イェーガーがオルミュッツ軍に連れて行かれるのを見てティグルが飛び出そうとする。そのティグルをエレンが止めた。
「待て!ティグル。一応聞くがどこに行くつもりだ?」
「イェーガーの助けに行く。このまま見過ごせるか。」
「・・・。悪いがこのまま行かせる訳には行かんな。」
エレンはそう言いきった。ティグルはカッとなって言った。
「じゃああいつを見殺しにしろって言うのか!?そんなことできるわけーー。」
「落ち着け!ティグル!」
エレンはティグルの言葉を遮る。
エレンはティグルの顔を正面から見据えて言った。
「私は何もイェーガーを助けないとは言っていない。」
「じゃあなんでーー。」
「だが、今のお前は冷静に動けるのか?」
その言葉にティグルはハッとなる。
「イェーガーだって殿を務める以上こうなる覚悟は出来てた筈だ。今はまだ焦る時では無い。それにこちらの被害も大きい。イェーガーのおかげで戦闘継続が不可能なわけではないがな。」
イェーガーが殿を務めオルミュッツ軍を食い止めていたおかげでライトメリッツ軍はリムアリーシャと合流後一気に巻き返し奇襲部隊の撃破に成功していた。だが、奇襲による被害は甚大で現在ライトメリッツ軍は死者こそ少ないが負傷者の数はかなり多かった。
「ティグル・・・。わかってくれ・・・!」
エレンがそう言う。
ティグルは気持ちを落ち着けるために一度大きく息を吐く。
「わかった。今は退こう。」
「・・・すまない。」
ティグルはそう言うと全軍にそこから500アルシン離れた所で野営を始めるように指示を出した。
ーーその夜
ティグル達は幕舎で会議をしていた。
議題はイェーガーの奪還及びオルミュッツ軍の撃退だ。
「オルミュッツ軍には私があたろう。」
エレンがそう言う。
確かに現状ライトメリッツ軍最大の戦力であるエレンが当たるのが普通だろう。だが、ティグルは言った。
「いや、もう少し考えよう。」
「何を迷う必要がある?私ならあいつらには負けんぞ。」
エレンがムッとしてそう言う。リムアリーシャがその問いに答えた。
「確かにエレオノーラ様ならオルミュッツ軍を蹴散らせるでしょう。ですが、敵はオルミュッツ軍だけではありません。イェーガー殿と同じ召喚師がいますので恐らく厳しいかと。」
「リム、私の力を信じてない訳では無いだろう?召喚師と言っても小者の様な者じゃないか。私の敵では無い。」
エレンがそう言った時、緊迫した会議には似つかわない穏やかな笑い声がした。
「フォッフォッフォッ。ルジーナも甘く見られとるのー。」
「誰だ!?」
ティグルがそう言う。リムアリーシャとエレンは素早く臨戦態勢をとる。幕舎の入り口に姿を現したのは一人の老人であった。老人とは言えないほどの覇気を宿しながらもその老人はどことなく人を安心させる雰囲気を持っていた。
「フォッフォッフォッ。そう構えずとも良い。ワシはお主らの味方よ。」
「・・・何者です?」
リムアリーシャが冷たく尋ねる。老人は答えた。
「ワシの名前はグラじゃ。グラ爺と呼んで欲しいのー。」
グラ爺ーーもといグラデンスがそう言った。
「・・・で、グラ爺とやらが何の用だ。」
エレンが不機嫌そうに尋ねる。グラデンスは穏やかに笑いながら言った。
「フォッフォッフォッ。その前にお主らの名を教えて欲しいのう。名前がわからねば呼び辛いのでな。」
一瞬三人は毒気を抜かれた顔をした。次の瞬間エレンは笑いながら言った。
「確かにその通りだ。私の名前はエレオノーラ・ヴィルターリア。ライトメリッツ公国の主にして『
「リムアリーシャです。」
「ティグルヴルムド・ヴォルンだ。ティグルと呼んでくれたら幸いだ。」
三人の名を聞きグラデンスは頷き言った。
「フォッフォッフォッ。では、お主らに尋ねるとするかの。お主らはイェーガーとどういう関係じゃ?」
「あなたはイェーガーを知ってるのか!?」
ティグルがそう尋ねる。グラデンスは笑いながら言った。
「フォッフォッフォッ。ちょっとした腐れ縁での。」
「・・・イェーガーは俺たちを助けてくれている仲間だ。」
「フォッ!?助けておるとな?」
グラデンスがそう尋ねるとリムアリーシャも同意した。
「はい。我々を魔神の脅威から助けてくれています。あの方の協力がなければ我々は全滅していたかもしれませぬ。」
「・・・。そうだな。あいつには二度軍を助けてもらった。」
エレンが答えた。
グラデンスは目を閉じて考えると言った。
「さて、お主らの話じゃが外で大体聞かせてもろうたわい。そこでじゃ、このジジイに一つ提案があるのじゃが聞いてくれるかの?」
本文に大幅な訂正箇所がありましたので削除して再投稿致しました>_<