ULTRAMAN GINGA with GOD EATER   作:???second

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感想欄にて、運営の対応した形跡がありました。
よってアイデアに関しては今後、行う場合は感想欄ではなくメッセージの方でお願いすることになるかと思います。


追記…ちょっと『グリーンサラブレット(後編1)』にて忘れていた記述があったので、他にも気になったところを含め、つたないものの書き加えておきます。今回の冒頭においても同じなので…
申し訳ないです!




グラスゴーから来た二人(前編)

「…あいにく我々『女神の森』は、今のところ極東支部と協力関係になるつもりはない」

それが、総帥『芦原那智』とはじめとした、女神の森の議員の総意だった。

ヨハネスは、ユウのかつての居住地であった女神の森の評議会に協力要請を試みた。しかし、自身がゴッドイーターの素質のあるものを優先する方針のために切り捨てられた女神の森の人間たちはその事を恨み、リーダーである那智も拒否したため、叶わなかった。

だが、どういう風の吹き回しか…と皮肉を言いつつも、ヨハネスがユウからの頼みにあった資材の輸送についてはひとまずの感謝はしてきた。極東から送られてきた資材のおかげで、アナグラに習って以前より強固なシェルターが建設されるようになったのだ。

この件で一部の者たちの「ヨハネスを捕まえろ!」という過激な発言を押さえ、ヨハネスたちを大人しく門まで送り返すことを決定した。

そのなけなしの誠意にしたがって大人しく帰ることにし、ヨハネスたちは女神の森の門に向かう。

その道中、ヨハネスたちは今までの恨みつらみのお返しのつもりか、白い目を向けられていた。

「支部長、よろしかったのですか?彼らの協力なくしては、この区域がアラガミの襲撃を受けない理由が掴めないままですが…」

「無理強いして彼らの反感を買ったら後の弊害にしかならない。こうして我々に手を出そうとしないだけでもまだいいさ」

「それは、そうですが…」

護衛として同行している神機使いの一人の問いにたいして淡々と返答するヨハネスだが、護衛の神機使いはまだ納得出来ていない。

「けど、連中だって頭が堅すぎるんですよ!協力を受けた方が向こうにとっても都合がいいはずなのに!」

「それだけ、我々は彼らから恨みと不信を買っていたと言うことですね」

さらにもう一人の護衛も不満を漏らすと、さらにもう一人がなだめるように言った。人から恨みを受ける。ここまでのものだったとは。

「諸君、心配には及ばない。時期に、彼らが我らに頼らざるを得なくなる時が来る」

しかし、ヨハネスが急に意味深な言葉を向けてきた。その言葉の意味を、ヨハネスの無表情から護衛の神機使いたちは読み取れなかった。

すると、ピピピ、と誰かの携帯端末の着信音が鳴る。あぁ、私だ。ヨハネスはただ一言護衛に告げ、端末をとって通信先と連絡を取った。

「あぁ、私だ…そうか。本部から次の作戦のための…わかった。そちらにはリンドウ君たちを向かわせてくれ。まだまだ彼には働いてもらわなければ」

 

そう、『まだまだ』、ね…

 

「あの、すみません」

すると、ヨハネスの下に一人の少女が走ってきた。

「あなた…極東の支部長さんですよね?」

その少女は、アリサと同じくらいの10代半ばと思われる少女だった。少し高値を張っていそうなワンピースを着込み、サンダルも今の荒れた時代では手にはいることがほとんどないかもしれないほどの立派な材質でできていた。まさにお嬢様、といった感じだった。

「なんだ君は。支部長は多忙の身ゆえ、すぐに極東へ戻らなければならないんだぞ」

護衛のゴッドイーターたちは目を細めながら少女を追い払おうとした。こんなところに、こんな立派な格好をした人間がいるとは。自分たちが戦場でアラガミと命がけで戦っているというのに…。ここの連中は、フェンリルは資源を独り占めにしているだの、人の事を散々罵っているくせに、こんな贅沢な格好をさせているやつがいるのか。そう思うと、こっちとて怒りを抱きたくなる。

「いや…いい。何か用かな?」

しかしヨハネスは同行者たちを抑えて後ろに下がらせ、少女の話を聞くことにした。

「あの、極東の方がもしここに来たらどうしても聞きたかったことがあるんですが…」

「ふむ…」

「碧眼に少し金髪がかった、若い男の人を見かけませんでしたか?

