物語、急に進みます。
では、どうぞ〜
春side
「な、凪君、こ、これ、どこにおいたらいいかな?」
「あ、それはまな板の上にお願いします」
「わ、わかった」
…………おかしい。なんてお姉ちゃんは凪に話しかけるだけでこんなに緊張してるの?
「凪君、小咲、休憩入っていいよー。あと、私今からちょっと出てくるから、凪君、悪いけど、今日長くいてもらえるかな?」
「あ、はい。わかりました。行きましょ、小咲さん」
「わ、わたしはまだ大丈夫だから、春、先に行って来たらどう?ね?」
…………おかしい。なんで凪と一緒に休憩しようとしないの?
「あの小咲さん。俺の作ったの味見してもらっていいですか?」
「え、いや、あの…………ごめんなさい!!」
「なんで逃げられたの俺?……春、代わりに味見して…………って、ない!!?」
…………おかしい。なんでお姉ちゃん、凪から逃げるの?………あ、凪の和菓子おいしい。
「ごめんね、凪。今日は少し長く働いてもらっちゃって。お母さんまだ帰ってきてないけど、よかったら晩御飯一緒に食べる?」
「え、お邪魔なんじゃ?」
「大丈夫だよ。凪がいるなら私も作るの頑張っちゃうから!!」
「な、なんなら、私も凪君のために料理作っちゃうから!!」
「「それはダメ!!!」」
やっぱりおかしい。お姉ちゃんが自分から料理作るなんて言うことあるわけがない。
「じゃ、じゃあお言葉に甘えて。姉貴に連絡してくるので少し待ってて下さい」
そう言って凪は携帯で電話をかける。その隙に私はお姉ちゃんに近寄った。
「ねぇ、お姉ちゃん。凪と何かあった?」
「べ、べべべべべべ別に何もないよ!!」
「お姉ちゃん、誤魔化すの下手すぎ……」
「うぅっ……」
あからさまにしょんぼりするお姉ちゃん。はぁ、とても可愛い。すごく和む……じゃなかった。
「で、どうしたの?言えないこと?」
「うん…………ちょっとね。凪君にも春にも話せないかな?」
(春はきっと凪君のことを……だから)
「ふ〜ん……じゃあ話せる時になったら話してね?」
「うん。ごめんね、春」
謝ってくるお姉ちゃんに私は微笑んだ。さてと、そろそろ私も晩御飯の準備をしないと……
「あの、春、小咲さん。ちょっといいですか?」
「ん?どうしたの?」
「いえ、その、本当に頼みにくい事なんだけど…………今日泊めてもらえない?」
「「へっ?」」
凪side
「あ、もしもし。姉貴?今日帰るの少し遅くなるけど、いい?」
『凪か?ちょうどいいところに。お前今日バイト先に泊めてもらえ』
「……………………は?」
いきなりの事で何も言えない。
「ちょ、どういう事だよ?」
『いや、私も咲も今日は家帰れないから』
「どうして!?」
『母さんと父さんと泊りがけで温泉行ってるから。あ、ちなみに風もいるぞ』
何てひどい家族だ。息子1人だけ置いてみんなで温泉とか………
「なんで俺誘わねえんだよ!!風はいるのに!!」
『誘おうとしたけど、お前電話にでないから。とにかくそういう事だから。バイト先小野寺のとこなんだろ?できるならそうしてもらえ。無理なら悪いが、友達の家に泊めてもらえ。じゃ』
「あ、おい、ちょっと!!」
どうすんだよこれ………
「て事なんで。ダメですかね?無理なら翔太とかに相談してみますけど?…………ってあの、2人とも?」
((どうしよう。凪(君)がとんでもなくかわいそう……))
なんか2人にものすごい同情されてる気がする。まぁ、そりゃそうだろうけど。
「と、とにかくお母さんに聞いてみるね?」
春は携帯を取り出し電話をかける。
「……あ、もしもしお母さん?凪がね今日家に帰れないらしくて、もしよかったら泊めて欲しいそうなんだけど?…………理由?なんというか、家族にハブられたみたいで」
