ULTRAMAN GINGA with GOD EATER 作:???second
他に主に書いてる小説があり、この小説は優先順位は低い方なので、どうかご了承ください。
また、今回の話は「ウルトラマンタロウ最終回」のネタバレが含まれています。…今更かな?
それ以前に、うまくかけてるのか、我ながら心配…
まだ敵勢力の相関図とか設定もうまくなり多々仕切れていませんから不安が残ったままです。
アナグラから北の方角に位置する山岳地帯。その上空を飛ぶ一機の飛行機があった。船体にフェンリルのマークがあることから、
その飛行機の中に、ヨハネス支部長がいた。空の下に広がる景色を、遠い目で見下ろしていた。
かつてはこの辺りも、小さな町や村などがあったことだろう。だが今では、そんな場所も木々さえも生えてこない荒野に変わっており、かつて人間が築き上げた建物などは瓦礫の山と化していた。
数十年前は、ここも自然が生い茂っていたはずの場所。それが跡形もなく…。
そして、残り少ない『食い物』を求め、アラガミたちがその辺りをうろついている。地球をこれだけ食い荒らしたというのに、まだ食い足りないというのか、あの似非神共は。
ヨハネスはまるでゴミや害虫を見ているような冷たい視線で、地上にいるアラガミを見下ろした。
「支部長、そろそろ目的地に到着と思われ…あれは!」
ふと、パイロットから目的地へ猛すぐ到着するとの報告があったが、その際にパイロットが驚きの声を漏らしてきた。
「ん?どうかしたのかい?」
「いえ、その…信じられません」
パイロットは狼狽えたままだ。一体何を見たのだろう。まさか、アラガミか?
一応、第1~3部隊以外の残存する部隊からゴッドイーターを護衛として連れてきている。対処は難しくはないはずだが、パイロットが次に言った言葉はアラガミに因んだものではなかった。
「目的地の周辺に…自然が色濃く残っています!」
「なんだと?」
ヨハネスは再度地上を見下ろす。
それは彼でさえも驚く光景だった。
20年前までは確かに存在し、現在の地球では完全に失われたはずの…。
今の人類なら誰しもが望むであろう景色が…
緑に覆われた大自然がそこにあった。
オラクル細胞。それはあらゆる物質を食らい、その特徴を取り込んでいく神の…いや、悪魔の細胞と呼ぶべき魔の代物。
それを破壊できるものは、同じオラクル細胞を持つ存在だけ。
本当なら触れたくもないし、知りたくもない力を…
忌まわしきその力を、私は己の体に取り込みました。
全ては6年前のあの時…
私の両親を奪った、あの憎きアラガミを
パパとママが味わった痛みを
奴の体に徹底的に叩き込んでから
肉塊に変えるために…!!!
アリサは、入隊してから日々の任務で確かに好成績を収めていたのは確かだ。中型種も手玉に取りながら、たやすく撃破していった。
しかし、この日も彼女は単独で任務に当たっていた。当然のことといえるだろう。彼女は確かに優秀だが、仲間を完全に蔑ろにした行動と言動が目立ちすぎていたのだ。
『新型の癖に』『新人の癖に生意気』。アリサを見ると、従来のゴッドイーターたちはすぐにそういうのが日常茶飯事となりつつあった。
しかしアリサは全く気に留めていなかった。本人にとって他人からの評価も、そもそも他のゴッドイーターたちの存在などどうでもよかったのだ。
つまらない。アリサは赴任してから難易度の低い任務に付かされ辟易していた。自分はかつて大型種のヴァジュラを単独で撃破した事だってあるし、この前も同種をこの手で狩ってやった。なのに、あの雨宮ツバキとかいう女は、自分にこの程度の任務しかさせてくれないのだ。
もっと高難易度の任務をやらせて欲しいと抗議を入れても「お前にはまだ不安要素がある」の一点張りだ。
きっと彼女には人を見る目がないのだ。アリサはツバキのことをそう断じていた。昔は歴戦のゴッドイーターだったらしいが、今となっては戦うこともできない廃品じゃないか。しかも彼女の教え子たちはどいつもこいつも…
「なぁサクヤ、配給のビール余ってるか?」
「またぁ?私の分まで飲み干すつもり?」
「この前のデートの相手がなかなか手ごわい奴で疲れちまったんだよ。一本だけでいいから…お願い!」
「まったく、大人なのか子供なのかわからないわね…」