『神薙ユウ』…という名前なんですけど」

「……」

この少女、どうやらユウの知り合いのようだ。

彼女になら、話してあげてもいいだろう。

あえてユウのことをあの場で那智に明かさなかったのは、彼が神薙ユウの知り合いである可能性が低かったからだ。また、女神の森出身の者を保護したといったところで、今回の会談で邪険に扱われたように、嘘とみなされることも考えられる。ヨハネスが恩を与えたところで隙を突いてこの女神の森の所有権を強奪するかもしれない…彼らがそう思って警戒を強めるかもしれないと、ヨハネスは考えていた。だから会談中はユウのことについて一つも触れなかった。

「…あぁ、彼なら我々が保護している。ただ、知ってのとおり我々はゴッドイーターの素質がある者とその近親者しか保護できない。

彼は今、我々の仲間として共に戦っている」

「ユウさんが…ゴッドイーターに…!」

その少女はユウがゴッドイーターとなっていることを聞くと、目を丸くした。

「ところで、君は?」

ヨハネスは、この少女がこの街において優遇されていることを読んだ。でなければ、このような、若干高級さに溢れた格好を彼女はしていないはず。

「あ…『芦原ユノ』、この女神の森の総統、芦原那智の娘なんです」

それを聞いて、ヨハネスはほとんど表情を変えなかったが、ほぅ…と驚いた。

「ユノおねえちゃーーん。お歌聞かせて~」

すると、ユノの後ろの家から幼い子供の声が聞こえてきた。どうやら彼女は歌を聞かせていたらしい。

「は、は~い!

すみません、支部長さん…私これで…」

「あぁ。気にしないでくれ」

ユノは最後に一度、ヨハネスたちのお辞儀をした後、家の中にいる子供たちの元へ急いだ。

しかし、彼女がまさかあの那智の娘だったとは。となると…ユウは那智とも顔見知りかもしれない。

(覚えておいた方がいいかもしれんな…)

後の交渉のカードとなるかもしれない。そう思ってヨハネスは彼女…芦原ユノのことを覚えておくことにした。

 

 

 

 

「これが、今回の任務で回収したスパークドールズだね」

極東支部アナグラの、サカキ博士の研究室。自動操作機能付き照明で照らされた台座の上に置かれた、『剣豪神ザムシユウ』の素材となったスパークドールズを見て、サカキは探究心と好奇心に目を輝かせた。

「いやぁ、こんな小さな人形に、アラガミをあれだけ活性化と形態変化を促す力があるとは。見ただけでは、ただのマニアックな人形にしか見えないのに不思議だと思わないかい?」

そういいながら、サカキはツバキに尋ねる。

「そうッスね…誰も想像しなかっただろうよ」

リンドウもサカキの考えに同意を入れた。

「しかし、故に脅威です。できればこのスパークドールズとやらの早期発見と回収を急ぎたいところですが…」

アラガミと違い、これらは食われていないうちはただの人形だ。以前のサカキの研究によると、この人形には生命活動が行われていること…つまり生きていることが判明した。ただ分かっているのはサカキとツバキが今告げたことくらいで、ほとんど分かっていない。

「それに、この人形を悪用する者がいると、以前アリサが始めて介入した任務の後、リンドウからも報告を受けています。しかもそいつは…信じがたいことですが」

「宇宙人を名乗っていた…そうだね?」

えぇ、とリンドウは、サカキの狐のように釣りあがっている視線を受けながら頷いた。

「しかもその…『マグマ星人』とやらは、ウルトラマンを狙っているとか言ってましたよ」

「ふむ…」

「目的は分かりませんが、警戒するに越したことはないッスね。まぁ、できればこのまま二度と会わないでいたいところッスけど」

率直な感想を述べた弟の少し気の抜けた言い回しに、ツバキは少しため息を漏らす。だが彼の言うとおり、常々人材不足問題にさらされているゴッドイーターたちを無駄に犠牲にしたくない。

「よし。では、私はこれにて。支部長がお帰りになられるので、そのお迎えとご報告に」

「うむ、ご苦労だったね」

「リンドウ、次の任務に就いて支部長から連絡があった。付いて来い」

「息つく暇もない、か…了解」

ラボから去っていく雨宮姉弟を見送った後、サカキは台座の上に置いた、ただいま解析中のスパークドールズに視線を傾けた。

「……『先生』から教わったことがあるね。直接見たことはないが、君もまたこの星に貢献した英雄だった…そうだろう?」

何か意味深な言葉を口にするが、それを聞いたものは誰もいない。

さて、と彼は一息入れると、改めて画面の方に目を移す。

「ヨハンが戻ってくる前に、『例のあれ』について、少し手を打たないとね」

 

 

 

