仮面ライダー×仮面ライダー SAO大戦   作:BRAKER001

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武器破壊ペナルティ

ガッ、ベキベキベキ……ドゴンッ!

 

「アハハハハハ! 割れた! 割れたぞ!」

 

「ハハハハハハ! 終わった! ザマアミロッ!」

 

 クエストが始まってから三日目の朝、俺たちはほぼ同時に岩を割ることに成功した。

 

「……どうしたんダ? お前ラ……」

 

 それはもう他の人が見たらドン引かれる位のテンションで。

 

 

 

 ふたり仲良く老人からボロ切れをふんだくって顔を拭い、クエストが終わったことと《体術スキル》が増えたことを確認してやっと一息つく。

 

「もうあの顔は見納めなのカ。記録結晶があればなァ……」

 

「頼むからやめてくれ。ただでさえ嫌われ者なのにそんなもの残したら何が起きるか分かったもんじゃない……」

 

「そうカ? 案外見方が変わったりするかもしれないゾ?」

 

 まあそれは冗談なんだがナ、とアルゴは続けてから真面目な顔になった。

 

「で、キー坊達はウルバスに行くつもりなのカ?」

 

「俺はそのつもりだ。さっきブレイドにメッセ送ったら、あいつもウルバスに居るらしいし」

 

 ウィザードはブレイドと合流するつもりらしい。クエストが終わり別行動する理由もなくなったのだろう。

 

「俺は……ウルバスにはまだ戻らなくていいかな。せっかくこんな場所まで来たんだし」

 

 どのみち他のクエストなども見るつもりなのだから端から潰した方が楽だろう。

 ……というのは本当の気持ちなのだが、一方で、まだ賑わっているだろう主街区を堂々と歩き回る気にならないという気持ちもあった。

 

「そうカ……まあなんダ、情報が必要ならいつでも言ってくれヨ?」

 

 そんな気持ちに気付いたのかどうかは分からないが、アルゴは笑みを浮かべながら冗談まじりに言った。

 

「でも、どうしてそんなことを?」

 

 先ほどアルゴが真面目な顔で話していたのを思い出す。

 

「あぁ、ちょっと妙な噂を聞いてナ…」

 

「妙な噂?」

 

「うーム、裏付けが取れてないことを話すのはオレっちのポリシーに反するんだガ……とはいえ事実ならオレっちだけの手にも負えないシ……」

 

 アルゴは少し悩み、意を決したように話し出した。

 

「他言無用で頼むゾ……プレイヤーがやってるウルバスの鍛冶屋で、強化時に武器が壊れたそうダ」

 

「なっ……!」

 

「武器が壊れた!?」

 

 アルゴの話にウィザード共々驚く。

だってそれは……

 

「強化失敗のペナルティーってことだよな。でもそれって……」

 

「ああ、ありえないはずだ。武器が壊れるなんて聞いたことがない……」

 

 少なくともベータ時代でのペナルティは、無難なところで素材のみが消えるか、強化したステータスが変更される……最悪でもステータスが減少する程度で済んだはずだ。

 

「そういうわけでオレっちも必死に調べてるんだが……事が事だけに大事にするわけにもいかなくてナ」

 

 確かに、そんな情報が出回ってしまったら大騒ぎになるだろう。

 

 しかし引っかかる……いくらデスゲームとはいえ、そこまでするだろうか。

 茅場はこのゲームを出来る限り長続きさせたいだろう。

 それなのに、わざわざ生命線である武器を消滅させてしまっては、プレイヤーに死んでもらいたがっているようではないか。

 

「確かに腑に落ちないな……分かった、気にしておくよ」

 

「ああ、頼ム」

 

「にしても変だな」

 

 ふとウィザードが声を出した。

 

「だからオレっちも頭を抱えテ……」

 

「いや、そりゃ起きたことも変だけど。

大事にしたくないってことは大事になってないんだろ?」

 

「少なくとも街で大騒ぎになってるってことはないナ」

 

「それだ」

 

 ウィザードは少し考え、言葉を続けた。

 

「つまり……誰もそのことを騒いでないんだろ?」

 

 そこまで言われてやっと俺もウィザードが言いたいことに思い当たった。

 

「鍛冶屋側が黙ってるのはまあ分かる、でも強化を依頼した側が黙ってる理由はなんだ?