第1部隊の隊長と副隊長。ビールの配分で揉める。
「なぁヒバリちゃん。今度デートに行こうよ、な?」
「すみません、まだ溜まっている仕事があるので」
「そ、そう…じゃあ、また今度ね?」
第2部隊隊長の場合、軽口を叩いてデートに誘っては断られる。
「………」
「何してるんですか?」
「すまない、今は話しかけないでくれ。精神統一中なんだ。『ザゼン』というらしい」
(この人が座ってるそこ、出撃ゲートの前なのに…)
第2部隊の堅物バスターブレード使いの場合、集中力を高めるためという名目で、意味不明なポーズを取って周囲を困惑させる。
「「どわああああああああ!!?」」
「あはははは!!痛かったの!?ねぇ!?」
カチッ…(弾切れの音)
「こんなときに弾切れ…クソッ!」
第2部隊の、普段はのほほんとした桃髪ブラスト神機使いは、豹変しては斜線上に味方がいるのに、遠慮なく発砲しまくり。
「おいカレル!あいつは俺の獲物だって言ってただろうが!途中で横取りしてんじゃねえ!」
「何言ってやがる。横取りされる隙を作るのが悪いだろうが」
「あんだとぉ!?あ…てめえまさか、お前から借りた金を返させない状況作って、俺に利息を求める魂胆じゃ…」
「被害妄想を抱く暇があるなら目の前のオウガテイル一匹狩って来い。マジで利息をつけるぞ」
「だあああああもう!ほんとむかつくなてめえは!」
第3部隊の二人組の場合、無駄な金銭トラブルばかり起こす。
残ったもう一人はまさにトリガーハッピーな人。
問題児だらけじゃないか。こんな部隊でよくもまぁ、このアナグラを守り抜いてこられたものだ、見るたびに辟易させられる。
でも、それでも自分なりに真面目に任務に赴く。だって、教えてくれたから。
アラガミを殺して、殺して…殺し尽くせば…
天国にいるパパとママが喜んでくれるから。
あの人が、そう教えてくれたから。
だから…憎いアラガミを…オラクル細胞をこの身に宿したのだ。
アリサの赤く燃え上がる神機『アヴェンジャー』の刃が、彼女に食らいつこうと飛び掛ってきたオウガテイルを正面から真っ二つに切り落とす。アリサはすかさず神機を銃形態『レイジングロア』に切り替え、宙を漂うザイゴードの群れを撃ち抜いていった。
「…ふよふよ浮いて…うっとおしい…!」
宙には7体ほどがアリサを狙ってうようよしていたが、一匹残らず爆発した。
「これで、ノルマのアラガミは全部…」
残ったアラガミたちの遺体からコアを回収し、これでこの日の仕事は完了した。早く戻って、体の調子でも見てもらうとしようか。
「こちらアリサ・アミエーラです。任務は終わりました」
『あの、アリサさん…まだそちらの方に中型アラガミがいます。反応からすると、コンゴウとグボロの群れです。ユウさんとコウタさんが交戦中、援護に向かってください』
「お断りします。もう私のノルマは達成しました」
『ですが、現場には極東支部への入居を希望した被害者も取り残されている。すぐ援護に向かわれないと危険です!』
「その程度の敵に負けるその人たちが悪いんです。寧ろ、足手纏いがいない分、フェンリルの負担も軽くなっていいじゃないですか」
『アリサさん…ッ!』
自分の仕事を達成した以上、自分が出る気はない。それどころか、戦果を上げない仲間は寧ろ死んだ方が役に立つ、そう言っている用にも聞こえる言い回しだった。
あまりに勝手な言い分を告げるアリサに、通信先にいるヒバリも、普段の温厚さを消して怒りを露にしたくなった。たまにムカッとする同僚はいるのだが、ヒバリは常に冷静に対応するのだが、こんなアリサのように露骨すぎるタイプは初めてだった。
ヒバリの思いなど露も感じようとせず、さっさと帰ろうと思って、アナグラの方へせっせと歩き去ろうとした時だった。
『アリサさん!』
「え…?」
通信機からヒバリの悲鳴のような叫び声が轟く。瞬間、アリサの背後に積みあがっていた瓦礫がしぶきを上げるように跳ね上がる。
そこから現れたのは、数体のコクーンメイデンと、コンゴウ。
まだ残っていたのか。こいつらは今回の討伐対象として報告を受けていなかったはずだ。でも、自分を狙ってくるのなら…相応の報いを与えてやる。
大好きだったパパとママの分も込めて。
銃形態のまま、銃口を向けるアリサ。