「いいかい、このバレットについてなんだが…」

その頃、出撃ゲート前のフリースペースにて、ユウとコウタはある人物からバレットのエディット方法に就いての講義を受けていた。

ユウは銃形態で距離をとりつつ戦うことはあっても、そのために重要視されているバレットエディットについては、まだ知識不足なところが多く、それでいてかなり難しい。それを見かねたエリックが、せっかくだからとコウタも混ぜて二人に講義を行ってくれた。

ここで少し解説を入れよう。

 

バレットエディットとは、バレットに任煮の挙動を設定する大作業。

制御にはモジュールという部位が必要。

モジュールには弾丸、レーザー、爆発など…現在9種類ほどの分類がされている。

さらにサイズや属性、挙動が異なるなど、さまざまなモジュールが開発されており、設定を組み込んだモジュール同士を接続することで、特殊なオリジナルバレットが誕生する…というものだ。

 

「さすがエリック、よく知ってるね」

「お褒めに預かり光栄だな。最も伊達に神機使いをやってきたわけじゃないからね。常に華麗に戦えるように知識と鍛錬は積んで置かなければ」

補佐として一緒に来ていたリッカからの賞賛にエリックは笑った。ユウたちより長く銃型の神機使いとして戦ってきたこともあり、知識は確かに持ち合わせていた。これも妹エリナのため、人類のためと強く願っているが故だろう。

「そのために、モジュールを組み込む際…アラガミを美しく華麗に散らす花火を打ち上げられるバレットを組み立てられるか悩むあまり、夜もなかなか眠れないものだよ!はっはっは!」

「「「……」」」

華麗な花火って…。

彼のナルシストさに富んだ独特の感性は健在だった。人の価値観とは様々なものだな…とエリックを除く三人は、高々に語る彼の姿を見て引き気味に思った。

「うーん、でもいざ組み立てるとなると、やっぱどんなものにしたらいいのか迷ってくるよな。組み立てるのも面倒そうだし」

面倒くさげにコウタがぼやく。気持ちが分からなくもない。これにハマれるのはよほどの経験者かバレットマニアじゃないといけないだろう。

「でも、これをどうにか覚えていかないと、今後の任務に支障が出るから、なんとかマスターしておきたいな」

自分が所持しているバレットを一つ、指先に摘んで見つめながらユウは言った。元々機械いじりは生計を確保する手段として用いたくらいに好きだったから、コウタよりはうまく進められるかもしれない。

「そういうゴッドイーターたちもたくさんいるから、コウタ君たちもわからないことがあったら相談してね?」

面倒くさい作業であると感じるのは、何もコウタに限った話じゃない。幼い頃からずっと長く整備士として働いてきたリッカも、是非相談に乗るようにと言ってくれた。

「でも、それはそれでリッカさんたちの時間とっちゃうんじゃ…」

「大丈夫。仕事だもん。機械いじりだって大好きだし」

相手の時間を食うことを気にしたコウタだが、対するリッカは寧ろ望むところという姿勢を見せてきた。前から少し思っていたが、ユウは彼女とは気が合いそうな気がした。

「じゃあ、今日任務が終わった後、神機のチューナップとか頼めるかな?」

「もちろん、任せといて!」

早速相談に乗ってもらおうと重い、ユウはリッカに神機の整備を頼むと、彼女は笑みを見せて快く引き受けてくれた。

「……」

「エリックさん、どうかしたの?」

ふと、エリックがサングラス越しに視線を細く、どこかをじっと眺めだしていた。それを見て、コウタが何を気にしているのかを尋ねる。

「いや…ユウ君。君のその服なんだが…」

エリックが、今ユウが着ている服を指差す。

それは確かに、ゴッドイーターになって以来、よくユウが着込むようになっていた、コバルトブルーのフェンリル仕官制服のジャケットとシャツのセットだ。だが…

「そういえばさっきから気になってたけど、なんか変じゃない?服が変なところでつなぎ合わさってる。これじゃ動きにくくないかな?」

それを見たリッカの指摘どおり、今のユウの服はちょっとおかしかった。

胸元の、前回の戦いでギンガに変身した際、ザムシユウに胸元に剣戟を食らって切り傷を負わされたことで、変身を解除した後のユウの服も、胸元部分が破けてしまっていたのだ。その部分は確かに縫い合わされていた……

…が、あまりにもつたない。縫い目が大きすぎて緩いし、球結びもできておらず、あちこちタラリと、縫合に使った糸が垂れ下がっている。縫い方も基本の並縫いとも程遠く、しかも極めつけは…シャツの方とジャケットが見事に『縫い合わされてくっついてしまっている』ということだった。しかもジャケットの肘の部分も、脇腹の部分にまでくっついている。

