枯れた樹海と殺し屋たち   作:リンゴ丸12

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若干胸糞注意です。



幸せ者とは相容れねぇ

目の前の赤髪の男の特徴を一言で表すならば、顔立ちが整っている、といったところだろうか。目つきは悪く不良のようにも見えるが、どこか気品を感じさせる。そんな奴。背も高いし、街を歩けばきっとモデルにでもスカウトされるのだと思う。

 

「……マインとかいったっけ?」

 

「そうよ」

 

「お前、異民族とのハーフだろ」

 

「!!」

 

こいつ……知ってたの?

 

「つらいよな〜何もしてないのに差別されてさ。髪の色がそんなに大事かよ、って感じ」

 

……そういうことか。

 

「あんたも異民族とのハーフなのね」

 

「そ。あんたのそのピンクの髪。多分両親のどっちかがテネア族だろ。私もなんだー。テネア族は真っ赤な髪が特徴でさ。私の場合は母さんがそうなんだけど、母さんの遺伝子が強かったのかねぇ。髪の色はこんなに真っ赤になっちまった」

 

「………」

 

私の場合はパパがそうだった。ママの髪は美しい銀髪だったから、混じってピンク色になったらしい。

 

「悲惨な子供時代だったぜ。両親は病気で私が5歳の時に死んじまうし、周りの人間は髪の色が自分と違うってだけで化け物扱いだぜ?意味わかんねーよな?お前らと同じ人間だっつーの」

 

「………」

 

こいつ、私と同じだ。誰も頼れる人がいない。そんな心細い子供時代を送ってきたんだ。だったら……

 

「あんた、なんで帝国の味方してるの?あなたにとって帝国は恨むべき対象じゃないの?」

 

「ん?別に帝国の味方のつもりはねぇよ?私はミソギさんとムカエとケイの旦那の味方だ」

 

「あいつらの何がいいのよ。人殺しを楽しんでるような奴…」

 

「黙れ、殺すぞ」

 

……失言。あいつの神経を逆なでするようなことを言っちゃったかな。

 

「ごめん。そんなつもりじゃ」

 

「ははは!謝んなよ!変な奴だな。お前と私は今から殺し合うんだぜ?今はその前座だ。遠慮すんなよ。敵相手に」

 

……そういうことじゃない。私は今、仲間を見つけたような気でいるんだ。私と同じような子供時代を過ごした奴なんていないと思ってた。だから、あんたを…

 

「ねぇ…あんた、ナイトレイドに入るつもりはない?」

 

「あぁ?」

 

「あたしもあんたみたいに悲惨な子供時代を過ごして来た…だからこんな社会の仕組みを変えたくてナイトレイドに入ったの。あんたならあたしの気持ち分かるでしょ?……一緒に平和な世の中を作りましょ!」

 

「……無理だな、私は過負荷(マイナス)だ。あんたらみたいな幸せ者(プラス)とは相容れねぇ」

 

「あたしだって子供時代は不幸な目にあってきたわ!でも、ボスに会って……仲間に会ってこの国を変えたいって思ったの!だからあなたもナイトレイドに入れば……!」

 

「それはあんたが過負荷(マイナス)じゃなかった、ってだけの話だ。私はナイトレイドには入らねぇ。私はナイアーラトテップの一員だ」

 

ーー仲間は裏切れねぇ。彼はそういった。こいつら、なあなあでつるんでるだけかと思ったけど何気に仲間意識とかあったのね。

 

 

 

「なら、仕方ないわね……同じ民族のよしみよ。サクッと殺してあげる」

 

「そうこなくっちゃな。楽しく行こうぜ!」

 

彼の声を皮切りに、勝負の火蓋が切って落とされた。

 

「くらえ!」

 

挨拶代わりのパンプキン。カルマは華麗によけてこっちに接近してくる。何気に戦闘能力は高いみたいね…。

 

「そんな遅い銃弾なんか当たらねぇよ!」

 

カルマは腰から拳銃を取り出し、撃ってくる。あの形……帝都で大量生産されている、精神エネルギーを弾丸に変えるタイプの銃ね。パンプキンの劣化版みたいなやつ。ふん、劣化版が本家に勝てると思わないで!

