ULTRAMAN GINGA with GOD EATER   作:???second

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暁で投稿中の『ウルトラマンゼロ×ゼロの使い魔』の小説でかなり時間を取ったために更新が遅れました。申し訳ありません!

気がついたらゴッドイーターオンラインの情報とか、GERとGE2RBのアップデートとか、地味にいろいろあったりしました…

今回も急ごしらえ間はあると思いますが、最新話をお届けします。小説版とアニメの一場面を元にした話となっています。あまり内容は進んでません…ご了承ください。
おかしくない?と思えることとか、誤字とか、アドバイスとかあればお願いします。
ただ、運営の規制もあると思いますので、できればユーザーメッセージでお伝えください。

次回も書きますが、更新日程は未定です。また、後の展開にあわせて今回のエピソードも改変するかもしれませんので、どうかご理解ください…

追記;早速お気に入りが2件以上ダウン…自分の未熟さが招いたとはいえ…凹みました…orz


オペレーション・メテオライト

「よぅ、タツミ。久しぶりだな!」

ユウたちが護送した輸送機と、リンドウたち地上班が護衛した本部からの援軍は、無事アナグラへ到着した。

アナグラのエントランスに来ると、ユウたち三人と同行していた二人のうち一人の、ハルオミがヒバリがいつも構えているカウンターの前にいる第二部隊隊長のタツミを見ると、手を上げて彼を呼んだ。

「なんだよ…今日こそヒバリちゃんを食事に誘おうって時に…って!」

名前を呼ばれて、タツミはヒバリとの二人の時間(ヒバリからすれば業務妨害だが)を邪魔されて不機嫌になる。しかしヒバリの前で他人への悪態を露骨に表すのも気が引けるので、自分を呼んだ男の声の方を向く。その男の顔を見て、タツミはさきの不機嫌モードから一転していつもの満面の笑みを見せた。