「お前裁縫下手だったの?」

コウタがちょっと呆れた様子でユウを見るが、ユウは首を横に振った。

「これ僕じゃないよ。僕だって裁縫はそれなりにできるから」

かつて子供の頃、妹の服が破れたときは自分が縫合していた記憶がある。だからそれなりに裁縫はできるのだとユウは自負していた。

「じゃあ一体誰なんだい、ユウ君?」

「……アリサ」

この下手糞さ加減が丸出しの有様、それはアリサの手によるものだった。

 

 

前回、サクヤがユウの服が破れたのを見かね、自分が直してやろうといってきたとき、アリサが借りを作ったままでは嫌だったらしく、ならば自分が代わりに直してやろうと申し出てきた。それも、あの任務が終わった直後、裁縫の腕を疑われたと勝手に思い込んだアリサは、意地を張ってユウの破れたジャケットとシャツを取り上げて部屋に閉じこもってしまう。

『いいですか、絶対に喉をうならせてやりますからね!』

最後に、ユウの顔をじろっと睨んで今の一言を言い放って。…それは料理を言うときに言うセリフ…とは、アリサの怒りを余計に買いたくなかったので敢えて突っ込まなかった。

しかし、その結果はあまりにも残念なものだった。頼んだ方が逆に不幸になるという結果となったのである。

『なぁ、アリサ…これはちょっと』

当然ユウは困り果てた。これでは任務に出るに出られない。しかし、恥ずかしさを押し殺してでも自分なりにお礼をしたアリサからすれば、できれば許してほしかったことに変わりなく、怒ってしまう。

『な、なんですか!せっかくお礼をしてあげたというのに文句を言うんですか!

文句を言ったら、胸を触ったことばらしますからね!?』

『え!?いや、あれは不可抗力で…!!』

『そうなったら…ふふ、あなたは査問会にかけられるでしょうね』

(うわ!卑怯!)

せっかく忘れられそうになったところで、またあの幸せの塊のような感触を記憶に呼び起こされ、ユウは顔を赤くしながら必死に弁明しようとするが、邪悪な笑みさえも浮かべてきたアリサにユウは戦慄さえも覚えさせられたものである。

『と、とにかく次はうまくいって見せますから!べ、別に深い意味はないですからね!?』

と、まぁ…これがこの、アナグラの新人区画で起きた残念ジャケット事件の真相である。

 

そのことを、胸を触ってしまったことを除いてコウタたちに話してみた。

 

「アリサって、器用そうに見えてかなり不器用だったんだな」

性格もそうだが、まさか手先もそうだったとは思わなかったコウタ。しかし、これはこれで後のからかいのネタにできそうだと、アリサの入隊当時に彼女から小馬鹿にされた恨みを晴らそうとでも言うのか、意地悪な野心を抱いた。

「しかし、君も君で、なかなか殊勝だな。そのままの状態のジャケットを着るとは」

エリックは、ユウがアリサの失敗縫合でおかしくなったジャケットを何気にしっかり着ていることに、男としてちょっと関心を持った。…まさかバストタッチのことを脅されているとは思わなかっただろう。

「でも任務に出るときはちゃんと直しとくか、他の服を着て任務に出るようにしてね」

「だ、大丈夫…わかってる」

リッカからの指摘にユウは頷く。当然こんなジャケットでは任務に出るに出られない。戦いに着て行く服装はちゃんとしたものでないと、たまたま武器や瓦礫の尖った先などが服のほつれた箇所に引っかかって足をとられてしまい、隙を作ってしまうことが予想されるからだ。

「でも…ふふ、意外だね。あれだけ高飛車で同じ新型のユウ君を目の仇にしていたアリサが、こんなことするなんて」

「なんで笑ってるの?リッカちゃん。僕、またアリサから恨みを買ったんじゃないかって思ってるんだけど」

対するユウは、またなにかアリサが仕返しでもしてきたんじゃないかと、脇腹部分とくっついたせいで上がらないジャケットの右腕を見せながら困り果てていた。

「じゃあユウ君は、アリサに何か悪いことでもしたの?」

「それは…ないよ?」

「何で疑問系?…やっぱりなにか変なことデモしたんじゃないの?怪しい~な~」

「ち、違う!!違うぞ!!断じて違う!!」

「ぷぷ…あはははは!!」

ユウが結構な鈍感な青年だという一面を持つこともそうだが、このユウの慌てよう。それが余計にリッカを噴出させてしまい、リッカは大笑いしたのであった。深くは聞かないでおくが、何かあったのは一目瞭然だ。

