ちょっと時系列逆になってしまいましたが、今回は水族館の話です。
春と小咲、両方とイチャつかそうと思いましたが、ほぼ、小咲とイチャつきます。
オールして書いたので、めちゃくちゃかもしれませんが、ご了承下さい。
あと、自分やっぱり花澤香菜の声が好きです。
書いてて改めて思いました。
それではどうぞ〜。
お祭りの日から少し経った日のこと。俺はもう最近では当たり前のように、『おのでら』でバイトをしていた。今日も小咲さんと春と3人で店番をしている。
「お客さん、来ないですね………」
「そうだねー。向かいのケーキ屋さんも落ち着いてきたはずなんだけど」
向かいのケーキ屋さんを見ると、向こうも暇みたいだ。店長さんがお店の外を箒で掃いている。
「あ、そうだ凪!ちょっと話があるんだけど?」
「ん?どうした?
「明日休日でしょ?私とお姉ちゃんで水族館行こうとしてるんだけど……よかったら凪も来ない?商店街でもらったチケットが余ってるし、明日は凪もお仕事休みだよね?」
そう言って、俺に水族館のチケットと渡してくる春。
「水族館?いいのか、俺が一緒に行っても?」
「も、もちろんだよ!ねっ、お姉ちゃん?」
「うん!凪君も一緒だときっと楽しいよ。どうかな?」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
春からチケットを受け取る。一条先輩、ごめんなさい。俺、明日小咲さんと春とデートしてきます。
「じゃあ、明日10時に水族館前で待ち合わせでいいかな?」
「わかった。ありがとな、春」
「う、うん」
明日が楽しみだ。でも、こんな可愛い2人とデートできるって。俺明日あたりなんか不幸なこと起きるんじゃないかな……
「あ、凪!お待たせ!」
「凪君、おはよう。ごめん、待たせちゃったかな?」
「いえいえ、そんな事ないですよ。全然待ってないです、ただ、少し寝不足なんですよ」
翌日。2人とのデートが楽しみで夜全然眠れなかった俺は、遅れないように早めに家を出てきた。着いたのは待ち合わせより30分前。
「凪君、眠たそう。もしかしてあまり寝てないの?」
「えぇ。でも大丈夫ですよ。それにしても………春も小咲さんもその格好、とってもいいですね」
「え、本当?」
「はい。2人ともとっても可愛いです」
「「…………」」
「あれ、どうかしましたか?」
「「ううん、なんでもない」」
((いきなり可愛いって言ってくるのは反則じゃないかな……))
俺の言葉になぜか顔を背ける2人。俺そんな変なこと言ったかな?デートの際に女の子の服装を褒めるのは当たり前だって姉貴に教えてもらったんだけど……
「さっ、いこ!時間も永遠にあるわけじゃないんだし」
春が俺の腕を取り、そのまま引いていく。…………なんかこの感じ凄いデジャブを感じる。
「春、ちょっと待った」
春の手を一旦離して、俺は小咲さんのところへ行く。
(小咲さん、俺この前の祭りの時と凄いデジャブを感じるんですけど……春に先導させたらまた春が迷子になるんじゃ?)
(あ、それもそうだね。どうしよっか?)
(それで一つ考えたんですが……)
「ちょっと、凪、お姉ちゃん!これ何さ!」
「いや、その……春はちょっと鈍臭い………じゃなかった。少し前科があるからこうさせてもらうことに」
「ごめんね、春。これもみんな春のためだから」
俺の考えた春を迷子にさせない作戦。春の両手を俺と小咲さんがつなぐという作戦。俺は手をつなぐのは恥ずかしいから春の腕を掴む感じにしている。
「なんでこれでまわるの!私やだよ!」
「いいじゃん別に。仲よさそうに見えるだろ?」
「そういう問題じゃ!というかどうせなら凪も手を………」
「ん?なんか言った?」
「な、なんでもない!」
今春は俺になんて言ったんだ?前半しか聞こえなかったんだけど。
「まぁいいか。じゃあいこうか?」
「えっ、本当にこれで!?」
「文句言っちゃダメだよ春。ほら、行くよ」
3人で並んで水族館に入る。入口付近は混んでいてなかなか前へ進めない。
「さ、さすがに入口は混んでますね」
「そうだね。少し人がすくまで待っ出た方が良かったかな?」
「そしたら時間なくなっちゃいますよ」
春を挟んで小咲さんと会話する。春は顔を真っ赤にしながらも歩いていた。
「ふー、なんとか抜けた」
「中はゆっくり回れそう」
「その前に記念撮影しますか?」
「それ賛成!」
今まで一言も喋らなかった春がいきなりカメラを取り出した。いきなりどしたんだ?
