いきなりお気に入り100件ありがとうございます。
「俺の席は……ここだな」
「私はここだよー」
「「ん?」」
教室に入った俺たちは自分の席を探してそこに座った。すると、俺の席は春の席の後ろだった。風も俺の横でこっちに手を振っている。
「何だこれ、すごい偶然だな」
「ホントー、やっぱりこれ運命なんだよ」
「何で運命ってばっかり言うのさ、風ちゃんは」
でも、これは偶然でなければ運命としか言えない感じだった。登校中に小野寺と出会い、小野寺の友達は実は俺の幼馴染でその上全員同じクラス。そして、席がここまで近いとなると俺も風に賛成したくなる。
「……あ、お隣さんだよね。私、この席なの。これからよろしく」
小野寺が隣の席の女の子に挨拶する。その子は頬杖をつきながら小野寺を見ていた。首にマフラーをかけていているすごく美人な女の子。
「あ、あのお名前は?」
「ポーラよ。ポーラ・マッコイ」
「ポーラさんね。私は『名乗らなくていいわよ。覚える気ないから』……え?」
初対面なのにいきなりきつい態度。外国ではこういう感じなのだろうか?それともただこういうのに慣れてないのだろうか。
「まぁ、俺も一応自己紹介だけしとくか。俺は黒崎凪、よろしくな。こっちは幼馴染の風だ」
「そっ。覚える気ないけど、よろしく」
こういうのは最初からズカズカ行くと余計に嫌われる。だから、名前だけ紹介しといて徐々に慣らしていくのが一番………………って、今この子手榴弾落としたぞ。
「な、なぁ、今のってあれだよな。レプリカとかおもちゃとかそんな感じのやつだよな?」
「いえ、これは本物よ」
まじかよ…………今の女子高生って持ち歩く感じで手榴弾を持つのか?
「なぁ、風は持ってないよな?」
「持ってると思う?」
「ですよね」
どうやら、おかしいのはこの子のようだ。よかった。いや、何も良くないけど。
「ね、ねぇ、黒崎君。ちょっといいかな?」
「ん?どうした?」
「ちょっとお願いがあるんだけど、今日の放課後って空いてるかな?」
小野寺が体をこっちに向けて話しかけてくる。
「普通に空いてるけど。お願いって?」
「私、この学校で1人探してる人がいるの。だけど、1人で探すの大変そうだから手伝って欲しくて」
俺のモットーは基本的に女子のお願いはなんでも聞く、だ。よっぽど酷いお願いでなければ全然問題ない。
「別にいいぞ。その人の名前とかわかる?」
「うん。私達の学校一つ上の先輩で
一条先輩っていう人」
「どうしてこうなったんだ」
時は変わって放課後。小野寺の頼みを聞いて今二手に別れて一条先輩を探しているのだが。
「一条先輩って中学の時の先輩で結構世話になってたから小野寺の頼みって聞きにくいんだよな」
一条楽。俺の一つ上の先輩で中学の時、時々勉強とかみてくれたりした優しい先輩。ただ、実家が集英組のヤクザということで少し周りに恐れられている。
『その一条先輩って人、凄い絶世美女がいるにもかかわらず、他の可愛い女の子にも手を出すとかいう酷い人らしいだって!その人に会って私は言わないといけないことがあるの!」
「一条先輩はそんな人じゃないと思うんだけど」
小野寺は多分何かを勘違いしているはずだ。そうに違いない。
「で、2学年のフロアに来たわけだけど、探すならとりあえず小野寺先輩を探さないと」
「私がどうかした?」
「うぉっ!!」
いきなり後ろから声をかけられ、声を上げ驚きながら後ろを向く。するとそこに立っていたのは俺が探していた先輩。
「小野寺先輩、お久しぶりです。いきなり脅かさないで下さいよ」
「久しぶりだね、黒崎君。そんなつもりはなかったんだけどね」
小野寺先輩はにっこり笑って俺に挨拶してくれる。俺は今までこの人ほど可愛い女の子に会ったことがない。それほどにこの人は可愛い。
「私がどうとか言ってたけど、私に何か用?」