アリサとユウの距離が近くなったきっかけが。

それに対し、エリックとコウタは地味に男としての悔しさを覚えたのは余談である。

「…なにへらへら笑ってやがる」

しかし、そんな楽しい空気に水を差してくるかのような冷たい声が聞こえてきた。

ユウたち顔を上げると、同じ第1部隊のメンバー、ソーマがそこに立っていた。

「ソーマじゃないか。君も会話に加わりに来たのかい?」

「んなわけあるか」

エリックからの誘いを、ソーマは一蹴した。

「ところで、お前」

ソーマはソファに座っているユウを見下ろす。

「な、何?」

何時ものような威圧感のある視線にユウは凄みを覚える。

「前のミッションエリアで、俺たち以外の人の気配を感じなかったか?」

「気配?」

ソーマが自分たちに質問してくること事態珍しい。ユウたちに尋ねてでも知りたい何かがあるのだろうか。

「いや、何も」

「そうか、邪魔したな」

ソーマはそれ以上言及することなく歩き去っていった。

「なんだったんだ?」

結局ソーマが何を聞きたがっていたのか察せず、コウタが首をかしげる。リッカも長いことソーマの普段の行動を見たことがあるだけに、珍しく質問してきたソーマに目を丸くした。エリックもそれについて同様だった。

とその時、ユウとコウタの端末から着信音が鳴る。

ユウたちがそれをとると、リンドウからのメールが届いていた。

 

 

 

リンドウ

件名:あ~、次の任務についての通達だ

 

本日も本部から、予定されている大規模ミッションのメンバー出迎えの任務だ。

ただし、今回は空と陸の両方同時になってる。二班に別れて向かう。

出撃前に各班のメンバー発表を行うのでそのつもりでいるように。

 

ま、とにかく生き残ることを優先しろよ。特に新入りとソーマ。

 

以上。

 

 

 

「任務の連絡?」

リッカの問いにユウは頷いた。

「うん。じゃあ僕らは任務の準備に入るよ」

メール越しに釘まで刺されてしまった。無茶をするような事態にならないように準備を整えておこう。

「うっし、じゃあ今日も張り切って行こうぜ、ユウ!」

コウタはその日も気合い十分な様子で、ユウと一緒に出撃ゲート脇のエレベーターに直行した。

「入隊してしばらく経つけど、結構馴染んでるみたいだな」

「そうだね…」

あんな風に、友達同士で気兼ねなく喋り合うことができる。こんな日常的なことさえも、余裕にできないし、これが最後となるかもしれない。仲間の死をまるで日常茶飯事に近いくらいに聞いてきた。だから尊いものに思わされる。

あれを大事にするためにも、整備士として一層体を張らなければならないな、とリッカは決意を固めた。

「例の神機の『新機能』の話、聞かせてやらないといけないしね」

「新機能?何時の間にそんな物が?」

リッカの話の中に利いたことのない内容を耳にし、エリックが彼女を見る。

神機に新機能?そんなものが計画されていたのか。

「うん、近い内に新しい機能を搭載することになったんだ。と言っても…銃型神機のエリックには縁がない話だけどね」

「うぅむ…それは残念だな。より華麗に戦えるチャンスだと思っていたのだが」

今度の神機の新機能は、どうも近接型のみの性能らしい。エリックは銃の神機なのでそれが不可能であることを残念に思った。

「…まぁ、それ以前に…この機能を付けたところで、最近出てくることが多い超巨大のアラガミに勝てるかどうか…だけどね」

しかし、エリック以上にリッカが少し不安を抱いている様子をあらわにした。

ここしばらく現れる、オウガダランビア、ドラゴード、テイルメイデン、グボロ・グビラ、ザムシユウ…スパークドールズを取り込んだことで異常進化したアラガミたちのせいで被害の増加と、対応策の献策に追われるばかりだ。奴らの暴走による被害が予測値を上回らないでいるのは、やはりウルトラマンギンガの存在が強く出ているのだ。

しかも、第1部隊や救出されたフェンリル本部からのスタッフの報告によると、ギンガは先日アリサに一方的に砲撃を受けたにもかかわらず、身を挺して彼女を救い出したというじゃないか。これによって極東におけるウルトラマンの支持率はさらに高まっているが…ゴッドイーターおよびフェンリル関係者への軽視の傾向もまた高まっていた。

自分たちは、この先もやっていけるのだろうか?そんな不安がリッカをはじめとした多くのアナグラ内で生きる者たちの胸中にあった。

 

 

 