しかし…ここで予想外なことが起きた。
カチッ…
「え…?」
弾が、出ない。不運なことに、このときにアリサの神機に溜め込まれたオラクルが切れてしまっていたのだ。なら剣で切り裂いて…いや、だめだ。すでにコンゴウが拳を振りかざしてきている。
アリサは直ちに装甲を展開し、コンゴウの攻撃に備えようとした。
しかしその直後、数初の弾丸がコンゴウの顔に被弾、コンゴウの顔が爆発の中に包まれた。コンゴウは怯み、周囲のコクーンメイデンたちも自分たちのリーダーだったのか、コンゴウが不意打ちを食らったことでアリサに仕掛けようとしていた砲撃を中断する。その隙を突いて、メイデンたちに向けて弾丸の嵐が降り注ぐ。
「でやああああああ!!」
気合いの雄叫びを轟かせ、ユウは目の前のアラガミ…コンゴウ
に向けて、神機の剣先を向ける。それはほぼ瞬間的なものだった。彼の神機は捕食形態に変形し、コンゴウに向かって頭からかじりつき、そのままコンゴウの体を頭から真っ二つに切り裂くように食いちぎり、コアもその際に取り込んだ。
「コウタ!」
ユウは後から着いてきたコウタに向けて叫ぶ。
「おっしゃ!任せろ!」
ジャキッ!と銃口を構え、コウタはユウの呼びかけに応え、アリサを襲おうとしたコクーンメイデンたちに向けれ乱射する。
「グオォォォ…」
名前の由来である『処女』という言葉とは程遠い、野太い断末魔を挙げながら、コクーンメイデンたちも全滅した。
「ヒバリちゃん、残りのアラガミの反応はある?」
すぐさま、ユウは残存する敵がいないかヒバリに連絡を入れる。
『あ、はい。今のグループが最後のアラガミです。お疲れ様でした』
「っしゃあ!やったなユウ!」
「うん。今日も生き残れたね」
今度こそ任務終了。ユウとコウタは互いにバシン!とハイタッチした。
「そうだ。アリサ、怪我は?」
ユウはアリサに近寄り、怪我がないかを尋ねてきた。
「…ありません。この程度で負傷するほど鍛えていませんから」
「そっか…よかった。さ、帰ろうか」
静かに、それでいて強気で言い返した。若干棘のある感じだったが、とりあえず無事だったようなのでユウはほっとした。
「だな。さってと…困ったな…。ノゾミに語る俺の伝説がまた一つ増えちまったぜ」
「ええ~?あれで伝説~?」
わざとかっこつけて悩むふりをするコウタに、ユウがいたずらっぽく茶化した。
「おーいユウ…そこは乗ってあげるのが優しさだろ~?
そういや、今日はウルトラマンは来なかったな」
「そりゃ、あのくらいで倒せるアラガミにウルトラマンがいちいち出撃していたらキリがないよ。それに、まずは僕たちの方で頑張らなくちゃ」
「そっか…そうだよな。まずは俺たちの方で頑張ってこそだもんな」
「……」
雑談しながらアナグラの方へ帰っていく二人の背を、アリサは若干睨みつけているようにも見える鋭い視線で見つめていた。
「そうだ。アリサ、今から帰りついでにコウタの家によるんだけど、君は?」
「先に帰らせてもらいます」
振り返ってきたユウが、アリサに尋ねるが、そっけなく即答された。
「あ、そう…気をつけてね」
とりあえず手を振って見送るユウを、アリサは無視して去っていった。
神薙ユウ…自分と同じ、極東の新型神機使い。
アリサは、ユウのことを高く評価していなかった。自分と同じ新型のくせに、その誇りとかプライドが感じられなかった。新型として選ばれた以上、相応の態度と行動を示すべきじゃないのか。なのに、あのコウタとか言う、見るからに足を引っ張るタイプにしか見えない旧型と馴れ馴れしく会話したりと…。
彼は自分がここに赴任してから幾度か共にミッションに同行することがあった。
赴任してすぐの任務から続き、ヴァジュラを惨殺したあの防衛任務のせいで誰もアリサと関わりを持とうとしなかった。だけどユウだけは、気遣いの言葉を自分にも向けてくる。
任務中はそれなりに緊張感と責任感のある顔を浮かべ、真面目に任務に取り組んではいる。しかしそれ以外はそうは見えなかった。任務が終わった途端、怪我はない?どこか体の調子が悪いところは?そんな聞くまでもないことを尋ねては、馴れ馴れしく話しかけてくる。今だってあのコウタとかいう奴とへらへらと話していて、新型としての自覚が欠けているようにしか見えなかった。
バァン!!
