
オチの書き方次第では、今回のエピソードも大規模な修正が加わるかもしれません。
いざ現場へ、アーサソールが動かしているトレーラー、グレイヴに乗って向かうリンドウ、ユウ、エリック。
「やあ、君が新たな新型君だね?僕はエリック・デア=フォーゲルヴァイデ。極東一の華麗なるゴッドイーターを目指す者だ。よろしく頼むよ」
荒野を走るトレーラーの中で、いつぞやのようにエリックは初めて会うアーサソールメンバーたちに自己紹介する。キラリ!と輝きの擬音が聞こえたような、やたら大袈裟に自分を魅せつつ自己紹介するエリックに、アーサソールの三人は戸惑った。
「あ、はい…よろしくお願いします」
弱冠引いたような声で返事したのはマルグリット。ヴェネはよろしくの意味を込めた軽いお辞儀だけでなにも言わない。ギースに至っては…
「なんだこのウザそうな奴…」
小声だが露骨だった。
「ギース!」
また勘に障る物言いをしたギースに、マルグリットが目を吊り上げた。
「は、はいはい!ごめんなさい、俺が悪うございました!」
「え、なぜ謝るんだい?」
どうやらエリックには運よく聞こえてなかったようだ。謝られたエリックは戸惑った。
『ずいぶんと正直な子だな。良くも悪くも』
ここに来るまでの間、ユウのポケットに隠れているタロウは、ギースたちのことをある程度ユウから聞き及んだが、これは人間関係で結構こじらせてくるタイプであることをすぐに察した。…確か、『あの人の息子』も昔は結構荒れていたが、ギースも彼と同じような年頃ということだろうか。
「はは、これじゃおかんと息子だな」
リンドウがギースとマルグリットの会話を聞いて笑う。ギースはリンドウの言い分をよろしく思えなかった。人の恥ずかしいところを笑う。からかわれるのは好きじゃない。だがマルグリットたちの手前、飲み込んだ。
しかし、いざ支部に寄ると正直不満だらけだ。行動は制限されるし、気に入らない奴と出くわしたりと。そんなギースの不満げな表情を見て察したユウはギースに言う。
「ギース、短い間かもしれないけど、僕たちは一緒に戦うことになるんだ。少しは仲良くしておきたい。変かな?こんな考え」
これはタロウから教えてもらった姿勢だが、仲良くなって損はないはず。
少し面を食らったような顔を浮かべたギースだが、なにも返さずにそっぽを向いた。
「そろそろ例の地点だ。全員神機の準備を」
運転席のヴェネがユウたちに言った。
外を見ると、多少開けたビル街の跡地に着いていた。当然アラガミが集まっている。
「なんだよ、禁忌種の相手じゃなきゃつまんないじゃん」
外に集まっているアラガミたちの中に接触禁忌種は居ないことにギースは不満を漏らした。
「ギース、今回の我々の任務は禁忌種の討伐じゃない。オペレーション・メテオライトに利用する誘導装置の設置と、その驚異となるアラガミの討伐だ」
「わかってるけど、張り合いがないじゃん」
長く接触禁忌種との戦いに慣れたギースには通常の歯応えない雑魚の相手なんてやってられない。
「いいじゃないか。全員生きて帰れる可能性がある方がずっといい」
ギースに対して、ユウはそのように言った。そりゃそうだけど、とギースはユウを睨みながらぼやくと、イクスの声が通信越しに聞こえてくる。
『せいぜいやられてくれるなよ、諸君。
こちらからも、極東のゴッドイーターたちの手並みを拝見させてもらう』
アーサソールがアラガミと戦う際は、グレイヴのカーゴに閉じこもってそこから連絡を入れてくる。ギースはずっと堪えてきたものの、常にあの男から見られているのが嫌だった。
「誰に向かって言ってるんだよ、イクス」
ギースはそのように言い返す。
「見世物にしちゃちと泥臭いと思いますぜ?」
リンドウも後に続くように言うと、運転席のヴェネがリンドウたちに声をかけてきた。
「今回の作戦の流れはわかるな?」
「誘導装置をマルグリットが設置する前に、僕たちは誘導装置を守るバリケードを4か所に設置。後は誘導装置を設置しいつでも起動できるように準備をさせる。
大丈夫です、レフィカル隊長」
「しっかり覚えていておじさんは安心だが、少しはボケも加えてくれた方が愛嬌があるぞ?」
「ボケかましてるのリンドウさんじゃないですか」
口を挟んできたリンドウに対して、何言ってんだかといった感じでユウは言った。
(こいつ、ヴェネには礼儀をわきまえてるくせに、なんでマリーには…!)