「じゃあお姉ちゃん。撮影お願い」
「う、うん。わかった」
春のいきなりのテンションの変わり方に小咲さんも驚いている。
(いきなり腕取られた凪に仕返ししてやる。思いっきり腕に抱きついてやるんだから)
「じゃあ撮るよー」
「は、はい…………って春?なんでそんなに距離近いの?」
近いどころが腕に抱きついてきてる。密着してる方が意味的にあってるくらいに。
「こ、これでいいの!お姉ちゃん、撮って!」
「うん。じゃあ……はい、チーズ」
シャッター音が聞こえ俺と春が離れる。凄い緊張した。春の胸が俺の腕に当たってたし…………うん、なんか得した気分。
「じゃあ次はお姉ちゃんの番ね。撮ってあげる!」
春と交代して小咲さんが俺の隣にやってくる…………あれ?小咲さんもなんか距離近くない?てか、なんで俺と手繋ぐんですか?
「お、お姉ちゃん?距離近くない?」
「そ、そんな事ないよ。春は腕に抱きついて撮ったんだし、これくらいが普通だよ」
「いや、でもお姉ちゃん、凪と手繋いでる」
「折角の記念だから。ほら、撮って春!」
(春ばっかりズルいよ。私も凪君と密着するんだから)
「じゃ、じゃあ……はい、チーズ」
シャッター音が聞こえると春が撮った写真をチェックする。問題ないと思うけど………
「小咲さん?そろそろ手を離してくれても……」
「じゃ、じゃあそろそろどこかいこ!」
「あの、小咲さん?」
春だけじゃなくて小咲さんも様子おかしいような…………
「まぁいいか…………もうすぐイルカのショーがあるみたいですよ?行ってみませんか?」
「そうしよう!春もいいよね?」
「え、あ、うん」
「じゃあ、失礼して……」
小咲さんと繋いでない方の手で春の手を握る。
「つっ!」
「あ、ごめん。手は嫌だったか?」
俺が手を握った瞬間、春があとずさる。
「あ、違うの。ただびっくりしただけ。別に嫌じゃない」
「ならいいけど」
春の手を握ってイルカのショーへ向かう事にした。…………なんかこんなに可愛い2人の手を握って、俺って凄い得してるよな。
ちょうど前の方が空いていたので手をつないだまま3人でそこに座る。
「ところで…………いつまで俺は2人と手を繋いどかないといけないんですか?」
「「まだダメ!!」」
「そうですか………」
声を揃えてそう言われたので、そのままにしておく事に。
イルカのショーはどんどん続いていく。イルカってやっぱり凄いんだな…………なんか喉乾いてきたな。
「すいません、飲み物買いに行きたいので、手放してもらっていいですか?」
「「だ、ダメ!」」
「いや、ダメと言われましても……」
なんで2人は俺の手を放してくれないんだ?よくわからない。
「うーん………じゃあ私が行ってくるよ!」
「いや、それは悪いから俺が行くよ」
「いいの。私行ってくるから少し待ってて!」
春が席から立ち上がって小走りで飲み物を買いに行った。俺はともかく小咲さんに買わせにいくのを悪いと思ったのかな?
『それでは、次のショーに移りたいと思います。次のショーはお客様に手伝ってもらおうと思います…………』
「てか、春にジュース買いに行かせて良かったんですか?忘れてましたけど、あいつとんでもない方向音痴なんですけど?」
「…………あ!!」
今頃そのことに気づく俺ってバカだろ。もともと春と手を繋いでたのこのためだったのに!
「すぐ探しに『そこのカップルお二方!手伝ってもらってもよろしいですか?』え?」
「ふぇ?」
いきなり手をこっちに向けられてびっくりする俺たち。てか、小咲さんの間の抜けた返事凄い可愛い……
「もしかして……私たちの事かな?」
「みたいですね。こうやって手を繋いでるからそう見えたみたいです」
「ど、どうしよう凪君!?春のこともあるのに!」
「ま、まぁ、少しの時間で済むでしょうし、ここはあの人に従いましょうよ。小咲さんが嫌ならいいですけど」
「い、嫌じゃないよ。むしろ嬉しいというか……」
「へっ?嬉しい?」
「ううん、なんでもない!!」
春のことは心配だが、俺たちは席から立ち上がり、一旦手を放して係員がいるところへ行く。
『ではこの旗を持ってください。こちらが合図した時にこの旗を上げるとルー君がジャンプしますので』
ルー君というのはおそらくイルカの名前なんだろうな。イルカだからルー君……安直な名前だ。
『お二人とも、手を繋いでください』
…………こういうのってカップルぽく見せたほうがいいのかな?その方がなんか盛り上がりそうだし……
「小咲さん、ごめんなさい」
一言言って手を握る時俺は指と指を絡める、いわゆる恋人繋ぎの繋ぎ方で小咲さんと手をつなぐ。
「ふぇっ!!?」
『あ、ちょっとまだ!!』
いきなり恋人っぽい握り方で手を握ったのにびっくりしたのか、小咲さんが持っていた旗を上げてしまった。
すると、ルー君が水面から思いっきりジャンプした。その勢いで凄い水しぶきが上がる。
「小咲さん!!」
水しぶきが上がるのを予感した俺は小咲さんから水しぶきをかばうように、小咲さんの前に立ち、抱きしめた。
ザッパァーン!!