「ハル!ハルじゃないか!なんだ、極東に戻ってきてたのか!?」

「うちの支部長が、こちらの支部長の頼みを断れないとか言ってな、こっちに俺たちを寄越してきたんだよ」

「タツミさんと知り合いなんですか?」

どう見てもタツミと顔見知りの対話に、ユウが尋ねる。

「おう、極東を離れるまではこいつとはご近所だったからな。んで、そちらのお嬢さんは?」

ハルオミはヒバリの方を見ながらタツミに尋ねた。その視線にタツミは危機感を覚えたのか、ヒバリの前に立ってハルオミの視線からヒバリを隠した。

「ハル、まさかヒバリちゃんを次の標的に選んだんじゃないだろうな」

「おいおい、男の嫉妬は醜いぜ」

「あの、タツミさん…そこに立ってると邪魔になるんですが…」

後ろからヒバリの言い辛そうな声が聞こえてきた。

「う、あぁごめんヒバリちゃん。今退くから」

意中の女の子からの指摘に慌ててタツミはすぐに退いた。なんだかカッコ悪い印象を与える。

「ハッハッ!その様子じゃお前、まだまだ彼女作れそうにないなぁ」

ハルオミの挑発的な台詞にタツミは少しカチンと来た。

「んだよ…じゃあお前はどうなんだよ」

「俺には最高の嫁さんができたからな。な、ケイト?」

「何!?」

ハルオミに妻がいると聞いてタツミはギョッする。よく見ると、ハルオミのすぐ傍に眼鏡の知的美人がいるではないか。

「先を越された…」

タツミはそれを見て項垂れる。

「そうがっかりしなさんな。俺はお前より2年人生の先輩してんだ。よくあることだろ?」

「そりゃそうだけどよ。無類の美女好きのハルに言われると余計に悔しいっての…」

さらりと嫌みを言うタツミだが、勝ち組のハルオミにはただの無色の装飾弾だ。

「ふふ、気持ちは分かるけど、あまりそんな言い方はしないでほしいな」

今度はハルオミの横にいたケイトがタツミに声をかけた。

「え、あ…すいません!気分悪くしたかった訳じゃないのに」

旦那を貶されて怒らせてしまったのかと思い、タツミは慌ててケイトに謝罪する。

「いいのよ、この人があっちこっちでフラフラしてるのは知ってるわ」

「は、はあ…そうなんすか」

旦那の不純行為を知ってるのかよ。この人ハルのせいで苦労しそうだな、とタツミは思った。

「けど極東を出る前、金髪美女をゲットしてくるとか言ってなかったか、ハル」

「バーカ。狭い尺で未来の嫁を限定したんじゃいい女に出会えないぞ。彼女いない歴=年齢のタツミ君」

「やかましいわ!」

からかってきたハルオミに、完全に敗北ムードに陥ったタツミはムキになって喚いた。

「仲いいんですね」

ユウは二人を見て笑うと、ケイトもほほえましげに笑った。

「タツミ君のことはハルからよく聞いてたわ。子供の頃ずっと一緒で、よくバカやってたんだって」

「ああ、よくやったもんさ。確かガキの頃、こいつが夜に一人…」

「待て待て!お前今、言ってはならない何かを言おうとしたんじゃないだろうな」

何かタツミに関する出来事を暴露しようとしたハルオミだが、すぐにタツミが口を挟んできた。酷くあわてたそのリアクションを、ハルオミはケタケタ笑いながら誤魔化した。

「さあてな~。んじゃケイト、二人でアナグラデートと行こうぜ~」

「私の前で見かけた女の人たちを口説いたりしないでよ?」

タツミのことで何かありげなことを言いながらも結局最後まで言わず、愛する嫁と二人でどこかへと行ってしまうハルオミであった。

「あの野郎…散々が人のことをいじっていきやがった」

タツミは、ケイトはともかく去り行くハルオミの背を恨めしげに睨んだ。

「子供の頃…タツミさん、何かあったんですか?」

「すまん、その話については触れないで、お願い…」

さっきの言いそびれたままのハルオミの含みある言い方が気になったのか、ヒバリはタツミに触れさせようとしなかった。居辛くなったこともあってか、そのまま彼はエントランスから去っていった。

「…なんか凄く哀愁を感じる…」

「え、ええ…」

背中から暗いオーラが出ているのを見て、ユウはおろか、タツミからよく口説かれるヒバリも彼をどこか気の毒に思った。

すると、彼らと入れ替わる形で、コウタがユウたちの前にやってきた。

「よ、ユウ!今日もバッチリ任務完了できてよかったな!」

「あ…そ、そうかな?」

今日の任務のことに触れられ、無事に生き延びることができたことを喜ぶコウタだが、ユウはあのミッションのことについて素直に喜べないところがあった。

「どしたの?なんかあった?」

「いや…」

ユウの脳裏に、先刻のミッションの最後のあたりの時間の記憶が過ぎる。

ギンガに変身し、サリエルが進化したザラキエルと交戦した。光線技で止めを刺し、それで戦いが終わるはずだった。しかし、自分たちの全力の光線をぶつけてもなお、ザラキエルは倒せなかった。そしてその直後に現れた、とんでもない破壊光線を放ってザラキエルを消滅させた…あの『超巨大なウロヴォロス』。

もし、あいつにまで狙われていたりしていたら、皆あいつに…。

「あ、それより地上班の皆は?」

皆のことを思い出し、ユウは今回の任務で別行動を取っていたリンドウたちのことを尋ねた。

「リンドウさんたちなら、ユウさんたちが戻られる少し前に無事帰還しましたよ」

今答えてくれたのはヒバリだった。

「そっか」

「ただ、リンドウさんたちもかなり不味い状況だったんです……」

無事だったことを聞いて安心するユウとコウタだが、ヒバリは落ち込んだような表情を浮かべる。

「何かあったの?」

「実は……」

尋ねてきたコウタに応えヒバリは地上班に起きた状況を説明した。

彼らも地上ルートで派遣された、次の大規模ミッションに必要な人材を迎えるために、近隣のアラガミを掃討することになった地上班。だが、その際に……リンドウほどの古株ゴッドイーターでさえ相手にすることを避けるべきアラガミ……スサノオが現れ、危うくピンチに陥ったらしい。しかしそこへ、迎えの対象である特殊部隊のゴッドイーターが、そのスサノオをたった一人で倒したのだという。

「しかも、その人は新型のゴッドイーターだったそうです。アリサさんは特に悔しがってて……」

「新型がまた!?」

ユウとアリサに続き、また新型ゴッドイーター。

なるほど。話を聞いて、それもそうだろう、とユウは思う。アリサは新型としてのプライドが高い。だがスサノオに立ち向かうことも許されず、黙って見ているしかできなかったことを不甲斐なく感じたのだ。