「で、任務の内容だけど、覚えているわよね、二人とも」

「はい、大丈夫です!」

それから数十分後、この日も第1部隊は先日の任務と同様に、フェンリルからのスタッフを迎えるために、彼らが通るルートの先にあるアラガミの掃討作戦に参加することになった。

今回はリンドウがメールで伝えたとおり、第1部隊を地上と陸、二手に分ける方針で行くことになった。

地上はリンドウ、ソーマ、アリサの三人。

ユウはコウタ、そして副隊長であるサクヤと共にヘリに乗って、空で任務に就く事になった。

現在、フェンリル本部から飛来する輸送機を迎えるために、旧日本海の上空を飛行している。

海は美しかった。太陽の光に反射し、コバルトの波が輝いている。

(昔よりも海が綺麗に見えるな…)

ユウのジャケットの胸ポケットから海面を見下ろしていたタロウは心の中で呟いた。

タロウの時代から2000年代初期の間、日本海を初めとした海は観光スポットとして指定されるほど美しい場所もあったが、人類の文明の発展に伴い、ゴミが海面に捨てられていたり、赤く染まった状態…赤潮になるなど、汚染されていることが多くなっていた。

それがアラガミの出現に伴い、ゴミも赤潮も有害物質も観測されない、本来の美しさを取り戻しているなんて、なんとも皮肉なことだろう。

「そういえばサクヤさん、今回来る人の話ってないんですか?」

アリサのときもある、厄介な人が来るのでは?なんて不安をコウタは抱えており、今回やってくる人物について何か知っていることがないか尋ねてみた。

「そうね…ごめんね、私も詳しい話までは聞いてないの」

「そうですか…」

今回来る人が面白い人であればいいのだが、と淡い希望を抱くことにした。できれば…同じ年頃のかわいい女の子とか、なんて不純な思いを抱いてもいたが。

「そろそろ目的の輸送機と接触します」

ヘリの操縦士が、後部座席にいる三人に伝える。

「ユウ君、コウタ。あくまで輸送機内にいる仲間を無事に極東まで送り届けることが最優先よ。前回は結局アラガミを交戦したけど、いつもみたいにウルトラマンが助けに来ることは考えないでね」

「は、はい!」

身を引き締めるような言い方をするサクヤに、コウタはビシッと背筋を伸ばしていい返事をした。相手が先輩であることもあるが、やはり綺麗な女性の前ではかっこ悪いところは見せられない。

「あ、見えてきました!」

ユウが地上を指差した。

遠くに見える雲海から、一機のフェンリルのエンブレムを刻んだ飛行機が飛んでいるのが見えた。だが、見えたのはそれだけじゃない。

輸送機に向かって、水色の一つ目の飛行型アラガミが、何百体もの数で群れをなしながら輸送機に近づいていた。

「すでに、アラガミがあんなにたくさん…」

『何て数だ…』

ユウとタロウはヘリから見えるおぞましさに溢れているその光景に戦慄する。輸送機の中の人たちを餌として狙っているのだ。

それにしても、今回のアラガミは少し変わっていた。ザイゴードなのかと思ったが、身が水色一色。それにザイゴードやドラゴードにもあった女体部分もない。

「形態変化の最中のようね」

「形態変化?」

サクヤの言葉にコウタが首をかしげる。キョトンとしているコウタに、サクヤがため息を漏らした。

「もう、サカキ博士の講義で聞いてなかったの?」

新人にはサカキ博士からゴッドイーターとしての基礎知識を学ぶ講義を受けることになっている。当然このユウも、そして別働隊のアリサもだ。しかしコウタはどうも居眠りグセがついていた。

「コウタって、博士の講義中によく居眠りしてましたから」

「ユウ君、そこはちゃんと起こしてあげて。後で困るわよ」

「もちろん起こそうとしましたけど、コウタって、『母ちゃんもう食べられないよ』って寝言を吐いてまた爆睡するんですよ…」

困り顔のユウを見て、サクヤはやれやれ、とぼやいた。それにしても、寝言も何てベタな…。

「また夜更かししてバカラリー見てたの?」

「バ『ガ』ラリーだよ!」

「コウタ、アニメもいいけど、ちゃんと基礎知識は勉強しておきなさい。死んでからじゃ遅いから」

「は、はぁい…」

ちょっと憧れに思ってる女性からも厳しく注意を受け、コウタは肩を落とした。

「もうおしゃべりできる余裕はないですね」

そう言って外を見下ろしているユウの視線の先には、さっきよりもアラガミたちが輸送機に近づいていた光景があった。

「ここから早めに仕留めましょう。放置すると、最悪サリエルに進化するわ!」

「サリエル…」

ノルンのデータベースに載せられていたアラガミだ。大型種に分類され、神話の女神の名の通り美しい女神の姿を象っている。当然ザイゴードなんかより強く、女神から敵を追尾するレーザーを放ち、体からは敵の攻撃を弾くバリアまで張れるのだ。

