枯れた樹海と殺し屋たち   作:リンゴ丸12

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その涙のことを

ーーー禍魂顕現ーーー

 

スサノオは私の体内のエネルギーを使って一定期間莫大な力を発揮する。その威力は絶大だ。

 

「やれ!スサノオ!」

 

「ーー天叢雲剣(あまのむらくも)

 

ズガァァァン!

 

巨大な剣でデスタグールの右腕を吹き飛ばす。流石は奥の手……ここまでとは……!

 

「ゴアァァァァ!」

 

またあの破壊光線か!まずい!

 

「ーーー八咫鏡(やたのかがみ)

 

…絶対反射の鏡!まさかこの光線を……!?

 

「ギイァァァァ!!!」

 

は、跳ね返した!つ、強すぎる!デスタグールが……!

 

ズゥゥゥウン

 

倒された……こんな一瞬で!

 

「ナジェンダ。次に行くぞ」

 

「え?」

 

な、何をしている。なぜお姫様抱っこを……!

 

八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)

 

「うわぁぁぁ!!!」

 

は、はやっ、速すぎぃぃぃ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっと……」

 

 ふぅ。クロメは……いないな。場所を移したか。どこだ?さっきすごい音がしたと思ったら、デスタグールの気配が消えた。おそらくスーさんがやったんだろう。クロメはそれに気づいて行動を起こしたんだろうけど……。

 

「姐さん!」

 

「タツミ!それにチェルシーも」

 

 おっと、タツミって呼んじゃった。まぁ、周りに気配もないから大丈夫か。

 

「どうした?人形たちは?」

 

「もう3体倒したぜ!」

 

「なに!?」

 

 早!インクルシオが進化したとはいえ…この短時間に3体も……。対話ってのをするとこんなに強くなるものなのか…。……ライオネルは出来るかな?

 

「1体は私だけどね」

 

「ん?チェルシーが?」

 

 意外だな。あの人形たちがそう簡単に隙を見せるとは思えんのだが。

 

「あの人形、生前の性質が残ってるみたいなのよね。だから相手の仲間に成りすまして隙を作ったの」

 

 なるほど……死体といえど仲間の顔には油断が生まれるんだな。少しかわいそうな倒し方だが。

 

「よし!たぶん、スーさんがさっきの怪物を倒している。これでクロメの人形は4体だけだ。一気に攻め入るぞ!」

 

「おう!」

「了解」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!!!嘘!?デスタグールがやられた!?……ヘンターも、エイプマンも、さっき出したばかりのカイザーフロッグも!?」

 

……ウォールとロクゴウはそれぞれボルスさんとラバック(改)に貸してるし……ドーヤは狙撃手を探しに行かせてる……。どうする……?さすがにナイトレイド3,4人を私とナタラだけじゃ……。

 

「……ウェイブがいれば………」

 

ウェイブがいればこのくらいの人数差覆るのに……全く、肝心なところで役に立たないんだから………。ムナカタとは大違い。ムナカタだったらあの角男の攻撃ごときじゃ吹っ飛ばされないもんね。

……………………。

 

「………無事だよね?あいつ……あんな事ごときじゃ死なない……よね?」

 

少しは……心配かな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《ラバック、お前は正義って何だと思う?》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………なんでしょう今のは……記憶?………。ナイトレイドのナジェンダのようでしたが……。きっとまだ昔の記憶が抜けきってないのでしょう。早くナイトレイドを殺して清算しなくては……。

 

 

 

「見つけだぞ。ラバック」

 

「……ラバックではありません。ラバック(改)です。ナジェンダ元将軍」

 

「ナジェンダさんとは呼んでくれないのか?」

 

「これから殺す相手に必要なことですか?」

 

昔の私はこの女に恋をしていたようでしたが、その頃の気持ちはすでに死んでいます。むしろ殺してナイトレイドとの因縁に決着をつけてやりたい。

 

「殺す?おかしなことを言う。これからお前はボコボコにされてアジトでの家事全般を任されるというのに」

 

「………ヒザマズケ」

 

「ぐっ……!」

 

「減らず口を叩かないでください」

 

呆気ない。こんな女のどこに惚れていたのだろう。

 

「今だ!スサノオ!」

 

なっ……!いつの間に背後へ!