水しぶきが上がり、俺の服はビショビショになる。小咲さんは女の子だ。それに今日は暑い夏。格好もワンピース。そんな中、水でビショビショに濡れたらどうなるか。おそらく、服が透ける。そんな羞恥を小咲さんに晒すわけにはいかなかった。
「あ、あれ?な、凪君?」
「大丈夫ですか?小咲さん?」
俺がかばったおかげで小咲さんへの被害は少なそうだ。そのかわり、俺は服どころが全身ビショビショになったが。
『そ、想定外な事が起きましたが、皆さん!!彼女さんを水しぶきで濡れるのを身を挺して守った彼氏さん。このかっこいい彼氏さんに大きな拍手をお願いします!!』
係員さんの言葉とともに、盛大な拍手が俺に送られた。
『すげぇ!!』
『カッコいいぞー!!』
『私もあんな彼氏欲しい!!』
『リア充爆発しろー!!てか死ね!!』
変な野次というか、悪口が聞こえたが気のせいだろう。
「凪君!大丈夫!?ごめんね、私をかばったせいで……」
「え、あ、はい。水で濡れただけなんでなんともないですよ。元はと言えば、手をつなぐ時に恋人繋ぎした自分が悪いんですから……………ふあっくしょん!!」
全身が濡れたせいか、少し寒気がして、クシャミをしてしまう。
「早く体拭かないと体冷えて風邪ひいちゃう!」
「そ、そんな大げさな……」
「いいから!とりあえず戻ろ。私タオル持ってるから!」
バッグからタオルを取り出す小咲さん。でも、俺はそんなことより気になる事があった。
「…………あの、小咲さん?みんな見てます」
「へっ?」
「ですから、お客さん。みんなこっち見てます?」
俺に言われて周りを見渡す小咲さん。すぐ目の前にいる係員は顔を真っ赤にして顔をそらしていた。
『え、えと、これでイルカのショーは終わりです。ご来場ありがとうございました』
こんな大人数の前で。それもこんなにイチャイチャしていたら。それは顔を真っ赤にするだろう。
『お二人は末長くお幸せに〜』
係員の余計な言葉に俺たち2人とも顔を真っ赤にしてしまう。こんなのほぼいじめに近い。というか、いじめだ。
「あの、えと、その…………ごめんなさい」
「なんで謝るんですか!とりあえず、早くここから去りましょう!恥ずかしいのは俺も一緒なんですから!」
小咲さんの手を取って、イルカのショーの場から去った。
「ごめんね。凪君。はい。これで体拭いて」
「すいません、お借りします」
小咲さんが顔を赤くしながらタオルを渡してくれた。それを受け取った俺は体を拭いていく。
「………………あ!!」
「え、どうしたの?」
「携帯…………壊れた」
「ええっ!?」
おそらく水没したんだろう。あれだけ勢いよく水を浴びたんだから。
「姉貴になんて言おう……」
「ほ、本当にごめんね!なんでお詫びしたらいいか」
「いや、別にいいですよ。俺としては小咲さんが無事で良かったです」
「うん……ありがとう、凪君」
「お待たせ〜、ごめんね。少し道に迷っちゃって…………ってどうしたの凪!?全身ビショビショだよ!?」
そこにジュースを3本持った春が戻ってきた……………………え?
