「ホウ・・・我ニ敵ウトデモ思オテオルノカ?」
クロフォードがニヤリと嗤いながら尋ねる。
「ああ?やかましい!ちょっと黙ってろ!こちとらどうやってテメーを痛めつけてやろうか考えてるとこなんだからよ。」
イェーガーが苛立ちながらそう答える。クロフォードの動きが一瞬止まる。だが次の瞬間ーー
「自惚レルナヨ!人間ガ!」
イェーガーに剣で斬りつける。
その動きは余りに早くティグルには見えなかった、
だがーー
「そう慌てんなって。時間はまだまだかかるんだからよ!」
クロフォードの剣は空を切りイェーガーはクロフォードの背後からそう言う。クロフォードが動いた瞬間、イェーガーもまた動いていたのだ。
「ナッ!?イツノ間ニ!?」
クロフォードは驚きを隠さずそう言う。イェーガーはニヤリと笑うと手にしている二対の剣を振った。
二対の剣は正確にクロフォードの腕を捉え斬り飛ばした。
「チイッ!!」
クロフォードは舌打ちすると素早く距離をとった。
と、次の瞬間クロフォードの腕は何事もなかったかのように再生した。
その様子を見てイェーガーはピクリと片眉を上げる。
「へぇ・・・。意外にタフなんだな。お前。」
「コノ程度造作モナイ事ヨ。」
クロフォードがそう言う。イェーガーはフッと笑みをこぼすと唱えた。
『太古の英霊よ。我が求めに応えよ。神に叛きし騎士よ、友を思う気持ちを力と為し顕現せよ!』
「現れろ!聖騎戦真皇ソディウス!」
イェーガーが唱え終えると召喚陣が展開される。
召喚陣が光を放つとそこから白い鎧を纏った一人の騎士が姿を現わす。
「我が名はソディウス!護神十二聖の長なり!イェーガー殿の助けに応じ推参!」
白い騎士が名乗りを上げ槍を振り上げる。
ソディウスーーかつて神々を守護する役目を担った部隊『護神十二聖』の隊長であり一番初めに神々に叛いたと言われている英雄だ。
「小癪ナ!消エ失セロ!」
クロフォードが叫んで剣を振る。ソディウスはそれを避ける事なく甲冑の腕の部分で受け止めた。剣は甲冑により止められる。
クロフォードが驚きに目を開く。
「その程度の攻撃では私に傷一つ付けられんぞ!」
ソディウスはそう言うと槍を振るう。クロフォードは素早く距離をとりその槍を避けた。
「クッ!小賢シイマネヲ・・・!」
「まだまだ来るぜ!」
イェーガーはそう言うと再び詠唱を始めた。
『異界より現れし影よ。汝の姿は闇夜の如く、全てを闇より葬る力となれ!』
「現れろ!緋影闇神オボロ!」
イェーガーが叫ぶと召喚陣の周りが暗くなりそこから一体の忍びが姿を現わす。
「オボロ。推参!」
忍びーーオボロはそう言うと刀を構えてソディウスの隣に並び立つ。
ソディウスはオボロを見て言った。
「ふむ、間者のような者か?手を貸してくれるようだな?」
「・・・拙者は主であるイェーガー様の忠実なる影。主の命に応じ助太刀致そう。」
オボロはそう答えると姿を消した。
「!?」
これにはソディウスのみならずクロフォードも驚きを隠せなかった。
「ド、ドコニ・・・?」
その瞬間、クロフォードは強烈な殺気を背後から感じた。
「ムッ!?」
クロフォードは瞬間的に障壁を生み出す。
障壁はクロフォードを中心に5メートル程の円状に展開される。
「甘い。」
そのクロフォードの上を飛び越えながらオボロが言う。
その時、クロフォードは気づいた。
自らの足元に黒い球がある事を。そして、それは火薬が詰まっているだろうという事を。
「小賢シイ!」
クロフォードは障壁を解き黒い球を吹き飛ばす。
その瞬間、白い影がクロフォードに躍りかかる。
「我が槍を受けよ!」
白い影ーーソディウスはそう叫びながら槍を突き出す。
ソディウスの槍はクロフォードの胴体を貫く。
「グウウ!」
クロフォードは呻くが自らの胴体の槍に構うことなく右手の剣を振ろうとする。
だが、その右手は動かなかった。
「ナゼダ!?」
クロフォードが右手に目をやると右手に鎖鎌が巻きついおりその先をオボロが握っていた。
「ナラバ!」
クロフォードは左手の槍を突き出す。
ソディウスはクロフォードに槍を刺したまま下がる。が、クロフォードの槍をよけきれず右腕を貫かれた。
「クッ!」
ソディウスが苦痛にわずかながらの声をあげる。クロフォードが畳みかけようとした時オボロがクナイを投げつける。
「足止メノツモリカ!?」
クロフォードがそういってクナイを叩き落とす。だがその時、オボロはすでにクロフォードの懐へと潜り込んでいた。
『呪禁・闇獄鬼葬』
オボロの声が静かに響く。闇を纏った短刀がクロフォードを切り裂く。が、致命傷には至らなかった。
「グッ・・・。コ賢シイ!」
クロフォードがそういって剣を振るう。だがその一撃はオボロに届かなかった。
「させぬ!」
ソディウスがクロフォードの一撃を左の手甲で受け止めた。そして、
「ナッ!?」
クロフォードは驚愕に包まれた。ソディウスの右腕は確かに槍で貫いた。つまり、ソディウスの右腕は使えないはず。なのに目の前にいるソディウスは右腕を使い槍で攻撃してきたからだ。
ーーナゼダ!?ナゼ右腕ガ使エル!!
クロフォードはイェーガーの方に目をやる。
イェーガーの隣にはいつの間にか剣を携えた銀髪で緑の目をした女性ーー賜光の聖綺神シャルルがいた。
「サンキューシャルル。そのまま援護は頼んだぜ!」
イェーガーはシャルルにそう言うとダンデルガを担ぎクロフォードに向かう。
「コノ・・・人間風情ガァァ!」
クロフォードが怒りで力を解き放つ。強い衝撃波がオボロとソディウスを襲う。至近距離にいた二人はなす術なく吹き飛ばされる。だがクロフォードは二人には目もくれずイェーガーに向かう。
クロフォードが詠唱を始める。
『忌ムスベキハ光ナリ。大イナル黒ヨ、破壊ノ意思ヲ携エ仇ナス者ヲ永遠ニ滅セヨ!』
「
破壊の意思を纏った闇の一撃がクロフォードの槍に宿る。いくらイェーガーでもその一撃を食らえば消え去ってしまうだろう。しかし、それと同時にイェーガーも詠唱していた。
『人々の希望よ、変わらぬ思いと絆と共に我に宿れ。我が名はイェーガー。世界を変える召喚師!』
「
クロフォードの槍がイェーガーを貫き爆発する。
「イ、イェェェェェガァァァ!」
ティグルが叫ぶ。たが、煙の中から吹き飛ばされてきたのはイェーガーではなくクロフォードであった。
「馬、馬鹿ナァァァ!」
クロフォードは城壁の瓦礫にぶつかる。ティグルが煙の中に目を凝らす。
「・・・この姿になるのはルシアスの時以来、か。まあ、良い。クロフォード。ここからが本当の
右手と左手に形状が異なる2本の槍を持ち背後に4本の剣を浮かべた召喚師ーー六輝絆の召喚聖イェーガーがそう言った。
どうかとは思いました。けど、後悔はしてません((((;゚Д゚)))))))