仮面ライダー×仮面ライダー SAO大戦 作:BRAKER001
「いやぁ、実に気持ちの良い朝だな、ウィザード!」
「悪かったよ……でもブレイドだって反対はしなかったろ?」
「反対はしてない、けど最初から乗り気じゃ無かった!」
「タダで済んだんだから良いだろ!」
翌朝、俺達は口喧嘩をしながらトールバーナの街を歩いていた。
何故こんなことになったかは昨日の夜に遡る。
晴人に来るよう言われた宿屋は古い建物だった。
中は民宿のようで、老婆のNPCがおり、話しかけるとクエストが発生した。
なんでもその老婆の悩みを聞くと無料で泊まれるとのことで、俺達は喜んで受領した。
……が、そのクエストは俺達の想像とは違った。
老婆の悩みを聞くという意味を履き違えていたのだ。
キャンセルしようにも老婆はずっと喋りっぱなしだし、逃げようとすると老婆がドアの前に移動した。
結果として、俺達は約三時間も老婆の話を聞くはめになった。話が終わるとクエストは終了したが、俺達は余計に疲れたのだった。
「大体そこそこ時間あったろ……他に無かったのかよ」
「こっちだって色々あったんだよ。仕方ないだろ?」
「色々ってなんだよ?」
「それは……」
「おーい! 君達ー!!」
急に遠くから聞き覚えのある元気な声が聞こえてきた。
見るとディアベルがこちらに手を振っている。
「やあ、参加してくれるんだね?」
「まあ、みんなの希望に……力になりたいんでね。この層でも、上の層でも」
「これ以上の犠牲者を出さないためにも、まずは第一層を突破しないといけないしな」
「フフッ、君達はいつか恐ろしい勢力になりそうだ」
「どういう意味だ?」
「いや失礼、悪い意味じゃ無いんだ。
これから先どれだけ仲間を作り、みんなをまとめていけるか……それが生き残ることに繋がると俺は思う」
「人が増えるほどリスクは減るし勝算も上がるもんな」
「その通りだ。
君達は自分ではなく人のために戦おうとしている。そういう人間にこそ仲間は集まるものだよ?」
「俺達が口先だけだと思わないのか?」
「昨日の君達を見てれば、真意なんだと分かるさ。それじゃ、俺はそろそろ行くよ。また後で」
俺達はお互い笑顔で別れた。
「あの人も結構なお人好しだよな」
「さぁな……ほら、俺達も行くぞ。ウィザード」
「おう」
俺達も攻略会議の場所へと足を進めた。
「今日は俺の呼びかけに応じてくれて有難う!
俺はディアベル、職業は気持ち的にナイトやってます!」
攻略会議はディアベルの冗談から始まった。
「今日、俺達のパーティがあの塔の最上階でボスの部屋を発見した。」
ディアベルの冗談に反応していた周りが静まる。
「俺達はボスを倒し、第二層に到達してこのデスゲームもいつかクリア出来るって事を、始まりの街で待っている皆に伝えなくちゃならない。
それが、今この場所に居る俺達の義務なんだ。そうだろ、みんな?」
すると今度は拍手や歓声がおきる。
「OK、それじゃ早速だけどこれから攻略会議を始めたいと思う。まずは6人ずつのPTを組んでみてくれ」
それを聞くとすぐに周りが行動を始める。
「どうする? ブレイド」
「別に二人でいいだろ、元からそのつもりだったんだしな。
ほら、あそこにも二人だけで……ん?」
見覚えのある顔を見つけ、そこへ向かう。
「おい、ブレイド?」
晴人もついてくる。
「お、やっぱりか」
隣の少女と話していた少年が顔を上げる。
「お、昨日の……ブレイドだよな?」
「覚えててくれたか、キリト」
隣にいた少女もこちらに注意を向ける。
「おい、どうしたん……あ!」
「あ……」
ついてきた晴人が少女を見るなり声を上げた。
少女の方も晴人に驚いたようだったが、すぐに目をそらしてしまった。
「おい、どうしたんだ?」
「いや……それより彼は?」
「あ、彼はキリト。昨日買い物した時に色々あってな。クリームもキリトに貰ったんだ」
「ああ、そういえば誰かにもらったって言ってたな。あれをくれたのはあんただったのか。
久々にうまいと思ったよ、ありがとうな。
俺はウィザードだ、よろしく!」
「キリトだ、よろしく。」
「キリトは二人だけのパーティーか?」
「ああ、そうだけど……」
「なら俺達と組まないか?俺達も二人なんだ。いいよな、ウィザード」
「俺はいいぜ」
「お、助かるぜ。いいか?」
キリトが隣の少女に話かける。
「……別にいいわ」
「じゃあ決まりだな!」
俺と晴人は一度パーティーを解散し、キリトのパーティーに入った。
「よーし、そろそろ組み終わったかな?」
ディアベルが話し始めた時だった。
「ちょう待ってんか!」
急に一人の男が壇上へ飛んだ。
「わいはキバオウってもんや。ボスと戦う前に言わせて貰いたいことがある。
こん中に、今まで死んでいった二千人に詫び入れなあかん奴がおるはずや!」
「何言ってんだあいつ?」
周りがざわつき始める。この場でそんなことを言い出したら、ウィザードのような疑問を持つのが普通だ。
だが、俺はこの場で誰に白羽の矢が立つのか、大方予想がついていた
「……どうせベータテスターのことだ」
案の定、キバオウと名乗った男はベータテスターへの文句を連ねていた。
ふと横を見るとキリトは深刻な顔で見つめていた。
「発言いいか?」
急に別の男が壇上へと上がる。
「俺の名前はエギルだ。
キバオウさんあんたが言いたいのはつまり、元ベータテスターが面倒を見なかったからビギナーが沢山死んだ。
その責任をとって謝罪、賠償しろ、と言うことだな?」
「そっ……そうや!」
するとエギルは、ポケットから何かを取り出した。
「あれって……」
「ガイドブックか」
エギルが取り出したのは俺たちもよく知る、一層のガイドブックだった。
「このガイドブック、あんたも貰っただろ?道具屋で無料配布してるからな」
「もろたで、それがなんや?」
「配布していたのは元ベータテスター達だ」
その一言に周囲がどよめいた。キバオウも驚いたように目を見開いている。
「いいか、情報は誰にでも手に入れたんだ。なのに沢山のプレイヤーが死んだ。
その失敗を踏まえて俺達はどうボスに挑むべきなのか、それがこの場で論議されると俺は思ってたんだがな」
ついにキバオウは黙り込んだ。
「よーし、じゃあ再開していいかな?
ボスの情報だが実は先ほど例のガイドブックの最新版が配布された。
それによるとボスの名前は……」
そこからは有意義な情報を得ることができ、結果として俺達にとってボス攻略会議はとても価値のあるものとなった。