 

「我慢しろよラバック」

 

ズン!

 

「か………は………」

 

意識が……。

 

 

 

《俺は何のために生まれてきたんだろうな》

 

…………また………?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やったか!?」

 

「気絶したみたいだな。洗脳が解けたかどうかは知らないがとりあえず戦闘不能だ」

 

よし、これで敵はクロメとボルスだけ。ラバックも無傷(とは言えないが)で戦闘不能に出来た。

 

「!!ナジェンダ!後ろだ!」

 

「!」

 

ビュッ!と耳元で音がしたと思ったら側にあった岩が砕ける。これは……この鞭技は……!

 

「ロクゴウ将軍………」

 

クロメの人形か………が私にはスサノオがいる。負ける訳がない。せめて楽に………。

 

「ナジェフダ将軍(しゃうぬん)

 

「……え?」

 

「またお相手(あひへ)できね嬉りひよ」

 

喋……っただと?死体人形が!?

 

 

バリリリッ!!

 

 

なんだ!?フラッシュ!?

 

「………やってくれましたね」

 

「ラバック!?何故意識が?」

 

「無理矢理に目覚めたんですよ。全く……クロメさんに人形を借りていて正解でした」

 

「なんだ!何を言っている!」

 

「ヒレフセ」

 

「ぐぅぅ!」

 

……『言葉の重み』……さっきはすぐに解けたから感じなかったが……ここまで体が動かないとは……。

 

「ナジェ「動かないでください」」

 

「動くと殺します」

 

ぐっ。マズイ。スサノオは私の命を守ることを最優先に動く。あんな事を言われては動けない………!

 

「………俺にその技が効かないということは……チェルシーが言っていた重力操作の推論はハズレのようだな」

 

「チェルシー……あぁ、あのガイアファンデーションの……宮殿に潜入して調べられてましたか」

 

重力操作ではない………?ならこれは……。

 

「お前……体に電気を帯びているな?」

 

「………」

 

電気……だと?電気で体が痺れてるとでも?

 

「………人間の体は脳から送られる微弱な電気信号で動かしている。お前は体から電磁波を発してその電気信号に干渉している…違うか?」

 

…そうか、だからスサノオには……あいつの体は核が本体。電気信号では体を動かしていない……。だから効かないのか………。さっきのフラッシュも意識を覚醒させるために自分に無理やり電流を……。なんて奴だ、死んでもおかしくなかったぞ……!

 

「ご明察。私の体は人体実験で電気を帯びるようになりました。『言葉の重み』と言うのはミスリードです」

 

「その人形も電気で……」

 

「いえ、これは帝具の力です。『操作令状・エラーメッセージプレート』。支配者を支配するカード型の帝具。このカードが刺さった支配欲のある人間は私の思うがままに操れます。とは言うものの支配欲のない人間なんていませんから、事実上の人間を操る帝具です。もちろん電気の力でパワーアップはさせていますがね」

 

「ペラペラ喋るな。いいのか?敵にそんな情報与えて」

 

「えぇ、どうせ殺しますから」

 

「と言う割には、ナジェンダを殺さないじゃないか」

 

「えぇ。このままロクゴウ将軍に殺させても面白いのですが。せっかくなのでさっき私が手に入れた人間を使おうと思いまして」

 

「何?」

 

「……!マイン!」

 

額にカードが!と言うことは!

 

「ではマインさん?ナジェンダ元将軍を殺して下さい」

 

「はき。らはっゆまん」

 

「くっ!おいやめろ!マイン!ナジェンダだぞ!」

 

「無駄です。あなたはマスターが殺されるのをそこで指をくわえて見ていてください。動いた瞬間、マインさんごと殺しますのでそのつもりで」

 

キィィィン、と聞きなれたパンプキンのチャージ音。………ここまでか……。

 

「スサノオ!最後の命令だ!私が死んだらラバックを殺し、マインだけでも救い出せ!」

 

「ナジェンダ!」

 

「終わりです」

 

 

 

 

 

 

 

………………………。……………?撃た……ない?