「その新型の人たちはどこに?」

「支部長が直接お話があるそうで、今は支部長室に向かわれましたよ」

「そっか、ありがとう」

ユウはヒバリに礼を言い、コウタと共にエントランスの階段を上る。

「スサノオ……」

リンドウでさえ相手にすることを避けるべきアラガミ。そんなヤバイ敵と遭遇して無事だった。同じようなことが地上でも起こったのか。

「ユウはスサノオってアラガミのこと知ってた?」

エレベーターに乗り、新人居住区画に向かう中、コウタが聞いてくる。

「いや、僕もまだスサノオのことは聞いてないよ」

「そっか……リンドウさんでも戦うのを避けないといけないアラガミがいるなんてな。できれば会いたくないな……けど、万が一の時はウルトラマンが来てくれるよな?」

「随分たるんだことをぼやくのだな、コウタ」

すると、エレベーターの扉が開かれると同時に、アラガミか可愛く感じられそうな威圧感が二人に浴びせられる。

アナグラ勤務のゴッドイーターたちの一種の恐怖の対象、ツバキ教官だ。

「つ、ツバキさん……」

「コウタ、本来人を守るのは我々の役目だ。にもかかわらずそのようなたるんだ言動をほざくようでは自覚が足らんぞ」

「は、はい……」

「ユウ、お前もだ。仲間としてこいつの気合いを入れ直すようにしろ。

ウルトラマンが必ず現れるとは限らんからな」

「り、了解……」

二人は有無を言わせないツバキのプレッシャーに頷くしかなかった。

エレベーターから降りて新人居住区画に来た二人は、ツバキを乗せたエレベーターを振り替える。

「怖え~……リンドウさんが『姉上はアラガミよりおっかない』って言ってた気持ちがわかるよな……」

「けど、確かなことは言っていたよ」

「え?」

「ウルトラマンが来るとは限らないってこと。それに今回、ウルトラマンは止めを刺しきれなかった。もしかしたら負けて、あのサリエル変異種の矛先が僕たちに向いていたのかも……」

「あ……」

自分がとんでもない楽観視していたことにコウタは気づいた。今回のギンガとザラキエルの戦闘はコウタも見ていた。にも関わらす希望的観測なことを聞いたら、ツバキが機嫌を損ねても仕方ない。それにサクヤもツバキと同じことを言ってたじゃないか。

ウルトラマンは無敵ではない。それを知らされた戦いだった。

ふと、ユウはあることを思い出す。

(そう言えば、戻ってからタロウの様子が少しおかしかったな)

今、タロウはいつも通り胸ポケットの中に隠れている。だがユウからの声かけになかなか反応を示さなくなっていた。一体どうしたのだろうか。部屋に一度戻ってタロウと改めて話をすることにした。

 

 

 

「今日は本部から遠いところ、ご足労と我がフェンリル極東支部のゴッドイーターを救援いただき、感謝する。ドクター・イクス、そして『アーサソール』の諸君」

「いや、シックザール支部長の寛大なお出迎えに、我々も感謝の気持ちで言葉がありません」

支部長室にて、ヨハネスはリンドウたち第1部隊地上班が出迎えた、特殊部隊『アーサソール』の構成員たちに挨拶をしていた。

リンドウもまたその場に居合わせていた。

『イクス』と呼ばれた、メンバーの中で一番年齢と見られる高いメガネの男がヨハネスに会釈する。どことなく、その紳士的な姿は不穏な雰囲気がある。

「…よく言うぜ、イクスの奴」

「こら、ギース…!極東の支部長の前だよ…!それにドクター・イクスにまで…」

「けどよ…」

そんなイクスを見て、赤髪をフェンリルマークのついたバンダナで束ねている少年が目を細めて小声でぼやくと、それを聞いた長い金髪の露出度の高い服を着た少女が小声で注意を入れる。

「二人とも、私語は慎め。ここは極東の支部長室なんだぞ」

「ヴェネ…」

二人に対して静かに喝を入れてきたのは、イクスの次に大人びた雰囲気を漂わせる青年だった。彼はヨハネスに対して頭を下げて謝罪する。

「申し訳ありません、シックザール支部長。ギースは落ち着きのない奴でして、我々も少々手を焼いているのです」

「ヴェネ、子ども扱いはやめろよ!」

「そう思うなら静かに気をつけしろ。二度も同じことを言わせるな、ギース」

「ははは。なに、気にしないでくれ。これくらいで怒るほど私は器の小さい人間でいたつもりはないからね」

そんなアーサソールの三人を見て、ヨハネスは快く笑う。リンドウはそんな支部長の一件屈託のない笑いを、胡散臭げに見つめる。

だが胡散臭いのは支部長だけじゃない。このアーサソールに所属している、あのイクスという男、彼もまたヨハネスとは違うきな臭さを漂わせている。

「さて、早速だが君たちにこの極東支部へ来てもらったのは他でもない。

我々極東支部にて行われる予定の、アナグラ内および君たち他支部から集めてきたゴッドイーターたちによる合同大規模作戦『オペレーション・メテオライト』に参加してもらうためだ。