訓練スペースにて、擬似アラガミと交戦するアリサ。
自分の両親は、アラガミに殺された。その消したくても消せない憎しみの記憶を神機に込めて、擬似アラガミのオウガテイルを切り裂く。
今回の訓練は制限時間までの間にどれだけの擬似オウガテイルを倒せるかが目標。制限時間は、3分。
ホログラムで再現された廃都市、自分の周囲にオウガテイルが再現される。
『用意はいい?それじゃ…始め!』
訓練スペースの窓の向こうにいる、の声が聞こえる。始め、の言葉と同時に、擬似オウガテイルたちが襲い掛かってきた。
「ふ!」
まず正面の擬似テイルを切り裂き、他のテイルたちがアリサに飛び掛る前に彼女はたった今切ったテイルを踏み越えて高くジャンプし、壁に足をつける。刃先を床の上の敵に向け捕食形態を展開、壁を蹴って一気に突進、そのままもう一体、飛び掛ると同時に神機でテイルをもう一体食らう。
敵のオラクルを取り込み、アリサはバーストモードに突入する。
すぐに振り向き、取り込んだオラクルによって生成された弾丸を放った。
アリサが今発射した弾丸は、『アラガミバレット』と呼ばれている。近接タイプの神機を扱うゴッドイーターがアラガミを捕食しそのオラクルを取り込んだ際、神機がそのオラクルを瞬時に解析し、弾丸として変換したものだ。
ちなみに今の弾丸の名前は『雀蜂』。オウガテイルのオラクルから生成された蜂の針のような棘を飛ばすものだ。
一度に数発分もの針が飛び、残ったオウガテイルたちを串刺しにし、貫かれたテイルたちはオラクルの液体となって消滅した。
それからアリサは、擬似アラガミたちを切り倒し続けた。
だが、その戦い方は敵を屠るという意味ではそれでよかったのかもしれないが、まるで猛獣を食らう猛獣のようであった。
「がああああ!!」
憎しみをそのままぶつけるような、激情に駆られた攻撃を繰り出し続け、彼女は荒々しくも着実に討伐数を増やしていく。
そして、制限時間3分をきった。
『はいそこまで!』
リッカの終了宣言と共に、訓練は終了した。全ての擬似アラガミたちが消滅し、アリサは帽子を被りなおした。
『討伐数は…13体。すごい数だね』
「これくらい当然です」
さもこれくらいできて当たり前のように言い切ってみせるアリサ。だが今回の記録は、彼女の中では新記録でもあった。
(この調子で…もっとたくさんのアラガミを…!)
しかし、直後に自分にとって信じられないことを耳にした。
『そうだね。同じ新型君のほうも…20体撃破しちゃったほどだし』
「え…?」
20…体?今彼女は20体と言ったのか?
それに、同じ新型君…そう考えて該当する人間といえば一人しかいない。
(私よりも、あのへらへらしてる人のほうが…!?)
そんなはずはない。だって自分は…選ばれた人間のはずだ。いくら自分と同じ新型だからってありえない。あんな人が…自分より優れている?考えただけで嫌になる。
『アリサ、そろそろ出ないと後がつかえちゃうよ?次に予約していた人がそろそろ来ちゃうからね』
「あ…」
スピーカー越しのリッカからの声にアリサは我に帰った。そうだ、もう訓練は終わっていたのだった。胸の中に何かがつかえた不快感があるが、今はとりあえずここから去ることとしよう。
悔しかった。自分の方がずっと優れたゴッドイーターだと思っていた。いや、今でも思っている。なぜなら自分は選ばれた人間…新型ゴッドイーターだから、それにふさわしい戦士となれるように日々勉学と訓練を頑張っている。
-----私より優れたゴッドイーターなんていません
いつぞや、一緒にここに赴任してきた大車に言った言葉だ。そこには絶対的な自信があった。
それなのに…
自分よりも、あんな優男の方が優れた結果を残したことが許せなかった。
それ以前にも自分はあの男の助けを結果として受けてしまった。
訓練スペースから去る際、アリサはぎゅっと拳を握った。
任務が終わって、むしゃくしゃしていたアリサは食事と気分転換のためにラウンジに来ていた。
アリサの来訪に、周囲の目が白くなる。ここにいる者たちも、彼女の態度にかなり辟易していたり、恐怖を抱いて近寄ろうとしなかったりと様々だ。だが対するアリサはこの人たちと要らない会話をするだけ無駄だと考えているため、無視した。
トレイに乗せた食事一式を置き、席に座ったときだった。
「やぁ」
「…あなたですか」
アリサは淡々としながらも、その目には強い対抗意識を宿して、目の前の席に座ったユウを睨みつけた。
「極東にはもう慣れた?」