ハブられたとかやめてくれない?俺マジで泣きそうなんだけど。
「うん、わかった。お母さんはいつ帰ってくるの?………え、今日帰ってこない?明日の朝に帰る?ちょっと待って、それは流石にやばいんじゃ。あ、お母さん!?」
プツッ、と電話が切れる音が聞こえた後、春はこっちを向いた。
「泊まるのは大丈夫なんだけど、凪が泊まるなら、私はお邪魔だろうから今日帰ってこないって……」
「えっとー。つまりそれは……」
今日は俺と小咲さんと春の現高校生3人で一夜を過ごせって事なのか?それは流石に………
「………と、とりあえず晩御飯作ろっか」
「お姉ちゃんはゆっくり休んでてね。お願いだから」
エプロン姿になった春が小咲さんを念入りに釘を刺してソファに座らせる。小咲さんは納得していないようだったが、仕方ないという感じでソファに座った。
「凪、晩御飯なにがいい?希望に沿ったものを作るけど?」
「なんでもいいぞー。ていうか、俺も手伝うよ」
「え!?いいよ。凪はお客さんなんだからお姉ちゃんと座って休んでて」
「泊まらせてもらうんだし何かしないと悪いから。エプロン貸してもらえるか?」
「でも…………」
「いいんだよ。俺も家では料理してるし」
「…………わかった。じゃあ、はい」
納得した春は着ていたエプロンを脱いで俺に渡してくる。
「凪は私の使って。お姉ちゃん、悪いけどエプロン借りるね?」
「うん。いいよー」
「なんで俺が春のエプロンを?俺が小咲さんにエプロン借りたらよかったんじゃないのか?」
「うーん………それはダメ。今お姉ちゃんお悩み中だから」
よく意味がわからない。なんで俺が小咲さんのエプロンを使ってはいけないのか。
「じゃあこれ借りるな」
春から受け取ったエプロンを着て俺もキッチンに入る。…………というかこれ春がいつも着てるエプロンなのか。なんだか恥ずかしい。でも得した気分。
「凪、今いやらしいこと考えたでしょ?」
「え!あ、いや、そんな事……」
「……変態」
「ご、ごめんなさい」
春に心を読まれた。なんでそんな事が出来たのかわからないけど、とりあえず謝った。
「まぁ、いいけど。で、なに作る?」
「無難にカレーでいいんじゃないか?」
「カレーか。いいんじゃないかな?ルーもあったと思うし」
「じゃあ決まりだな」
食材を準備して、2人で並んでそれらを切っていく。
「なんだか俺ら新婚の夫婦みたいだな」
「夫婦!!?」
「そっ。だってそうだろ?こうして2人で晩御飯決めて、食材切って、一緒に料理作るなんて…………ってどうかしたか?」
「ななななんでもない!」
顔を真っ赤にした春は手早く野菜類を切っていく。
にしても、春が俺の妻だったらどんなに幸せなんだろう。家事全般は出来るし、優しいし、可愛いし。仕事から帰ってきた俺を春が迎えてくれて。
『ただいまー』
『おかえり凪。晩御飯もお風呂の準備もできてるよ?』
『ホントか?さすが春だな。俺にはもったいない妻だよ』
『もう…そうやってすぐ褒める。嬉しいからいいけど。……ねぇ、凪。お風呂でも晩御飯でもなく、まずは私もいただいて欲しいな?なんて……』
………………最高だな!!今すぐ嫁にしたい!ってこんなこと前にも考えた事あるような。
「ねぇ、凪。凪ってば!」
「え、何?」
「ずっと呼んでるのに返事しないからどうしたのかなって思って」
「いや、俺の未来の事を考えていた」
「なにそれ……それより、凪に聞きたい事があるんだけど?」
「聞きたい事?」
「その………凪はさ、私と風ちゃんとお姉ちゃん。誰が好みのタイプなのかなって」
「え?」
好み?春と風と小咲さんで?なんでいきなりそんな事聞いてくるんだ春は?