ギースは一方で、ユウがマルグリットを出会って間もない癖に気安く呼び捨てにしたことが気に入らなかった。
「ハッチを開ける。武運を祈る」
言い終えると同時に、グレイヴのハッチが開かれる。
そして、真っ先にギースが、それに続いてリンドウ、ユウ、エリックが飛び出して行った。
皆が出た後で、マルグリットは心配そうに外にいるゴッドイーターたちを見る。
「ギース…大丈夫かな」
「どうした、マリー」
ヴェネが、いまだギースの様子を見て憂い顔が晴れないままだったマルグリットを見る。
「ヴェネはどう思う?最近のギース。あの人たちにも言ったんだけど、なんだか怒りっぽいというか…」
「…そうだな。自分を抑えきれているとは思えなくなっている。元々感情を表に出しやすい奴ではあったが…。いや、それよりも任務だ。マリー、誘導装置の設置の準備に入ってくれ」
「う、うん…」
彼女の言葉に同意こそしたが、今はそれよりも任務を優先するべきだ。わからないことはあとで考えればいい。ヴェネは切り替えてマルグリットに誘導装置を任せた。
(感情を抑えきれない、か…)
そんな二人の会話を、カーゴの中にいるイクスは静かに聞いていた。
怪しげな微笑を浮かべながら…。
(…それでいいのだよ…)
誘導装置はマルグリットが設置してくれることになっているが、当然ながら設置している間の整備士はがら空きだ。それを守るべくリンドウたちが、設置の間彼女を守るのが、今回の仕事内容だ。
アラガミが集まっていない箇所の地点にグレイヴを置き、すぐに飛び出したリンドウたちがバリケードの支柱を運び込む。四ヶ所に支柱を突き刺し、荷台に乗せた誘導装置をマルグリットが中央へ運んで装置を起動、動作を確認する。後はゴッドイーターとマルグリットたちが装置から離れてグレイヴに戻り、バリケードを展開して脱出。
その流れにそって、極東ゴッドイーターとアーサソールの合同任務が開始された。
「俺が前に出る。エリックは後方から、新入りとお前さんは遊撃を頼む」
「了解!」
前衛はリンドウ、中衛には新型故に遠近両方に対処できるユウとギース、後方からエリックが掩護射撃で、迫るアラガミたちに応戦する。
アラガミたちはオウガテイルやコクーンメイデンなど、空を飛べない小型種で構成されていた。リンドウもそうだし、頭角を表しつつあったユウ、禁忌種との修羅場を潜ってきたギースの敵ではなかった。エリックも油断さえしなければ小型種に遅れなど取らなかった。
さらに言うと、ユウしか知らない頼もしい味方もいる。
『ユウ、2時の方角から三体来るぞ!』
「了解!」
ユウの服のポケットに隠れているタロウだ。彼はユウと違う視点を眺め、迫るアラガミたちの動きを見てくれていた。お陰でユウは予想以上に的確な対処が可能となった。
さらに今回、リッカが搭載してくれた新機能もあった。
三体同時に襲ってきたオウガテイルたち。ユウはすぐにチャージ捕食の構えをとり、神機を前に突出した。
「行け…っ!?」
すると、驚くことが起きた。
捕食形態で展開されるアラガミの顎が…三つに別れ、オウガテイルたちを纏めて食らいついてしまった。
「うあああ!なんだこれ!?」
ユウは思わず大声を出してしまう。まさか、プレデタースタイルのことを聞いた際の妄想が現実になるとは。
リンドウの方もまた、プレデターフォームを利用しつつ交戦中だった。任務に来る前に、リッカの手で設定を加えられたブラッドサージの刀身から捕食形態が展開されたが、彼のものもまた以前のものとはことなる形のものが出た。さらにそのアラガミの顎は、ジェット噴射のように空気を排出してリンドウを引っ張り、前方にいたコクーンメイデンを一口でかじり潰してしまった。
「おお!こいつはなかなか便利だな」
思わずリンドウも簡単の声を漏らす。捕食攻撃はどうもワンパターンになりがちという癖が付いていたが、これは中々便利に感じられた。
切り伏せ、撃ち抜く。その繰返し。
