最近投稿速度が上がって嬉しいブリザードですが、今回の話。もしかしたら、なんでそんな展開にしたんですか、と思う人が多くいるかもしれません。
けれど、これは私がこの作品を書いて、更新速度が遅くなった頃から実現させたかった話です。
これを呼んでどう思うかは読者のみなさま次第ですが、私自身こうして書いて後悔はないと思っています。ご了承ください。
では、どうぞ〜。
「すいません小咲さん、春。家の事情とはいえ泊めてもらって。今度またちゃんとお礼しますね?」
朝起きて風との約束があるため、早くに『おのでら』出ることにした。
「ううん、いいの。私も凪君とたくさん話せて楽しかったよ。ね、春?」
「う、うん。そうだね」
(この様子。やっぱりお姉ちゃん、昨日凪といっぱい話せたんだろうな。いいな……ってダメ。そんなこと考えたら)
確かに昨日は楽しかった。ただ、1つ気になるのは昼の目の下が少し赤い。まるで、ずっと泣いてたみたいに。
「春、昨日あれからなんかあったのか?」
「う、ううんなんでもない。ただ少し眠れなかっただけ」
「ふーん……まぁ体には気をつけてな」
「うん、ありがとう」
なんだか今春は無理して笑った気がした。そんなに昨日言った事を気にしているのかな?まぁ、俺も気にしてないわけではないけど。
「では、また明日。学校で」
「うん、ばいばい凪君」
「ばいばーい凪」
俺は2人に手を振って、そのまま風との待ち合わせの公園に向かう事にした。
「さてと、時間は9時半。少し早すぎたかな?」
「そんな事ないよ、凪君」
「うわぁ!!びっくりした」
いきなり後ろから名前を呼ばれ振り向くとそこには風の姿が。
「脅かすなよ。てか早いな。待たせた詫びにジュースでも驕ろうか?」」
「別にいいよー。私もさっき来たところだから」
「ならいいけど……で、今日はどこに行くんだ?」
「うーんとね。まずは映画かな?見たい映画があるの」
「映画か。まぁいいぞ」
「じゃあ、いこー」
そう言って風は俺の手を握る。突然すぎて、俺はとっさに手を離してしまった。
「い、いきなりどうした!」
「ん〜?今日はなんだか凪君と手をつなぎたい気分なの。だめ?」
「だめっていうか」
いつも腕組んだりしてくるから慣れてるとはいえ、びっくりする。てかいつもは許可なく手とったり腕組んだりしてくるのに、なんで今日はいきなり許可取ろうとするんだ?……そういえば今日はなんだか格好もいつもと違うっぽい気がする。
「だめ……なの?」
うっ、そんな目で俺を見ないでくれ。はいとしか言えなくなる。ていうか、最近俺頻繁に女の子と手繋いでないか?小咲さん、春、風、咲。
「まぁ、いいよ。ほら」
今度は俺から風の手を握る。すると風はフフッっと嬉しそうに笑った。
「じゃあ、行こっか…………あ、その前に。凪君?」
「ん?」
「今日は私の事、風じゃなくて、涼って呼んでね?」
「はぁ?」
「いいでしょ?昔は涼って呼んでくれたんだし」
確かに俺は小学校低学年の頃は風の事を涼って呼んでた。姉貴と咲は元から風だったのでそれが俺にも移って、今の呼び方になったのだ。
「なんで今更昔の呼び方に変えねえといけねえんだよ?」
「まぁまぁ。細かい事は気にしないで?」
「ったく…………まぁいいけど」
「じゃあ、はい。今呼んでみて?」
「いや別にいいだろ」
「いいから〜」
「………………涼」
なんか無性に恥ずかしい。今日風……じゃなかった。涼はますます考えてる事がわからない。
「うん、凪君。じゃあ今度こそ行こ〜」
「へぇへぇー」
適当な返事をして涼と手をつなぎながら映画館へと歩き出す。
「なんかこうしてると、小学校の頃思い出すね?」
「…………そうだな。あの時は毎日お前と手を繋いで学校から帰ってたもんな?」
「うん。覚えてる?凪君が雨の日に私が傘忘れて帰れなくてどうしようって時に、凪君、なんのためらいもなく、凪君の傘の中に入れてくれたの」
「あぁ………ぼんやりとだけど覚えてる」
小学2年生の頃、涼が傘忘れて家に帰れなくてどうしようって泣きそうな顔してる時に、俺が持っていた傘の中に涼を入れて帰ったんだったかな。
「あの時も私の手を握ってくれてたんだよね。凪君は優しいよね〜」
「そうか?あの時の状況なら男なら誰でもそうすると思うけど?」
「そんな事ないよ〜。あれはきっと凪君だからそうしてくれたんだよ」
「そうかな?」
「そうだよ〜。私がそう言うんだから」