 

 

「な、何をやってるのです!マインさん。さっさと殺して………」

 

「うおぉぉぉ!」

 

スサノオ!違う!マインは殺すな!

 

パシッ

 

……いや、これは……。そうか!カードを!

 

「………とりあえずマインは回収」

 

「くっ!不良品が!ロクゴウ将軍!ナジェンダ元将軍を殺して下さい!」

 

「………………」

 

「何をしているのですか!」

 

なんだ?何故動かないんだ?ラバックが帝具を使いこなせてないとでも?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エスデスさん達に追いつかないな」

 

『まぁ、あの人達が出てからだいぶ経ってたからね』

「エスデスさんは向こうのチームをちゃんと考えたのかな、副リーダーとも言えるランさんを南東チームに入れてしまって……。言っちゃなぁ何だが向こうにはリーダータイプが……」

 

正直、あちらにアカメちゃんやタツミ君がいたらヤバイ気がする。ミソギ君は心配ないって言ったけどカルマちゃんとムカエちゃんには……。

 

『ラバック(改)君がその役目だよ。洗脳されて機械のように正確な判断が下せるし、冷静さも失わないだろう』

 

「君の推理では電気を操れるんだっけ?それを応用して人心支配も出来るんだろう?おまけにエラーメッセージプレート……ま、戦力としては十分か。クロメちゃんの人形もあるし」

 

少しは不安要素もあるけどな……。

 

『………でも、どうかな?エラーメッセージプレートには致命的な弱点がある』

 

「弱点?」

 

『そ。わかるかい?』

 

「………………カード突き刺さないと意味がないってことか?」

 

「ぶー。あれは実は奥の手として無生物ですら操れるんだよ?だからはずれたところでそれを武器にできる』

 

「…………なおさら最強じゃねえか」

 

『言うなれば、《全てを思い通りにする帝具》って感じかな』

 

スゲェ文言だ。弱点なんかなさそうだが。

 

『わかんない?』

 

「あぁ、教えてくれ」

 

『それはね。全てを思い通りにしか出来ないってことだ』

 

「?」

 

『全てを思い通りにしか出来なくて、やりたいことしか出来ない。つまりやりたくないこと(・・・・・・・・)が出来ないんだ』

 

「……えーと……?」

 

『………洗脳が完璧で、心に迷いがなければいいんだけどねぇ。果たして洗脳ごときで仲間を、愛する人を殺せるのか、って話だよ』

 

「???」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何故だ………何故動かない………?」

 

「……ラバック。お前はやっぱり俺たちの仲間だよ」

 

「何を言うんですか………。私は大臣に忠誠を誓っているのですよ?あなた達を殺して……」

 

「殺す?俺たちを?だったらどうして…」

 

 

 

 

 

 

 

ーーーお前は泣いているんだ?

 

 

 

 

 

 

 

「え」

 

これは……涙?なぜ?悲しいことなんて……何も?

 

 

《私について来てくれるか?ラバック》

 

 

「ぐっ!う!」

 

「……心ある人間はその涙のことを優しく心と呼ぶんだ」

 

「……帝具風情が…まるで人間みたいな言い振りですね……」

 

「ラバック、お前がどんなに洗脳されようとみんなとの思い出、そしてナジェンダとの思い出はなくなったりしない」

 

バキッ!

 

………!ロクゴウ将軍!ナジェンダめ……『言葉の重み』を受けてまだ動けるのか……!?

 

「ラバック(改)だって?つまんないヴァージョンアップなんかして……安心しろ、すぐに私が元通りにデチューンしてやる。スサノオ!お前は手を出すなよ!マインの介護をしてろ」

 

「了解した」

 

「……下らない。こんな(もの)、視界にゴミが入っただけです」

 

 

 

 

 


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