枯れた樹海と殺し屋たち   作:リンゴ丸12

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死してなお

「タツミは行ったか……。その内に俺はアカメちゃんを探さねぇと」

 

俺は引き続き欲視力(パラサイトシーイング)を使ってあたりを見渡す。森の方はクロメたちしかいなかったから逆の方角、荒野の奥の方。…………。

 

「…………………」

 

………いねえな。どこまで飛ばされたんだよ。

 

 

「ラバ」

 

「あひゃあ!」

 

う、後ろ!びびった……!灯台下暗し!変な声出ちまったよ!

 

「な、なんだよ!いたなら返事してくれよ」

 

「今の今まで気絶していた……すまないな。わざわざ探しに来てくれたのか……」

 

「あぁ……よかった、無事で……今、タツミがチェルシーを助けに行ってる」

 

「よかった………アイツらも無事か……」

 

「……そこまで重症ってわけではなさそうだけど……。一応先にアジトに戻ってよう。みんなは先に戻ってる。歩ける?」

 

「あぁ……かすり傷が酷いがそこまで酷い怪我は負ってない……」

 

よかった。タツミのことだ。きっとチェルシーちゃんを無事に助けて帰ってくるだろう。……あーあ。多分チェルシーちゃん、惚れ直しちゃうんだろうなぁ…。………勢いで告白とかされたりして……。うわー!ありそー!ちっとはマインちゃんのことも考えろや!

 

「……ラバ?」

 

「あぁ……ゴメン…。じゃあ行こうか…」

 

はぁ、俺も早くナジェンダさんに告っちゃおうかなぁ。こんな職業だし……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「着いたー!」

 

「元気ね…レオーネ…」

 

私はもうクタクタよ……。パンプキンの奥の手も片方使っちゃったし。

 

《奥の手は表と裏、1日に1発ずつしか撃てない奥義だからね。そりゃあ精神力の磨耗も激しいさ》

 

「……あー。だからこんなクラクラするのか……」

 

「……後はタツミ達の帰りを待つだけか……。無事だといいが……」

 

「アイツらも修羅場を掻い潜ってきた強者だ。そう簡単にはくたばらないさ。飯を作ってくる。今日は栄養の取れるものをたくさん作るからな。ちょっと待ってろ」

 

「すまないな…スサノオ」

 

 

ガサッ

 

 

「!!」

 

「アカメ!!」

 

「みんな……無事か……」

 

「血だらけじゃない!」

 

体の表面が赤いところの方が多いくらいだ。足も引きずっている。こんな状態で…歩いてきたの……!?

 

「スサノオ!すぐに治療を!」

 

「すまないな……」

 

……こんなにダメージを喰らったアカメ、初めて見た……。

 

「そ、そうだ! ……チェルシーは!?」

 

「チェルシーなら多分無事だ……私の防護服を被せたし……帝具を使えば、敵に見つかっても大丈夫だろう」

 

「そっか………あれ?そういえばタツミとラバは?」

 

「?」

 

「会わなかった?二人を迎えに行ったんだけど……」

 

「いや……会ってないが………入り違いになってしまったか…」

 

「用意出来たぞ!アカメ!こっちに来い!」

 

「すまない………ぁ……」

 

「アカメ!」

 

気絶しちゃった……ほとんど気力でもってたのね……。

 

「医務室へ運べ!急げ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に大丈夫か?アカメちゃん」

 

「あぁ……ただ……少し疲れたな……そこの木陰で少し休まないか?」

 

やっぱり無理してたのか……。まだ距離もあるし……敵の気配もない。少し休むとするか。

 

「オーケー。休憩しよう。何か食べるか?」

 

「いや……いい……食欲がない………」

 

…………食欲がない?アカメちゃんが……?そんなにヤバかったのか……。気付いてあげられなかった……申し訳ない……。

 

「そっか。じゃあ水を………」

 

「ラバ」

 

「ん?」

 

 

 

ズパッ

 

 

 

「え?」

 

途端に胸から血が流れ始める。斬ら……れた?………………え?