「はい。実は今日の朝、色々あってあなたの妹の春に会ったんです」
「春と?…………もしかして何かあった?」
流石、小野寺の姉。色々あってとしか言ってないのに、妹に何かあったと心配してるようだ。
「まぁ、それなりに。今はその話は置いときます。詳しい事は小野寺から聞いてください。その後、一緒に登校して、クラスも同じになって…………って、これはどうでもいいか。それで、小野寺に頼み事をされたんです」
「頼み事?」
「はい。一条先輩を一緒に探して欲しいって」
「一条君を?どうして?」
「実は小野寺のやつ、何を勘違いしたのか、それとも噂を耳にしたか知らないんですけど一条先輩が彼女がいるのに他の女の子に手を出す酷い男って思ってるらしくて」
「い、一条君はそんな悪いことする人じゃないよ!!」
小野寺先輩は中学の時から一条先輩に恋をしている。こうやっていってもらえる一条先輩が少し羨ましく感じる。
「多分…………おそらく…………そんな事はしてないと思う」
「何でだんだんそんなに歯切れ悪くなってるんですか」
「一条君、女の子に手を出したりはしてないけど彼女はいるし、事実他の女の子とも凄く仲良いからちょっと不安になって」
「え、彼女って本当にいるんですか?」
「へ、あ、うん。本当だよ」
なんでさっきからそんなに歯切れ悪いんだ?
「彼女って…………じゃあ、小野寺先輩は!」
「大丈夫。いつか、一条君を彼氏にしてみせるって思ってるから!」
ここまで他人を思う事ができる小野寺先輩は凄いと思った。俺はまだ恋なんかした事がない。だから、その気持ちはわからないけど、きっと凄くいいものなんだろう。
「それに………………もいるし」
「ん?何か言いました?」
「ううん。何でもないよ」
今なんか言ったような気がしたんだけど気のせいだったのかな?
「それより、今は一条先輩の事です。どうにかして一条先輩の誤解を解かないと」
「となると、まずは春を探さないと」
「そうですね」
小野寺先輩から小野寺に言ってくれるときっと誤解は解けるはずだ。…………今思ったけど、小野寺先輩と小野寺って呼ぶと何かわかりにくい。今度下の名前で呼んでいいか聞いてみよう。
「よし。そうと決まれば早速」
パン!!
いきなり、何か渇いた音みたいなのが響いた。ここからはそう遠くない近い場所で。
「今の音なんだろう?」
「行ってみましょう!」
「う、うん」
俺たちは急いで音のした方に向かった。
「で、これはどういう状況?」
おそらく、音の場所がしただろう場所をつくとそこでは小野寺がスカートの裾を掴んで、顔を真っ赤にして涙目になりながら頬に紅葉マークができている一条先輩を睨んでいた。一瞬、ここで何が起きたのかわからなかったが状況を整理してみると何が起きたのか見当がついた。
「一条先輩……小野寺のパンツ見たんですか?」
「ち、違う!俺のせいじゃないぞ。いきなり風が吹いて…………」
俺がそう言うと小野寺はさらに顔を真っ赤にし、一条先輩は負け惜しみのような言い訳をする。
「全く……あなたって人は」
「いや、一瞬のことだったから何かわからなかったから」
「パンツの絵柄は?」
「クマさん………………はっ!!」
この人……最悪だ。これじゃますます誤解がときにくくなる。にしても、クマさんか。高校生にもなってそれはどうなのだろうか。
「えっとー、一条君?」
「お、小野寺!?これはその……」
「お姉ちゃん!?」
小野寺が小野寺先輩を見つけるとすぐにそっちに駆け寄る。
「お姉ちゃん。私が来たからにはもう大丈夫だから安心して。ね、ね!」
そう言うと小野寺は小野寺先輩を守るように一条先輩の前に立つ。
「私の名前は小野寺春。小野寺小咲の妹です!!」
凪が聞き取れなかった部分、小咲ちゃんはなんて言ったんでしょうねww
ちなみに現在の小咲好感度は楽≧凪って感じですね。
感想と訂正をお待ちしております。