 

「その言葉そのまま返すわよ!」

 

私は銃のタイプをレーザーに変えて反撃。当たるか?

 

「ぐっ!」

 

ちっ!掠っただけか!でもこれを繰り返していけばいつかは!

 

「まだまだ!」

 

私はレーザータイプのパンプキンを連射。

 

「ちっ!」

 

木の陰に隠れたか…

 

「隠れてるだけじゃ勝てないわよ!」

 

……反応なし。気配も…ない…か?

 

「後ろだよ」

 

…っ!いつの間に!ここまで殺気を消せるなんて…アカメレベルじゃない!

 

「くらえ!」

 

「きゃあ!」

 

廻し蹴り!格闘スキルもあるのね…

 

「あんた、銃撃スキルは半端じゃねえが、肉弾戦には対応しきれねぇみたいだな。こりゃ接近戦に持ち込んだ方が良さそうだ」

 

「…か弱い女の子に暴行なんて、紳士のやることとは思えないわね」

 

私は口に着いた血を拭いなから言う。

 

「そりゃそうだ、私は女だからな」

 

……マジ!?

 

「ま、まぁわかってたけどね」

 

「もうその流れは飽きたよ」

 

そんなこと言ってる場合じゃない。あいつはまだ帝具も出してない。なんとか出させて情報を得たいんだけど…少し揺さぶってみよう。

 

「あんた、帝具は持ってないの?」

 

「あ?持ってるよ。使ってないだけだ」

 

「出し惜しみしてると負けちゃうわよ?」

 

「そんな心配いらねぇだろ?現に私の方が優勢だ。あんたの帝具はその銃だろ?大した威力もねぇ。そんな帝具じゃ私は殺せねぇよ」

 

簡単には出してくれないか。ならもっと追い込むしかないわね……相手も、自分も。

 

「くっ!喰らえ!」

 

私はわざと、カルマを掠めるように撃つ。

 

「はぁ…お前本当にあのナイトレイドなのか?拍子抜けだぜ。さっさと死ねよ」

 

カルマは私に再度蹴りを入れてくる。何度も何度も。

 

「ぐぅ!あぁっ!」

 

「なんか弱い者イジメしてるみたいだなぁ。まぁ私も弱い者だからカンベンな」

 

くっ、うぅ……もう…少し……

 

「おらっ!」

 

「きゃあ!」

 

私はカルマに木の端まで蹴り飛ばされる。よし、このダメージなら…!

 

「ほら、今楽にしてやる」

 

そう言うとカルマは腰の拳銃を取り出して構える。

 

「こっちの台詞よ」

 

「?何言って……」

 

「逆に待ってたのよ、追い込まれる瞬間をね!」

 

私は再度、パンプキンを撃ち込む。ダメージを受けた分、威力も上がっている。

 

「!火力が上がった!?」

 

「パンプキンはね、ピンチになればなるほど威力が増すのよ!」

 

「くっ、腐っても帝具か!そんな能力があったとは!」

 

「撃ちぬけぇ!」

 

威力も速度も上がったパンプキン。避けきれないでしょ?

 

「ぐっ………あぁぁ!!」

 

案の定、カルマの右腕が消し飛んだ!よし、これであいつの腕は使い物にならない!勝機!

 

「く…はっ!はははっ!流石ナイトレイド!!一筋縄じゃあいかないか!」

 

「帝具を出す気になった?まぁ出したところで手遅れだけど?」

 

今のパンプキンの威力ならインクルシオにすらダメージを与えられる。今更帝具を出したところで私のパンプキンの敵じゃない。使い方がわからないのは悔やまれるけどこいつを殺した後でゆっくり回収してやるわ。

 

「それは…どうかなぁ?」

 

 

 

ーースカーデッド

 

 

瞬間、私の体はズタズタに切り裂かれた。

 

「な……!」

 

何が起きたの……いつの間に刃物なんか……

 

「どうだい?『致死武器スカーデッド』の威力は」

 

……見えないかまいたちでも起こしてるの?それとも、居合抜刀の帝具?なんにしろ、全く見えなかった…!