ユウは席に座ると、アリサに一つ問いただしてきた。
「…あなたには関係ありません」
「関係ある。君は僕たちと同じ第1部隊の隊員だから」
「だから、あなたたちと馴れ合う気はありません」
「やれやれ…」
ユウはため息を漏らす。リンドウから彼女を託され、タロウからは優しさを失うなといわれたが、正直年頃の女の子相手にどうするべきか、そんなことはまともに考えたことがなかった。昔、まだ生きていた頃の妹との付き合いはあっても、あれは家族であった分、遠慮や配慮というものをさほど必要としなかったから、当時の対応の仕方は宛てにできない。
「ねぇ。アリサは、どうして周りと打ち解けるどころか、そこまで拒否しようとするんだ?」
「…急になんですか」
うっとおしげにアリサが問い返してきた。
「理由を聞きたいんだ。どうして…?」
「…しつこい人ですね」
「しつこくもなるよ。アリサがそこまで排他的すぎるとね」
「そうですか」
アリサはだからなんだ、と言いたげな言い回しで言葉を切ってしまう。だめだ…これじゃぜんぜん話が進まない。
(ここは思い切って尋ねてみるか…)
ユウ自身、この質問はあまりにデリカシーがないことくらいは分かる。でも、このままアリサのほかのゴッドイーターたちに対する態度をなんとかしなければならないと、後の任務の際にどんな支障をきたすか分かったものじゃない。それに、リンドウやタロウとも約束してしまった。
「もしかして…アリサは、アラガミに大切な人を奪われたことがあるの?」
「…!」
その一言で、アリサが反応を示してきた。それはよかったのだが、その反応の意味が触れたくない過去に触れてしまったことになるのでは?そんな不安をユウは抱いた。だが、ここで泊まってはならない。
「いやなことに触れたとは思う。だから、僕も君に話しておく。僕も、子供の頃に妹を亡くしててね…」
ユウの自身のトラウマに満ちた過去を明かす姿勢に、さっきまでやたらと無視する傾向にあったアリサがユウの目を見始めていた。
「思い出すと、怒りが沸くんだ。妹を殺したアラガミにも、そのアラガミに抗うこともできなかったあのときの無力な自分にも」
このご時勢だから、ユウの辛い過去など珍しくはないのだが、気が付けば、アリサはユウの話に聞き入っていた。
「私と同じなんですね」
「同じ?」
「私も、パパとママを奴らに殺されたんです」
「ご両親を…!」
自分から吹っかけたとはいえ、悪いことを聞いてしまった。リンドウから、アリサには精神面に問題があることを聞いていたが、両親が亡くなったことが関係していたのか。
「だから、私は新型ゴッドイーターに選ばれたとき、確信したんです。もうアラガミに怯える必要はない。新型神機を振るい、パパとママの仇を討つこと…それが全てにおいて優先される私の使命なんだと悟りました」
そのアクアブルーの目は、深遠のように深く、光が差し込んでいなかった。見ていると、ぞっとするものを覚える。けど、怯むわけに行かなかった。
「復讐…か。けどアリサ、新型であることとか、過去に大切な人を奪われたからって、仲間を蔑ろにすることは正しいことなのかい?」
「…旧型の人達にいちいち媚を売れと仰ってるのですか?」
「そんなことは言ってないよ。なんでそう悪い見方をするんだ?」
「新型として選ばれた私たちは、それにふさわしい応対を心がけ、新型の名に恥じない教養と力を備えるべきです。無論これは旧型の方々にも言えることです。けど…なんなんですかこの極東のゴッドイーターたちは。どの人も自覚が足りてない人ばかり…」
「確かに問題のある人はいる。けど、僕は個性的で悪くないと思うよ」
実際コウタは話してて面白い。エリックも少し絡みづらいが妹思いのよき兄ということで、自分とどこか精通する部分がある。リンドウは飄々としているように見えるが、周囲から敬遠されがちなアリサやソーマに対しても、隊長としてしっかり見捨てずにいるし、自分に大切なことを一つ教えてくれた人だ。
「そういうあなたも、ずいぶん暢気なことを言うんですね。新型としての自覚を持ったらどうなんですか?」
「…」
どうもアリサは新型だからという理由で、プライドを高めすぎているように見えた。それと同時に…アラガミに対する憎悪を強めすぎている。
「あの日の任務で、みんなを無視してヴァジュラをあんなに酷く惨殺したあのときの君は…正直目も当てられなかった」
「…何が言いたいんです?はっきり言ったらどうなんですか?」
アリサは、ユウが遠回しに何かを伝えようとしていることを察した。