ギースも迫り来るオウガテイルたちを切り捨てる。遠くからコクーンメイデンがオラクルの光弾でギースを狙ってくる。しかしそれを見越したように、ギースは咄嗟に銃形態『神蝕銃タキツ』に切り替えて、撃ってきたオラクルの光弾もろとも、自分を狙ってきたコクーンメイデンを返り討ちにした。その隙を突こうとしてさらに数体同時にオウガテイルが口を開けて襲ってきたが、すぐにギースは宙へ飛び、真上からオウガテイルたちに神機の刀身を突き刺した。
「おらよっと!…っち」
しかし、ギースはアラガミたちを切り倒していくうちに、次第に嫌な気分になった。雑魚ばかりで、歯応えがない。しかも、他の三人も憎たらしくも、アラガミたちを次々に撃破し、次第に数が減っていく。退屈だ、禁忌種じゃないだけでこれほどの不満を抱えるとは自分でも驚くくらいだ。しかも約一名…
「ふはははは!どうだ、この華麗なる裁きの弾丸!」
「エリック、集中してよ!」
耳障りな台詞を吐く奴がいて苛つく。しかも何気にこいつも、遠くから雑魚アラガミたちを次々撃ち落としているからあまり文句を言えない。言ったら言ったでマリーが後でうるさい。ま、あのくらいの雑魚を何匹倒そうが、雑魚を倒しただけでいい気になっているような奴だ。放っておくことに決め込んだギースは、退屈な仕事をとっとと終わらせるために目の前のアラガミたちに、スサノオの素材で作られた刀身『神蝕剣タキリ』を振り続けた。
やがて、周辺の小型アラガミたちは一匹残らず退治された。
「作業終わりました!誘導装置、問題なく起動しました!」
マルグリットが設置した誘導装置の傍で立ち上がって皆に手を振った。彼女の作業も終わったようだ。
「終わりですね、何事もなくてよかった」
「まだだ、家に帰るまでがミッションだぞ?」
さっきはユウに、気を抜いた方が可愛いげあるみたいなことを言ったくせに、リンドウがひと息つくユウに言う。
「よく言いますよ。…それにしても、プレデタースタイルって中々便利ですね。前よりも捕食がやりやすかったです」
どうせわざとなのだろうとリンドウに思いつつ、ユウは自分の神機に付けられたロングブレードの刀身を眺める。
『ふむ…思えば、ここまで怪物的な見た目の攻撃で、平和を勝ち取ろうとする様は新鮮だな』
『やめてよタロウ。なんか僕が本物のアラガミみたいじゃないか』
『おぉ、すまん。侮辱したわけじゃないんだ』
『わかってるよ。ちょっと見てくれ的に気にしただけだから』
さっきのプレデタースタイルを発揮した捕食形態を扱うユウを見て、奇妙な新鮮さをタロウは覚えていたようだ。
リンドウも、自分の神機を担ぎながらユウの言葉に同意する。
「お前もそう思ったか。俺も同感だ。なにせ、こいつとは長い付き合いだが、最初の頃は突っ立って溜めないと捕食できなかったくらいだからな。その隙に他のアラガミに食われかけて…なんてこともあったもんだ」
プレデタースタイルも思いの外扱いやすかった。少し驚かされたが、捕食がより便利になっただけでなく、攻撃手段としても幅広くなったに違いない。
「けど、お前さんもまたやるもんだな。前にもスサノオをブッ飛ばした時もそう思ったが、本部の直轄部隊をやってるだけあるもんだ」
リンドウは、今度はギースのように視線を向ける。ユウも戦いの最中に、マルグリットから見ておくように頼まれたこともあって、ギースの様子を時折見た。あの腕前は、リンドウやソーマにも遅れをとる姿はあまり想像出来なかった。
だがギースはというとリンドウの声に対して無視を決め込もうとしていた。なんだか飄々としたこの男のキャラが、最初に会った時もそうだが気に入らなかった。
「おいおい、照れているのかい?そんなに緊張しなくても…」
そう思ったエリックがギースに声をかけるが、振り返ってきた彼から鋭い視線を向けられてきた。
「気安く話しかけんな。このナルシスト野郎。今の俺、退屈すぎて機嫌が悪りいんだよ」
「う…」
その殺気ともとれるような気迫に、エリックは圧される。それを見かねて、ユウがたしなめるように言った。
