魔弾の王と召喚師   作:先導光

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第四章誇り高き黒騎士
目覚め


ーイェーガー、あなたに会えて本当に良かった・・・。

 

待て!ティリス!

 

 

 

イェーガーは静かに目を覚ます。

夢か・・・。

イェーガーはそう分かると大きく息を吐く。

・・・あの時の夢を見るとはな。ティリス・・・。大丈夫かな?あいつは、大切な俺の仲間だ。早くイシュグリアに行って魔神を倒さないと・・・。

 

「あっ!目を覚まされましたか?」

 

イェーガーにそう尋ねて来るのははしばみ色の瞳をした少女ーーティッタだ。

イェーガーは軽く頭を振りながら答える。

 

「ああ、ティッタか。おはよう。・・・ところで、アレから何日経ったんだ?」

「アレから・・・?ああ、タトラ山での戦いからですよね?確か3日だったと思います。」

 

3日・・・。思ったより短いな。感覚では1週間くらい眠ってた気がするんだが・・・。

イェーガーはそう考える。

というのもイェーガーがこの力を使いルシアスを倒した時は1ヶ月程眠っていたからだ。

 

「あの・・・。何か召し上がりますか?」

 

ティッタがそう尋ねてようやくイェーガーは腹が空いていることに気づいた。

 

「そうするか。」

「でしたらご用意しますのでしばらくお待ちくださいね!」

 

ティッタは元気よくそう言うと幕舎を飛び出して行った。

・・・元気だなあ。

イェーガーはあくびをかみ殺しながらそう思う。

すると、今度は別の聞き慣れた声がした。

 

「イェーガー殿?お目覚めと聞きましたが?入ってもよろしいですか?」

「ん?リーちゃんか、おはよう。別に良いよー。」

 

イェーガーは伸びをしながらそう言う。

ほどなくしてリムアリーシャが入ってくる。

 

「おはよう、リーちゃん。」

「ええ。おはようございます。もう大丈夫なのですか?」

 

リムアリーシャがそうたずねる。イェーガーは笑いながら大丈夫だと答えると真剣な表情となって尋ねた。

 

「あの後どうなったんだ?クソガーー・・・リュドミラとは話がついたのか?」

 

イェーガーがそう尋ねるとリムアリーシャの代わりにティグルが答えた。

 

 

ティグルによるとあの後、戦どころの騒ぎでは無かったらしい。オルミュッツ軍は護るべき砦が半壊しライトメリッツ軍も陽動作戦による被害は大きく両軍少なからず死者が出たという。

その後両軍は一時撤退を決断し事実上の停戦状態へと陥ったらしい。

 

 

イェーガーはそこまで聞いてなるほどと納得した。

確かにあんな化物(クロフォード)が現れたんだ。そりゃあ混乱もするか。

 

「と、いう事はだ。事実上の停戦状態に陥っただけでオルミュッツとの戦はまだ終わってないってことか?」

「一応な。」

 

ティグルがそう答える。それにリムアリーシャが続く。

 

「ですが、今回の戦でオルミュッツ軍は多大なる被害が出たはずです。そう簡単に態勢を整えれるとは思えません。」

「・・・それってこっちにも言える事だよな?」

 

イェーガーがそう尋ねるとリムアリーシャは頷きながら続けた。

 

「そうです。なので現状を考えみればかなり不味い状況へと陥ったと言わざるを得ません。」

 

イェーガーはそれを聞いてため息を吐く。

確かに・・・。相手があのクソガキーーリュドミラ・ルリエだけならばこれでも良かったかもしれない。だが俺たちの本当の敵はリュドミラでは無くブリューヌに蔓延る害虫(テナルディエ)だ。

ただでさえ強力なテナルディエ軍に加えて魔神の脅威・・・。今回、魔神の力を見た兵士からすればかなり不安だろう。

間違いなく士気に大きく関わるよな…。

そこまで考えてイェーガーは他の召喚師について思い出した。

 

「そう言えば、パリスとルジーナはどうしたんだ?リュドミラの方に行ったままなのか?」

 

イェーガーがそう尋ねるとリムアリーシャは頷いた。

 

予想通り、だ。だが分からない。何故ルジーナはああまでして魔神との接触を避けるんだ?調査任務にせよ今回は少しやり過ぎのような気がする。それこそルジーナらしからぬやり方だ。

 

「あのーー」

 

そこまで考えた時不意に声をかけられてハッとした。声がした方を向くとティッタがおそるおそるといった様子で入ってきた。

手に持つ食器からは食欲をそそる香ばしい匂いがする。

 

「お食事のご用意が出来ましたよ。」

 

ティッタがそう言う。イェーガーは頬の筋肉を思わす緩めていた。

 

「ありがとう。二人とも難しい話は一旦終わりにして食事にしようか。二人ともまだなんだろ?行こう。」

 

イェーガーはそう言って立ち上がり幕舎を後にした。


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