少なくとも俺なら大騒ぎする自信があるぞ?」

 

……後半部はさておき。

 

 確かにそうだ。自分の武器が壊されたとあれば普通ショックなり怒りなり、少なくとも静かでいられるはずがない。

 そして、なんらかの騒ぎが起きれば、大事にならないはずなどないのだ。

 

「アー……それなんだがナ」

 

 バツの悪そうにアルゴが口を開く。

 

「ん?」

 

「とりあえず、武器を壊された奴が言いふらすことはない……はずダ」

 

「壊された奴を知ってるのか?」

 

「うーン、どちらとも言えないんだガ……何にせよ、それに関してはオレっちからは言えないナ。

今は大事になる心配は無いだろうってことで納得してくレ」

 

「うーん……?」

 

「まぁアルゴがそう言うならそこから先は聞かないでおくよ」

 

 おそらく、壊された人本人から依頼を受けたのだろう。そしてその本人はそのことを知られたく無い…といったところか。

 

「助かル。まあオレっちが言いたかったのは気をつけてくれってことだけダ。

別にこの前みたく、何か教えて欲しいとかじゃ無いから安心してくレ」

 

「分かった。サンキューな、アルゴ」

 

「そこまで言われて何もしないままって言うのもなんだか……まあ俺も了解した。

後でブレイドにも言っておくか」

 

「オイラ他言無用って言っタばっかなんだガ……まぁアイツなら多分言いふらすこともないカ」

 

 結局、ブレイドやアスナ辺りは知ってた方がいいかもしれないと言うことで話はまとまり、俺は散り散りに分かれた。

 

 

 

 

 

「まぁ、納得できないよな……」

 

 一人森の中を歩きながらさっきの話を思い出す。

 さっきは分かったと言ってしまったが、俺も気持ちはウィザードと同じである。

 

「武器が壊れると言うと……確かエンド品の強化で発生したっけか」

 

 エンド品……強化上限回数まで武器を強化し、良くも悪くもそれ以上強化できなくなった武器だ。

 

「でも、間違ってエンド品を強化したなんて考えられないよなぁ……」

 

 プレイヤーが知らなかった可能性は僅かなりにあるとしても、鍛冶屋側はさすがに気づくはずだ。

 何よりそんなことならアルゴが調べたりしないだろう。

 

「とすると……何かの間違いでエンド品が強化された?」

 

 例えばそう、武器を取り違えたとか。でも何で……

 

「!?」

 

 いや違う、取り違えたんじゃない。もしわざとすり替えたのだとしたら……?

 

「でも、それっ…て…」

 

 だが方法が分からない、それにそれを確認する方法も……

 

「いや、確認する方法はあるにはあるか……」

 

 だがもし本当にすり替えが起きているのだとしたら、グレードを下げたものに変えられるだけかもしれない。

 そしてその場合、確実な証拠は残らない。

 

「変えの効かない武器、レアドロ品か……あそこのとかなら丁度いいな」

 

 俺は適当なレア武器を狙うため、目的地に向かって足早に歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「武器破壊ねぇ……」

 

「信じられない話だよな」

 

 ウルバスで晴人と合流してから1時間ほど。

 ウルバスのクエストは大したことがないか色んな人がやっていて時間がかかるかの二択だったため、周りのものから潰そうということで移動中である。

 

 そんな最中、晴人が話した内容が鍛冶屋で武器が壊れる事件があったというものだった。

 

「確かに信じられないな……」

 

 勿論そんなことが起きるのが信じられないというのはある。だが、もう一つ。

 

(現時点でプレイヤー鍛冶屋なんか早々いないよな……)

 

 そして、数少ないプレイヤー鍛冶屋の一人を俺は知っている。

 数日前に街で話したあの少年である。

 

(奇妙な巡り合わせもあったもんだ)

 

「ブレイド?」

 

「ん? あぁ悪い、何だっけ?」

 

 どうやら考えこんでいて晴人の話が耳に入っていなかったらしい。

 

「まぁいいけど、お前素材集めしてたんだろ? 強化どうするんだ?」

 

「あぁ、とりあえずは置いておくよ。まだ強化に必要な最大数を集めきった訳じゃないし」

 

「へぇ、珍しい。お前最低数で賭けに出たりとか割としてなかったっけ?」

 

「あれは成功率が50%を軽く超えてる時だけだ。それに……そんな話を聞くとな」

 

 正直なところ、ウルバスであの鍛冶屋の少年に強化してもらうつもりだったのだが、ウィザードからクエストが終わったというメッセージを受けてごたごたしてるうちに、忘れてしまったのが事実である。

 しかしこうなってしまうと、彼を疑う訳ではないが確実性を求めたい。

 

「……何かの間違いってことはないんだよな?」

 

「そりゃあ俺自身が見た訳じゃないから分からないさ。でも、アルゴの情報を疑い出したら仕方ないだろ?」

 

 確かにその通りである。情報屋の情報を(いくら売られたものでないとしても)疑ったら何も始まらない。

 

「……まあ今は考えたって仕方ない。とりあえず、どのクエストを受けるか考えようぜ」

 

「それもそうだな。どんなクエストがあるんだっけ?」

 

 俺はこの話を打ち切った。

 今は情報が少なすぎるというのは嘘ではないが、もし彼が事故では無く武器を壊したのだとしたら……うっすらそう考えてしまった自分に嫌気がさしたからだ。

 

 しかし、皮肉にも問題はそこまで先延ばしにならなかったのだった。


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