このミッション成功の暁には、フェンリルが進めているエイジス計画に大きな前進が見込まれる。

だが、この作戦では接触禁忌種アラガミも現れる可能性が高い。なんとしても成功させるために…接触禁忌種を討伐し続けてきた君たちの力をお借りしたい」

「我々に可能なことがあれば、どのような命令も成功させるつもりです。お任せください」

「頼もしいな、ヴェネ君。さすがアーサソールの隊長だ。引退してしまっているのが実に惜しい」

「お恥ずかしい限りです」

ヴェネは首を横に降りながら言う。居合わせていたリンドウは、まだ彼が年齢的にゴッドイーターを続けられるはずであることを知っていた。ここに来る前に、彼らの話を多少聞くことができた。

アーサソールにてただ一人の戦闘員ギース・クリムゾン、整備士マルグリット・クラヴェリ、リーダーのヴェネ・レフィカルに加え、本部からアーサソールに送られる資材を提供し神機のオーバーホールも行う最年長のイクス。イクスを除く三人は幼馴染で幼い頃から一緒だったそうだ。ただ、ギースは口が悪くリンドウに対しても不遜な態度だった。それをマルグリットが年下なのにお姉さんっぽくしかりつけ、最後はヴェネからも黙らされるのが日常らしい。リンドウも飄々としたキャラがギースから一方的に嫌われてしまったという。そんなギースだが、確かな目的を持ってゴッドイーターをしている。

それは、新型神機の初期型を使っていた『ヴェネの神機を見つけること』。かつてヴェネも新型ゴッドイーターだったが、スサノオに神機を食われてやむを得ず引退したのだ。まだ戦えるはずなのに前線で戦うことが許されない。ゴッドイーターを引退した者にはよくある話だ。

「さて、作戦に出るからには、ひとつ気になることがある」

ヨハネスはアーサソールのメンバーたちを見渡しながら、彼らに向けて話を続けた。

「スサノオと……いや、接触禁忌種アラガミに遭遇したゴッドイーターは、自身の偏食因子や精神状態が不安定になるケースがある。その状態でアナグラ内を歩かれると、他のゴッドイーターにどんな影響が出るか予測がつかない。よって、この後サカキ博士からの検診を受けてもらい、君たちの身体に以上が見当たらないか調べさせてもらいたい」

ヨハネスからそのように言われるが、イクスは首を横に振る。

「私はアーサソールの監理官だ。本部の許可なくしてそのようなことは許可しかねる」

「アナグラの安全を考えたら妥当だとは思うが、それでも拒否するというのかな?」

「そのようにご理解いただきたい。本部の許可がない限り、『これ』の身体データは提供できない」

イクスの、ギースに使った『これ』という言い方に、リンドウは眉をひそめた。気に入らない物言いだ。イクスはあったときからまるで人を小馬鹿にしているような顔を浮かべているが、まるでギースを道具のようにしか見ていないとしか思えなかった。

「ならば仕方ない。ギース・クリムゾンとヴェネ・レフィカルの二名は、必要時以外はなるべく部屋にこもっていてもらう。ドクター・イクスとマルグリット・クラヴェリはその限りではない。もし外出を求めるなら、リンドウ君が常に同行するものとする」

「待てよ!俺はともかく、ヴェネまでなんで!?」

「彼もかつてはゴッドイーターだった」

納得できないと声を上げるギースに、ヨハネスは冷たく言い返す。たとえ引退して体内のオラクル細胞が休眠状態となっても、何かしらの要因でそれが悪い意味で呼び起こされたら何が起こるかもわからない。

「よろしいのか?ゴッドイーターであるミスタ・アマミヤを同行させたら、彼の偏食因子と精神状態が不安定になるのでは?」

イクスがヨハネスに、そのように問い返してくる。

「こちらでそれらを緩和させるアンプルを用意させる。さすがにいちいちこの支部内のゴッドイーター全員に配布できるほどではないが、二人分程度なら問題ない」

「そのアンプルの安全性は?」

なにか妙なものをギースとヴェネに飲ませるつもりなのではとイクスが怪しむと、それを察してヨハネスは説明する。

「心配無用だ、我々にとっても接触禁忌種は驚異だ。いずれ君たち同様この支部のゴッドイーターが相対する機会はあるに違いない。それに備えて本部が寄越したのだ。」

ヨハネスは机の引き出しからアンプルを収納したプラスチックケースを机の、ヴェネの前に置く。

「ギース君にヴェネ君、不満が募るかもしれないが、我慢してほしい」

「ち…!」

ギースはそれを聞いて、露骨に舌打ちをしてきた。支部に着くと、いつもこのように扱われる。これなら外に出た方がマシだと彼は思っていた。全く、向こうから『オペレーション・なんとか』のために呼びつけておいて、なんとぞんざいな扱いだ。

