ナイトレイドを討伐するにあたり、僕はまず、情報を集めることにした。といっても僕はお尋ね者。表立った行動は控えなければならない。
まぁ僕の手配書は僕の顔が血だらけだったためそんなに特徴を掴んではいない。それに僕は死んだという噂も流れているため、(情報源はおそらくオネスト大臣)バレる心配はあまりない。それでも僕は軍に表向きには属していないため、万が一軍の所属なんかを聞かれると、少し面倒臭い。
なので、僕は安全かつ確実な方法をとることにした。
「おーい、エリー。ナイトレイドに送る帝都の資料は完成したか?」
「あ、はい。あとはマーグファルコンに送らせるだけです。」
ここは、帝都辺境にある今は使われなくなった小さな工場。帝都の目もここまでは届きにくいため、私たち革命軍の秘密基地として使わせて貰ってます。
私が革命軍に入ったのは3カ月前。腐りきった帝都に両親が冤罪で殺されてから、路頭に迷っていたところ、革命軍にスカウトされました。
まぁ、私は何の力もないただの村娘だったので、主に事務仕事がメインです。今ちょうど革命軍の希望、ナイトレイドへ送る帝都の資料を製作していたところです。
ナイトレイド…法で裁けない悪党どもを闇に紛れて始末する。カッコいいです。まさに正義の殺し屋って感じです。革命が成功したら平和になった国でサインとか貰えるでしょうか?
「そうか、じゃあとっと送っちまおう。いくら人目がないとはいえ、限界があるからな。」
この人は先輩のジェニさん。まだ、入って間もない私に色々教えてくれた兄貴肌の親切な方です。今日は二人でお仕事中です。
「はい。それじゃあ送っちゃいますね。」
この資料には帝都に関する情報が詰まってます。中でも、エスデス将軍が帝具使いだけの特殊警察を組織するということは確実に伝えなければなりません。7人の帝具使いなんてナイトレイドに任せるしかありませんからね。
さぁ、マーグファルコンの足にこの資料をくくりつけて、あとは飛ばすだけ…
「ちょっといいかな。」
「「!!」」
突然のことでした。今の今までこの工場には私とジェニさんしかいなかったはずなのに。気づいたら私たちの隣にフードを被った男の人が立っていました。
「何もんだ、お前…。」
ジェニさんがその男の人から距離をとりつつ訪ねました。私もそれに習って距離をとります。ジェニさんの背に隠れつつ。
「知っているなら教えてくれないかな?ナイトレイドのアジトを。君たち革命軍だろ?」
「…そういうお前は帝都警備隊か?」
「違うけど、まぁ、帝国側の人間ではある。」
「この資料を奪いにきたのか?」
「違う。今言ったろう。僕が知りたいのはナイトレイドのアジトだ。」
「そんなこと知ってどうするんだ。遊びに行くわけじゃあねぇだろう?」
「質問ばかりだな。僕の質問にも答えてくれ。アジトの場所を教えてくれるのか、くれないのか。」
「教える訳……ねぇだろう!」
ジェニさんが懐に忍ばせていたナイフをその男の人に投げつけます。ジェニさんは元帝都警備隊で暗器の達人だったそうです。やった。これであの人はひとたまりも…。
「な…!」
「やれやれ、革命軍の人間は質問には武力で応じる奴らばかりなののかい?」
そんな…ナイフが弾かれてしまいました。あの人が持っているのは…日本刀!?さっきまでそんなもの持っていなかったのに。
「…奴ら?」
「ここで4件目なんだ、革命軍の秘密基地にくるのは。みんながみんな同じ反応をするんだもんな。」
「……他の奴らはどうした…」
「……………正当防衛だ。」
「ッ!貴様ァ!!」
ジェニさんが腰から刀を抜きました。そのまま彼に突っ込んで行きます。
「やれやれ、君も彼らと同じかよ。僕は質問しただけであって君たちを傷つける気なんて毛頭ないんだけど。」
「ーーだから殺す」
「キャアアア!!ジェ、ジェニさん!!」