「ギース、またマルグリットに怒られるよ」
「うるせえ…!」
ユウの言うことも最もだ…とは思ったが、ギースは自分でも今の自分の中に蔓延するイライラを抑えるのがやっとだった。意味が分からない。どうしてだろうか。これ以上は無性に殴りたくなりそうだ。
(新型ってのは、最初は気難しいものなのかねぇ)
リンドウはやれやれと言った様子で肩をすくめた。ユウもアリサも、ギースと同じように最初は誰かに対しても反目を露わにしていたが、そういうジンクスでも出来上がっているのだろうか。…いや、新型の三人に限った話じゃないからそんなわけないか、とすぐに振り払う。
誘導装置の設置と稼働の確認を終えたマルグリットがユウたちのもとにやってくる。
「ギース、またみんなに迷惑をかけたりしてないよね?特に態度について」
「べ、べつにぃ…」
目を背けてきたギースを見て、やっぱり!とマルグリットは彼が嘘をついていることを確信した。
「あ!怪しい!またいらないこと言って怒らせたりしてたんでしょ!」
「し、してねえよ!」
「嘘!後ろめたいことがあるなら私の目を見てはっきり言えるでしょ!?」
「あ、あのマリー…近いって…」
「何?はっきり言ったらどうなの!?」
ぐいぐいと顔を近づけては叱り付けてくるマルグリットだが、ギースはそれよりも胸がドキドキしてしまっていた。ずっと異性として意識してきた少女がここまで自分に顔を近づけてくると、変に意識してしまう。
『マルグリットが心配するのもわかるけど…ギースってあそこまで怒りっぽいのか?意味もなくこんなに…』
ユウは、エリックに対しても、自分が怒ってますと言っているような、あそこまで露骨に悪い態度を取ったことが気になった。人には気の短い人間もいる。第3部隊のシュンとか、アリサも該当する。だが…彼らには彼らなりの苛立ちの理由もあったが…ギースにはそれらがまるで思い当たらない。我儘で短気な子供のように、無意味に当り散らしてばかりな印象がある。
『…ユウ、それについてなんだが…』
ふと、タロウがそれについて何か言おうとしたが、その瞬間リンドウが皆に向けて口を開いた。
「うし、これで全員だな。全員、アナグラに…」
全員無事に揃ったところで、リンドウがアナグラへの帰還を宣言しようとした時だった。通信機越しにヴェネの声が彼らの耳に轟いた。
『ギース、緊急事態だ!すぐ近くからさらに大型種の反応が出た!』
それを聞いて、ギースは激しい昂揚感を感じた。それもとてつもなく心地よい形の、だ。感じる、これほどの気配の主を何度も相手にしてきたから、すぐに分かった。こいつはさっきまでの雑魚などとは比べ物にならない奴だ。
「…おいおい、本当にシャレにならない奴がきたぜ」
リンドウが、スサノオの時と同じ…いや、もしかしたらそれ以上に強く感じる強大なオラクル反応を肌で感じ取った。
ズシン!と地鳴りが響く。なにか大きな存在が近づいている。
「なんだ、あれは…」
思わず声を漏らすエリック。
近くのビルの隙間から、その正体と思われる巨大な存在が姿を現した。それもかなり巨大…大型アラガミの中でもさらに大型のサイズを誇っていた。不気味かつ巨大な腕を地に着け、地鳴りを常におこし続けるほどの、その太陽のような彩を放っていた。
「ウロヴォロス…!?」
腕の形状、全身のシルエット、それらを見てリンドウが、唯一自分が知っているアラガミの中で一番適合していたアラガミの名前を呟いた。
しかし、ウロヴォルスとは似ているようでやはり異なる。すると、耳に着けている通信機越しに、イクスの声が聞こえてきた。
『いや、違う。あれは
「アマテラス」だ』
「アマテラス…?」
誰も聞いたことがない名前。リンドウでさえ初めて聞く名前だった。
『この極東の地の伝説に登場した太陽神の名前からとったものだ。見ての通りウロヴォロスに近いが、そいつが何らかの形であのような姿に進化したと予想される。当然、あれもスサノオと同じ接触禁忌種だ』