「舌打ちしたらだめだよ、ギース。これまでの支部では外に出されることもままならなかったんだよ。見張りつきでも外に出歩けないわけじゃないんだから」

場をわきまえずに不満を洩らしてばかりのギースに、マルグリットが再び注意を入れる。17歳のギースは、1歳年下のマリーからこのようによく年下扱いを受ける。そこがどことなく不満だった。…マルグリットは気付いていないが、相手が意中の相手だから、なおさらそう思ってしまう。

「マリーの言うとおりだ、ギース。

雨宮隊長。こんな我々ですが、ここにしばらく滞在する間、よろしく頼みます」

「そう堅くなるなよ。俺にできることがあれば、質問なり何なり聞いてくれ」

会釈するヴェネに、リンドウはいつもどおりの態度で接した。

 

 

 

その頃、アリサは医務室の方にいた。その部屋には、大車が彼女を待っていた。この日も定期的に受けているメンタルケアに来たのだ。

早速大車の前にある回転椅子に座り、大車はアリサに尋ねる。

「調子はどうかな?」

「問題ありません。大車先生のお世話もあって、至って健康です」

アリサからそう聞いて大車は、それはよかった、と笑みを浮かべる。

「そう言えばアリサ、ルミコさんから話を聞いたよ。同じ新型の彼とちょっと仲良くなれたそうじゃないか」

「なっ、仲良くなんてありません!あんな、あんな……」

同じ新型と仲が良いと聞いて、アリサは頬を染めて大車に反発する。

「そうなのかい?今回よりひとつ前の任務で、彼に助けられたと聞いたんだが……」

「それは!まあ……そうですけど…けど仲がいいとかそういうんじゃなくて…」

確かにユウのおかげであの時は助けられた。でもだからって、なぜ私があの人と仲良くしなければならない訳じゃない。今でもそうだ、自分があの人よりも優れた神機使いでありたいと思っている。ただ、少しは任務を効率よく遂行するために、ちょっとは彼らの話に耳を傾けようと思っただけだ。助けられた恩は確かにあるが………胸を触られたことだって許したわけではないのだ。ユウからすれば立派な不可抗力なのだが。

「と、とにかく!大車先生が考えているようなことじゃないですからね!」

「ははは。済まない。そのときの任務を終わらせてから、少し表情がやわらかくなったように見えたからね。何かいいことがあったのだと見たんだが…」

「特にこれといって何もありません。いつもどおりですから!」

「わかったわかった。悪かったからそんなに気を損ねないでくれ」

両掌を見せながら謝ってきた大車に、アリサは誰のせいですか、とぼやいた。

アナグラには医務室が二つある。地上の街を見渡せる窓付きの場所と、地下にある窓のない場所。地上の方は大車が、地下はルミコが勤務している。今アリサたちがいるのは、窓から街を眺められる方の医務室だった。そこから見える景色をアリサは一望する。

ここにいる多くの人達は、ゴッドイーターとしての素質があるか、またはその人たちの親族のどちらかしか住んでいない。アラガミ出現によって何億もの人々が亡くなった今の世界でもかなり限られた人達だ。その人達の中でも、さらに限定されているのが…銃と剣の両方を使える新型ゴッドイーター。自分は選ばれた人間だと思っている。だが、ユウに続いてさらに……

もう一人、自分たちをスサノオから救ったあのもう一人の新型ゴッドイーターの顔が浮かび上がった。

「どうかしたのかな?」

「…先生。私は選ばれた子だとおっしゃっていました。けど、選ばれたとしても…私より上の人間がいる。

…今回の任務は、情けないことに何もできませんでした…私と神薙さん以外にも、新型が現れるなんて…」

ひざの上で丸めている手をぎゅっと強く握りながら、アリサは悔しげに言った。大車はくるっと椅子に座ったまま彼女の顔を覗き込む。

「おそらく君が出会ったのは本部の特殊部隊だろうな。仕方ないさ。本部にとって新型の発掘は優先されていることだからね。

でも、大丈夫だよ、アリサ。君はアラガミを倒すためにゴッドイーターとなった…人類の希望なんだ。後輩たちに簡単に追い越されるほどヤワな訓練はしていないだろう?それに私だって力になっているはずだ。君が頑張れるように、ね」

「はい、もちろんです…私は、人類の…希望…ですから…」

大車から背中を押すような言葉を贈られ、アリサの表情が若干明るくなっていた。

 