「僕と君は、互いに大切なものを奪われてしまった間柄だ。でも、僕は君のように復讐するためだけに戦うことを認めるわけにいかない」
「な…ッ!」
ユウの口からそれを聞いたアリサは、信じられないと声を上げそうになるくらい動揺した。
「それは…本気で言ってるんですか…!?あなたは…アラガミが憎いんじゃないんですか!?だって…あなたも…」
ヒステリックにも近い声でアリサは声を上げた。その大きな声で、周囲の人間たちがアリサとユウの二人に注目した。
「…そう、憎かった。アラガミも…妹や他のたくさんの人たちを見捨ててきたフェンリルもすごく憎かった」
「だったらなぜ…!?」
アリサは理解できなかった。アラガミどころか、フェンリルさえも彼は憎かったと言っている。なのに、なぜ憎しみを抱いて戦うことを否定してくるのだ、この男は。
「憎しみは、人の心を傲慢にさせる。僕はそれをある人から教えてもらったんだ。実際、僕はその傲慢さを抱いたせいで、ある失敗を犯したことがあるんだ」
直接的な表現はしなかった。
自分は、鎮魂の廃寺にてウルトラマンの力を得た。それは望んで得た力ではなかったが、妹を始めとした、防壁外で暮らす数多くの人達を見捨て続けてきたフェンリルに対する負の感情と、ゴッドイーター以上の力を得たという事実が、自分に力を貸してくれたギンガの意思を蔑ろにしてしまった。結果、本当ならもっと早い内に倒せたドラゴードを、ギンガから変身を拒絶されたことで、戦わずして取り逃がすという失敗を犯した。たとえあの頃のユウは戦い始めたばかりの時期だったにせよ、本当なら誰も傷つかないうちに守ることができたかもしれなかった。
その後に出会ったタロウの言葉。
彼の言葉がなければ今でもユウは、人一人を助けに行くことも保護することも、資源の限界などの問題で余裕ではないフェンリルの事情を知ることもなく、己の被害者意識から来る傲慢さを捨てることができずにいたかもしれない。
だからアリサには、辿って欲しくなかった。自分がウルトラマンの力を手に入れたことで傲慢さを爆発させたように、『新型神機』という力を得たことをきっかけに自分の傲慢さをさらけ出した果てに、何かしら悪い形で彼女の身に災いが降りかかることは避けなければならない。
「僕は、もう憎しみとか…そんなので戦わないことにしたんだ。今の僕の願いは…」
自分の夢をかなえるために、そして他の人たちが自分と同じようにもう一度夢を見れるように戦う。
バン!
直後だった。アリサはユウの言葉を聴きたくないといわんばかりに、机を殴りつけた。
「ふざけないで…ふざけないでください!」
殴った際に俯かせていた顔を上げた時には、アクアブルーの瞳が激流のように荒々しいものに変貌していた。
「憎しみで戦わないですって?アラガミを憎んで何がいけないんですか!殺し尽くして何がいけないっていうんですか!アラガミはこの世にいてはならない存在なんです!
私は、パパとママと殺したアラガミたちを皆殺しにしなければいけないんです!」
しかし、ユウは怯まなかった。体外の人間は少しでも気を弱めると、アリサの気迫に押されていたのだろうが、ユウはそんなそぶりをみせず、冷静とも取れる落ち着いた表情のまま、アリサに言った。
「…アラガミを殺し尽くしたところで、君のパパとママは戻ってくるの?」
「ッ…!」
アリサは顔を憎悪で歪ませたまま、言葉を詰まらせた。
「アラガミを倒すことは否定しないよ。でも、憎しみだけで戦うと、余計にその人を悪い方向に狂わせると思うんだ。
ウルトラマンを独断で攻撃したときもそうだし、君がヴァジュラを…あんなふうにしたのを見て、はっきり確信した」
ユウがそういったとき、彼の脳裏に、ヴァジュラを笑いながら惨殺したアリサの血にまみれた姿が蘇った。あれはもはや、人間らしい姿からかけ離れている。もはや、人の姿をしたアラガミのようで恐ろしかった。
そのとき、アリサの心に、怒りの炎が燃え盛った。正しいと信じて疑わなかった自分を否定されたようで、凄まじく不愉快であることが伺えた。
「…それは…それは私の方が、アラガミだっていうんですか!!?あのヒーロー気取りの巨人よりも!!」
さらに怒りを強めたアリサが、ユウに再度怒鳴り散らした。
「私より寧ろ、あんな人外がアラガミじゃないわけないじゃないですか!!そもそもあの巨人がもし本当に、私たち人類の味方だっていうなら…」
「どうしてもっと早く来てくれなかったんですか!!
どうして…パパとママを助けてくれなかったんですか!!
