「ぐ…」
改造されたインクルシオ…パワーもスピードも格段に上がったが、まだ体がついていかないな…鍛錬を続けないと。
《キツかったかな?ゴメンね、久しぶりの肉体ではしゃいじゃって》
「いや、大丈夫だ。ケイ相手にほぼ無傷でいけたのはそれだけでめっけもんだ。助かったよ。えーと……インクルシオ?」
《あはは、なんでもいいわよ。タイラントだった頃に名前なんて概念はなかったんだから。ま、今は私は自我のある帝具だし?名前はインクルシオでいいんじゃないかな?》
「そうか……改めてよろしくな、インクルシオ」
《何を今更、気にいらない奴だったら体を乗っ取ってやろうと思ったけど、タツミ君は合格ね。可愛いし、強くなりそうだし》
「あはは…」
てゆーかお前女だったのかよ。しかもすごい気さく……なんかチェルシーみたいだ。
《それで?まだアジトにはつかないの?》
「もう少しだ。この森を越えれば……お、見えてきた」
みんなに心配かけちまったな。謝らなきゃ……マインは大丈夫かな?
「………アカメ」
「なんだ?レオーネ」
「ノットイコールが言ってた期日、今日だな」
「タツミのことか……」
「あぁ、今日帰ってこなかったら……あいつをボコボコにする」
「どこにいるのかわからないのに?」
「ライオネルならなんとかなる!」
「………レオーネはその前にチェルシーとの仲をなんとかしろ」
「またそれかよ……あいつ、部屋から全然出てこないじゃん。謝りようがないって」
「部屋に行けばいいだろう」
「………また殴り合いになる。そして再起不能にしてしまう」
「……………」
「………私たちもラバに少し冷たすぎたかもしれない。でも私たちは殺し屋だろ?甘さは捨てなきゃならない。あいつだって本当は分かってるはずなのに…」
「タツミの甘さが移ったか…」
「全くだよ……あいつ!帰ってきたら責任とってもらわなきゃな!」
《………責任だってよ?タツミ君?……なに?間違いでも起こしたの?》
「いやいや………え、違うよね?」
《知らないわよ》
「何……姐さん……え………イヤイヤイヤイヤ……記憶にない記憶にない!」
帰ってドアの前まで来たらなんかとんでもない話を聞いてしまった………。は、入りづれぇ……!
《でもあの人、なんとなくビッ○ぽいけど。酒の力で……》
「イヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤ!ないない!断じてない!」
「タツミ……?」
「!ス、スーさん……!」
「無事だったのか!?心配したんだぞ!おいみんな!タツミが帰ってきたぞ!」
「あ!ちょ、ちょっと!」
「「タツミ!?」」
「ひぃ!」
「……おかえり…タツミ……」
アカメ……涙を流して…
…俺の聞き間違いか……だよな……うん!
「アカメ……みんな……ただい「タツミィ!」」
へ、ヘッドロック!&巨乳の圧迫!
「タツミィ……心配したんだぞぉ〜。こいつぅー!」
「や、やめてよ、姐さん!」
……大丈夫みたいだな。
「お前のせいで!チェルシーなんて寝込んじまったんだぞ!私達に当たるし!大変だったんだから!」
「!!?」
……さっきの話……チェルシー……?
「あ、あの…姐さん……チェルシーが何だって?」
「ん?あぁ…お前のせいでチェルシー最近イライラしてて、食欲もないんだよ」
「!?!?」
《………妊娠初期って食欲がなくなって、気が立つんですってね》
「……………マジで?」
「ん?あ、そうだ!スーさん!ボスとチェルシー連れてきて!」
「わかった」
「え!ちょ、ちょっと!」
待って!嘘だろ!?違うよね!?記憶にないって!チェルシーに限ってそれは……。
「タツミ……?」
「おぉ、無事だったかタツミ!よかった!お前なら無事だと信じていたぞ」
ボス…ありがとう……でも今、話が頭に入らない。
「よ、よぉ、チェルシー…」
「タツミ……タツミ……」
ガバッ!
「おお!」
「お?」
「おお」
「お…?」
チェ、チェルシーさん?抱きついて来られると……その……
「バカ!どこ行ってたのよ!私にこんな思いさせて!………責任とってよね!」
「責任!?やっぱり……俺……!?」
《………サイテー》
「うぅ……」
「レオーネ…みんな…、ゴメン!私……気が立ってて!タツミもラバもいなくなって!おかしくなってたみたい!本当にごめんなさい!」
「気にするな……仲間を心配する気持ちが裏返っただけだ」
「あぁ。レオーネももう怒ってないよな」
「ま、まぁな。私こそ……殴って悪かったよ…」
「一件落着だな」
…………………。
《どうするの?》
「……どうするもこうするも……責任取るしかないだろ…」
《男らしい〜》
「さ、中へ入ろう!」
「あぁ……あ、あのさチェルシー…」
「なに?」
「ちょっと俺の部屋に来てくれないか?」
「別に……いいけど」
「で?なに?」
タツミの部屋………………いい匂い…。
「いや、その……いつから…なんだ?」
「?」
「さっき聞いちまったんだよ……姐さんから……チェルシーが俺のせいで……その…体調崩してるって…」
「!?!?」
え、嘘!?あ、あの獣女!冗談でしょ!?なに口走ってんの!?