な、何が起こったのかわかりません。突っ込んでジェニさんが相手を切りつけたと思ったら、血しぶきをあげたのはジェニさんの方でした。
「ぐ…あ…」
「ジェニさん、しっかり!!今止血しますから!」
「そんなことより、早く教えてくれないかな?ナイトレイドのアジトを」
「あなた…自分が何をしたか分かっているの!?」
たまらず、私は叫びます。
「僕は質問しただけじゃないか。それに襲いかかってきたのは彼のほうだろう?まぁ、君でもいいや。ナイトレイドのアジトを教えてくれよ。」
「誰が貴方なんかに!教えたら私たちを殺してナイトレイドに夜襲を仕掛けるんでしょう!?」
「ナイトレイドに夜襲を仕掛けることに関しては否定はしない。でも君たちの命まで奪うつもりはないよ?教えてくれれば、ね。」
「そんな言葉信じないわよ!ナイトレイドはね、私達の希望なの!あなたたちみたいに命令だからって善良な市民を殺していくんじゃない。本当の悪党どもを殺す正義の殺し屋なんだから!!」
「正義の…殺し?」
その瞬間、空気が一変しました。目の前の男から今までとは比べものにならないくらいの殺気が放たれたのです。
「君は殺しをそんな風に考えてるんだね。そんなんだから君は殺されるんだ」
彼が日本刀を振りかぶります。もうダメだ、そう思ったその時。
「待て…」
息も絶え絶えになったジェニさんが蚊の鳴くような声で言います。
「こいつの発言に関しては目を瞑ってくれ、まだこの世界に入って日が浅いんだ。俺のことは殺していいからこいつのことは…見逃してくれ…。」
「ジェニさん!?何を!?」
「………アジトの場所を教えてくれればね。君の命も別段奪いたいわけじゃない。君にとどめをさすつもりはないよ。すぐに治療すればもしかしたら生きられるかもね。」
「恩にきる。」
「ジェニさん…」
その後ジェニさんはナイトレイドのアジトの場所を話してしまいました。私を助けるために…。私が弱いばっかりに…。
「へぇ、そうかここにあるのか。助かったよ、どうもありがとう。お礼といったらなんだけどこのマーグファルコンは飛ばしておいてあげる。」
それだけ言うと彼は去っていきました。
そして私はジェニさんに肩を貸し、病院に急ぎました。
幸いまだ息はしています。
「ジェニさん…しっかり…!もうすぐ病院に…」
「そこまでだ、悪党ども。」
振り返るとそこには茶髪の髪を後ろで束ねた女性が腕を組んで立っていました。あの服は…帝都警備隊!あの人、見逃すなんて言っておいて…。クッ、仕方ない…。
「助けてください!この人帝都の軍人にやられて死にそうなんです!治療を受けさせてもらえるなら自首でもなんでもしますから…お願いします!!」
「ダメだ。自首なんかで減刑される罪ではない。貴様らは帝都に仇なす革命軍の一味だろう。悪はここで断罪する。コロ!3番!」
「キュイ!」
傍らにいた犬の様な生物が急に巨大化。彼女の腕に噛みつき、次に彼女の腕が出てきたとき、その腕は刀になっていました。
「ーー正義執行」
その言葉とともにジェニさんの首が飛びました。
「あ………あぁ…………」
恐怖と失望感で言葉が上手く出ません。
「次はお前だ。」
ズバッ、きれいな音がしたと思ったたら私の左肩から右腰から一直線に筋が入り噴水のように血が噴き出します。そして仰向けに倒れこみ、意識が薄れていく中、空に一匹のマーグファルコンを見つけました。
あぁ、そうか約束は守ってくれたんだな。だったら、この警備隊と出くわしたのはあの人のせいじゃないのかもしれない。疑って悪かったかな。
そんなどうでもいいことを思いながら私の視界がブラックアウトする寸前、今際の際になって自分で言っていた”正義の殺し”についての考えを改めました。
ーーー殺しは殺しだ、人の命が失われるんだ、そこに正義なんてないんだ。と。
なんか、ケイの良さが上手く表現仕切れていない気がする。自分の文才のなさが恨めしい(*_*)