「いや!!もうほっといて!!」
ガシャン!と音を立ててスーさんお手製の料理が床に散らばる。
「マイン……食べないと死んでしまう。スープだけでも飲んでみないか」
「うるさい!私に構わないで!」
取りつく島もない。あれから3日、マインは何も口にしてはくれなかった。一応、私達が危害を加えないことは伝わったらしく以前みたいにビクビクすることはなくなったが、以前として心は開いてくれてはいない。
「……スープはここに置いていく。気が変わったら飲んでくれ。出来るだけ冷めないうちにな」
そう言うと私とスーさんはマインの部屋から出る。
「……スーさん。マインどうなるかな…」
「以前にも言ったが、こればっかりはマインの心の持ちようだ。俺たちができるのはマインに優しくしてやることだけだ」
「そっか……」
「毎日、ケンカばかりだったのにいざとなったらきちんと心配するんだな」
「あ、当たり前じゃない!いつもやってたのだって別にケンカじゃなくて……ただの遊びって言うか……本気じゃないっていうか…」
「マインは幸せ者だな」
「そうよ!この私が毎日来てやってるのよ?もうすぐ記憶も戻っていつものマインに戻るわよ!」
「そうだな」
微笑みながら頷くスーさん。カッコいいな。帝具じゃなかったら惚れてたかも。あ、それはないか。あの茶髪バカがいるし。
「とにかく!スーさんのご飯を目の前にあいつもそろそろ我慢できなくなってくるわ!そうなったらまたからかってやるんだから!」
「ほどほどにな」
と、そこまで話してボスからの召集がかかった。
「お前たち、これからラバックの救出作戦について話がある。会議室へ集まれ」
ついに始まるか。ラバック……無事だといいんだけど……
「作戦に加担するのはアカメとチェルシー、お前たち2人だ。メインの戦闘はアカメが行い、チェルシーは裏方で隙を見つけ次第、暗殺しろ」
「了解」
「了解です」
「私とスサノオ、レオーネはアジトに残る。マインのこともあるしな」
「大丈夫か?なんなら私一人で行っても構わないぞ?」
アカメちゃんが手を上げて発言する。んーでもどうだろう。アカメちゃん確かに戦闘面では相当強いけど、ラバックが閉じ込められていた時に錠とか外せなさそうだからな…。
「アカメは白兵戦にはうってつけだが、今回の任務はラバックの救出だ。器用さではナイトレイド随一のチェルシーが向いているだろう。変身の能力も潜入にはもってこいだからな」
「そうか、分かった。頼んだぞチェルシー」
「オッケー。敵は引きつけておいてね」
「よし、では3時間後に出発してくれ。ラバックは口が達者だし、帝国側も貴重な情報源をやすやすとは殺さないだろう。しかし拷問を受けている可能性はある。一刻も早く頼んだぞ」
「御機嫌よう、ラバックさん」
「!大臣!!」
「おや?私のことをご存知で?」
「知らねぇ訳ねぇだろ。俺たちナイトレイドの最終目標だからな」
「おぉ、怖い怖い。今にも噛みつきそうですな」
「拷問もなしにここに監禁しておくだけなんて随分と優しいんだな」
「えぇ。あなたは大事な被験体ですからね。拷問なんぞで死んでもらっては堪ったもんじゃないですよ」
「被験体?はっ!そういうことか、人体実験の材料にしようってわけね」
「えぇ。でも安心してください、死にはしません。あなたは生まれ変わるんですよ」
「…………?」
「葬る」
「ぐあぁ!」
「これで全員か……頼んだぞ、チェルシー」
「お疲れ様です!」
「おう、お疲れさん」
うん、喋り方、態度共に問題ないわね。ラバックは何処かしら…。こんな下っ端では聞いても仕方ないし…。誰かもうちょっとマシな奴は……ん、あれは………
「いつもご苦労様です!」
「せ、セリューさん!」
「お、お疲れ様です!」
「お疲れ様です!」
イェーガーズのセリュー・ユビキタス!あいつなら……!
「セリューさん!お話が!」
「え、私ですか?なんでしょうか?」
「人がいるところでは何です。少し付いて来てもらえませんか?」
「!!」
「!!」
ん、なんだこの空気?なんか、凍りついたような……もしかして……ばれた……?
「?いいですけど……」
「じゃあ、こちらへ」
気のせい……かな?