「だから……その…ケジメはつけないと……いけないだろ?」
「ふぇ!?」
な、なにそれ…?ま、まさか!
「え……それってつまり……えっと…」
「か、革命が終わったら……その……」
「ま、待ってよ!え、嘘?本気?そんな事急に言われたって……心の準備が……」
「……責任は取らなくちゃいけないだろ?」
「……責任?」
「あぁ……その……なんだ……子供……」
「ふぁ!?」
こ、子供!?な、何言ってんの!?それは幾ら何でも飛躍しすぎ………ん?
「え、タツミ?……責任って……?」
「だから……俺が……間違いを起こして……その……チェルシーに……こ、子供を……」
「…………………………………………………」
「…………………………………………………」
「はあぁぁぁあ!?」
「ひぃ!」
「間違いって!?ちょ………はあぁぁぁあ!?バカなの!?死ぬの!?死ねば!?」
「え……?」
「私が食欲なかったのはあんた達が心配だったから!責任っていうのはそのせいで私とレオーネがケンカした責任ってことよ!!」
「え?そうなの?」
「そうよ!あんたの子供…………ッ!…………てかどのタイミングでできんのよ!」
「いや酒の魔力かと……」
「バッカじゃないの?私は酒に飲まれたりしないわよ!」
「………そっか……なーんだ!よかった〜。いやー心配して損した!いや、悪かった悪かった!あはは!まぁ、俺とチェルシーに限ってそれはないよな!あー疲れた!じゃ!みんなのとこ戻ろうぜ!」
「………………………………………………………」
「チェルシー?」
「………ね」
「は?」
「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
ドグシャア!
「ごはぁぁ!!!」
《バカ………》
そんな愉快(?)なやりとりもあり俺はナイトレイドへ帰ってきたのだった。
「そんな……ラバとマインがそんな事に……」
帰ってホッとしたのもつかの間、俺はラバが洗脳され帝国の兵士になっていること、そしてマインが記憶障害と対人恐怖症になっていることを聞かされた。
「二人とも命があったのが不幸中の幸いだ。ただ戦線復帰は厳しいだろう」
「タツミはどうなんだ?今までどこにいたんだ?」
俺はイートちゃんに助けられたこと、インクルシオが折れたこと、(安心院さんと会ったことは口止めされているので割愛)、そしてインクルシオが進化したことを告げた。
「………イーターさん…」
「スサノオ?知り合いなのか?」
「あぁ、生物型帝具は俺とヘカトンケイル、そしてリアルイーターの三体を指す言葉なんだ。製造されたのはイーターさんが初めてだから、まぁ……言ってしまえば姉…のようなものだ」
姉って……あの子見た目5、6歳だぞ?イートちゃんに敬語を使うスーさん…見てみたいかも…。
「へぇ……あ、じゃあ今タツミのインクルシオって喋れるの?喋らしてみてよ!」
「え?あぁ、おいインクルシオ喋ってみてくれ」
「……………………」
「……………………」
「あれ?」
《無駄よ、タツミ君。私の声はあなたにしか聞こえないわ》
「え、そうなの?」
《ええ、てゆーか声じゃなくてあなたの頭に直接語りかけてるから、テレパシーの類ね。残念ながらあなたのお仲間さんとはお話しできないわ》
「そうだったんだ…二人きりだったから気づかなかった…」
「タツミ?」
「あ、ごめん。なんか俺にしか声は聞こえないみたい」
「え、そうなの?挨拶しときたかったんだけどな」
《あ、でも鎧を身につけてあなたの身体を介せば間接的に話せるわよ?》
「あ、そっか。じゃあそれで。みんなちょっと離れてて」
ーーーインクルシオーーー
ちなみにインクルシオに意識を渡すときに俺の意識はなくなるわけではない。インクルシオと立場が逆転するだけだ。
「………タツミ?」
「は〜い。皆さんこんにちは、インクルシオでーす!ピースピース!」
「…………………」
「…………………」
「…………………」
「……タツミ君、滑った」
知らねぇよ!そりゃ俺の声でやったらそうなるだろうよ!