今更ヒーロー気取りで現れたって…虫が良すぎます…!!」
「ッ…!」
それに対して、ユウは言葉を詰まらせた。そして、どんな言葉を返すべきかわからなくなってしまった。
すると、ピリリ…と着信音が鳴った。ユウとアリサ、二人の持つ携帯端末からだった。
アリサはユウに対して、親の仇でも見るような怒りの視線を最後に向け、端末の画面をとる。
『第1部隊はブリーフィングルームに集合。
終了後は任務に当たるように』
次の任務に向けての知らせだった。
「一度…メディカルルームに向かいます。後で合流しましょう…」
それを見ると、アリサは最後にまたもう一度ユウを睨みつけ、アリサは去っていった。
「…そう簡単にうまくいくわけないってことはわかってたけど………かえって火に油を注いだだけかな…」
以前の自分だったら、たった今自分がアリサに言って見せた言葉を送られたら、どんなふうに言い返してきたのだろうか。
結局、アリサを説得することはできなかった。
「一度憎しみに囚われると、そう簡単に立ち直ることはできない。哀しいことだがな…」
すると、タロウがひょこっとユウの制服の胸ポケットから顔を出してきた。
「タロウ…ここは周りの人がいるから」
誰かが見ているかもわからない。いきなり喋る人形が顔を出してきたら怪しまれてしまうので、ユウは小声で注意を入れる。アリサとの会話で注目されていたこともあり、既に奇妙な視線を向けられていたので、とっさに携帯端末を耳に当て、あたかも通信先の人物と電話しているふりをしながら、二人だけで会話するための場へ移動する。廊下へ出ると、ちょうどエレベータが誰も乗っていない状態で用意されていた。
「おぉ…すまない。つい出てきてしまった。私もあの手の子を見たことがあって気になっていたからな」
「あの手の子?…それって、僕のこと?」
エレベータに乗り、自室の用意された『新人区画』へのボタンを押しながら、ユウは尋ね続ける。
「いや、私が元の姿で地球に留まっていたときに会った、ある少年のことだ。さっきのアリサの言葉で思い出したんだ。
私が出遅れたばかりに起きた悲劇…」
それは、今から100年近くも前の時代。タロウがかつて、地球人『東光太郎』として留まっていた最後の時期のことだった。
光太郎は夢の中で、自分の母『ウルトラの母』より、自分が世話になった船の主『白鳥船長』が乗る船が怪獣に襲撃されるという悪夢を見た。母は、『あなたの力をもってしても救いの手を差し伸べることができない』と告げた。
白鳥船長を救うことができず、死なせてしまう。その悪夢を覆すべく、当時の防衛チーム『ZAT』の隊員として現場へ向かう。
悪夢の通り、『宇宙海人バルキー星人』の刺客である『海獣サメクジラ』が、白鳥船長の船を襲撃した。ここで変身して戦い、怪獣を倒せば、船長は助かったに違いない。
だが変身したくても、できなかった。普段の光太郎にはZATの隊員として現場から離脱することが許されず、ウルトラ戦士の『人前での変身の禁止』という、自分たちの正体を明かさないための掟を守らなければならなかった。あの時は同僚がすぐ隣にいたため、変身することができなかった。そして、光太郎の思いも虚しく、白鳥船長は船もろとも怪獣の餌食となってしまう。
結果、白鳥船長の息子であり、自分を慕ってくれていた健一少年から、タロウとしての自分の分も恨み言を言われてしまうこととなった。
----あの時、タロウが来てくれたら、やっぱり怪獣をやっつけられたんだ!
----それなのに、一郎君のお父さんも、僕のお父さんも助けてくれなかった!
タロウは、アリサのさっきの言葉を聞いて、当時父を殺されたときの健一少年の悲しみに満ちた姿を思い出したのだ。
「そんなことがあったのか…」
「私が間に合わなかったばかりに…健一君たちには悲しい思いをさせてしまった。だが、私たちウルトラ戦士は、地球人たちが我々に頼りきりになって怠けることを避けるために、無闇に力を使うことを禁じられていた。実際、健一君は私や自分の父親の存在に依存していた。それは彼の成長を阻む邪魔な壁となるに違いない。それを健一君に教えるために、私は一度、自分を捨てた」
「自分を捨てたって…もしかしてッ!」
ユウの脳裏に浮かんだ一つの予測に対し、太郎は肯定した。
「あぁ、今君が予想したとおりだ。私は一度、ウルトラマンタロウとしての自分を捨て、『東光太郎』として生きることを選んだのだ。健一君が、父親からも私からも自立した、一人の人間として生きられるように、大切なものを失った悲しみを乗り越えられるように、あえて私の正体を明かして…」
それはあまりに大胆な選択であった。
少年の、自分が慕う存在への依存を捨てるため、失った悲しみから立ち上がらせるために、光太郎は自分がウルトラマンタロウであることを健一少年に明かしたのだ。