スサノオの恐ろしさを、この場では特にリンドウが理解していた。だとしたら、ここでただじっと待っているだけなのもまずい。
「リンドウさん、あそこ…女性が捕まっているんじゃ!?」
思わずユウが、ウロヴォロスの複眼の位置にある場所を指さす。複眼のあるはずの場所には、白い裸体の女の姿が不気味に這い出ていた。他にも太陽の光を再現したような飾りつけもついていて、さらには不気味にも白い乳房を思わせる袋をぶら下げて、よりおぞましさを体現している。
「本当だ!どうしよう…?」
「ぬぅ…女性を捕まえて人質を取っているというのか。卑怯な…」
アマテラスの顔の部分にある女性の姿を見て、マルグリットとエリックが焦りを覚える。
しかし、通信越しにイクスからの冷たい声が聞こえてきた。
『気にすることはない。あれはただの擬態だ。ザイゴートの胸にある女も模倣に過ぎないようにな』
「どうしてそんなことが言えるのですか!?」
エリックが声を上げるが、さっきと同じように、今度はヴェネが言い返す。
『よく見ろ。あのようなデカい女がいるのか?』
「あ…」
ユウもそれを聞いて、言われてみれば…と思う。アマテラスの顔の女は、見ただけでもかなり大きい。おそらく3m前後もある。肌も白く、見れば見るほど人間らしさを感じられない。
ユウは自分がとんだ勘違いをしたことに、少し恥ずかしさを覚える。
「今度こそ楽しめそうだなっと!さっきまで雑魚の相手で物足りなかったんだ!んじゃ、遠慮なく行ってくるぜ!誘導装置の方はよろしく!」
さっきまで雑魚のアラガミたちと相手をしていて相当辟易していたのが伺えるギースは、仲間たちの返答も聞かず、すぐに飛び出してしまった。
「おいおい待て!一人じゃ…」
「ちょっ…ギース!!」
『雨宮君、君はギース・クリムゾン以外を乗せて一度下がりたまえ。後はそれに任せる。その間君たちは誘導装置を守るのだ』
またギースを「それ」呼ばわりするイクスに、リンドウは目を細めた。しかしギースはかなり喜んでいる様子だ。
高ぶる気持ちを抑えられないギースは仲間たちの引き止める声を無視し、新発売のゲームに飛びつく子供のごとく、神機を担いでアマテラスの方へ駈け出してしまった。
「ギース、せめてバレットぐらいは…」
結局自分の引き止める声を聴かずに行ってしまったギースに、マルグリットは手に何かを握りながらもどかしさを漏らす。
「バレット?」
「これです」
ユウたちがマルグリットの言葉を聞いて注目すると、彼女は皆にそのバレットを見せる。
「ヴァジュラの攻撃を再現した『ライトニングマイン』というバレットなんです。空中で停止して雷の球を形成するから、たとえ効かなかったとしても、少なくとも目くらましや足止めになると思います」
「スタングレネードの効果も加わったバレットというわけか…よし、ならばそのバレット、僕が華麗に届けに」
紳士としての振る舞いを兼ねてからなのか、それをギースに届けようとエリックが名乗り出ようとした途端、ユウがそれを遮った。
「いや、僕が行きます」
だがそれをリンドウが引き留めてくる。
「ドクター・イクスも言っただろう。接触禁忌種は近づくだけでもお前らの偏食因子に影響を与える。下手したら近づいただけで頭がイカれちまうぞ」
『極東の新型君、彼の言うとおりだ。たとえ出向かなければならなくても、今はその時ではない。まだあれはやれる』
「……」
ユウもギースをあれ呼ばわりするイクスの言い方に、眉間にしわを寄せた。だが、確かにゴッドイーターとしての自分たちには接触禁忌種を倒せるだけの力はないだろう。
思うところはヴェネにもあるが、禁忌種の特性のことも考えるとイクスの言うことが最も理にかなっている。
『…ギースのことは、僕が通信機越しに情報を送って援護する。僕はウロヴォロスと交戦経験があるから役に立てるはずだ』
「ほえぇ…お前あのデカブツとやりあったことがあるのか」
