枯れた樹海と殺し屋たち   作:リンゴ丸12

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セリューの喋りかたが安定しませんが、まぁ彼女は狂っているので、適当に脳内補完してください。それが正解です。


ただの戯言だと思ってくれ

Dr.スタイリッシュを倒した後、俺たちはエアマンタに乗って辺境の地へ向かった。もうすぐ新しいアジトができるまでここでレベルアップするとのことだ。

スタイリッシュを倒す際、協力してくれたスサノオさんはボスの新しい帝具だそうだ。家事スキルも完備されていてアカメと俺の仕事がなくなってしまった(別にやりたかったわけではないんだが。ただアカメはつまみぐいができなくなって少し寂しそうだった)少し無愛想だが、それは冷静であることの裏返しと受け取ることとした。

もう一人の新メンバーはチェルシーさん。オシャレな町娘って感じだが、アカメと同じくらい仕事をこなしてきた強者らしい。ちなみに20代。衝撃だ。

 

「やーい、マインのちっぱい、ちっぱい!」

「チェルシー!!」

 

…マインとは仲良くなれそうだ。

 

新たなメンバーも加わり、いよいよ帝国との決戦も近そうだ。気合いを入れていかないとな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Dr.が消えて一週間。どこに行ったんたんでしょう。早く帰ってきてもらってもらいたいものです。十王の裁きのメンテも私一人じゃ無理があるし、コロのメンテもしてもらいたいのに。

 

「……Dr.をさがしてきます。コロ!」

「おい、セリュー!」

 

ウェイブが腕を掴んできます。なんでしょう?手伝ってくれるんでしょうか?

 

「セリュー、わかってんだろ?Dr.はもう……」

 

「ホント、何やってんでしょうね?こんなに無断欠勤して、隊長に殺されちゃいますよ」

 

「セリュー!!」

 

「離して!!」

 

自分でもびっくりするくらい大きな声が出ました。いけません。冷静さを欠いては見つかるものも見つかりません。

 

「行ってきます」

 

「セリ「行かせてやれ」」

 

「隊長……」

 

「あいつはまだ心の整理がついていないんだ。しばらくそっとしてやれ」

 

 

 

 

帝都のメインストリートを越えると裏路地が多く点在し、悪が蔓延っています。Dr.は正義の科学者なのでこういった悪を夜な夜な捕まえ、実験体にし民間人の役に立つ薬の研究もしてました。さすがDr.です。私の手術の時も私の心身を最後まで心配してくれました。本当にいい人。帰ってきたらみんなでまたボルスさんの作った料理でディナーを食べたいな。

 

帰っ…………

 

 

 

「う……うぅ……」

 

 

Dr.……早く帰って来てくださいよ……一人じゃメンテナンスできませんよ……

 

 

「テメェ!どこ見て歩いてんだ!」

 

!!チンピラの声!また善良な市民が襲われて?くっ、人が感傷的になってる時に!

 

 

 

 

「そこまでだ!悪は私が断罪す…る……!」

 

そこには数人のチンピラ達が確かにいました。えぇ、いましたとも。大きな螺子で磔にされて。

 

「これは……!」

 

『あ、警備隊の方ですか?』

 

「誰だ!」

 

『わぁ!やめてくださいよ!僕は襲われたから身を守っただけですよ!正当防衛です。僕は悪くない』

 

「正当防衛?一般市民がこいつらを?」

 

信憑性がなさすぎる。何者だこいつ。

 

『ん?あれ?あなた、セリュー・ユビキタスさん?イェーガーズの?そうですよね!わぁ、こんな所で会えるだなんて!僕ファンなんですよ!わぁ!わぁ!嬉しいなぁ!サインもらっていいですか!?』

 

……マシでなんだ?こいつ?

 

『あぁ、申し遅れました。僕はミソギっていいまーす。暗殺部隊所属です!最近帝都に来たばかりで迷ってしまって。そしたらこいつらにあったんですよ。こいつら金の為なら殺しも行う外道たちなんです。だから僕が殺しておきました!何、当然の事をしたまでです!』

 

暗殺部隊!クロメがいたところですか…だったらこの独特の雰囲気も納得がいきますね。

 

「それはそれは、ご苦労様です。この調子で悪を滅していきましょうね!えーとミソギさんですよね?よろしかったら宮殿まで案内しますよ?」

 

『わぁ、嬉しいな!イェーガーズの人に送ってもらえるなんて。じゃあお願いしますね』

 

ふふ、帝都にもこんな人がいるんですね。悪に容赦ない感じ、私好みです。

 

 

 

『あ、そうだ。Dr.スタイリッシュさんが殉職されたって本当ですか?』

 

「!!」

 

もう、イェーガーズ以外の兵士にも情報が回り始めているのか……

 

『いやー、惜しい人を亡くしましたね。あの科学力は帝国の貴重な戦力だったでしょうに。ナイトレイドの仕業らしいですね』

 

「い、いえ。まだそうと決まったわけでは……」

 

『え?でももう連絡がつかなくなって2週間でしょ?研究室の改造兵も根こそぎいなくなってる。コレはもうナイトレイドに特攻していって返り討ちにあったとしか思えませんよねぇ』

 

「だから……」

 

『あぁ、そういえば噂で聞いたんですけどーイェーガーズの中でまだDr.の死を受け入れていない愚か者がいるらしいんですけど。この噂は本当ですか?』

 

「………」

 