 

「ぐ……なんて、威力なの……」

 

「これで私の勝ち……ぐっ!」

 

!ダメージがまだ残ってる!今のうちに…!

 

「パン……プキン!」

 

このダメージ量だ、かなりの威力が出るはず!

 

「…いけぇ!!」

 

引き金を引く。ズガンッ!と、とてつもない威力の光線が!しまった!反動のせいで狙いが!

 

「……!」

 

ちっ!外した!もう一発…

 

「くっ!…あんたの帝具、思ったより厄介だな……!私の拳銃の上位互換版ってとこか?なら、そのエネルギーの源、精神力を破壊させてもらう……」

 

ーーースカーデッド、奥の手ーー

 

 

 

 

 

 

 

………?

 

《くんな!穢れた血め!》

 

!!

 

《なんだ、その髪の色?気持ち悪りぃ!》

《化け物!!寄るんじゃねぇ!》

《異民族は帝国では奴隷なんだよ!おら、頭を垂れろよ!生きててすみません、って言ってみろ!》

 

いや……やめて……!!

 

《こいつ、肌は綺麗だな。なぁさっき買った刀、こいつで試してみようぜ?》

《はは!こいつはいい!肌が綺麗な分、傷もしっかり見えるぜ!》

 

痛いよ……やだ……来ないで……!ぐぅぅ!

 

《ほら、食べ物だ。異民族ってゴミを食べて、泥水啜ってんだろ?用意してやったぞ?》

《……何してんだよ!さっさと食え!》

 

うっ……えぇっ、ぅう…おぇえ!やめ…おぇ!

 

《居た居た!今日はどんな風にして遊んでやろうか?》

《蝋燭持ってきたぜ!溶かして口の中に流し込め!》

 

熱い!!いや!やめて!!あああ!!!熱いよ!!いや!むぐぅ!!うぅ!ううう!!

 

《異民族って中々死なないのな?どうする爪でも剥ぐ?》

《いいねぇ!爪ならまた生えるしね。俺たちやっさしー♪》

 

何するの……やだ、来ないで…!………ッ!!いやぁぁぁぁ!痛いぃぃぃ!!

 

 

 

 

 

 

 

「ああぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁあ!!!!!」

 

だにごれ!!やだ!やだやだやだ!!!!がぁぁぁぁ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《今のうちに……逃げてください……マイン……!》

 

!!……シェ……………!!

 

 

 

 

《グシャ!》

 

!!!!

 

 

 

 

 

 

「………あ………………ぁ…………ぁ」

 

バタッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……久しぶりに使ったな、奥の手。流石殺し屋、半端じゃないトラウマだ。まさかここまで拮抗するとはね。精神エネルギーを弾にして放つ銃の帝具、か。精神を錯乱させて隙を作る目的だったけど……こいつはもう元には戻れねぇな。廃人になっちまった。

 

「さて…止めを………ぐっ!」

 

そうだった……右手はもう無いんだった……しょうがない、左手で……

 

「今、楽にしてやる……」

 

 

「マインちゃん!!」

 

お、あの緑髮の野郎の声が聞こえる。螺子で出来た柵を必死で叩いてるな。さてはミソギの旦那、こっちの様子を伝えたな?ま、もう手遅れ。自分の力の無さを恨むんだな。

 

私は銃を構え、引き金に指をかける。さよなら、同族さんよ。来世では友達になろうぜ?

 

 

 

 

 

 

 

ーーーパァン!




次ではまだマインの結末はわかりません。もう2人の戦いも書かなきゃなので。まぁ勝敗は言うまでもないんですが。

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