翌日、エスデスと一夜を明かした俺は(何もなかった、何もなかった!)会議室へ。エスデスにここに来るように指示されたのだ。
「よう、今日はよく……眠れなかったみたいだな…」
ウェイブが心配そうに声をかけてくれる。やっぱりいいやつだ。
「起きたら抱き枕にされてた」
これは本当。一秒も眠れなかった。クソ眠い。
ウェイブの隣にはクロメが。お菓子を食べている。
うーん、この感じどこかで……
「…………」
「…………」
「…………」
「このお菓子はあげない!」
アカメか!ケチなところは違うけど(アカメはみんなで食べよう主義だ)アカメ関係の何かだ!
「………何?」
「いや、なんか手配書のアカメって奴に似てるなって……」
「あぁ、それは俺も思った」
と、ウェイブも続く。
「あぁ…優等生の身内だよ。帝国を裏切っちゃったけど。早く会いたいなぁ。会って………殺してあげたいんだぁ」
「…………」
「…………」
ヤンデレ?シスコン?キャラ盛りすぎだろ。
そんなやりとりをしているとエスデスが。
「お前たち今日はフェクマへ行くぞ」
フェクマ?あぁ、フェイクマウンテンのことか。兄貴とよく修行に行ったっけ…
「昼間は私とクロメ、タツミとウェイブだ。クロメは力の底がまだわからんからな。この機会に見極めさせてもらう」
「あれ、俺は見極められちゃってるんですか?」
「良い師に出会ったのだな。すでに完成された強さだ。誇っていいぞ」
ウェイブが照れくさそうに頬をかく。
ん?じゃあ、俺の監視はウェイブだけか?これは逃げるチャンスだ!
「夜はウェイブとクロメ、私とタツミだ」
……絶対に昼間に逃げなくては…
「しっかし、宮殿じゃあこんなこと言えないがお前も大変だよな。エスデス隊長にあんなに気に入られちまって……」
ウェイブが話しかけてくる。ちょうどフェイクマウンテンの中腹くらいに来た辺りだ。
「全くだよ。はぁ、今から夜が憂鬱だ……」
「まぁ、俺でよければ相談に乗るぜ?ほら、俺たち似た者同士だろ?」
「似た者同士?どこが?」
「え、いや、なんつうか……してきた苦労がおなじっつうか、これからする苦労が一緒っつうか…」
「あぁ……」
超納得。周りがアブノーマルばっかってことね。
!!
「ん、タツミ?……っておい!」
木獣の群れ!あぶねぇ!
「……っ、悪い!助かった!」
「なんの!」
あ、勢いで助けちゃった。こいつは敵なのに……
「よし、パパッと片付けますか!」
「おう!」
息ぴったり。こいつとは本当にいい友達になれるかもしれない
「ふぅ、これで全部か……そっちはおわったか?タツ……タツミ?」
まぁ逃げるんだけどね………
「あの……本当にすみませんでした………このウェイブ、深く反省しております……」
タツミ……何てことを……逃げるなよ……気持ちはわかるけど。おかげで信じられないくらいの拷問を受けてんぞ、俺……
「はぁ、ウェイブ。お前は技量は完成しているが、メンタルがまだまだだ。クロメ、石!」
「ん!」
「ギャアアア!」
し、死んでしまう……
「まぁ、仕方ない。私がタツミを完全に惚れさせられていなかったことも原因だろう。あとは鞭打ちと水攻め程度で勘弁してやろう」
し、死んでしまう!!
「だが、今度同じミスを犯したら私がお前を直々に処罰する。肝に命じておけ」
「はい……」
スゲェ威圧感……これが帝国最強だと言われる将軍の覇気……
その後、鬼のような拷問に耐え、部屋に帰ると泥のように爆睡。気付いたら朝になっていた。
「ぐぅ……まだ、節々が悲鳴を……」
幸い今日は休みだ。どこかに出かけてリフレッシュしよう。誰か一緒に来るかな?
帝都のメインストリート。買い物ならこのに限る。なんでも売ってるからな。結局誰もこなかった。セリューとDr.は新しい武器の発明と実験。ボルスさんは家族サービス。ランは見つからなかった。クロメは……また写真を見てニヤニヤしてたのでほっといた。
と、いうわけで一人悲しくショッピング。………釣具店にでも行きますかね…
と、そこで事件が。
「話してください!」
「いいじゃん、おにーさん達と遊ぼーよー」
……古風な…
路地裏でチャラ男2名にナンパされてる女の子がいる。ピンクの髪の女の子は気は強そうだが、実力はなさそうだ。
「離してくださいっ!キャッ!」
「おいおいだいじょーぶ?ほら向こう行って手当てしなきゃー」
「その辺にしとけよ」
一応秘密警察。こういう正義の味方のようなこともする。
「あ?あんだよテメェ、文句あんのか?」
「ぶっ殺してされてぇのか!?」
「はいはい、こういうもんだよ」
俺はイェーガーズの手帳を見せる。
「げ……!こいつ…!」
「くそ!覚えてろ!」
威勢だけはいいんだな……まぁ無駄に戦闘にならんでよかった。セリューだったら見つけた瞬間に殺してたからな?運が良かったなお前ら。
「大丈夫か?立てるか?」
俺はその女の子に手を差し伸べる。
………ん?顔が赤い。そんなに怖かったのか?
『ん〜、参った、はぐれちゃったな……どこ行ったんだろ…』
「ミソギ君?何してるんだい?」
帝都の闇市で武器を見ていたところミソギ君に遭遇。君こんなとこいると、目つけられるよ。見ためは弱々しい青年って感じなんだから。…まぁ見た目通り弱いんだけど。
『あ、ケイ君。ちょっと聞きたいんだけど、女の子見なかった?ピンクの髪の』
「いや、見てないが…どんな子だ?見た目は?」
『んーとねー……僕みたいな子!』
「絶対に見てない」
お前みたいなのが2人といてたまるか。
『いやいや、僕と同じ過負荷(マイナス)ってこと。君とも似てるかな?』
「…………いや、見てないな」
『そっかー全く僕とのデートではぐれるなんて。万死に値するよ。それに彼女惚れっぽいからなぁ。どこぞの馬の骨にナンパされてなきゃいいけど』
デートて……嘘くさ……
「まぁ見かけたら声をかけておくよ。名前はなんて言うの?」
『ありがとう、ケイ君。名前はね……』
「どうした?ひょっとしてどこか痛め…」
「だっ…大丈夫です!全然平気!どこも怪我なんてしてないです!」
そう言って慌てて立ち上がる女の子。
「………?、じゃあ…気をつけろよ?」
「あ、あの!お名前は!」
「名前?イェーガーズ所属のウェイブだ。困ったことがあったらいつでも言ってくれ?すぐ駆けつけるからよ」
ふっ。そう言って去る俺、ちょっとカッコよくね?
「ウェイブ君………あの!」
「ん?まだ何か?」
「私……ムカエって言うんだけど……」
「……?」
「子供はっ……子供は何人欲しい?」
あれですね。めだかからの登場人物はしばらくケイだけって……超嘘でした。
過負荷の花、登場です。