「了解、とにかく輸送機に近づいてるやつから片っ端ですね!」

「輸送機に誤射しないようにね!」

気合いを入れ直すコウタに対し、銃形態に神機を切り替えるながらユウは嗜めた。

最初にコウタは発砲したのを皮切りに、ミッションが開始された。

ザイゴードとサリエルの中間形態のアラガミたちは、ユウたちの弾丸の嵐を掻い潜って輸送機に近づこうとする。

輸送機に近い個体はサクヤが主に狙い撃っている。彼女のスナイパー型神機は発砲速度が早く、槍のように的確に突くことができるからだ。しかしその分オラクルの消費量も高く、カノンのようなブラスト銃神機ほどの威力もない。そのためユウとコウタのような、威力が低めの分オラクル消費率の低いアサルト銃神機が、彼女の手を煩わせる前に、一体でも多く潰す。例えとりこぼしてもすでに二人からダメージを追わされた分、サクヤが一撃で仕留めやすくなる…このような流れで三人は連携しつつアラガミたちを迎え撃った。

だが、着実にアラガミを空の塵にしていくものの、数はなかなか減らせなかった。

「数が多すぎる…このままじゃ、輸送機に敵が張り付く!」

神機に内蔵されているオラクルにも限度がある。まだ始まって間もない時間だが、このまま攻撃を続けるとジリ貧の末に力尽きてしまう。

「このまま極東に送るまでの護衛は厳しいわね…」

「!サクヤさん!」

輸送機とそれに群がっていくアラガミの群れに視線を送り続けているサクヤに、コウタが叫んだ。サクヤが反射的に顔を上げる。

そのとき、自分たちが乗っているヘリのすぐ傍にアラガミの一体が迫ってきていたのだ。しまった、輸送機に注意をそらしすぎたか。そう思ったと同時に、そのアラガミの体が火花を起こして暴発した。

「危なかった…大丈夫ですか!?」

ユウがいち早く、そのアラガミを討ち落としてくれていた。

「ありがとう…油断してたわ」

助けに向かうのはよくても、こちらが先に落とされてしまっては元も子もなかった。サクヤは油断していたことを詫びる。

「やばいですよ。あいつら、さっきよりすごい勢いで輸送機に張り付いてますよ。どうするんですか?」

コウタが輸送機に近づくアラガミを一体ずつ撃ち落しながら二人に尋ねた。彼の言うとおり、ザイゴードとサリエルの中間形態をとっているアラガミたちは、機体により一層張り付き始めている。

「…これじゃ、近づくのは難しいわね。あの輸送機にはフェンリルの関係者がヘリに搭乗できる人数がいるはずと思うけど」

「正確な人数の方は聞いてないんですか?」

ユウが目を丸くしながら尋ねると、サクヤは首を縦に振って肯定した。

「それはリンドウの口からも明かされなかったわね。流石のあの人でも人の命にかかわることについては確実に教えるわ」

でも、詳しい人数については聞いていない。ただ、ミッションエリアが空の上であることを除いて、前日と同じミッションであるということしかわかっていない。

「サクヤさんにも伝わっていない…?」

「ごめんなさい、副隊長なのに情報に疎くて。でも、一つ分かっていることがあるの。そもそもこの日の任務も急に決まったことだって、リンドウが『ビールを飲む暇もないな』って愚痴りながら言っていたわ」

「だから、正確な人数もどんな人が来るのかもわからないまま…」

確か、支部長がクライアントとしている、後日予定されている大規模ミッションのため…だったか。そのために、急ぎで輸送機にフェンリルの関係者を乗せて回してきたのだろうか。