 

「アカ………メ……ちゃん?」

 

「悪いな」

 

しまった……!!敵の変装……。チェルシーちゃんみたいな変身する帝具か……!?

 

「ガハッ……ぐ………」

 

傷口は思ったより深くない……すぐに治療すれば…………。

 

 

ドクン!

 

 

「ぐッ……………え…………」

 

胸が苦し…………ま、まさか…………。これは………!

 

「呪……毒……?なんで……………」

 

インクルシオとグランシャリオのように同タイプのタイプの帝具は存在するが、それもマイナーチェンジみたいなものだ。全く同じ帝具は二つとして存在しない……と言うことは………。

 

「本物の……アカメちゃん……?」

 

「………………」

 

「そんな………カハッ………」

 

村雨で斬られた……これは……もう………。

 

「ナジェ…………ん……………」

 

 

 

「……暗殺完了。帰還します」

 

 

 

ナジェンダさん……ゴメンな……せっかく助けてもらったのに……何にも恩返しできなかった。あーあ……せめて告白すればよかったなぁ……。

恩返し………恩………がえ………し……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待て………よ……」

 

「!!なんで……………生きて………!」

 

そうだ。俺はナジェンダさんに何もしてあげられてないじゃないか………。せめて……アカメちゃんに何があったかだけでも……。

きっとさっきの俺みたいに洗脳されてるんだ……。それを解くぐらいしてから死んでもバチは当たらないだろ?

 

「エラーメッセージプレート………自分の心臓と傷口に差し込んだ。心臓には無理矢理動くように命令し、傷口には血が流れないように命令した……」

 

この帝具に初めて感謝したぜ……。クローステールなら傷口は縫い合わせられても心臓はどうしようもないからな……。

 

「……流石だな。使い始めの帝具をこうも使いこなすとは………しかし、いつまで保つ?エラーメッセージプレートの効果が切れればおしまいだ。傷口はまだしも心臓は二度と動かないんだから」

 

「……………」

 

くそっ………。アカメちゃん相手にこのコンデションじゃ……。

そもそも本当にアカメちゃんなのか?村雨を持ってるってだけで……。もしかしたらアカメちゃんの村雨を奪ったって線は……。ないな……。村雨ほどの帝具がそうやすやすと他の使用者に適合するとは思えない…。

村雨を持っているってのがどうにも引っかかる…!あれさえなければ偽者の可能性も出てくるのに…!

 

 

 

………ん?

………………!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前……アカメちゃんじゃないな」

 

「………信じたくない気持ちはわかるが……帝具が物語ってるだろう?これは本物の村雨だ」

 

「違う。どうやったかは知らないが、その村雨は偽物だ」

 

「……何を根拠に」

 

「柄の文字」

 

「は?」

 

「柄の文字だ。村雨の柄には呪印が施されている。それは一見模様なんだが、実は文字なんだ」

 

「……………」

 

「漢字と言うらしいんだがな、それは東の島国と大陸の最東端の大国での二カ国でしか使われてないから、まぁ、知らなくて当然だわな。本物の村雨に書いてある文字は東の島国の漢字。お前が持っている村雨もどきに書いてあるのは大国の漢字。微妙に違うんだよ」

 

「…………………」

 

しかし……見れば見るほどアカメちゃんにしか見えねぇ。村雨のミスがなければ絶対わからなかった……。

 

「………………くっ」

 

「あ?」

 

「あぁー。しくじったー!そっかー!そんなところまで見てきますかー!流石はラバックさん」

 

「認めるんだな……偽者だって」

 

しかし……帝具をどうやって………。

 

「せっかく見囮刀(ソードルックス)正恣意妖刀(ゴーストカッター)悪化傷(クリティカルキット)まで使ったのにー。しまったー……もっとちゃんと実物を見とけばよかったなぁ…」

 

「………?」

 

なんだ?何を言っている?