『まさかいるわけないですよね?だってイェーガーズはエスデス将軍が直々に組織した特殊警察でしょ?仲間の死を受け入れる覚悟もない未熟者がいるわけないですよね?いやー、変なこと聞いちゃってすみません。さぁ宮殿に戻りましょう。Dr.のいない宮殿へ!』

 

「…まれ」

 

『ん?どうしました?セリューさん?言いたいことははっきり言わないとですよ?』

 

「黙れ!!」

 

怒りが爆発します。つい、殺してしまいそうになりました。さすがに堪えましたが。

 

「お前に何がわかる!Dr.は死んでいない!きっとナイトレイドの情報を掴んで独自に調査されているだけだ!きっとすぐ帰って……帰って……」

 

『………』

 

涙が溢れてくる。なんでだろう?悲しいことなんて何もないのに。これじゃあまるでDr.が死んじゃったみたいじゃないか。

 

『もう、いいんじゃない?認めなよ』

 

「やだ!やだやだやだ!!Dr.は生きてる!生きてるもん!」

 

自分でも子供っぽいと思いました。論理も何もない。ただ認めたくないから認めない。子供のワガママみたいなものでした。でも、それでも私が認めてしまったら…もう誰も…

 

『………Dr.を悼んであげないのかい?』

 

「!!」

 

『お世話になったなら、お墓の一つでも立てて向こうで幸せに暮らしてくれるように祈るべきなんじゃない?』

 

「うぅ……くぅ……うあぁぁぁぁ!!」

 

私はその場で泣きじゃくりました。30分くらいずっと。その間ミソギさんは何も言わず、ただ私が泣き止むのを待っていてくれました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのあと、私は宮殿に戻ってお墓をたてました。簡素なものですが、想いは人一倍です。そしたらミソギくんがお花を持ってきてくれました。

 

「ありがとうございます。わざわざ」

 

『いやいや、会ったことはないけれど僕もDr.のことは尊敬していたしね』

 

やっぱりDr.はすごいなぁ。会ったことのない人からも尊敬されてる。さすが、私の恩人。

 

 

 

 

「私、父と師匠を凶賊に殺されたんです。それに今回はDr.も、みんな。私の大切な人はみんな殺されていく。もう私は誰とも関わらないほうがいいんでしょうか?」

 

少し自虐的になる私。でも冗談抜きで思っている。イェーガーズもやめて、フリーで活動しようかなって。

 

『セリューちゃん、君は責任感が強いんだね。芯がしっかりしていてとても強い。でもだからこそ弱さも必要なんだぜ?』

 

「弱さ…?」

 

『そう、弱さ。強者は一人になりがちだけど、それじゃあいつか折れてしまう。ものすごい強い個人よりも、弱者の集まりの方が全然強い。仲間に頼ることで心に余裕が生まれるからね。本当の強さは心の強さなんだよ』

 

 

「心の強さ……」

 

『なんて、僕のカッコつけた薄っぺらい言葉じゃ届くはずもないけどね。ただの戯言だと思ってくれ。まぁ、セリューちゃん、僕は君の味方だよ。君の異常なまでの信仰心。それは素晴らしい君の個性だ。困ったことがあったらいつでもおいで?僕は弱者と愚か者の味方だから』

 

 

そう言い残すとミソギくんは去って行きました。

 

仲間……か……

 

 

 

 

「おーい、セリュー!」

 

「あ、ウェイブ……」

 

ウェイブには最近強くあたっていましたからね。反省です。

 

「これ……Dr.のか?」

 

「はい…私も前に進むことにしました」

 

「そうか……なんかあったらなんでも言ってくれよ?仲間だからな!」

 

「……はい!」

 

 

ミソギくんの言ってたことは本当のようです。私にはこんなに素晴らしい仲間がいる。それだけでこの悲しみも乗り越えられそうです。

 

「あ、そうだ。セリュー、隊長からの招集だ。急いで会議室へ、だと」

 

「……?なんでしょうか?まぁ、わかりました。じゃあ一緒に行きましょうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「揃ったな。セリュー、もう大丈夫か?」

 

「はい!ご迷惑をおかけしました!皆さんにも心配かけてすみません」

 

と、みんなに頭を下げます。

 

「気にしなくていいよ。元気になって良かった」

「えぇ、全くです」

「今度ケーキ一緒に食べに行こう」

 

みんな本当にいい人ばかりですね。これならちゃんとやっていけそうです。

 

 

「ふむ、メンタルも大丈夫そうだな。まだ長引くようなら拷問になっていた。残念だ」

 

……文脈おかしくないですか?

 

「まぁ、セリューも乗り越えた所でみんなに朗報だ。殉職したDr.に変わり、イェーガーズに新メンバーだ」

 

新メンバー!そんな簡単に帝具使いを引っ張ってこれるなんて、さすが隊長……また大臣に無理を言いましたね?

 

「よし、入ってこい!」

「はい!」

 

 

入ってきたのは女の子だった。クロメと同い年くらいで……ポニーテール?かな?あれは。そして左目に眼帯をしている。ずいぶんキャラの濃い人ですね…

 

 

「自己紹介を」

 

「はい!自分はコイと言います!此度はエスデス殿に推薦されて皆様の後輩としてイェーガーズに配属された次第でございます!何卒よろしくお願いいたします!」




やっと出せた……この世界では最初からコイちゃんです。
あ、ちなみにミソギが暗殺部隊っ言ってたのは彼のその場のでまかせです。

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