イェーガーが遅めの朝食をとり息を吐いているとエレンが現れた。
「イェーガー、体はもう大丈夫なのか?」
白銀色の髪をした戦姫はイェーガーにそう尋ねる。
イェーガーは軽く笑いながら答えた。
「ああ。俺ならもう大丈夫だ。それより・・・。」
「ああ、分かってる。こちらの状況だろう?」
イェーガーは頷く。
リムアリーシャからある程度に事は聞いているがやはりもう1度確認したい。
イェーガーはエレンを見つめて尋ねる。
「どういう状況だ?いや、もっとぶっちゃけて聞くと戦いは継続可能なのか?」
イェーガーは尋ねる。
エレンは顔をしかめた答える。
「いや、深刻だ。兵の士気は悪くない。アレだけの事を経験して未だ士気が高いのは誇れる事なのだが数に問題がな。」
「・・・そうか。」
イェーガーが表情を暗くする。リムアリーシャがそのイェーガーに心配気に声をかける。
「イェーガー殿、決して貴方の所為ではありません。むしろ、貴方は上手くやっていた様に思えます。・・・あの様なモノに遭遇しこれだけの数が生還できたのは紛れもなく貴方のお陰です。恐らく、我々だけでは全滅していたでしょう。」
その言葉にエレンが少し顔をしかめながら続ける。
「まあ、全滅といかなくても今よりももっと被害はでたと思う。イェーガー、私からも感謝させてもらう。」
イェーガーはエレンとリムアリーシャ、そしてティグルを順に見つめる。
ああ、こいつらはーー
イェーガーは思った。
こいつらの眼はまだ死んでいない。まだ闘志を燃やし戦う者の眼だ。・・・だったらおれが落ち込む訳にはいかない。この戦いで失われた生命の為にも尽力しよう。
「ところで、イェーガー。1つ聞きたい。」
ティグルが尋ねる。
「アレが・・・テナルディエの元にいる魔神って奴なのか?もしそうなのならこれ以上お前が戦う理由はーー」
「残念ながらそいつは違う。てめぇらが相手にしてんのはあんな小者なんかじゃねー。」
幕舎の外から聞き覚えのある声がする。
イェーガー達が幕舎の入り口に目をやるとそこにはルジーナが立っていた。
「お前は・・・確かリュドミラの元にいた・・・?」
エレンがそう呟く。
ルジーナはその呟きに答えずにイェーガーは目をやる。
「ハッ!またぶっ倒れやがったのか?まあ、ノロマなお前にはお似合いだな!」
ルジーナがそう嘲笑する。エレンがカッとなり何か言おうとする前にリムアリーシャが口を開く。
「いいえ。瓦礫に逆さまに挟まっていた貴方と違います。イェーガー殿はノロマなどではありません。」
その途端にルジーナは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
というか、ルジーナ・・・。お前また変なとこに挟まっていたのか・・・。どうりであの戦いの時姿を見ない訳だよな。
それはさておき、アレがテナルディエの魔神ではない、か。
イェーガーはルジーナの意見について考える。
ふむ・・・確かに戦闘力だけならかつて戦ったユグレイアに匹敵する様な気がする。
だが、相手はゲートを操れるような魔神だ。
ルシアスと比べたら
・・・アレがテナルディエの元の魔神ではないとすれば魔神はもう一体いることになるのか。この世界には。
イェーガーはティグルに目を向け答えた。
「ティグル、ルジーナの言っていることは多分本当だ。あいつは俺たちの敵の魔神ではない。