「ちょっと気になってね。いいから答えて?」
「急にそんな事言われても………」
好みか。春はさっき考えた通りだし、風はなに考えてるかわからないけど、基本優しいし、一緒にいるとなにが起こるかわからなくて楽しい。小咲さんは基本春と同じだけど料理が壊滅的にできない。でも、抱擁力は春より上だし。
「悩むな。タイプって事は外見とかはなしにして内面的にって事か?」
「うーん……そうじゃなくて……その、付き合ってみたい、とか?」
「つ、つつ、付き合う!?」
「もしも!もしもの話だから!!」
「もしもって言っても……」
もしもの話でもここで春じゃなくて他の人を選べば春はショック受けるだろうし、どうすれば…………
「いや待てよ」
よく考えたらこれは前に風に聞かれた事を今一度確認できるチャンスなんじゃないか?自分の気持ちに正直なるチャンス。よく考えてみよう。俺は誰が好みなのか。
「あの、凪?例えばの話だからそんなに顔こわばらせて考える事じゃないんだけど」
風にああ言われてから俺真剣に考えた事なかった。だからちゃんと考える。春、小咲さん、風。みんな可愛いし、優しい。となると、いつまでも一緒にいたいと思う人。誰だ?…………
『……ううん。そのお誘い受けるよ。だから、しっかりとエスコートしてよね、凪君………ううん、凪!』
『私の事、下の名前で……小咲さんって呼んで欲しいな……』
『でしょ?そういう変な言い訳しないとこ、私結構好きなんだー』
………………そうか。
「春」
「え?」
「こんな話やめとこう。うん。例えでも俺そういう事言いたくない」
「凪?どうかしたの?」
「いや、なんでもない。さっ、早く料理作ろうぜ」
「う、うん。わかった」
(凪、どうかしたのかな?なんか変な感じに)
春side
そのまま晩御飯を作り終えてそれを美味しく完食した私たち。凪はあの話をしてからずっと悩んでいるような感じだった。お姉ちゃんもそれを何か感じたみたいだった。
「な、凪君、どうかしたの?なんか悩んでるような表情だけど?」
「あ、いえ、なんでもないんです。小咲さん、心配してくれてありがとうございます」
「う、うん………さっき私お風呂沸かしておいたの。よかったら凪君先入ってきて」
「え、先にいただくの悪いですし、小咲さん達が入ってきたらどうですか?」
「いや、あの………私たちが使った後のお風呂に凪君が入るのはちょっと…………」
お姉ちゃんの言う通りだよ!それは本当に恥ずかしい。わたしもお姉ちゃんも顔を真っ赤にしてしまう。
「あぁ、すいません。デリカシーがなかったです。じゃあ申し訳ないですけど、先にお風呂いただきますね」
「うん。カゴにお父さんが使ってるTシャツ置いてるから」
「ありがとうございます、小咲さん」
一言礼を言って凪はお風呂へと向かっていった。
「凪君、どうしたのかな?」
「多分、私が変な事聞いたから」
「変な事?」
「うん。凪は私とお姉ちゃんと風ちゃん。誰が好みなのかなって」
「なっ!!?」
お姉ちゃんは顔を真っ赤にして驚いた。私も逆の立場だったらそうなってたかもしれない。
「私も聞くつもりなかったんだけど、この前の風ちゃんと凪の話とか、今日のお姉ちゃん見てたらなんだか気になっちゃって」
「春…………」
「でも、よく考えたらここにお姉ちゃん入れるの意味なかったかも。だってお姉ちゃんが好きなのは一条先輩だもんね!」
なんで私あの選択肢にお姉ちゃんも加えたんだろ。お姉ちゃんが凪と一緒にいるのをよく見かけるからかな?それとも、凪がお姉ちゃんの命の恩人だからかな?
「まぁいいか。とりあえず私は食器片付けるからお姉ちゃんもお風呂の準備を……お姉ちゃん?」
なせがお姉ちゃんが涙目になりながら真剣な表情でこっちを見ている。何か私悪い事したのかな?
「春」
「な、なに?お姉ちゃん」
「ごめん!!」
お姉ちゃんはいきなり頭を下げて謝ってきた。
「え?な、なんで急にお姉ちゃん謝るの?意味わからないよ」
「私、春が凪君の事好きって知ってるのに。知ってたのに、でも、どうしようもなくて。凪君に助けられた事とか、凪君と一緒にいる事考えたりしたら、もう…………自分じゃ止められないの」
顔を上げたお姉ちゃんはボロボロと涙を流している。拭いても涙は止まらなく溢れている。
「え?どういう事?言ってる事がわからないんだけど。なんで泣いてるの、お姉ちゃん?」
「ごめんね、春………さっき言えなかった事、今言うね」
「う、うん」
「私……
凪君の事、好きになっちゃった。一条君以上に………もう、凪君の事しか考えられないくらい、凪君の事好きになっちゃったの!」
そう言われた瞬間、私の頭は真っ白になった。
どうでしたか?
凪はなにを考えたのか。
そして、姉妹の仲はいかに…………
感想も訂正があればお待ちしております。