関心を寄せたような声を漏らすリンドウ。彼でさえウロヴォロスは戦うには危険な相手だという認識があった。
しかし…本当に大丈夫なのか?ずっと一緒だったというマルグリットがここ最近のギースに対して不安を抱いているのだ。さっきまでのやたらと意味不明な喧嘩腰といい、彼の身に何かが起こるのかわかったものじゃなかった。
アマテラスと相対したギースは、改めてアマテラスの姿をおぞましく感じた。アラガミには裸体の女性の姿をかたどった個体もいるが、あいにくアラガミたちのそれには、怪物らしいグロテスクさも混ざっているためまったく興奮もしない。服の露出度の高いマルグリットの方がよっぽど…っと、そこまで考えたところでギースは、脳裏によぎった煩悩を振り払う。今はそんなことを考えている場合じゃない。
『まずはレーザーで撃ってみろ。いずれの弾丸も効かなかったら、そのあとは牽制のためだけに使え』
「わかった!」
通信越しに聞こえてきたヴェネの声に、ギースは頷いてすぐに神蝕銃タキツに切り替えると、さっそく指示通りバレットを撃ち込んでみた。まずは氷属性。
「おら!!」
氷属性のレーザーを選んだのは、なんとなく外見的にアマテラスは炎属性のような体色だったのが理由だ。アラガミの中には体の色で属性を表している奴もいる。しかし、氷のレーザーはアマテラスの体に当たったが、アマテラスは全く堪えた様子を見せない。氷はダメか。なら敢えて炎!バレットを切り替えて別の属性のレーザーを撃つが、やはり効かなかった。どうもバレットは奴にはあまり効果がないらしい。なら、得意の物理攻撃をメインに戦うべきだと考え、ギースはすぐに剣形態に切り替える。
同時に、アマテラスが近づいてきたギースに向けて、右腕を上げ、彼を踏み潰そうとする。しかしギースはあらかじめ、アマテラスの足の方に視線を向けていた。腕の筋肉の動きを見て、相手がどのように攻撃してくるかを前もって予測できるのだ。よって、今の一撃も難なくかわして見せた。空振りに終わった攻撃は、地に根を張るように地面を砕く。
交わした直後、ギースはすぐに刀身を振りかざしてアマテラスの足を切りつけた。腕から血しぶきをあげ、悲鳴を上げるアマテラス。
『ウロヴォルスの腕は切断攻撃が苦手だが、アマテラスも同じようだな』
「だったらそこを狙いまくってやる!」
再度腕に向けて切りかかるギース。だがアマテラスは自分の弱点を知らないわけではない。そうはさせまいと、腕をさらに激しく動かし、ギースを惑わせる。腕がだめなら…そう思ってギースは懐に飛び込むように、アマテラスの体の下へ飛び込む。そして、奴の体からぶら下がった擬似の乳房を刀身で切り裂き、血を浴びる前にアマテラスの体の下から抜け出す。だがその時だった。激しい激痛がギースを襲った。
「が…!」
体を貫かれた様な痛みだった。ギリッと歯ぎしりして顔を上げると、アマテラスの頭上に、一発の火球が出来上がっていた。やばいと思い、すぐに装甲『神蝕盾イチキシ』を展開する。ギースが盾の陰に身を隠した直後、アマテラスの火球が、ギースの周囲の地点を焼き尽くした。
「ギース!」
それを見て思わずマルグリットが叫ぶ。
「り、リンドウさん…これはさすがにまずいですよ!」
エリックもこれを見て慌てずにいられなかった。あんな攻撃、もし自分が直撃したらと思うとぞっとする。リンドウも今の攻撃を受けたギースを見て、すぐに飛び出したい気持ちに駆られた。
しかし、直後にヴェネからの通信が届く。
『待ってくれ。ギースはまだ無事だ』
「無事って…」
あんな攻撃を受けて耐え抜いたというのか?ユウも耳を疑う。
『ギースの神機に搭載されている盾は、たとえ装甲を展開していなくても、オラクルエネルギーが放出され、見えない盾となってギースを常に守っている』
『ユウ、見ろ彼の言うとおりギースはまだ無事だ』
タロウもポケットからわずかに顔を出してユウに言う。確認のために目を凝らしながら見ると、爆炎の中からギースの姿が見えた。本当に無事だったらしい。
