次回からは原作では集とキョーコ先生編に入り、
出番はあまりないので楽達が1年の時にした
オリエンテーション編をやろうと思います。
『…………ということでプール掃除手伝って欲しいんだけどダメか?小野寺とか春ちゃんとか呼んでるからきっと楽しいと思うんだけど?』
俺は今一条先輩と電話をしている。昨日、一条先輩のクラスがプール掃除を頼まれていて何人かにやってもらわないといけなかったらしいが一条先輩の担任がその事を忘れていたらしい。担任が気づいたのは放課後で、その時教室に残っていた一条先輩に土曜日。つまり、今日掃除する事を任せたらしい。
「はぁ、プール掃除ですか。確かに楽しそうですよね。掃除終わったらその後遊んでもいいと言うんですからなおさら」
小野寺先輩や小野寺の水着も気になる。きっと似合っていて可愛いんだろうな。
『だろ?じゃあ、引き受けてくれるか?』
「……すいません、先輩。行きたいのは山々なんですが無理です」
『えっ?何で?』
「だって、俺今『お兄ちゃん、大丈…………あ!!病人なのに起きてちゃダメでしょ!ちゃんと寝とかないと!!』……という事です」
俺は昨日の夜にいきなり体調を崩し熱を出していた。本当いきなりの事でびっくりしている。
「すいません。私、黒崎凪の妹の黒崎咲です。兄はただいま体調を崩して寝込んでいるのでお電話はお控えください。それでは……」
「あ、おい!」
電話の通話を切り俺の携帯を投げてくる。
「ダメでしょ、病人なんだからちゃんと寝てないと!」
「いや、電話するくらい別に」
「よくない!ほら、おかゆ作ったら食べて。その後、お薬飲んでちゃんと寝てね!」
今、俺の家には俺の妹の咲しかいない。姉貴は友達と遊んで来ると言って朝早くに家を出てしまった。対する妹の咲。こいつは遊ぶ約束をしていたのに急用が出来たので無理と言って俺の看病をしてくれている。
「よかったのか?今日、ショッピングに行くつもりだったんだろ?」
「今さら気にしてももうどうにもならないし別にいいよ。その代わり、風邪が治ったらお兄ちゃんと2人で行くからね?」
「お、おう」
了承すると咲はにっこり笑った。やば、ちょっと可愛い。
「はい、お兄ちゃん。おかゆだよ〜」
「あ、あぁ、悪いな」
……こういう時ってカップルなら『はい、……君。あ〜〜ん』とかやるシチュエーションではないのだろうか?俺もできればそういう体験をしてみたいものだ。
「はい、お兄ちゃん。あ〜〜ん」
まさか本当にやってくれるとは思わなかったよ!
「咲?何をしてるんだ?」
「だって、お兄ちゃんしんどそうだから私が食べさせてあげようと思って」
くっ……何て優しい妹なんだ!こんなに優しい妹に育ってくれてお兄ちゃん嬉しいよ!!
「じゃ、じゃあ……あーん」
咲が俺の口の前に持ってきてくれてるレンゲを口の中に入れる。
「あちっ!!」
「あ、ごめん。今度はちゃんと冷まさないとね」
レンゲでおかゆを掬い、フーッ、フーッと息を吹いてもう一度口の前に持ってくる。
「はい。今度は大丈夫だよ」
「あ、ありがとな」
何度かこのやり取りを繰り返し、おかゆを一粒残らず食べ終えた。
「ふーっ、美味しかったよ。ありがとな」
「ううん、お兄ちゃんのためだもん。今、水とお薬持ってくるからちょっと待っててね」
お盆におかゆの茶碗を乗せて、咲は1度部屋を出て行った。…………うん、何だか結婚したての夫婦になった気分だ。結婚したらこんな感じになるのだろうか。
「でも、俺に好きな人か……」
俺は恋の方で異性を好きになった事は1度もない。幼馴染でもある風を恋愛的に好きになる事はなかったのだ。この先、俺が恋する事などあるのだろうか?