「まぁそういう事にしとくか」
「うん。まぁそれは置いといて他にもいろんな事あったよね〜?」
涼とゆっくり歩きながら昔話をしていく。こんな事を悪くないなと思っていると、映画館に着いた。
「で、なんの映画がみたいんだ?」
「えっとね〜。あ、これこれ」
涼が指差すのは最近流行っている恋愛映画。俺もCMやニュースで見た程度だが人気があるという事は分かっていた。
「いいぞ。じゃあチケット取りに行くか。俺が払うよ」
「え?いいの?」
「あぁ。バイトで稼いだお金もあるし、気にしなくていい」
「ふーん……じゃあお言葉に甘えようかな?」
了解、と返事をするとともにカウンターの方は歩き出す。日曜日。それもお昼前という事もあり、映画館には人がたくさん来ていた。
「涼、手放すなよ?」
「わかってるよ。もし離れ離れになったら、私が大きな声で凪君を探してあげるよ〜」
「そいつは頼もしい。じゃあ俺も離れ離れになったらお前の事を大きな声で呼んでやるよ」
「さすが凪君、頼りになる〜」
まぁそんな事はさせないと思いながら、行列に並ぶ。これだけ人が多いと中々列が進まないな。
「にしても、暑いな。夏でこんなに人が多いとそうなるか」
「そうだね〜。それにカップルが多いから、そのイチャついてる感じの熱い熱のせいじゃない?」
「プッ、それはあるかも」
涼のいう事は一理あると思い、思わず吹き出して笑ってしまう。
「………………凪君、やっと笑った」
「へっ?」
「ここまで歩いてくるのにたくさん話ししたけど、凪君全然笑ってなかったよ?」
「えっ?そうだったのか?」
全然気づかなかった。でも言われてみれば確かにいつもしているツッコミとかは全然してない気がする。
「もしかして、何か悩みでもある?」
「いや、そんな事は…………」
「嘘。凪君、私に嘘ついてもすぐバレるよ?」
「うっ…………」
そうだった。幼馴染である故か、涼には俺が何か隠し事をしようとしてもすぐバレてしまうのだ。長年の付き合いというやつだろう。
「まぁだいたいわかるけどね。春と小咲さんの事でしょ?」
「ち、ちがっ!『それも嘘〜」…………」
「まぁ、何があったとかは聞かないけど、今日は私とデートなんだから、もっと笑ってて欲しいって思うんだけど?」
「あ、あぁ。そうだな。ごめん……」
「いいよ〜。あ、ほら。列進んだ。前に進も?」
「お、おう」
涼に言われ前に進む。確かに、せっかく涼が誘ってくれたんだし、楽しまないと損だよな。よし!
「涼?なんか食べたいもんあるか?ついでに買ってやるよ」
「いいの〜?凪君太っ腹〜。じゃあポップコーンのキャラメル味とオレンジジュースね?」
「りょーかい!」
列が進むのを待ちながらも涼と話をする。たわいもない話だけど、2人の事で悩んでる俺からすれば凄く考える事を紛らわせるのにいい感じになった。
「ふう、楽しかった。まさかあんな展開になるとはね〜?」
「そうだな〜」
映画の内容として、好き同士だった2人のうちの男が遠くに離れる事になるから、2人の気持ちはそっと胸の中にしまうつもりだったのが、友達に勇気を押してもらい、男が好きな女の子に告白して、付き合い始めるという話になるとは。人気だから分かっていたけど、結構面白かった。感動もした。
「そろそろ昼か。涼、お昼どうする?」
「あ、それなら私弁当作ってきたから。それ一緒に食べよ〜」
「おう。って、お前昨日俺の家族と泊りがけでどこかいってたんだろ?よく、弁当なんて作れたな」
「あ、うん。帰りの車の中で寝たし、朝早くに帰ってきたから」
「ふーん。まぁいいや。どこで食べる?」
「じゃあ、いつもの公園で」
「またかよ。まぁいいけどさ」
涼に手を差し出すと、涼は少し驚いたがすぐに笑って俺の手を握り返してきた。
「な、なんだよ?」
「ううん、まさか凪君の方から手出してくるなんて思わなかったから」
「べ、別にいいだろ」
「うん。私は嬉しいよ〜」
またゆっくりと歩いて、いつもの公園に向かう。今度も涼はずっと俺に話を振ってくれていた。
「ふぅー、着いた」
「そうだな。暑いし、日かげで食べようぜ」
「うん。そうだね〜」
影のあるところに向かい、涼はカバンからレジャーシートを取り出す。
「持ってきてたのか。じゃあ、俺飲み物買ってくるから」
「あ、大丈夫。水筒持ってきてるから〜」
「……本当用意周到だな。じゃあ食べるか」
レジャーシートに2人で並んで座り、涼はカバンから弁当を取り出す。