しかし、ダメージは間違いなくあるはずだ。少なくとも死なずに済んだだけ。現に、向こうにいるギースは少しふらついているようにも見えた。
と、その時だった。
『こ、こちらヒバリ!緊急事態です!』
「どうした!?」
アナグラのヒバリからの通信が入り込んできた。
『新たなアラガミが出現!そちらに向かっています!警戒を!』
「なに…!?」
このタイミングで、また新たなアラガミが近づいているだと?全員が衝撃を受ける。
「ヒバリ、反応からどの種類が特定できるか!?」
『…だめです!この反応は従来のアラガミとは全く異なる反応です!新種か、もしかしたら例の…』
例の…というヒバリの言葉に、リンドウたちは出くわしたくなかった敵の正体を想像してしまった。
そう…これまで自分たちゴッドイーターは愚か、ウルトラマンでさえ苦しめた以上進化型の超巨大アラガミを。
「マジかよ…」
ここしばらくはまさに厄日続きだな、とリンドウは思う。軽めの言い方を心の中でつぶやくが、それでも現状に対する危機感は誤魔化せない。このままでは誘導装置も破壊され、ギースは愚か自分たちも無事では済まない。
『仕方ない、グレイヴに乗れ!全員この場から離れるぞ!』
ヒバリからの通信をグレイヴ内から聞いてそのように言ったヴェネにマルグリットが反論するような口調で口を開いた。
「ヴェネ、ギースは…!」
『わかっている。ギースを見捨てはしない!グレイヴでアマテラスに近づき、スタングレネードを使って視界を奪う!その隙にギースを回収する!』
「おいおい、その車はお前さんたちの大事な家も同じだろ?壊されたらまずいんじゃないのか?」
ヴェネの提案に対し、リンドウはそのように言った。おそらく接触禁忌種の放つ偏食場から身を守るために、グレイヴを利用しようとしたのだろう。だがグレイヴはリンドウの言うとおり、アーサソールの重要な移動拠点。替えもなく、壊されてはあまりにも今後のアーサソールの動きに支障をきたす。
…今しかない!ユウはマルグリットの手からライトニングマインを取り上げ、リンドウたちに向けて言い放つ。
「だったら僕が行きます!みなさんは一度離脱の準備をしてください!これもついでに届けてくる!」
それからは返答も聞かなかった。ユウはバレットを仕舞い込み、神機を担いで走り出した。
「新入り!!」
叫ぶリンドウだが、結局ユウの耳には聞きいれられなかった。
「ったく…」
また無茶を…リンドウはユウに対して呆れを通り越しかけた。
しかし、ふとリンドウの頭にある予感が蘇る。先日の、アリサとの距離がようやく近づけることとなった任務から帰ろうとしたときに抱いた疑問だ。
当時相手にしたアラガミの攻撃でウルトラマンが受けた傷と同じ箇所、ユウの服に傷が入っていた。それにこれまでのミッションでユウが参加したもののなかで、ウルトラマンが出現している間、いつもユウは姿を消している。
(あいつ、まさかやはり…)
もしかしたら…という予想が彼の中に確立される。いや…どちらにせよここでユウを見捨てるわけにいかない。
「エリック、お前はアーサソールと一緒に一度この場を離脱しろ!それまで連中をお前が守ってやれ!」
エリックに対してアーサソールの守りを任せるが、エリックはユウに対する恩義もあってすぐに受け入れなかった。
「逃げるなんて馬鹿な!華麗なゴッドイーターである僕が、仲間を見捨てるなど…」
「今は泥臭くても一人でも多く生き延びることを考えろ!これは命令だ!」
こんな時に華麗さを極めようとするエリックに向け、怒りを覚えたような怒鳴り声を散らしたリンドウ。そのプレッシャーにエリックは逆らえず、怖気ついたようにも思える後退りを見せる。それから彼は素直にマルグリットをグレイヴに連れて行き、この場を後にした。
「待ってろよ、無茶したがり」
グレイヴが一度この場を離脱するのを確認し、リンドウはユウに対してそのように呟きながら神機を担いでいく。