「先輩……あいつ……!」
「あぁ……あいつ……ファンクラブにも入ってないくせに……」
「二度の面接と書類選考を突破してやっと入れるセリュー・ファンクラブに入団してやっと5秒まで見つめる権利を得られるというのに……あの野郎……!」
「至急幹部を召集!奴を血祭りにあげるぞ!」
「で?話とは?」
連れてこられたのは宮殿内の広場だった。噴水が綺麗で印象的だ。今の時間はほとんど人がいない。
「はい……偶然耳にしたんですが……先日、ナイトレイドの一人が捕まったとか……」
「む……耳が早いですね…えぇ、確かに。現在、ナイトレイドの一人を拘留中です。まぁ順当に行けば死刑でしょう」
「え?まだ、殺されていないんですか?あんな悪党を?」
「そうなんですよ!ナイトレイドなんて絶対悪、即刻処刑でいいんです!あなた、よく分かってますね!私好みです!」
よし、聞いていた性格通り。これで話を聞きやすくなった。
「現在も拘留中で?」
「ええ、地下牢に。まぁ情報を引き出すという目的があるらしいんですけどね……にしては拷問もなにもないらしいんです。おかしいですよね!」
拷問も無い……?こちらとしては嬉しいけど……何か引っかかるわね…。しかもイェーガーズにすら目的が明かされていない?それは流石に……ここは一つ猜疑心を煽っておくか…。
「それは…変ですね…。何か裏がありそうです…。もしかしたら上層部が革命軍と繋がって……?」
「ま、まさか!私も変だとは言いましたが、それは流石に飛躍しすぎじゃないですか?」
「でも拷問も行われていないのは流石に変です。もしかしたら革命軍のスパイが裏で暗躍しているのかもしれません」
「………ッ!いや、でも……」
よし、もう一押し……!
「セリューさん!ここにいましたか!」
ちっ!もう少しだったのに……
「何ですか?今、取り込み中で………」
「宮殿内の庭園にアカメが現れました!」
「何だと!」
アカメちゃん……間の悪い……。いや…これはむしろチャンスかな?
「セリューさん。やはりこれは上層部がきな臭いですよ。いくらアカメといえども誰にも気付かれずに宮殿内に侵入するのは不可能です。誰かが手引きしたとしか思えません!」
「……そうですね……。隊長に相談するとしましょう。それより今はアカメです!そこの貴方!案内してください!」
「は、はい!」
「それと君!ご報告ありがとうございました。また、話を聞かせてくださいね」
「はい。頑張ってください」
その言葉を聞くや否や、セリューは行ってしまった。これで内部に派閥が生まれるといいんだけど……。それはそうと、ラバックね。地下牢に急ぎますか。
(ここね…)
問題の地下牢に到着。流石に地下牢にいると警備兵でも目立つので、現在はネズミに変身中だ。ええとラバックは……いた!ん?もう一人いる…?あれは……大臣!?
「さて、では行きましょうか」
言われるがまま、ラバックはついていく。なに?もしかして……人体実験……!?
「ラバック君、君はこれから、ナイトレイドではなく、軍に所属してもらいます」
「はぁ?殺されたってやだね」
「でしょうね。まぁ、拒否権はないです。それに、成功したらそんなことは言えなくなりますよ」
「…………」
やっぱり実験か……少し様子を見よう……
「さて、そこに座って」
「………ッ!!」
「舌を噛まれても困るのでね。寝ててください。起きたら君は生まれ変わっています。安心してください。死にはしませんよ」
ラバック!くっ……!出たいけど……、ここで変身を解いても私の戦闘力では助け出せない……。殺さないと言っていた、ならここはぐっと堪えて……。
「準備はできてますか?」
「はい!Dr.スタイリッシュの遺作。創帝(クリエイト)、準備万端です!」
クリエイト……?あれはヘルメット?にしては少し形が歪ね……。
「よろしい、では始めてください」
「はい!」
そう言うと、研究者らしき人間が、ラバックの頭にそのヘルメットもどきを装着。どうする気……?
「電源、入ります!」
バリバリッ!
その言葉と共に、ラバックの頭に激しい電撃が!くっ!眩しくてよく見えない……!
「さて、ラバック君?気分はどうですか?」
ラバック……?見た所、外傷はなさそうだけど……。
「……ラバックではありません」
え?
「私はラバック(改)です」
何?なんなの?ラバック?
「それはそれは、ではラバック(改)君?君はナイトレイドに戻りますか?」
「……いえ、私は目が覚めました。私は皇帝に、ひいては大臣に仕えさせていただきます」
「よろしい。では今後の所属は決めておきます。それまで牢獄に戻っていてください。すぐに新しい部屋を用意しますので、悪しからず」
「了解です」
ら、ラバック……?
「さて、今頃イエヤスさん、いえタツミさんですか。安心院さんにしごかれてますかねぇ。私も仕事しないと。
……これがインクルシオですか。ポッキリ折れちゃってまあ……じゃあ始めますかね」
《イタダキマス》
今更ながら刀語のアニメを見ました。本も読んだこともなくて初見だっんですが……面白かった!次また書くとしたら刀語もいいかも。