…だが、どうしてだろうか。

 

彼女の瞳には…『光』が消えていた。ユウと少し歩み寄れたときに見せた、わずかな光がそのときだけは消えてなくなっていた。

 

「そう、いずれ…君はウルトラマンさえも超える強い存在になるんだよ」

「ウルトラマンを、超える…」

突然、大車が非現実的で飛躍した言葉をアリサに向ける。それをアリサは、何の疑問も抱かずに鵜呑みにし始めていた。

「そう。それができたら、君は君のパパとママを食べた、あの憎いアラガミを殺す無敵のゴッドイーターとなるんだ」

「はい…必ず、なってみせます…パパとママの仇をとるために…」

「うんうん、いいぞアリサ。そうだ…君にこれをあげよう…」

大車は机の引き出しから、掌に載る程度の直方体のケースを取り出す。黒く塗りつぶされていて、中身は見えなかった。

「これ、は…?」

「パパとママの仇を討つための…お守りだよ。時が来たら、これが自動で開く仕掛けとなっている。常に任務の際に持ち歩くようにしなさい」

「はい、わかりました」

すると、アリサの持っている通信端末に着信音が鳴り出す。

すみません、と一言断りを入れてから、アリサは端末に贈られたメールを受け取る。

 

 

雨宮ツバキ

件名:オペレーション・メテオライト説明会

 

明日の10:00、作戦室にて、予定していた大規模ミッション『オペレーション・メテオライト』についての説明会を行う。概要書は、同日に配布する。

アナグラ内のゴッドイーター全員、遅刻することなく出席せよ。守れなかった場合は懲罰を与える。

以上。

 

 

 

「オペレーション、メテオライト…」

自分の部屋にて、ユウもそのメールを受け取っていた。メテオライト…隕石。かなり大仰な名前だが、これが予定されていた例のミッションの名前なのか。

「どんな任務になるのか、まだわからないけど、不思議と身が引き締まるね。タロウ」

ユウは同室しているタロウに向けてそのように言う。だが、タロウは返事を返してこなかった。振り向くと、タロウはソファの前にある机の上で、ユウとは反対方向を向いて突っ立っている。

「タロウ?」

再び呼びかけても返事はない。ならばと、ユウはタロウの背後から忍び寄ってみる。

「タロウ!」

「むぉ!?」

三度目、ユウが近づいて声をかけた途端、タロウは素っ頓狂な声を上げて飛び上がる。

「な…なんだよ、変な声出して。さっきから何度も呼んでたよ」

「そうだったのか。すまない、少しボーっとしていたよ」

「人形がボーっとしているって言っても、なんかな…」

人形の姿のタロウ…いや、常にポーカーフェイスのウルトラマンがボーっとしているかどうかなんて、一目見ただけじゃわかるはずもないし、人形ならそのまま立たされているのが当然だ。

「く……そ、それより、何を話しかけてきたんだね?」

「予定されていた大規模ミッションについてのメールが来たんだ。ほら」

ユウはタロウに、端末の画面に表示されたメールをタロウに見せる。

「そうか、ついに来たのか」

「まだ説明会の開催以外にこれといった情報はまだ無いけど…今のうちにタロウからこの任務に備えて聞いてみたいことをちょっと聞いておこうと思ったんだ。前の戦いは、相手に止めをさせなかったから」

そういってユウは、前回ザラキエルを仕留め損なったザラキエルと、結果的に自分を救うこととなったあの超巨大なウロヴォロスのことを思い出す。コウタと離していたときに予想した、万が一の可能性への恐怖を感じずにいられなかった。

「またあのウロヴォロスって奴がこないとも限らないし、次に現れたときの対策も考えておきたいんだ」

「ウロヴォロス…か」

タロウの口からもウロヴォロスの名前が出たのを聞いて、ユウはさっきからタロウがボーっとしがちな様子を露にしている要因がそこにあると見た。

「もしかして、あのウロヴォロスのことが気になる?」

「…いや、なんでもないんだ。気にしないでくれ」

「……」

こんなタロウは珍しいと思った。何か気になるようなことがあるはずなのにそれを隠そうとしている。ユウはそれを察していた。一体彼は、あのウロヴォロスに何を感じたのだろうか。

 

 

そして翌日、オペレーション・メテオライトの作戦説明会が始められた。

作戦室の巨大モニター前の階段式の座席には、アナグラと、ここへ集められた他支部からのゴッドイーターたちが集合していた。その数はざっとみて50人以上。思いの他多かったことに、ユウは内心驚いた。