ギースはかなりダメージを負っていた。足のブーツが解けるように焼け落ち、骨まで溶かされた様な痛みを与える。
「んの野郎が…!!」
彼は立ち上がってアマテラスを睨みあげる。この痛みは何倍にでも返さなければならないと言い本能が働いた。
しかしそんな彼のアマテラスへの報復に水を差すように、巨大な影が地中から飛び出してきた。
「うお!?」
大きな地響きに、足を取られかけるギース。まるで、ギースとアマテラスの戦いに、眠りを妨げられたような…狂った叫び声をあげていた。それを見上げるギースは息を詰まらせた。
「やばいかも…」
さすがのギースも、この状況に危機感を抱かずにいられない。なにせ新たに現れた巨大な影の正体は、アマテラスよりも大きかった。
見た目は、ヴァジュラの容姿…いや、その元となった…絶滅した動物の一種である『虎』に近い。しかし自分の知るヴァジュラとは大きく異なるものが多かった。確かにヴァジュラだが、全身が金の鬣をなびかせ、通常のヴァジュラ以上に鋭い牙をむき出している。ヴァジュラにはなかった二つの槍のようにするどい角も生やしている。アラガミはなぜか神々の姿を模倣していくものだが、こいつはまさに伝説の生き物らしい姿をしていた。
こいつが、新たにヒバリの通信にあった、新たなアラガミだった。
そいつは……『地殻地底神獣ヴァジュリス』は地上を見下ろすと、ギースとアマテラスに向けて、口からエネルギー弾を放ちだした。その攻撃は、アマテラスの体に直撃し、爆炎の中に包み込んでしまった。
ギースは驚愕する。これまで自分は接触禁忌種を相手に、何度も勝利を手にしてきた。しかしそれはギースの天才的な実力とたゆまぬ努力もあるが、ヴェネやマルグリットらの頼もしいサポートもあってこそだし、何度もダメージを負っては傷だらけになった。しかしあいつは、たった一撃の攻撃でアマテラスに手痛すぎるダメージを与えてしまった。
ギースは、戦慄した。これほど目の前の敵を恐ろしく感じたのは、ゴッドイーターになり立てた頃以来…久方ぶりだった。
これだけデカ過ぎると、神機でいくら切りつけても効果がないだろう。砂粒を石ころのように投げるのと変わらないかもしれない。だが…
(ここで俺が退いたら、マリーとヴェネが…)
イクスや他の連中はどうでもいいが、あの二人だけは絶対に守らなければならない。ゴッドイーターになったのは、子供の頃の貧困生活から抜け出したかっただけじゃない。ヴェネとマリー、何にも代えられないあの二人を守りたいからだ。
相手がどんな奴だろうと、あの二人のためにも退けない…絶対に!
「デカブツが…かかってきやがれ!!マリーたちには、指一本触れさせねぇぞ!」
「ゲエエェェ!!!」
お前なんか怖くないぞと言わんばかりに、虚勢と使命感を混ぜた叫びを浴びせる。ヴァジュリスは、そんなギースを目障りに見たのか、アマテラスに食らわせたものと同じエネルギー弾を口から吐き出し、ギースを狙った。
ちょうどそこへユウがようやく駆けつける。
「ギース!」
ギースを、狙う滅びのエネルギー。それから彼を守るべく、ユウは直ぐ様ギンガスパークを取り出し、ギンガのスパークドールズをリードする。
【ウルトライブ!ウルトラマンギンガ!】
「ギンガーーーーー!!!」
光に包まれたユウの体は巨大化し、突き出された拳はヴァジュリスの口元を殴り飛ばした。
ヴァジュリスが思い切り殴り飛ばされた衝撃で、ギースもわずかに宙に浮き、尻餅をつく。
「…ッいてて…な、なんだ…?」
そして、地面に打ち付けた尻をさすりながら、彼は頭上を見上げる。
そこに立っていたのは、赤く刺々しい模様といくつもの水晶をその身に刻んだ、光の巨人だった。
「!」
ヴァジュリスにも匹敵するくらいデカい。アマテラスよりも数メートルほどデカい。そして…雄々しい姿に、ギースは呆気にとられた。いや、こいつは確か、昨日ヴェネが話していた…
「…ウルトラマン…」
「シュワ!!」
再びその姿を現したギンガは、立ち上がって怒り吠えるヴァジュリスに向けて身構えた。