 

「まぁいいや。どうせ殺さなきゃならないし」

 

「そう簡単には殺されねぇよ」

 

体力的には微妙だが……アカメちゃんじゃないなら……殺すのに躊躇いはいらない……!戦闘力もたかが知れてるしな…幸い、ナイフなら何本か持っている……。

 

「その刀も村雨じゃないなら呪毒だってきっと解毒できる……こんな所で死んでたまるかよ……俺はみんなと国を変えるんだ!」

 

 

 

そしてナジェンダさんに今度こそ……!

 

 

 

 

 

…………ッ!!

 

 

 

 

 

多少気が引けたが俺はこのアカメちゃんもどきの首を狙って斬りかかろうとした。姿かたちが同じだから躊躇うとか、同情して殺せないとか、そんなことは俺にはあり得ないと思っていた。

 

 

 

 

 

「そのナジェンダさんを殺そうっての?」

 

 

 

 

 

ナイフを取り出す数瞬の間にアカメちゃんはナジェンダさんになっていた。

 

 

 

 

「いい演出でしょ?ラバックさん?」

 

 

 

分かってる。しゃべり方も、その邪悪な笑い方も何一つナジェンダさんではない。だから殺せ。殺して本物のナジェンダさんに………。

 

 

 

「………ッ……クソがッ……!」

 

 

 

 

グサッ!

 

 

 

 

「心臓を潰しました。いくらエラーメッセージプレートといえども、ないものには命令出来ませんよね。さよならです」

 

 

………あぁチクショウ………ここまでかよ…。

…ナジェンダさん………臆病な俺がさ、ここまで頑張ったんだぜ?

え?一矢報いろって?……厳しいなぁ……。最後くらい褒めてくれよ……。アカメちゃんが偽者ってところまでなら見抜いたんだから……。上出来だろ?

結局告白できなかったなぁ。今言えば届くかな?最期の言葉として言ってみようか。

 

 

 

「………………な……… あ……」

 

 

 

声が出ない。ダメか……。あぁ…ホント、殺し屋の最期はロクなもんじゃねぇや。好きな人に想いも伝えられねぇ。…ま、俺が意気地なしってのもあるけどさ。

俺は最後の力を振り絞り右手を伸ばす。なぜ伸ばしたのかは俺にもわからない。なんだろう。届くとでも思ったのかね。その右手がナジェンダさんに。

あぁ、そろそろかな…。視界が暗くなってきた。楽しかったな。これからはあの世でみんなの活躍を……見て……。

 

ナジェンダさん………………本当に………本当に………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー大好きでしたよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………帰りますか。ん?」

 

袖口に何か……。エラーメッセージプレートですか。それも回収……あ、袖口から落ちて……ラバックさんに刺さっ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………タジェヌダさん、大好き(ばいずき)でしなよ。ナビェクダさむ、大好き(かぢすき)でしたよ」

 

 

 

 

「………………………死してなお、って感じですか?」

 

 

ザクン!

 

 

「その言葉ごと消すのが私の仕事なんですけどね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あれー?イートちゃんどこ行った?』

 

「さっきまでいたと思ったんだけどね」

 

『でも喋ったところ見てないよねぇ』

 

 

「私がどうしましたか?」

 

「あ、いた」

 

『もう!何してるんだい!心配するじゃあないか!どこいたの!!』

 

「ちょっとお花摘みに。ほら急ぎましょ?エスデスさんにもうすぐ追いつきますよ」

 

『?』

 

「不思議な子だなぁ」

 

『あれ?イートちゃん、そんなゴーグルしてたっけ?』

 

「最近買ったんですよ。似合いますか?」

 

「……え?うんまぁ……」

 

今日最初からつけてたっけ?

 

 

 


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