「へぇ、結構作ってきたんだな。大変だったんじゃないかな?」
「まぁ、それなりにね〜。でも味は保証できるよ」
「……なんで?」
「咲に味見してもらったから〜」
「感想は?」
「美味しいって。『これでお兄ちゃんも風さんの手でイチコロですね!』だって?」
「俺はそう簡単に落とされませんよ、と。じゃあいただきます」
たくさん作ってある中のおかずに、最初に卵焼きに目をつけてそれを口にする。
「…………うまいな」
「でしょ〜?私、凪君の好きなものならなんでも知ってるんだよ〜」
「さすが涼。お前は料理できない系の女子だと思ってたのに」
「ひど〜い。でも、そんなことないってわかったでしょ?」
「まぁな。本当に美味しいよ」
「ふふっ、ありがと……………………ねぇ、凪君?」
「ん?どうした?」
「春と小咲さんの事で何があったのか教えてくれない?」
続けて卵焼きを掴もうとしたはしが止まる。
「…………どうして?」
「凪君、私が指摘してから、指摘する前よりは笑ってくれたけど、明らかに無理して笑ってたよ?気づいてなかっただろうけど」
「…………本当に涼はなんでもわかるのな」
「分かるよ〜。幼馴染だもん」
「そうか。……そうだな。幼馴染だもんな」
「うん」
さっきまで明るく振舞っていた涼の顔が一転して、いつもと違い真剣な表情で俺を見てくれている。
「…………ごめん、話せない」
「どうして?」
「だって…………」
これを話したら、俺は最低な人間だと思われてしまうかもしれないから。
「…………ごめん」
「……そっか。でもね、私はいつでも凪君の味方なんだよ?たとえ誰がなんと言おうと。凪君の悩んでる事で、世界の誰もが、凪君も攻めたとしても、私は凪君の味方で居続けるよ?」
「…………風……」
名前で呼んでと言われたの忘れ、いつもの呼び方で呼んでしまう。
本当に俺の事をなんでも理解してるのか。いつもは俺の事をからかって、それを見て笑って。いつでもニコニコと笑顔を絶やさない風は今、真剣な表情で俺の味方になると言ってくれている。だから、俺は気になった。どうしても気になってしまった。
「風、どうして……どうしてそんなに俺の事を?」
聞いてしまった。でも仕方ない。こんな事言われて気にならない奴がいるわけがない。
「だって…………私、凪君の事好きだから」
「………………………………え?」
「好きだから。凪君が。小学校の頃からずっと」
突然の告白。いつもなら、ニコニコしながら『私、凪君の事好きだよ〜』と冗談半分で言ってくるのに、今は違う。顔を赤くして、俺の頬に手をやってそう言ってきた。冗談だ。これはいつもの冗談に決まっている。
「………………や、何言ってるんだよ。どうせいつもの冗談なんだろ?風。それに俺はお前の事」
「……凪君は今の私がしてる事、冗談に見えるの?」
「うっ……………」
どうすればいい。咲やいつもの風のような感じで言ってくれるならいつものようにツッコミで返せばいい。でも、こんな突然の告白で俺はなんて返せば…………
「…………凪君」
「え、あ、その………俺は…風の事」
「幼馴染としか見れない?」
「な、なんで…」
「言ったでしょ?凪君の考えてる事は私、なんでもお見通しなんだよ〜?」
「うっ…………」
どうしよう。なんでもお見通しの風を俺はどうしたら…………
「ねぇ、凪君?」
「は、はい!?」
「私と付き合ってよ〜」
「……………………えぇ!?」
何言いだすんだ。いや、告白したんだからそう思うのは当然だろうけど。
「私の事幼馴染としか見れない。それはわかったよ〜。じゃあさ、私と付き合って、その考えを変えてくれればいいんだよ〜」
「変えるって…………………何を?」
「それはもちろん。私を彼女として、女として見ること、だよ〜?」
「えぇ!?いや、そんな。俺は……」
今まで幼馴染として俺と一緒にいてくれた風を女として見るなんて…………
「そんな事……」
「そんな事できないかどうかは付き合ってみないとわからないよ〜?」
「うぅ……」
どうしよう。本当にどうしよう。昨日から一気にいろんな事起きすぎて、頭の中がついていかない。
「……凪君」
「は、はい」
風は突然俺の手を握った。
「もしこの手を握り返したら私と付き合う。手を離すなら私と付き合わない。これは凪君と決めないといけない事だから、凪君が決めて。私はどんな結果になっても凪君を責めたりしないよ?