ユウたち第1部隊も同席し、リンドウはギースとヴェネの監視のため、彼らの傍に立っている。モニターの前に、ゴッドイーターたちと向き合う姿勢でツバキが口を開いた。

「これより、後日決行予定の『オペレーション・メテオライト』の作戦説明会を開始する。資料は各隊員の端末を確認しろ」

ツバキから命じられ、ゴッドイーターたちは通信端末を取りだし、画面を確認する。メールと共に送付されたファイルがある。タイトルも分かりやすく『オペレーション・メテオライト』と表記されている。

画面をタッチしてそれを開くと、ツバキの言っていた作戦の概要等を記した文面や図、画像が表示される。

機械の箱の画像が最初に目に入った。

アラガミを引き寄せる誘導装置らしい。ツバキによると、これを極東の各所に設置し、集まったアラガミを一網打尽にする。

最近、よく現れるようになった巨大なアラガミたちは、スパークドールズをアラガミが捕食し異常進化を遂げたもの。スパークドールズを喰らうアラガミが減れば、超巨大アラガミの出現率が下がるという狙いがあった。

これはユウにとっても助かる作戦である。

「誘導装置は、本部から派遣された技師により最終調整を終了済みだ。諸君らは作戦時にはこの装置を護衛対象として死守し、作戦を成功に導かねばならない。

だがくれぐれも無理をするな。最後には必ず生き延びることを第一とせよ。

部隊は誘導装置5つに伴い、5部隊に分ける。各部隊の編成を発表する。聞き逃すなよ」

ツバキは皆に対し、いつも通りの鉄のごとき姿勢のままだが、一方でゴッドイーターたちに生きることを勧めてきた。

(リンドウさんのお姉さん…だな)

キャラは正反対なのだが、このような優しさも混じらせてるだけあり、二人が姉弟なのだとユウは思った。

「本日より作戦結構まで、この作戦区域となる地点のアラガミの討伐を中心に行う。それまでの間の任務は、今から発表する部隊メンバーで任務に当たれ。これは、他支部を含めた諸君ら全員の、まだ慣れない者同士のチームワークの強化を狙った方針でもある。

まずA班指揮官は…」

ツバキは引き続きメンバーの発表を行った。この物語の中で名前が判明しているメンバー編成は以下の通りとなった。

 

・サクヤ、アリサ、コウタ、ソーマ

・リンドウ、ギース、ユウ、エリック

・タツミ、ブレンダン、カノン

・ジーナ、カレル、シュン

・ハルオミ、ケイト

 

基本的には、それぞれ部隊長経験のあるリンドウやタツミたちが5部隊の隊長をそれぞれ担当することになった。明確な隊長が決められていない第3部隊はジーナが担当している。

第1部隊は人材が富んでいる傾向にあるため、第1部隊の普段の編成メンバーのままでは行わず、副隊長に当たるサクヤも別部隊の隊長を務めることとなった。名前こそ判明していないが、上記よりも実際のこの5部隊のメンバーは50人を超えるゴッドイーターたちが集められているため、多い。だからこそ、ツバキはチームワークの強化という言葉を、念を押すように皆に言った。

後は他の支部から派遣されたメンバーたちは隊長に選ばれた者たちの指示に従い、万が一彼らが戦えなくなったなどのアクシデントが起きたら、別の隊長経験のある者、隊長に適した者が代理を務めるという方針となっていた。

「雨宮三佐、一つ質問があるのですが」

すると、参加していた神機使いに混じっていたヴェネが、手を上げてツバキに質問をかけてきた。

「なんだ?」

「この作戦中に、例の巨大アラガミや…その、宇宙人とやらが干渉してくる可能性はあると思われますが、その場合は…?」

それはアーサソール隊長としてヴェネが気にしていることの一つだった。

噂では、このエリアには接触禁忌種よりも危険性の高さが予想される超巨大なアラガミがここしばらくの間に出没している。さらには、それを操るという…『宇宙人』を名乗る謎の怪人がいる。ヴェネはアーサソールの隊長として、そういった極東内での状況を、本部からの情報提供である程度把握していた。

それらが現れた場合の主な対処法を極東ではどのように取っているのかを聞きたがっていた。

「その場合は追って作戦の変更を通達する。が、可能な限りそいつらが現れた場合は交戦を極力避けて撤退しろ。なお、ウルトラマンが現れる可能性は想定に入れるな。必ず現れる保証は無いからな」