「ただいまー、ってお兄ちゃん?何でそんな難しそうな顔してるの?」
「いや、別になんでもないよ」
「そう?じゃあいいけど……あ、これお薬ね」
「サンキュー」
風邪薬を受け取り、それを口の中に放り込み薬を流し込むため水を飲む。
「さてと。じゃあ、薬飲んだしちょっと寝るな」
「うん。ゆっくり休んで元気になってね。私は隣の部屋にいるから何かあったら呼んでね」
「あぁ、サンキューな」
「別にいいよ。お兄ちゃんのためだもん」
その言葉を聞いて俺は目を閉じた。
俺はもしかしたらとても出来のいい妹を持っているのかもしれない。
『お待たせしました。待ちましたか?』
『ううん。待ってないよ。私も今来たところだから』
『小野寺……先輩』
『もう……私達付き合ったんだよ。小野寺じゃなくて下の名前で呼んでほしいな。先輩もいらないよ』
『じゃあ…小咲さん』
『うん…凪君』
俺と小咲さんの距離が近づいていく。そして、キスできそうなくらいに近づき………………
「………………俺、今何の夢みてたんだよ?」
目を覚ました。だが、何だかものすごい夢を見た気がする。俺と小野寺先輩が付き合って。そして…………
「いや、ちょっと待て!!そんな事があれば本当に嬉しいけど俺と小野寺先輩にそんな事があるわけないだろ!!!」
「何がそんな事あるわけないの?」
「えっ?」
いきなりの声に驚きそっちの方を向くとそこには正座して本を読んでいた小野寺先輩が。
「あれ?先輩。どうして?」
「凪君が風邪引いたって一条君に聞いたからプール掃除を終えてこっちに来たの。具合はもういいの?」
「え、えぇ。まぁ、マシにはなりましたけど…………じゃなくて、何で俺の家に。小野寺先輩は一条先輩と一緒にいたいんじゃ」
「べ、べべべ別に一条君と一緒にいたいわけじゃ………………」
わかりやすいくらいに焦る小野寺先輩。やっぱりこの人をからかうのは面白い。
「ただ、この前のお礼がしたくて。あの時私を助けてくれたから」
あの時というのはおそらく鉄パイプが落ちてきた時の事だろう。
「そんなの別にいいですのに……そういえば、よく咲が俺の部屋に通してくれましたね。あいつの事だから全力で先輩を止めると思ってたのに」
「うん。止められた。でも、出掛けるところみたいだったから、『出掛けてる間に凪君に何かあったら危ないでしょ?』って言ったらしぶしぶ通してくれたよ」
出かけるというのはおそらく晩ご飯の支度でも買いに行ったのだろうか。
「凪君の妹って何か春に似てる」
「春に?」
「うん。凪君を守ろうとしてくれる事とか、他の女の人を近づかせないようにする事とか、必死に看病しようとしてる事。全部春に当てはまるもん」
「あぁ……確かに」
小野寺も一条先輩を何としてでも遠ざけようとするもんな。そういうところは咲と小野寺はそっくりだ。
「先輩、移ったらダメだしそろそろ帰った方がいいんじゃないですか?俺は全然大丈夫ですから」
「凪君の妹と約束したから。私が帰るまではお兄ちゃんのそばにいてくださいって。それまではここにいる事にする」
「そうですか…………」
帰ってください、と言ったのは別に小野寺先輩が嫌いとかそういうのじゃない。ただ、2人っきりだとさっきの夢を意識してしまってどうも落ち着かないのだ。小野寺先輩を見てるだけで顔が赤くなるのを感じる。何だか、先輩も顔を赤くしている。………………あれ?
「先輩。もしかして……トイレですか?」
「ち、違うよ!!凪君失礼だよ!」
「すいません…………あ、正座してるの辛いんですか?」
「そ、それもあるんだけど……えっと、その…………」
何だか小野寺先輩の様子がおかしい。さっきよりも顔が赤くなっている。
「や、やっぱりいい!凪君、リンゴとかあるかな?私むいてあげるよ?」
「え、あ、いや、別に」
「き、気にしなくていいの!私がしたいだけだから!!」
そう言って先輩は勢いよく立ち上がった。
「先輩、さっき正座辛いって言ってたのにそんないきなり立ち上がりでもしたら!!」
「へっ……わっ!!」
正座していて足が痺れていたのにいきなり立ち上がったせいで小野寺先輩はバランスを崩した。そのせいでこっちに倒れてくる。俺も寝たまま小野寺先輩を受け止めようと手を出す。
「………………」
「………………」
結果的には俺も小野寺先輩も怪我をせずにすんだ。だが、俺も先輩をうまく受け止められず小野寺先輩が俺に倒れこんで来たような格好になってしまった。そして、俺はそのせいでさっきの夢を思い出し全く何も言えなくなる。
「な、凪君…………ごめん。すぐどくから」
「いや、俺もすいません。うまく受け止められなくて」
先輩が起き上がろうとすると俺と先輩の目が合った。たった今こんな事があったせいでお互いに目をそらし合う。
「お兄ちゃん……帰ったよー。だいじょー………………」
そして、まるでタイミングを計ったかのように俺の部屋に入ってくる妹の咲。ブラコン気味の咲がこんな様子を見たらどう思うか。そんなの考えなくてもわかる。
「ふ、2人とも何してるの!!小野寺さんも早くお兄ちゃんから離れてください!!!」
案の定、咲は小野寺先輩に矛先を向けた。
「や、あの、違うの。今のはバランスを崩しただけで…………」
「言わなくてもいいです!やっぱりあなたにお兄ちゃんを任せたのは間違いでした!!」
その後、先輩と俺は小一時間ほど咲に説教され、咲の先輩への好感度もだいぶ下がってしまったのであった。
どうでしたか?
よく考えたら前作でヒロインだったるりちゃんがまだ
一回も出てない。集も出てないですねw
感想と訂正があればお待ちしております!