後の時代にまた新たな宇宙の脅威が迫ったことで、光太郎は再びタロウとして戦うことになったが…当時のタロウは、永遠に自分がウルトラマンであることを捨てる覚悟で、正体を明かしたのだ。そして、直後に自分を狙ってきたバルキー星人を…石油コンビナートに誘導し爆破するという作戦で…ウルトラマンの力に頼らない方法で撃破し、少年に未来への道を示したのだ。
「だが、今のこの星を見ていると…あのときの選択が本当に正しかったのか、わからなくなってしまった…結局私が健一君に教えたことは、無意味でしかなかったのではないだろうか」
助けられたはずなのに、助けることができなかった。
健一少年のときに続いて、現在の…アラガミによって支配され尽くされた地球…二度も同じことを繰り返した。
たとえ、一人の人間に悲しみを乗り越えるきっかけを与えても、それが世界を守ることに繋がるわけではない。それどころか、肉親を失ったかつての健一少年やアリサ、そしてユウがそうであったように、悲しみは無限に溢れてくる。そしてその分だけ、人々の心に絶望と悲しみ、憎しみが満たされていく。
いつぞや、兄の一人が言っていた「ウルトラマンは決して神ではない」という言葉が脳裏に蘇る。自分たちがどんなに強大で特殊な力を持っていても、どうしても救えない命が出たり覆せない現実が存在する。同時に、そんな現実に直面しても、めげてはならないという戒めが込められていた。
自分の未来を賭けてまで健一少年に教えたあの教訓だが、アラガミに食い荒らされた世界を見て、タロウは結局意味のないものとなって風化してしまったのではと、己の努力に虚しささえも感じ始めていた。
(あの時、ギンガに変身した僕に銃撃を放ったのも…もしかして…)
ウルトラマンギンガの存在は、恐らく今ではフェンリルの各支部に伝わっているはずだ。時には脅威、時には救世主と。それだけの強烈な存在感を示したのなら、ロシア支部からここに来るまでの間に、アリサが知っていてもおかしくはない。
ゴッドイーターたちに味方をしている、正体不明の光のヒーロー。だが、同時にウルトラマンに対して快く思わない人間もいる。彼の力を妬むゴッドイーター、彼が新たな人類の脅威と見なす者。
そして…ゴッドイーターより以前に存在し、アラガミを倒すだけの力を持っておきながら、アラガミが誕生したばかりの時期にてアラガミの脅威から人類を守らなかったことを恨む者。
あの時、アリサがギンガを銃撃したのは、ギンガを憎きアラガミの一種として断じていただけではなかった。
父と母を助けられる力があったのに、現れもしなかったウルトラマンへの、彼女なりの悲しみに満ちた訴えも含まれていたのかもしれない。
「ユウ…すまない。思えば私たちがこんな姿になどならなければ、君たちにこんな残酷な運命を辿らせることもなかった」
申し訳なく思うタロウは、ユウに謝罪した。
健一少年に教えた教訓は否定しない。本来なら地球人自らの手で地球を守ることに価値があるのだから。でも、アラガミの脅威を見ると…このときだからこそ自分たちウルトラマンの力が必要とされるべきであると考える。
だが、いるべきときにいることができなかった。それどころか、こんな小さな人形の姿というみっともない姿になり、力もろくに使うこともできない自分が、あまりにもどかしかった。
「…タロウ、僕はタロウの判断を否定しない」
すると、ユウがタロウに対して口を開いてきた。
「タロウは、フェンリルやアラガミへの被害者意識と憎しみで判断を誤っていた僕を叱ってくれたじゃないか。おかげで僕はタロウの分も戦うことができるんだ。
だから、健一って人に教えた大切なことを、無意味だなんて思わないで」
「僕もアリサの気持ちは理解できているつもりだ。だけど、同時に…タロウの無念も理解できる。あの時こうしておけば…あの時戦う力さえあればとか…
でも、だからこそ今をどうにかしたいって思えるんだ。」
「ユウ…」
「大体、アリサのことで僕にいい言葉を送っておきながら落ち込むなんて、よくないんじゃないかな?」
優しさを失うな。その言葉を教えたはずのタロウが、過去を思い出した途端、勝手に落ち込むことはよしとできなかった。自分を見つめてくる後輩の目を見て、タロウは少し気力を取り戻した。
「…ありがとう。私としたことが、卑屈になってしまっていた。思えば、こんなのは私らしくないな」
「いいよ、タロウには助けてもらっているんだ。借りは返さないと」
すると、チィン…とエレベータが指定された階へ到着したことを知らせた。
「さ、行こう。次の任務までには、アリサのことをどうにかしておかないと…
タロウ、先輩ウルトラマンとして、僕を指導してくれ」
「…あぁ、私でよければもちろんだ。
だが、覚悟しておくといい。私はこう見えても、光の国ではたくさんの若いウルトラ戦士たちを鍛えた身なのだからな」
そう言った時のタロウの声には、若い頃より培ってきた強い自身に満ち溢れていた。
「お手柔らかに」
ユウは、元気を取り戻した途端に気力を溢れさせているタロウに、少したじたじになりながらも笑みと共に期待を寄せた。