「春?お前……一人で?」
「ううん、迷ったけど、なんか凄い優しい女の人にここまで連れてきてもらった」
「凄い優しい女の人?」
なんだそれ?春が方向音痴って知ってる人だよなそれ。
「それより凪、大丈夫!?」
「あ、うん、大丈夫。ただ、水に濡れただけだし」
「ならいいけど………お姉ちゃん?どうしたの?凪をそんなに見つめて?」
「へっ?いや、なんでもない!なんでもないの!」
「???」
「すいません小咲さん。このタオル、洗って返しますね」
「え、そんなのいいよ別に。今返してくれたらいいよ」
「そしたら小咲さんのバッグの中が濡れちゃいますよ。そんなの悪いです」
「そ、それはそうだけど」
「そういうことです。次はどこに行きますか?」
小咲さんに借りたタオルの俺の鞄の中に入れる。
「あ、お土産屋さん!あそこ行こ!」
春の指差す方向にはお土産屋がある。
「いいね。小咲さんも行きましょう」
「うん、ごめん。私ちょっとあそこで休憩してくるから、2人で行ってきて」
「へ?どうしたのお姉ちゃん。体調でも悪いの?」
「ちょっと歩き疲れただけ。だから心配しないで。大丈夫だから」
「熱中症とかじゃないですよね?無理しないでくださいね?」
「うん。ありがとう。大丈夫だから」
「わかりました。……あ、これ。俺の分のジュースです。良かったらどうぞ」
「うん。ありがとう」
お土産屋さんから少し離れたベンチに小咲さんは座った。まぁあそこなら俺もお土産屋さんから見えるし大丈夫だろう。
「行こ、凪!」
「了解!」
小咲side
「どうしよう………私」
私から身を挺して守ってくれた凪君。もうこれで3度目。1度目はバイクに轢かれそうになった私を守ってくれて、2度目は落ちてきた鉄パイプから私を守ってくれて、3度目はさっき、水しぶきから私を守ってくれて…………
「黒崎凪君か…………」
ついこの前までは同じ学校の仲良しな後輩ってだけだったのに………同じお店で働くようになって、春と一緒に笑ってる凪君が羨ましくなって、夏祭りの時に、恋してるってことに気づいて。
「本当にどうしよう…………」
あんな風に何度も助けられて、恋人みたいなことして、凪君と一緒にいたらいつも楽しくて。ずっと一緒にいたいって思って。
「私もう凪君の事しか考えられないよ…………ずっと一条君の事好きだったのに、本当にどうしよう…………」
凪side
お土産屋で色々見て回って買い物した俺たちは水族館から出て、小咲さん達の家に向かっていた。
水族館の中とは違い、外は暑かった。これだけ暑いと濡れていた服もすぐ乾いた。携帯は治らなかったけど。
「はぁ、楽しかった。ね、お姉ちゃん、凪!」
「あぁ、そうだな。充実した1日だったよ」
「うん、本当に楽しかったね」
お土産屋さんから出てきた後も小咲さんは少し元気がなかった。なんというか、いつもの明るい笑顔じゃない。
「…………あ、そうだ!春、小咲さん。これ見てくださいよ!」
俺はポケットからお土産屋さんで買ったあるものを2人に見せる。
「これ……」
「ストラップ?」
「そう。それも海の生き物と和菓子っていうコラボのストラップ!かわいいな、って思って買ったんですよ!」
「へぇ〜、いい!すごくかわいい!」
「だろ?春もそう思うよな!」
「本当だ。すごく可愛い〜」
春も小咲さんもストラップに興味深々になっていた。
「これ3つ買ったんです。別々のやつ。だから、春、小咲さん。好きなやつ選んでください」
「え、いいの!?」
「凪君、これくれるの?」
春にも内緒で買ったストラップ。元気がなかった小咲さんを元気付けるために買ったのもあるけど。
「だって俺たち、和菓子屋『おのでら』の高校生3人じゃないですか。3人でつけたら、お揃いみたいですごく良くないですか?」
「うん。いいと思う!」
「でも、いいの?本当に?」
「もちろん。好きなのどうぞ?」
「じゃ、私これ!」
「じゃあ………私はこれで」
春がクジラのストラップ。小咲さんがイルカのストラップをとった。残るはサメのストラップ。
「ありがとう凪!すごく嬉しい!」
「うん。私も!ありがとね、凪君!大切にするよ!」
良かった。喜んでもらえて。これで少しでも小咲さんの元気が出てくれたらいいんだけど。
「じゃあ、帰りますか」
買ったストラップをポケットの中に入れて俺たちは小咲さんたちの家に向かった。
夜
「ごめん、姉貴。携帯水没した」
「うん、知ってる」
「えっ!?なんで!!?」
「だって、あのイルカのショー私も友達と見てたもん」
「えぇっ!!?」
「あんた達がイチャイチャしてるの見て腹立ったから途中で抜け出したけどね。そしたら、春ちゃんが迷子になってたぽかったから私があんたの元に連れてったのよ。あんたに顔見られるの嫌だから、つれてった後、すぐ去ったけど」
「な、なんだよそれ。てか、春は姉貴と会ってるだろ?なんで春は気がつかなかったんだ?」
「そりゃそうだろ。私、家にいるときと友達といるときでは全然違うんだから。化粧とかするし」
「えぇっ!?」
姉貴の知らない一面を知った日でした。
どうでしたか?
なんか話がさらに急展開になった気がします。
感想と訂正があればお待ちしております。