「GYAOOOO!」
ダリマオンは標的をイェーガーに定めゲヘナブレスを吐いた。
「ッ!!」
リムアリーシャ達が身構える中イェーガーは『勇技』を使った。
「『
ダンデルガから放たれた炎の奔流はゲヘナブレスを打ち消しダリマオンへと向かう。
だが、ダリマオンは炎の奔流から逃れようとしなかった。
なぜだ?
イェーガーは不審に思った。
大抵のユニットならばあの一撃を避けようとするはずなのにダリマオンは何故その場にとどまる?
嫌なものをイェーガーは再び感じた。その時だった。
ダリマオンは口を大きく開け炎を取り込んだ。
「なっ!?」
これにはイェーガーも驚きを隠せなかった。
だが驚きもつかの間。ダリマオンは取り込んだ炎を自らの物としそのままイェーガーたちに放った。
「ちっ!」
イェーガーは舌打ちするとダンデルガを地面に突き立て叫んだ。
「
ダンデルガを中心に左右合わせて500メートル程の炎の壁が現れゲヘナ・ブレスを防いだ。
後ろの兵士たちから歓声がこぼれる。
「リムアリーシャさん!早く兵を退くか迂回して突っ込むか決めてください!皆さんを守りながら戦うのは無理です!」
「しかし!それではイェーガー殿が・・・」
リムアリーシャが反論をさらに続けようとした時イェーガーが叫んだ。
「いいからさっさと退け!今のあんたたちで何ができる!?」
目の前で繰り広げられている炎の応酬。それを目の当たりにしリムアリーシャは自らの無力さを嘆いた。
私にもっと力があれば・・・!
「・・・それでも。私は引きません!」
リムアリーシャは強い決意に満ちた声でそう言った。
「・・・勝手にしろ!」
イグニートウォールが消えると同時にイェーガーは動いた。
一気に距離を詰めてダンデルガを振った。
「ッ!!」
ダンデルガからイェーガーに痺れが伝わった。
硬いのだ。ダリマオンの鱗はイェーガーの予想を超えて硬くなっていた。
「GYAOOOO!」
ダリマオンが爪を振りイェーガーを襲った。
「グッ!」
イェーガーはとっさにダンデルガで防いだがかなりのダメージを受け地面に叩きつけられた。
くっ・・・どうする。本気を出すしかないのか・・・。
イェーガーの本気はかつて四堕神アフラディリスとの戦いにおいて使用されその一撃はアフラディリスと同化した城を消し飛ばす程の力だった。ただし、消耗も激しく使用後イェーガーは3日間眠るはめになったのだ。
《だーっ!俺がいるじゃねぇか!》
ヴァルガスがそう言う。
・・・やれるか?
《当たり前だろ!》
イェーガーの問いかけにヴァルガスが答える。イェーガーは後ろでいつでも戦闘に入れるようにしている兵士たちとリムアリーシャを見る。
・・・こいつらを守るにはそれしかない。
イェーガーは決断を下した。
行くぞ。ヴァルガス!
《おう!》
イェーガーは立ち上がるとダンデルガの柄を額に当てて唱えた。
「『遍く炎よ。我が祈りに答えよ。理を超え炎の翼翻し英雄を我が元に導きて顕現せよ!』」
すると空に召喚陣が広がった。それはダリマオンを呼び出した物よりも遥かに大きかった。
「GYAOOOO!」
ダリマオンが危険を悟ったのかゲヘナブレスを放った。
「『来い!!ヴァルガス!!』」
イェーガーがそう叫ぶと同時にゲヘナブレスがイェーガーを包み込んだ。
「イェーガー殿!!」
それと同時刻。
エレオノーラとティグルが率いる軍はテナルディエが飼い慣らしていた地竜を倒しザイアンを追い詰めていた。
「なんだあれは!」
エレオノーラが丘の方角で上がっている火柱に驚く。
「・・・ッ!」
ティグルが慌てて駆け出そうとした時、エレオノーラが引き止めた。
「何をする!エレン!」
「何をするはこちらの台詞だ。ティグル!」
「放してくれ!俺は二人を助けに行くんだ!」
そう言うティグルにエレオノーラは刃を連想させるような鋭い視線でティグルを睨みこういった。
「敵の総大将が目の前なんだ!そいつを倒せば全てが終わるんだぞ!」
「だが!」
「ティグル!私を信じろ!心配するな!リムならあんなところで死んだりしない。」
「くっ・・・!」
「ティグル!」
迷うティグルにエレオノーラが声をかける。ティグルは迷いを晴らすように敵の本陣へと馬を進めた。
リム・・・イェーガー・・・無事でいてくれよ・・・!
ティグルはそう思わずにいられなかった。
ゲヘナブレスがイェーガーを包み込みその周囲を焼き尽くす。
「イェーガー殿!!」
リムアリーシャが懸念の声を上げたその時だった。
「
炎の中から聞きなれない男の声がした。と同時にゲヘナブレスを消し飛ばし今までで一番強い炎がダリマオンを襲った。ダリマオンが口を開け炎を吸収しようとすると炎はさらに燃え上がりその力をはねのけた。
ダリマオンが苦痛の咆哮をあげる。
「全く・・・やっと俺の出番かよ。」
「悪いな・・・。」
その時強い風が吹きイェーガーを包んでいた炎が消える。
そこにいたのはボロボロのイェーガーと重厚な鎧に身を包んだ赤髪の男だった。
そしてその男の背中には・・・炎を纏った翼があった。
「・・・!」
リムアリーシャはその様子を絶句しながら見ていた。
「ま。いいさ。とっととケリ、つけちまおうぜ。」
男はダンデルガを振り上げながらそう言う。イェーガーは隣でどこからか取り出したふた振りの剣を持っていた。
一つは白くもう一つは黒い剣―魔導剣トゥル・アンファン、グラデンスからイェーガーに与えられた双剣だ。
「ああ。」
イェーガーはダリマオンを睨みながら静かにそう言った。
さあ、反撃だ。