私は目を閉じてるから凪君は今ゆっくり考えて。あともう一回だけ。私は凪君がどんなに悩んでても、どんなに辛くても凪君の味方だから〜。
風は俺の顔を見てにっこり笑った後、目を閉じた。
どうしたらいい…………いや、答えはもう出てる。この手を離す事。俺は風とは付き合えない。だって俺は………………の事が好きだと昨日気づいたから。
「だけど……」
この手を離し辛い。俺が悩んでいるのがわかっていて。その悩みを俺の事をなんでもわかる風はおそらく理解していて。そのうえであんな事を言うのだから。
『凪君、一緒に帰ろう〜?』
『どうしよう凪君、雨が降ってて帰れないよ〜』
『凪君、明日公園で遊ぼう?理沙さんや咲も誘って〜』
小学校の頃の風との思い出が頭の中で蘇ってくる。なんでこんな時に…………
『凪君、春ともどもよろしくね?』
『凪君、私のこと好き?』
『私は好きだけどな〜』
『……じゃあ、もし私が幼馴染じゃなかったら凪君は私に振り向いてくれたのかな?』
『凪君へのスキンシップ〜』
『私は凪君の味方で居続けるよ?』
『好きだから。凪君が。小学校の頃からずっと』
なんで今になって風の事をこんなに思い出すんだ。風は俺の事を高校に入ってからはずっと好きって言ってたな。それを俺は本当にそうだと気づかなくて…………俺って鈍感なんだな。
「風……」
「なに〜」
風は目を閉じながらも返事をする
「その、ごめんな。俺鈍感だったんだな」
「そうだよ〜。やっと気づいたんだ。凪君の鈍感」
「うっ……」
「でも、そんなところもわたしは好きなんだよ〜」
「そっか。じゃあもう1個。俺の悩み理解してるだろ?」
「そうだね〜。なにで悩んでるかは分かるよ〜」
「だよな……さすが俺の幼馴染」
悩みがあってテンションが暗かった俺に風は…………本当にずるいな、風は。
「本当にずるいよ、風は。もしかして、俺がこんな悩む状態になるのを狙ってた?」
「さぁ、どうでしょう〜?」
「ったく、いつも通りすぎるな、風は」
俺の悩みは多分解消されないだろう。実際今でも風の事を恋愛的に好き、という風には捉えられない。風は俺の幼馴染だ。そして、俺が好きなのは………………だ。
だけど、俺が悩んでるのを見て、理解して、感じて。そして俺を助けようとしてくれている。俺の悩みを理解した上で。俺が誰が好きなのか理解した上で、風は告白してきたんだ。
だから…………
「風……いや、涼」
この暑い中ずっと握っててくれた手。その手を俺は…………
握り返した。
「………………それが答えなんだね?」
風は瞑っていた目を開けて俺を見る。
「最初は手を離すつもりだったけどな。けど、俺がこんな状況の時に、あんな事言われたら流石に…………俺じゃなくて、どんな男でも心が揺れるんじゃないのか?」
「そうかもね……わたし卑怯かも〜」
「けど、俺はそんな卑怯な手に負けてしまった。今でも俺が好きなのは………………だ」
「うん。わかってるよ〜」
「この先どうなるかはわからない。俺の気が変わるかもしれない、本当に風……いや、涼に惚れるかもしれない」
「惚れるかも、じゃないよ?私が惚れさせるの〜」
「そっか。でもまぁなんだ。とりあえずしばらくはよろしく」
「しばらくじゃない。永遠に、だよ〜」
「ははっ、そっか。頑張れよ。俺も少しはお前の事よく見てみるよ。鈍感なりにな」
「うん〜。鈍感なりに頑張ってね〜」
そう言うとなんだかおかしくなってプッと吹き出して笑ってしまう。でもこの時わかった。俺今日ちゃんと笑えた事に。
「さっ、弁当食おうぜ。次はこのコロッケを」
「うん。それもきっと美味しいよ〜」
俺が今好きなのは………………だ。でもこれから付き合うのは涼だ。悩みが解決したわけじゃないし、この先どうなるかわからないけど、とりあえず今は今の事を考えよう。そう思った。
どうでしたか?
今回の話ハチャメチャなのは自分でもわかっています。ん?と思う人もいるでしょう。私がもっと文章力あればとこれほど思うことはありません。
前回の話の最後から風が告白するだろう、と思った人もいるかもですが、この展開は予想していたでしょうか?
タグは変更しておいたので問題ないはず。
今後の展開もおたのしみに!
感想と訂正があればお待ちしております。
今回は不評があっても仕方ないかなと思ってもいますw