「………えっと……タツミ……私は別にいいと思うぞ?スタイリッシュのようになっても……私は軽蔑しない」
アカメに至っては変な勘違いしてるし!
「てか、インクルシオ女!?」
「そうよ?ま、見た目じゃわかんないでしょうけどね」
しかもこんな気さくだったとはな……兄貴も知らなかったんだろうなぁ…。
「………お前がインクルシオか……」
「えぇ、そうよ。『電光石火・スサノオ』さん?」
「………知ってるのか」
「えぇ、製造順でいったら私は一桁だし。他の帝具には詳しいわ。ま、仲良くしましょ!みんなもね!」
一桁?………あぁ48の帝具の中で一桁台ってことか。イートちゃんが最初なんだっけ?
なんだろ、帝具にも年功序列みたいのあるのか?…なんかやだな……。
「あぁ、これからよろしくな。ともかくタツミ、よく帰ってきてくれた。今日はもう休め」
シュウウウウ……
「……了解ボス」
「みんなも早めに寝ろ。明日はまた作戦会議だ」
みんな部屋へ戻っていく。と、その前に。
「アカメ、ちょっといいか?」
「なんだ?」
「二人きりで話したい事があるんだ」
「!」
「!」
「………?わかった。私の部屋でいいか?」
「あぁ」
「………」
「………」
「………」
「チェルシー…」
「?」
「諦めたら……そこで試合終了だぞ?」
「な、何が!?」
『やぁやぁ、ケイ君。災難だったねぇ』
あの後二人に宮殿まで運ばれて、ナイアーラトテップのアジトにどうにか帰ってこれた。帰ってきたときムカエちゃんが本当にびっくりしてて、俺のことを心配しすぎて泣いてしまった。申し訳ない。(ちなみにこの時セリューにも感謝を言いっぱなしで、心なしか二人の距離が縮まった気がする)
で、現在アジトのベッドで寝ている。そこにミソギ君がお見舞いに来てくれた。
「…………全くだよ。君にコイを当てつけられるし」
『酷いなぁ、あれはファインプレーだと思ってるんだけど?』
「はいはい、どうも」
『それで?誰にやられたの?』
「…………ナイトレイドのインクルシオの使い手だ」
タツミ君ってことはまだ誰にも言っていない。もちろん大臣にも。
『ふぅん…なんだっけ?ブラートだっけ?そんなに強かったんだねぇ。君をそこまで傷つけるなんてさ』
確かに…油断してたとは言え、あそこまでの能力だとは…インクルシオの奥の手ってやつか?
『ま、しばらく休んでなよ。任務は僕たちだけでやっとくからさ』
「…………」
大丈夫だろうか?ミソギ君では即戦力にはならないし…。まぁ、カルマちゃんとムカエちゃんはだんだん強くなってきたから簡単な任務ならこなせるんだろうけど。
『ん?心配かい?大丈夫!何せ、やっとカルマちゃんと一緒にきた新メンバーが現れたんだから』
「え?そうなの?」
へぇ……本当にどこにいたんだろ。大臣にも操りきれないなんて…相当の逸材だな。
ナイアーラトテップに新メンバーが来ました。名前はイートちゃん。本当ならカルマちゃんと一緒に入る予定だった子です。ちっちゃくてとっても可愛い。
見た目とは裏腹に彼女は1000年近く生きているそうです。帝具としてですが。
セリューちゃん(仲良くなりました。えへへ)のとこのコロちゃんと同じ生物型の帝具だそうです。違いは所有者がいないってことでしょうか?唯一の完全自律型の帝具だそうです。私にはイマイチ凄さがわかりませんが。
能力は帝具の改変で、パワーアップしてくれるそうですよ?まぁ完全に使いこなしていることが条件らしいので私には無理ですかね?ケイさんくらいですか、当てはまるのは。
イートちゃんが来てメンバーが全員集合しました。なのでケイさんの生還祝いも兼ねてパーティをしました。ケイさんが怪我人なのでベッドを囲んでのお菓子パーティですが。
……楽しかったなぁ。私は帝国とか革命軍とかどうでもいい。ただこの時間が何時迄も続けばいいとそう願ってやみません。
「今日はありがとうございました!」
『ううん。僕たちも楽しかったし』
「だな。ケイの旦那の菓子がいっぱい食えたし」
「おい」
「ふふ、そうですよ。これから一緒に働くわけですから。仲良くならないと」
「そう言ってもらえると助かります。では!もうおねむなので今日はこれにて!」
「うん!おやすみー」
明日からまた任務だ。ケイさんも居ないから頑張らないと!
「………………全くいい人達ですね。………残念ですよ。本当に……あの人は残酷です。いえ、人外ですけど」
そろそろ死人がでるかな?