何度もコウタやユウに告げられた言葉を再び、今度はヴェネに向けて言った。

「…?ヴェネ、ウルトラマンってなんだ?」

突如隣にいたギースがきょとんとした顔で、あまりに間抜けな声で場違いな言葉を口にしてしまい、しかもそれが他のゴッドイーターたちの耳に入り、周囲から妙にクスクス笑いを浮かべたりする者、こいつ大丈夫か?と心配そうなまなざしを向けてくる者、あいつは馬鹿だと一種の軽蔑を向けてくる者がギースを見る。

本部派遣のゴッドイーターの癖に知らないのか、と。

「な、なんだよ…俺、何か変なこと言った?」

「…言ったからこうなったんだ」

ヴェネが呆れながら、ギースに言う。極東に現れたという光の巨人=ウルトラマンギンガについては、当然フェンリル本部でも無視すべき存在ではなく、ノルンのデータベースにもしっかりと、フェンリルが掴んだギンガの情報も公開されている。実を言うとギース、難しいことは全部ヴェネに丸投げしていたため、その姿勢が災いして無知さが露骨になっていたのだ。

「お前は本部の特殊部隊アーサソールの隊員、ギース・クリムゾンだな?」

「そ、そうだけど」

「会議終了後すぐに、ノルンのデータベースで確認しろ。ウルトラマンギンガのこと、この極東内に出現した異常進化型のアラガミについてもだ。ヴェネ・レフィカル隊長、お前もよく言って聞かせてけ」

「了解。私の部下が、お恥ずかしいところをお見せしました」

ツバキからの命令と忠告に、ヴェネは心底恥ずかしさを覚え陳謝した。後でマルグリットが聞けば、ギースの丸投げ姿勢をとがめてくるだろう。ギースのこの姿勢は自分の監督不行き届きさもあるが…マリーにチクるか。ちょっとした報復のつもりでそうすることをヴェネは決めた。ギースはというと、周囲からの視線にさらされ気まずくなっていた。

ウルトラマンを知らなかったというギースの姿勢には、ユウたち第1部隊も聞いていた。

「ふふ、困った子ね」

「あの背の高い人、めっちゃ恥ずかしそうにしてるぞ。なんかかわいそうだな…」

苦笑いしながらサクヤはつぶやく。コウタは、ギースの巻き添えでほぼさらし者状態のヴェネに同情している。ソーマは心の中で『馬鹿がまた一人』とつぶやき、アリサは「ドン引きです」の一言。ユウは頭を掻きながら、こういう人もいるのだろうと思いつつ、やれやれと思った。

「ふう…みな一度静粛に!他に質問する者はいないか?」

ツバキはため息を洩らしながらも、全員を一度黙らせ、他のゴッドイーターたちに質問がないかをたずねる。といっても、ギースのおかげで、逆に気まずくてわからないことがあっても尋ね辛い状況でもあった。

「以上で、本日のオペレーション・メテオライトの作戦説明会を終了する。作戦結構当日、およびそれまでの期間中に通達すべき事がある場合もこの場を設けることとする。

以上、解散!」

少し予想外なこともあったが、こうして後日行われる予定となった『オペレーション・メテオライト』の説明会はひとまず終わった。

ユウは席を立ち、胸の内ポケットに隠しているギンガスパークに触れる。

皆はギンガなしを前提に作戦に参加していることとなるが、ギンガの力をおそらくこの作戦内でも使うことになる、その確信があった。

今度こそ、守って見せなくては。ここにいる人達を。

神薙ユウとして、ウルトラマンとして。ユウは固く誓った。

 




NORN DATA BASE

⚫ギース・クリムゾン
小説『禁忌を破る者』の主人公。17歳。アーサソールの現在ただ一人の戦闘員で腕も一流。アリサやユウと同じく新型ゴッドイーター。子供っぽい性格で口が悪い。難しいことを考えるのが苦手。マルグリットに想いを寄せている。

⚫マルグリット・クラヴェリ
アーサソールの整備士。16歳。ギースやヴェネの幼馴染み。優しく献身的で、よくいい加減なギースを叱りつける。愛称はマリー。
なぜか女性ゴッドイーターたちと同じく服装の露出の高い…(ほぼビキニ)

⚫ヴェネ・レフィカル
アーサソールの隊長。21歳。冷静沈着で、クールな容姿。ギースがゴッドイーターとなる前、新型神機の初期型を扱う新型ゴッドイーターだったが、以前に遭遇したスサノオに神機を喰われ、やむなく引退。ギースはヴェネの神機を喰らったスサノオを倒して神機を取り戻し、ヴェネと共に戦えるようになることを目標としている。

⚫イクス
アーサソールの監理官を勤める研究者。人を小バカにしたような笑みを見せる。ギースらを道具にしか考えていない。

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