「アレ以外にもまだいるなんて・・・。」
ティグルの表情が暗くなる。
イェーガーとルジーナの推測にエレンの表情にも僅かながらの翳りが見えた。
まあ、それはそうか。魔神と戦う俺達からしても未知の脅威だ。加えてこの世界の人達からしたら初めて遭遇する化け物だ。しかもそいつは戦姫でさえ歯が立たない様な相手だときたものだ。不安になるのは当たり前だろう。
イェーガーがそう思った時リムアリーシャが声をかけた。
「それにしてはイェーガー殿達は落ち着いているように見えますが・・・何か策がおありなのですか?」
そう言われてイェーガーは少し苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
策・・・か。そんな感じに呼べる代物では無いけど考えならある。いや、推測だったけど
「・・・その表情だと、てめーも同じ考えの様だな。」
そう言われてルジーナの方に目をやると彼も苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていた。
「そうか。お前と同じ考えに辿り着くとは奇遇だな。」
「ケッ。嫌でも辿り着くだろう。というよりそれでもつかなかったらどんだけウスノロなんだよ。」
「ちがいない。」
イェーガーがそう肯定するとエレンが尋ねる。
「どんな考えだ。イェーガー。こんな奴と同じ考えの様だがロクな考えではないのだろう?」
おい!そいつはどういう意味だ!と、ルジーナが抗議の声をあげるがイェーガーはお構い無しに頷く。
「予想だが・・・俺とルジーナ以外にも召喚師が来てる。それも・・・俺の知り合いだろうな。多分。」
カルとセリアはもう間違いないだろう。となると後は・・・
「知り合い?何故そんな事がわかる?」
「召喚師は慢性的に人手不足なんだよ。魔神と戦うからってのもあるけど誰でもなれる訳では無いっていうのが一番だな。そして、今回俺にこの任務を依頼したのはお師匠様だ。お師匠様ならこうなる事を見越していたとしても不思議じゃあない。事実ルジーナはこっちにいたからな。なら、後はあいつらが来るのはほぼ確定だな。」
イェーガーは事も無さげにそう答える。その答えにルジーナは顔を顰める。
「チッ。てめーはやっぱり肝心な事はわかってねーのか?それとも敢えて答えてねーのか?」
イェーガーはため息を一つ吐き答える。
「敢えてだよ。ぶっちゃけ対策の取りようが無いだろ?話したところで。」
「どういうことだ?」
援軍が来るかもしれない。本来ならその報せに喜ぶべきだろう。特にそれが自らの知り合いともなればなおさらだ。
だがそれとは裏腹にイェーガーの表情は暗いままだった。
そのイェーガーにティグルが尋ねるとイェーガーは答えた。
「ティグル。俺がこの世界に来た時一番最初に着いたのはアルサスだった。ということはだ。お師匠様たちも出て来るとするならアルサスだろう?で、アレだけ派手に戦ってたんだ。計算してこっちと関わらなかったコイツと違ってお師匠様たちならこっちにくるはずだ。だが、一向にそんな気配は無い。つまり、お師匠様たちは魔神に遭遇して敗れたもしくは合流できない状態にされたかって事だ。」
「そんな・・・。それじゃあ結局状況は変わってないんじゃ・・・。」
ティグルが青ざめた表情でそう呟く。イェーガーは首を横に振り答えた。
「いや、そうでも無いぜ。少なくとも生きてるとは思うぜ。」