「それはともかく、この数を相手にただ闇雲に敵を撃ち落しても意味ないわ。あそこに私たち以外のゴッドイーターがいるなら、まだ…」

あの輸送機に、戦える者…ゴッドイーターがいてくれればこの状況をどうにかできるかもしれない。そう思ったときだった。

『ん、呼んだかい?』

三人の通信機に、突然若い男の声が聞こえてきた。声から感じる予想の年齢はリンドウに近いが、彼自身のものじゃない。

「あ、人が‼」

コウタが輸送機を見て叫ぶ。見ると、輸送機の上の出入口から一人の男が現れ、船体の上から襲ってきたアラガミを数匹、一太刀の元に切り伏せた。

その男が持っているのは茶色のバスターブレード神機。初めて見るゴッドイーターだ。

「だ、誰ですか?」

少し警戒心を抱きながらも、ユウが通信先の男に問い返す。

『おいおい、そう構えるなよ。それより…あんたら、極東からの出迎えかい?』

「そうだけど、あなたは?」

『お、今度は別嬪さんだな?声で分かるぜ!あ、…わかった!』

すると、男はサクヤの声を聞いて何か気づいたらしい。

『あんた、極東のオペレーターだった橘サクヤだろ?そっか、神機使いになってたのか』

その男は、サクヤを知っていたようだ。

「あなた、もしかして元極東の?」

来訪者が自分を知っているという、意外なことを聞いたサクヤが目を丸くする。

『まあな。2年くらいそっちで稼いだことがある』

「へえ…」

これはユウたちにとってもちょっとした衝撃だった。まさか極東出身の人だとは。

『しっかし、こっちからチラッと見えてたが、あんた前よりいっそう美人になったな!こりゃお兄さんも張り切っちゃうぞ!』

「「「…」」」

三人は今の男の声で色々理解した。こいつは…相当のドスケベだ!と。どんな人が来るかと思ったら、こんな人が来るとは。

『ゴッドイーターとは個性的な人が多いな…』

ユウのジャケットの胸ポケットにいるタロウも、ここまでスケベ丸出しの男は初体験だった。タロウ…できればあの人と比べないで…と、ユウは比べられたくない思いを痛感した。

すると通信先から、突如ドガッ!と、なにかを殴ったような音が聞こえてきた。何だろう、向こうの人が転んだのか?疑問に思っていると、さらにもう一人機体の上で頭を抱えながら悶絶している男の傍らに姿を見せていた。手にはピンクのアサルト銃神機が握られている。今度はその女性のものと思われる声が聞こえてきた。

『ごめんねー、うちの旦那が迷惑をかけたかしら?』

旦那、という単語が出てきた。さっきの男の妻のようだ。声からして、相方に呆れながらも申し訳なさそうにしているのが伺える。

「あ、いえ…で、今の音は?」

『何時ものように天罰下しただけだから気にしないで。それより…回りのアラガミをどうにかしたいの。こっちも、今やっと神機の調整が終わったところだから、手を貸してくれる?』

「もちろんよ、そのために来たんだから」

「微力ながら僕もお供します」

『うんうん、そっちの子は礼儀正しそうだね。うちの旦那にも見習わせたいわ』

ユウの声を聞くと、通信先の女性が感心した様子を示してきた。直後に復活した男の声が聞こえてきた。

『痛てて…ケイト、お前今本気で拳骨かましただろ』

『妻の前でセクハラ紛いの発言をしたハルが悪いんです~』

『ふぅ、うちの嫁はなかなか厳しいな。…っと、そろそろふざけるのも終わりか』

ハルと呼ばれた男が立ち上がると、甲高い女の叫び声が響いてきた。ザイゴードがアラガミを呼び寄せる声と似ている。

すると、船体の側に、一体の女性型のアラガミが姿を現した。その姿は、まるで女神と蝶が合成されたような、美しさと不気味さの相反する要素同士の特徴を備えていた。

「サリエル…!」

どうやらさっきのアラガミの群れの中で進化した個体がいたようだ。

『こいつのお陰で輸送機にアラガミが張り付いちゃってるの。改めて力を貸して!』

「了解、援護するわ。ところで、あなたたちの名前は?」

作戦行動中に、名前がわからないままでは支障が出る。サクヤが輸送機の上に立っている若いゴッドイーターの夫妻に名前を尋ねた。

 

『本部の命令で極東支部に派遣されることになった、グラスゴー支部所属、

ケイト・ロウリーです。そして…』

 

『同じくグラスゴー支部所属、隊長の真壁ハルオミだ。よろしくな』

 




今回はさっさと書いちゃってます。ウルトラよりゴッドイーターの比率が高いです。

タロウの影が薄くなってく…次からの展開も悩み中です。他にも書いてる作品もありますので大変です。

リンドウたちと敵サイドの方は次回に触れる予定ですが、さっさと書いたもののため修正するかもしれません。

今回登場した二人も元は原作の『2』で登場するのですが、アニメでもちょこっと出てきたので、登場させてみました。


今回のタイトルも、ウルトラセブンのエピソード『V3から来た男』からとってみました。


※…ハルオミの台詞の一部を修正…にわか化進行中を痛感…

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